純白の少年とスクールアイドルの物語   作:ハトル

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猫は可愛い!! 前編

 

 

 

 

 

可愛い……それは、女の子であれば誰もが憧れる言葉

 

―――可愛くなりたい

 

―――可愛いと言われたい

 

女の子であれば、大なり小なりそういう感情を持っているはずだ。

 

 

―――そして、ここにも1人。密かに可愛いくなりたいと願う少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「か~よちん!!おはようにゃ!!」

 

彼女の名前は星空凛。音ノ木坂学院に通う1年生。

 

どんな時でも明るく、笑顔を絶やさない元気な女の子。小さい頃からスポーツ万能で体を動かすのが大好き。いわゆる体育会系女子だ。そんな彼女には親友の花陽にも言えない密かな想いがあった。

 

 

 

それは…………………………………

 

 

―――可愛いくなりたい

 

 

それは、年頃の女の子らしい想いであった。小学校の頃、可愛い女の子に憧れて短いスカートを履いてみた事があった。スカートを履いた姿を親友の花陽は『凄く可愛いよ!』っと言って褒めてくれた。

 

 

 

………しかし、小学校の男子からその事を揶揄われてしまった。

 

その男子たちは別に悪気があって言ったのでは無い。いつもと違う凜の格好を見てドキドキしてしまい、照れ隠しやおふざけのつもりで揶揄ったのだろう。

 

 

 

だが、凜にとっては忘れられない過去だった。

 

 

 

勇気を出してスカートを履いたのに男子たちに揶揄われてしまった。繊細な心を持つ小学生であれば、心が傷ついてしまっても不思議じゃない。

 

それ以来、自分は可愛い女の子になんてなれない。髪も短いし、花陽のように女の子らしくもない自分には無理だと思い、その想いを胸に仕舞い込んでしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな少女、星空凛はいつも通り幼馴染であり親友の小泉花陽と共に登校している。

 

「おはよう凜ちゃん」

 

「そういえば………かよちんはもう部活決めた?」

 

「え、え~っと……まだ、決まってないから……あ、明日までには決めるね」

 

「わかったにゃ!じゃあ、明日もう一回聞くね!」

 

「う、うん………」

 

花陽は凜の質問に少し顔を下に向けながら答える。入学して一ヶ月。もうそろそろ入る部活を決めないといけない。

 

(ごめんね、凜ちゃん。私………入りたい部活はあるんだけど……………)

 

花陽は入りたいと思っている部活が無いわけでは無い。だが、その部活に入るという一歩が中々踏み出せないのである。

 

「かよちん………もしかして、スクール―――」

 

『―――にゃお~ん♪』

 

「「ん??」」

 

そんな花陽を見て、もしかしたらスクールアイドルになりたいのではと思い、そう質問しようとした時、何処からか猫の鳴き声が聞こえてきた。反射的に二人はそちらに視線を向ける。

 

 

 

そこにいたのは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃお~ん♪」

 

『『『『『『『ニャア~♡♡』』』』』』』

 

数匹の猫に囲まれる………優木白羽の姿があった。

 

 

((………………………なんかいた))

 

 

その光景を見た瞬間、2人は咄嗟に身を隠す。

 

 

「凜ちゃん……………あれ、なんだと思う??」

 

「…………………………わかんない」

 

「…………………………だよね」

 

猫と年端もいかない男の子が戯れている。普通であれば微笑ましい光景なのだろうが、2人はその光景に若干引いている。その理由は、戯れている猫の数が尋常じゃないのだ!!今、白羽は10匹を超える猫に囲まれている。そんな光景を見て『なんで猫と喋れてるの?』とか『どうやったらそうなるの?』とかツッコミたくなり、2人は頭の上に???(はてな)を浮かべた。

 

「君たちは本当に可愛いですにゃあ」

 

『『『『『『『ニャア~♡♡』』』』』』』

 

「にゃあ………あっ!!もうこんな時間!?」

 

白羽は時計に目を向けると、もうそろそろ学校に向かわないといけない時間になっていることに気が付いた。

 

「そろそろ学校に行かないと………あれっ??」

 

『にゃあ~~ん』

 

そう言って立ち上がろうとした白羽だったが、赤い首輪のついた一匹の白猫が白羽のズボンにしがみついた。まるで『行かないで』とでも言いたげな瞳を浮かべて。

 

「ご、ごめんね。また遊んであげるから。ね?」

 

『にゃあ~』

 

白羽は困った表情を浮かべるものの、白猫は全然離れようとしない。そうしたやり取りを何回か続けていると、隠れて見ていた花陽達と白猫の目が合った。

 

『ニャアーー!!』

 

その瞬間、白猫は怯えたような声を出し、勢いよく花陽達がいない方向へと走り去っていく。他の猫たちもそれにつられて白羽の元を離れて行った。

 

「ん?いきなりどうして……あれっ?小泉さん?」

 

「「っ!!??」」

 

無意識的に猫たちが去っていった逆方向に視線を向けた白羽。その瞳に映ったのは、コソコソとこちらを観察している花陽と凜の姿だった。

 

「え~っと……………おはよう、優木君」

 

「おはようにゃ!!」

 

「お、おはよう、ございます…………見ました??」

 

「「…………うん」」

 

「~~~~~~っっ!!!??」

 

その言葉を聞いて、先ほどの行為を他者に、しかも知り合いに見られた事を理解した白羽は顔を真っ赤に染め上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優木君…………その、可愛かったよ」

 

「そうにゃ!!すごく可愛かったから、気にすることないにゃ!!」

 

「…………………………ソウデスカ」

 

あの後、恥ずかしがって悶絶した白羽を花陽がフォローして、何とか落ち着かせた。そして、折角会えたので凜が一緒に登校しようと提案し、3人で学校に向かっている。

 

 

しかし道中に何度も可愛いといわれて、白羽は羞恥心で死にそうになっていた。花陽と凜は褒めているつもりでも、白羽にとっては傷をえぐられているのと一緒だった。

 

 

―――お願いですから、もう可愛い可愛い連呼するのやめてください。僕のライフはとっくにゼロです

 

 

「で、優木君はなんであんなことになったにゃ?」

 

「あんな事??」

 

「どうやってたくさんの猫と仲良くなったにゃ?」

 

「どうやってと言われても………まず一匹の猫を見つけたので、『にゃあにゃあ』って言ってたら寄ってきたんですよ。それでその子と遊んでたら、いつの間にか周りに他の猫が集まってました」

 

「「すごっ!!」」

 

※白羽君は猫にもモテます

 

「えっ?そんなに驚きます?猫ってにゃあ~って言えば寄ってきますよね?」

 

「「寄ってこないよ!!??」」

 

白羽は昔から、犬や猫と言った小動物に懐かれやすく、猫はにゃあ~、犬はワンっといえば何故か寄ってくる。

 

「いいな~、凜も優木君みたいに猫と遊びたいにゃ」

 

「出来ますよ!!星空さんの猫パワーを使えば!!」

 

「猫パワーってなんにゃ!!??」

 

「今みたいに、語尾に『にゃあ』ってつけてれば自然と猫も寄ってきますよ!!」

 

「それは優木君だけにゃ!!」

 

「星空さんならなれます!!僕を超える猫マスターに!!」

 

「そんなマスター目指してないにゃああああ!!」

 

凜は白羽のボケにツッコみきれず、ゼェゼェと息を切らす。

 

「もう!優木君!!凜をからかわないでよ!!」

 

「あははは、すみません。星空さんといると楽しくてつい」

 

「もう!!優木君なんてしらないにゃ!!」

 

そう言ってそっぽ向く凜に対して、白羽は笑顔で謝っている。そんな仲の良い2人を見て、花陽は微笑ましいものを見るような表情を浮かべる。

 

(ふふっ、凜ちゃん凄く楽しそう)

 

白羽と凜が仲良くなったきっかけはファーストライブを終えた後、白羽が花陽と凜にお礼をしたことがきっかけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――数日前

 

 

ファーストライブから二日後。白羽はライブに来てくれた人たちへのお礼として、チョコクッキーを作った。

 

「よしっ!西木野さんは渡したから………次は小泉さん達だ!!」

 

白羽が最初にお礼を言いに行ったのは真姫だった。今回のライブで自分たちのオリジナルソングを披露できたのは真姫のお陰だ。そんな感謝の気持ちを真っ先に伝えたくて、白羽は真姫のいる音楽室に足を運んだ。

 

「でも………西木野さんに『…………誰??』って言われた時は泣きそうになったな」

 

真姫は白羽の姿を見て、一瞬だれか分からずにそう言ってしまい、白羽の心をえぐった。

 

―――帽子を取ったからって、そんなにわからないものなのかな??

 

真姫の一言にショックで倒れそうになる白羽だったが、気持ちを切り替えて一年生の教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

白羽が一年生の教室の扉を開けると、中にいた女生徒の視線を釘付けにした。そんな視線を無視して教室内を見渡していると、中にいた花陽と凜と目が合った。

 

「あっ!!小泉さん!星空さん!!」

 

探していた2人を見つけて、白羽は少し駆け足で花陽達の元まで駆け寄った。

 

「あの、実はこの前のライブのお礼を…………」

 

「「……………」」

 

「ん?…………あ、あれ?」

 

白羽は全然反応が無い事に首を傾け、疑問の表情を見せる。対して花陽と凜は、突然目の前に現れた白髪の少年を口をポカンと開けながら眺めている。

 

「え~っと……………どうしました??」

 

「「…………………………誰??」」

 

―――うん………もう僕泣く

 

今一番言って欲しくないセリフを言われて、白羽は手と膝を床に付けて落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんね。優木君って気づけなくて………」

 

「…………………………」

 

花陽は気づけなかったことを謝り、凜はまだ白羽の素顔を見て頭の整理がつかないのか、口をポカンと開けたまま放心している。

 

「い、いえ。いいんです」

 

―――そもそも帽子で顔を隠してたのは僕ですし

 

「そ、それで…………これを渡しに来たんです」

 

「クッキー??」

 

「はい。この前のお礼です。星空さんもどうぞ」

 

「ありがとにゃ!!」

 

(あ、凜ちゃん戻って来た)

 

「食べてもいいかにゃ?」

 

「はい!どうぞ」

 

白羽がそう言うと花陽と凜はもらったクッキーを口にした。その味に二人は目を見開いて驚く。サクッとした柔らかい生地。チョコの甘さを強調しているにもかかわらず、全然しつこくない味わい。まるでお店に売っている物なのではないかと錯覚するほどに完成度の高い代物だった。

 

「美味しいにゃあ~!!」

 

「う、うん!!すごい美味しいよ!」

 

「良かったです」

 

2人の反応を見て、白羽はそっと胸を撫でおろす。料理には自信があるものの、こうやって他人に料理を振舞う時は緊張する。

 

「これ、本当に優木君が作ったの??」

 

「はい。昨日の夜に作りました。これでも、料理には自信があるんですよ!!」

 

そう言うと、白羽は胸に右手を置き『ふんす!』と鼻を鳴らした。その姿に凜と花陽は微笑ましいものを見たように和んだ顔を見せる。

 

「ふぅ~~、ごちそうさまでした!」

 

((はやっ!!?))

 

いつの間にか凜は渡したクッキーを完食しており、満足そうな笑みを浮かべている。あまりにも速い完食に花陽と白羽は苦笑いを浮かべる。

 

「優木君、すっごい美味しかったにゃ!」

 

「いえ、こちらこそ、この前は本当にありがとうございました。良かったらまた作ってきましょうか??」

 

「ほんと!?また食べたいにゃ!!」

 

「ふふっ、わかりました。また持ってきますね」

 

白羽は嬉しそうな笑顔を浮かべ、また近いうちに作ってきてあげようと決意する。こんなにも嬉しそうな顔をされたら、作る側も作り甲斐があるというものだ。

 

「それじゃあ、僕は行きますね」

 

「優木君!!またにゃあ!!」

 

「バ、バイバイ」

 

白羽は2人に別れを言い、花陽と凜は笑顔で手を振り見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふふっ、あの時から凜ちゃん、優木君と学校で会うと手を振ったり、話しかけたりするようになったんだよね)

 

花陽は数日前にあった出来事を思い出していると、微笑ましい笑顔を浮かべる。

 

 

―――しかし、花陽は今の彼に少し違和感を感じていた。

 

 

(でも、優木君って………こんな子だったかな?)

 

花陽は横にいる白羽の顔を不思議そうな表情でチラ見した。ファーストライブの時にも感じた違和感。花陽が白羽に対して最初に抱いていた印象は物静かで落ち着いている男の子だった。

 

 

しかし、ファーストライブ時はそんな面影を感じなかった。とても一生懸命で、頑張る姿が印象的だった。

 

(何て言うか…………あの時の優木君は、すごく『男の子』って感じだった)

 

そして今、凜を揶揄ったり、ふざけて一緒に笑い合ったりしている姿にも違和感を感じていた。2人が仲良くなって距離が縮まったと考えれば合点がいくのだが、花陽は中々このもやもやとした違和感を消せずにいた。

 

「あの~、小泉さん?僕の顔に何かついてます?」

 

「へっ!?」

 

考えることに夢中になりすぎて、花陽は白羽の顔をガン見していることに気が付いた。

 

「かよちんさっきから優木君の顔ばっかり見てるにゃ。もしかして~~」

 

そんな花陽を見て、凜は白羽に気があるのではないかと考えニヤニヤした表情を浮かべる。

 

「ち、違うよ!ちょっと考え事してて!」

 

花陽は絶対誤解されていると感じ取り、顔を赤らめて否定する。

 

「え~~?ほんとかにゃ??」

 

「もう凜ちゃん!!」

 

「顔赤くなってるかよちん可愛いにゃ~~!」

 

 

(仲いいなこの2人)

 

 

2人のやり取りを見てほっこりした気持ちになる白羽。

 

「あ、じゃあ僕はこっちなんで」

 

「う、うん……………またね」

 

「優木君バイバ~イ!」

 

3人で楽しく登校していたら、いつの間にか学校についており白羽は2人に挨拶して、自分の教室へと走って行った。

 

「…………………………」

 

「じゃあ凜たちも……………かよちん?」

 

花陽は去って行く白羽の背中を何か言いたげな表情を浮かべながら眺めている。それに気づいた凜は不思議そうな顔で花陽の名を呼ぶ。

 

「か~よちん?」

 

「……………へ?あっ!ご、ごめんね。私たちも行こっか」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はぁ~~………今日も相談できなかったなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

――――昼休み

 

 

 

 

「…………………し、失礼します」

 

午前の授業を終え、昼食を食べようとした白羽は前田先生に職員室に呼び出された。最近忙しくて授業中にウトウトすることが多くなってしまっていたので、怒られるのではないかと不安な気持ちで白羽は職員室の扉を開けた。

 

「前田先生、何の用ですか?」

 

「ああ、昼休みにごめんなさいね。実は優木君にお願いがあるの」

 

「わかりました。引き受けます」

 

「うん……………まだ何も言ってないわよ???」

 

「先生にはお世話になってるので、よっぽどの事じゃなきゃ引き受けますよ??」

 

そう言って白羽は子供らしい純粋な笑顔を見せる。その言葉を聞いて職員室にいた先生たちは暖かい気持ちになり…………………………

 

(((((良い子だわ~~~)))))

 

……………と、全員思った。

 

「ありがとう。それで肝心のお願いだけど、学院の生徒会のお手伝いをお願いしたいの」

 

「えっ?が、学院のですか??」

 

白羽は前田先生の発言に首を傾げた。当然だ。()()の生徒会ならまだしも、()()の生徒会の手伝いを何故わざわざ中学生の自分に頼むのかわからない。

 

「ええ、実は人手が足りないそうで…………」

 

「それは分かりました。でもなんで僕なんですか?」

 

「他の子は学院に行くのは気まずいだろうから、よく学院に行っているあなたにお願いしたいの」

 

(ああ、なるほど。わざわざ学院の方に行く生徒なんて僕しかいないもんね)

 

「それと、生徒会の副会長の人が是非ともあなたに来て欲しいと言ってて」

 

(………………………東条さんが???)

 

希がなんで自分を指名したのかわからず首を傾げる白羽だったが、白羽はすぐに考えることを辞めた。

 

…………………………どうせ考えても、あの人が何を考えてるかなんてわからないからだ。

 

「………………わ、わかりました」

 

白羽は希が自分を指名したことで何か嫌な予感を感じ取るが、先生の頼みを断るつもりは無いので承諾する。

 

「ありがとう。それじゃあ放課後に――――」

 

「―――呼ばれてないのにジャジャジャジャ〜ン♪

 

((うわぁ〜〜、めんどい奴()が来た………))

 

突然の桜の登場に、白羽と前田先生は心の中でため息を吐いた。なぜなら、この子が来たら絶対めんどくさい事になると二人は理解しているからだ。

 

「話は聞かせてもらったわ!!その手伝い、私も行きます!!」

 

「桜……………一体いつから聞いてたの??」

 

「しろはっちが『前田先生、何の用ですか?』って言った所から」

 

 

――――最初の最初じゃないか!!

 

 

「いいですよね?前田先生!!」

 

「まぁ……………」

 

(優木君なら…………柏木さんの暴走を止めてくれるはず)

 

「人数は多い方があちらも助かると思いますので、大丈夫だと思います」

 

「ちょ、ちょっと先生!!??」

 

「やったぁ~~~!!しろはっちと学院行ってみたかったんだよね!」

 

同行を許可されたことで桜はガッツポーズで喜んでいるが、白羽は絶対めんどくさい事になると思い頭を抱えた。

 

「じゃあ二人とも、放課後よろしくお願いします」

 

「はい!!了解です!!」

 

「…………………………はい」

 

 

―――大変な事にならないといいけど……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――放課後

 

 

そしてなんやかんやあって授業が終わり、白羽は桜を連れて学院の校舎を訪れている。

 

「ねぇ、やっぱり僕だけでいいって」

 

「なんでそんなに嫌がるのよ!!迷惑かけないようにするって……………多分

 

(………………………不安だ)

 

桜は頭がよくて手際もいいし、頼りにはなるが、たまに暴走するから白羽は不安な気持ちでいっぱいになっていた。

 

「それに、μ'sの人達にも会ってみたいしね♪」

 

 

――――ああ、そういえば、まだ会ってないもんね

 

 

桜は以前から穂乃果達に興味があり会いたいと思っていたのだが、タイミングが無く結局会えずにいる。

 

「はぁ~~~、分かった。仕事が終わったら会わせてあげるから、大人しくしててね」

 

「するする!いい子にしてるから!」

 

桜の言葉を信じて白羽は生徒会室に向かった。

 

「そういえば、今から会う生徒会の人とは知り合いなんだよね?」

 

「う、うん……………まぁ、ね」

 

「あれれ?もしかして嫌いなの??」

 

「いや、そうじゃなくて………実は――」

 

白羽は自分と希、そして絵里との関係性を事細かに説明する。

 

 

 

 

 

 

「…………………と言うわけです」

 

「なるほど、その生徒会の会長さんとは仲良くなりたかったけど、ギスギスした関係になってしまったと。それで副会長さんは何を考えてるかわからない人で、この人とも仲良くなりたいと??」

 

「まぁ、そういう事です……………」

 

「ふ~~~~ん」

 

「…………………………何??」

 

「いや、話を聞く限り、亜里沙さんのお姉さん。絢瀬絵里っていう人は好きになれないって思っただけよ」

 

「えっ……………な…なんで?」

 

「言動を聞いた限り、その人が学院を救いたいって事は伝わったわ。でも、()()()()()()()()。周りも、やるべき事も」

 

「………………………」

 

「私にはそのことでイラついて、しろはっち達の行動を頭ごなしに否定しているように感じるわ」

 

「………………………」

 

 

白羽は桜の言葉を否定も肯定もせず、ただ顔を下に向け、黙って聞いているだけだった。

 

「正直、しろはっちがなんでその人と仲良くなりたいって思ってるのか理解出来ないわね。そんな人間と関わる価値は――――」

 

「―――やめて!!!

 

「っ!!?」

 

白羽は閉じていた口を開き、桜が言ってはいけない事を言う前に言葉を遮る。その声と表情に、一瞬、桜は気圧されてしまった。

 

 

「お願い…………………やめて」

 

顔を下に向けながら、白羽は桜に懇願する。今にも泣きそうな声からは『もうこれ以上、あの人を侮辱しないで欲しい』という思いがしっかりと乗せられていた

 

 

白羽が絵里に対して抱いている印象は、優しくて良い人。どれだけ絵里に自分達の活動を否定されようとそれは変わらなかった。そんな人が、自分が仲良くなりたいと思っている人が貶されている。それは、白羽にとって我慢できないものであった。

 

「ごめん。言い過ぎたわね………本当にごめんなさい」

 

「…………………うん。お願いだから、もうやめて」

 

「は~い♪私はもう絶対!しろはっちの友達を侮辱しません!!」

 

「……………………うん。ならいい」

 

「あ!ごめん、その絢瀬さんとは友達じゃなかったわね。しろはっち嫌われてるんでしょ??」

 

「……………う”っ」

 

「あ、嫌われるっていうか…………敵対してるんだから、目の敵(めのかたき)にされてるんじゃない??」

 

「……………グハッ!!」

 

「好感度……めちゃくちゃ低いんじゃない?」

 

「……………ガハッ!!」

 

「絶望的ね♪仲良くなるの!」

 

「もうやめてください!!これ以上現実を突きつけないでください!!」

 

桜の容赦なしの口撃(こうげき)に白羽は満身創痍になりながらも土下座で許しを乞う。今のところ、白羽が絵里と仲良くなるのは難しい。そんな現状は分かっているのだが、他人からそこまでズバズバ言われると流石に傷つく。

 

「あはははっ!!冗談冗談!さてと、おふざけもここまでにして生徒会室へLet's Goよ!!」

 

そう言って桜は小走りをしながら生徒会室へと向かう。そして白羽は少し呆れて微笑み、桜の後を追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()……………か」

 

桜を追いかけている途中、白羽はそっとそう呟いた。それは、先ほど桜が絵里に向けて言った言葉。白羽はなぜかその言葉が頭から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、2人は目的地である学院の生徒会室の前に着いた。

 

「あの……すみません」

 

「入ってええよ」

 

白羽が生徒会室の扉をノックすると、中から希の声が聞こえ、二人は生徒会室に入る。

 

「「失礼します」」

 

「優木君、わざわざありがとうな…………ん?その娘は??」

 

「え~っと、僕のクラスメイトなんですけど……」

 

「柏木桜って言いまーす!!しろはっちと一緒にお手伝いに来ましたー!」

 

「ふふっ、元気な子やね」

 

桜はテンション高めで希に自己紹介をする。それを聞いた希はニッコリとした笑顔を浮かべて応える。

 

「ありがとう、それじゃあこの資料を整理してくれる?」

 

そう言って希は目の前の机に資料を乗せる。

それも大量の………

 

「結構量あるんやけど、大丈夫?」

 

「はい。大丈夫です!」

 

「私としろはっちなら楽勝ですね」

 

希が置いた資料の量はかなり多いものだったので、白羽は桜がついてきてくれて本当に良かったと思い、心の中で深く感謝した。もしこの量を一人でやることになっていたらと思うと冷や汗が止まらない。

 

「ごめんね。ほんとはウチとエリチの仕事なんやけど、人手が足らんくて…………」

 

「気にしないでください」

 

「そうです!困った時はお互い様ですよ」

 

希は2人に悪い事をしてしまったという雰囲気を見せる。それを見た白羽と桜は気にしていないことを伝えフォローを入れる。

 

「そう?ほな、ウチは仕事に行くから、コレ(資料整理)はお願いするな」

 

「「は~~い」」

 

そう言って希は2人に手を振り、生徒会室を出て行った。

 

「さてと……それじゃあパパっと片付けよっか!!」

 

「…………………………」

 

「…………………桜??」

 

希が出て行ったあと、早速仕事に取り掛かろうとする白羽だったが、桜はなぜか扉から目を離さなかった。

 

「お~~い、さ~くら。もしも~し」

 

「ねぇ、しろはっち…………あの人がしろはっちの言ってた東条さん、なのよね??」

 

「う…………うん。そ、そうだけど」

 

いつになく真剣な表情を見せる桜に、白羽は少し戸惑いながら応える。

 

「あの人…………………………ヤバいわよ」

 

「な……………なに、が??」

 

異様な雰囲気に包まれた桜に対して、白羽は少し緊張感を持ちながら質問する。

 

 

…………一体何がヤバいのか??

 

 

…………何故、そんなに真剣な表情を浮かべているのか?

 

 

そう質問したいのをグッと抑え込み、白羽は桜が口を開くのを待つ。

 

 

「あの人…………………………」

 

 

桜は、白羽の方に振り返ると同時に口を開く。その姿を見て、この後どんな言葉が出てくるのか分からず、白羽は思わず息を吞む。

 

 

 

そして、桜の口から飛び出したのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………めっっっっっちゃ、おっぱい大きいわ!!」

 

 

 

…………(ただ)のセクハラ発言であった。

 

「ブッフォ!!!ゲホッゲホッ!!」

 

白羽は帰って来た言葉があまりにも変化球だったため、思いっきり吹き出してしまった。当然だ、あんなに溜めておいて何を言うのかと思えば、最低な事を言い出したのだから。

 

「桜!?ちょ、何言ってんの!!?」

 

「だって思わない?あんなに大きい人そうそう居ないわよ?」

 

 

―――いや、そ、そりゃ……そうかもしれないけど

 

 

白羽は顔を茹でダコのように赤らめながら、密かに心の中で桜の言葉を肯定した。

 

「う~~~~ん、私も結構自信あるんだけど、あの人にはちょっと負けるわね」

 

男子(ボク)の前で自分の胸を揉まないでくれる!!?」

 

「私が見たところ、あの人のスリーサイズは上から90・60・82ってところかしら」

 

 

―――ああああああ!!!聞いてない聞いてない!!僕は何も聞いてない!!僕は東条さんのバストとウエストとヒップのサイズなんて知らなぁぁぁぁい!!!

 

 

白羽は桜がスリーサイズを言う直前に耳を塞いで聞こえないようにした。しかし音を完全に遮断できるわけでは無いので、何となく、ちょびっとだけ聞こえてしまった。そのことで罪悪感を感じ、必死に頭を振って忘れようとしている。

 

「あ、ちなみに私のスリーサイズは上から――むぐっ!?」

 

「―――言わなくていいわぁぁぁぁ!!!」

 

とんでもない事を言い出す前に、白羽は桜の口を手で塞ぐ。そんな事をしていると、白羽は疲れてしまい、ゼェゼェと息を切らす。

 

「それじゃあ、ちょっと行ってくるわね」

 

疲れて肩で息をしている白羽に対して、桜は親指を立てながらドアノブに手をかける。

 

「ハァ……ハァ………ん?ど、どこ行くつもり??」

 

「決まってるでしょ………………あの人の胸を揉みに行くのよ!」

 

 

―――キメ顔で何言ってんの!!??

 

 

桜はまるで『キリッ』とでも効果音がつきそうな良い顔でそう言った。

 

「いやいや!!そんな堂々とセクハラ予告宣言をするな!!」

 

「大丈夫よ!!多分あの人なら『う~~ん、貴女のそのふくよかな胸をワシワシさせてくれたら、触ってもええよ♪』って言うと思う!!」

 

「そんな事言うわけ!!…………………………………言うかもしれない、あの人なら」

 

 

―――ていうか、ドンピシャでそのセリフ言うと思う

 

 

白羽は今まで見てきた東條希と言う少女の性格を頭の中で整理してみると、彼女ならそう言っても不思議じゃないと思い、頭を抱えた。

 

「そんじゃ!行ってくるわねぇ!!!」

 

そう言って、桜は仕事と呆れた表情を浮かべる白羽を残して、生徒会室を出て行った。残された白羽は追いかけようと思ったのだが、すぐに考えを改めて椅子に腰掛ける。

 

 

 

 

―――何となくだけど………分かる。ここで追いかけなかったらめんどくさい事になるんだろうな。でも、追いかけたら追いかけたでもっとめんどくさい事になる。

 

 

「はぁ~~~~~、仕事しよ……………」

 

白羽は頭を抱えると同時に、過去一長いため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

――――10分後

 

 

「おかえり。終わったの??」

 

「…………………………ええ」

 

10分後、桜は生徒会室へと戻って来た。白羽は戻って来た桜と目線を合わさずに資料を差し出し『早く仕事しろ』とでも言いたげな態度をとる。

 

「感想……………聞く?」

 

「聞かない……………早く仕事して」

 

「ヤバかったわ……服の上からでも伝わる柔らかさ」

 

「……………話聞いて?」

 

白羽の言葉を無視し、桜は震えている両手を見つめながら話し出す。その顔は今まで出会ったことがない得体の知れないものを見たような表情だった。

 

「触った瞬間に指が沈んで行くあの感触。手から溢れそうになるほどの大きさ。あれこそまさに母性と言う言葉が具現化したものよ」

 

「ちょっと一旦黙ろっか??」

 

「至福、感動、喜び、幸せ……………そんな言葉じゃ表せない程の触り心地だったわ」

 

「…………………………」

 

全然話を聞いてくれない桜に、もはや呆れを通り越して諦めがきてしまい、白羽は耳を塞いで仕事を再開した。流石の白羽でもこれ以上は付き合ってられない。

 

「しろはっち、私分かったわ……………『何が分かったの?』って聞いてくれる?」

 

「聞きたくないけど……………何が分かったの?」

 

白羽が呆れながらそう言うと、桜は震えている両手に視線を向ける。その顔はさっきまでと打って変わって満足そうで、幸せな笑みだった。

 

「私の両手は、この日の為に生まれてきたものだったのよ」

 

12年間支えて貰ったその両手とその両手を作っていただいたご両親に今すぐ謝れ

 

桜のバカみたいな発言にツッコんで、白羽は今日何度目かわからないが、もう一度頭を抱えた。

 

「ねぇ、しろはっち……………」

 

「…………………………何?」

 

「後で会うμ'sの人達のおっぱいも揉んでも――――ひっ!!」

 

「―――――――――アハッ☆」

 

「サーセン、まじ調子コキました。貴方様の大切な人達には手を出しません。だから笑顔で()()()をこっちに向けないでください!!」

 

震えながら頭を下げている少女に向かってサイコパスのような笑顔で消火器を向ける少年。事情を知らない人間がみたら即通報案件な光景が誕生した。

 

 

 

 

 

「っていうか………なんで急に……そ、その………む、胸の事なんかに興味を示したの?」

 

白羽は恥ずかしそうな表情を見せ、少し口ごもりながらそう聞いた。純情な白羽はそういう話題が苦手なので『胸』という単語を口にするのも恥ずかしい。

 

「えっ??別に急じゃないわよ??男子だけじゃなくて、女の子だって大きなおっぱいは好きだし」

 

「そ、そうなんだ……………」

 

 

――――聞かなきゃよかった…………

 

 

「この前、雪穂さんと亜里沙さんのも揉んだわよ」

 

「何してんねん!!!???」

 

桜の急なカミングアウトに驚いた白羽は席から立ち上がり、希の喋り方がうつってしまったのか、思わず関西弁でツッコミを入れる。

 

「亜里沙さんって着瘦せするタイプだったみたいで分かりづらいけど、結構すごかったわよ!」

 

「~~~~~っ!!!???」

 

その言葉を聞いた瞬間、白羽は顔を真っ赤にして耳をふさいだ。これ以上聞いたら亜里沙にも悪いし、次に会った時に気まずくなってしまう。

 

「まぁ、雪穂さんは見た目通り貧乳だったけど」

 

「それ絶対本人の前で言うなよ??」

 

揉ませてもらっておいてそんな言いぐさをする桜に呆れて、雪穂に同情の念を送る白羽であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「終わったぁぁ~~~~!!!」」

 

あれから、白羽は何とか桜の暴走を止めることに成功した。ブレーキを踏んだ桜はようやく仕事を始め、みるみるうちに仕事を片付けていった。

 

「お疲れさま桜。結構大変だったね」

 

「うん。でも、なんとか一時間以内で終わらせられたわね!」

 

2人がやったのは常人であれば2時間近くかかるであろう作業だったが、2人共手際が良かったので何とか早めに終わらせることが出来た。

 

「っていうか、桜が遊ばなかったらもっと早く終わったのに」

 

「あはは、ごめんね。ふざけすぎちゃった♪」

 

さっきは流石にふざけすぎたと反省し、桜は頭をかきながら白羽に対して謝罪する。

 

「でも、しろはっちは胸とかに興味ないの?年頃の男子ならよだれたらしながら感触を聞くところでしょ?」

 

 

―――男子を何だと思ってるの??

 

 

「他の男子はともかく、僕はそういうのに興味ないから…………」

 

「しろはっちってそういうところあるよね~」

(ま、それがいい所なんだけどね~)

 

桜は少し微笑みながらそう答える。桜の言う通り、白羽は思春期の男子にしてはそういう欲が全く見られない。周りに女しかいない状況でも、全くそういう欲望を見せない紳士的な行動をいつも取っており。それによって、最近は中学の女子から密かに好意を持たれ始めている。

 

(やっぱり……………女が苦手ってことも関係してるのかな??)

 

桜は口元に手を当てながら考えていると、やはり白羽の苦手意識がそうさせているのではないかと思い始めた。

 

「それじゃあ、行こうか。東條さんから『終わったらそのへんに置いといて』って言われたし」

 

「OK♪じゃあ、いざ!μ'sの元へ!!」

 

仕事が終わったことで桜がまたテンションを上げたことに白羽は苦笑いを浮かべる。また変な行動を起こさないか?穂乃果達に失礼なことを言わないか?などと考えていると……………

 

「っとその前に…………お客さんが来たみたいよ」

 

「……………えっ??」

 

突然、桜はそう言いながら生徒会室の扉の方に目を向けた。白羽は桜の言葉に疑問の表情を浮かべる。そして、彼女につられて扉の方に視線を向けた。

 

すると突然、生徒会室の扉が開く。

 

「………ん??」

 

白羽は希か絵里が来たのではないかと思ったが、入って来たのは意外な人物であった。

 

「失礼しますにゃ!!」

 

「星空さん??」

 

「ああ!優木君、やっと見つけたにゃ!!」

 

入って来たのは今朝一緒に登校した凜であった。彼女は白羽を見つけると嬉しそうな表情を浮かべる。そして、生徒会室にもう一人入ってきた………

 

「し、失礼します……」

 

「小泉さんまで、一体どうし………あ”っ!!」

 

白羽は普段の綺麗な声からは想像もつかない程の汚い声を出すと同時に、比喩でも例えでもなく、音速レベルのスピードで花陽と凜を生徒会室の外に追い出した

 

 

―――というより、逃がした。

 

 

その理由は、隣にいる変態()が花陽を見て、目から『ギランッ』っという効果音を出し、彼女をロックオンしたことに気づいたからである。

 

優木君!?あ、開けてにゃぁぁ!!

 

ど、どうしたの?優木君?

 

部屋の外では凜がドアをドンドンっと叩き、花陽が心配そうな声を出しているが、白羽は今それどころではない。

 

「桜……………今何言おうとした??」

 

「小泉さん??だっけ?あの人のおっぱいを―――」

 

「―――ダメェ~~!!」

 

白羽は言い終える前に桜の言葉を遮った。そして扉の前に陣取り、両手を広げて絶対に近づかせないような体勢を作る。

 

 

―――どうしよう!?何とかして小泉さんを守らないと!!

 

 

※さりげなく凜を除外しているあたり、白羽もちょっと残酷。

 

 

「ええぇぇ~~、いいじゃん!!東条先輩みたいに頼んでみたら、案外イケちゃうかもだし」

 

「小泉さんはそういうキャラじゃないの!!」

 

「キャラって…………じゃあ、どんなキャラよ?」

 

「小泉さんは、ちょっと自分に自信が無くて、いつもオドオドしてて、集団になるといつも端っこにいるような内気で物静かな女の子………かな?」

 

「ちょ、ちょっと……そんなにディスったら可哀そうよ」

 

「ディスってないよ!!??」

 

 

―――えっ?今のってディスってんの??

 

 

そんなつもりはさらさら無かったのだが、桜の言葉にほんの少しだけ不安になる白羽であった。

 

「なるほど、つまりしろはっちはあの人の事そんな風に思ってるんだ。引くわ~~~」

 

「ち、違うよ!!!悪口で言ったんじゃないよ!!!確かに、小泉さんは少し気が弱い所があるけど………でも!そこが魅力的っていうか……」

 

「ふむふむ………続けて」

 

「友達思いで、優しくて………ああもう!!とにかく、小泉さんは()()()()()()()()女の子なの!!」

 

 

―――ぼふんっ!!!

 

 

「「ぼふん???」」

 

白羽が半ばヤケクソになりながらそう言った瞬間、部屋の外から何かが爆発したような音が響いて来た。2人は反射的に音が聞こえてきた扉の方に視線を向ける。

 

((なんか爆発した??))

 

白羽と桜は戸惑いながら、疑問の表情を浮かべる。

 

 

 

「と、とにかく!!小泉さんはそういう人じゃないの!!桜みたいにおちゃらけな性格で、いつもテンションMAXで、パワーと勢いでなんでもゴリ押しするような女の子じゃないんだよ!!」

 

「え、ちょ、なんで急に褒めるのよ?照れる」

 

 

―――ディスってるんだよ………

 

 

『さすがに言い過ぎたかな?』と思ってすぐに謝る準備をしていた白羽だったがその心配は杞憂に終わった。しかし、皮肉が通じないので呆れたような目で桜を見ている。

 

「もう!とにかく小泉さんには手を出さないで!!」

 

「むぅ~~~、分かったわよ」

 

そう言って桜は心底残念そうな表情を浮かべる。それを見た白羽は『どんだけ揉みたかったの??』っと思い呆れるような目を向ける。

 

「はぁ~~、さてと………お二人ともすいません」

 

白羽は一つ深呼吸をした後、扉を開けて二人を中に入れようとした。しかし、そこには花陽の姿が無かった。

 

「あれ?小泉さんはどうしたんですか??」

 

「あ、あはは…………え~っと、かよちんは逃げちゃったにゃ………」

 

「はい?に、逃げた?何でですか?」

 

「き、気にしないであげてほしいにゃ。それより、優木君に一つお願いがあるにゃ!」

 

「は、はい……………なんですか?」

 

凜が何かを誤魔化すように突然話題を切り替えた。そんな凜の姿を見て、白羽は首を傾げて疑問の表情を浮かべる。しかし、その後ろですべてを理解した少女が一人。

 

(ああ!な~~るほどね~!!)

 

心の中でそう呟き、桜は指をパチンッと鳴らす。先ほどの白羽の言葉。突然鳴り響いた『ぼふんっ』というありきたりな効果音。

 

(フフフッ……この部屋、防音じゃないから大声で話すと外に会話が聞こえちゃうのね!!)

 

それらの情報を整理して、桜は何が起きたか完璧に理解した。そして、この後絶対に面白い事になると確信し、密かにほくそ笑む

 

「え~っと、それは行きながら説明するにゃ!!とにかく一大事で、()()()()()()にゃ!」

 

「っ!!………わ、わかりました。行きます!!」

 

「ほんと!?やったにゃぁぁ!!」

 

本当はこの後すぐにμ'sの練習に行かなくてはいけない。だが、助けてほしい。そう言われてしまえば、この少年は助ける以外の選択肢を脳みそに持っていない。

 

「ちょっとしろはっち!?μ'sの練習はいいの?」

 

「ごめん、すぐ戻るから。桜は屋上に行って、穂乃果さん達に事情を説明してきて」

 

「はぁ~~~~、分かったわ。行ってらっしゃい」

 

桜は白羽に対して感心と同時に呆れた感情を抱き、深いため息を吐いた。友人がお人好しなのは知っていたが、いざ目の前にするとつくづく損する性格だなっと思う。

 

「うん!行ってくる…………くれぐれも変な事言わないでよ??」

 

「分かってるわよ。ほらっ、はやく行きなさい」

 

桜がそう言うと、白羽は凜に手を引っ張られて行ってしまった。一人になった桜はおもむろに上を見上げ……………

 

「さてと…………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………変な事言いまくっちゃお♪」

 

そう言って、鼻歌交じりにスキップをしながらμ'sのいる屋上へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここね?こんにちは~~」

 

「「「えっ??」」」

 

白羽に事前に説明されていた道をたどり、桜は屋上にやって来た。そして、挨拶しながら屋上の扉を開けると、穂乃果達3人がそちらに視線を向けた。

 

「え~っと、あなた達がμ'sでいいんですよね?」

 

「うん、そうだよ。あっ!もしかして入部希望!?」

 

桜がμ'sのメンバーになりたいのだと勘違いした穂乃果は桜の手を握り、じりじりとにじり寄っている。

 

「歓迎するよ!μ'sへようこそ!!」

 

(しろはっちの言ってた通り……………変な人ね)

 

「穂乃果ちゃん……………落ち着いて」

 

「制服をよく見てください」

 

ことりは苦笑いを浮かべながら穂乃果を落ち着かせようと肩を掴む。そして海未が頭を抱えながらそう言うと、穂乃果は桜の制服に視線を向ける

 

「制服??…………あっ」

 

ようやく桜が中学生だと気付いたようで、穂乃果はあからさまにがっかりした様子を見せる。

 

「そ、そんなぁ〜…………可愛い子が来てくれたと思ったのに…………」

 

「ふふっ♪ありがとうございます」

 

穂乃果の言葉に気を良くして、桜はにっこりと笑った。

 

「すみません。穂乃果が突然……それで貴女は??」

 

「初めまして!私は柏木桜って言います。しろはっちの友達で、いつも仲良くさせてもらってま~す!」

 

 

(((し………しろはっち!!!??)))

 

 

穂乃果達3人は馴れ馴れしい呼び方をするこの少女も白羽を狙っているのではないかと思い、警戒心をむき出しにする。

 

「「「……………」」」

 

「あははは、そんな警戒しないでくださいよ♪」

 

「す、すみません……それで、何の御用ですか?」

 

「貴女が園田海未先輩ですね?」

 

「は、はい。そうですが……………」

 

「なるほど………ふむ、ふむふむふむ」

 

桜はそう言って海未の周りを歩き始める。そして、ジロジロと観察するような視線を向ける。

 

「な、なんですか!?」

 

「……………それで、貴女が南ことりさん」

 

(無視!!??)

 

海未の疑問を無視して桜はことりに視線を向ける。

 

「う、うん………そうだよ」

 

「………ふむ、ふむふむふむ」

 

「え~っと………あ、あははは………」

 

桜は先程、海未にしたのと同じようにことりの周りを歩きながら観察を始める。わけのわからない行動をする子に対して、ことりは苦笑いを浮かべることしか出来ない。

 

「最後に、貴女が高坂穂乃果さん」

 

「うん、そうだよ!さっ!来ていいよ!」

 

今までの流れから自分も観察されると確信した穂乃果は、腕を広げて受けいれる体勢を作る。まるで『Come on!』とでも言いたげな表情で。

 

「あ、すいません。先輩はいいです」

 

「なんで!!??」

 

しかし、桜は片手を前に出して首を振る。帰って来た予想外の言葉に穂乃果は声を出して驚き、それを見た桜はクスクスと笑みを浮かべる。

 

「フフッ、すみません。おふざけがすぎましたね」

 

「い、いえ……それで、さっきの続きですが、何の用なんですか?」

 

「ああ、実は――――」

 

 

 

 

 

 

「――――――というわけで、しろはっちは遅れるそうです」

 

桜は穂乃果達に白羽が遅れる事とその訳を伝える。

 

「なるほど、白羽らしいですね」

 

「うんうん!白羽君っていつも先生の手伝いとかしてるよね〜」

 

「学院の先生達の間でも有名だもん」

 

それを聞いた3人は少し微笑むと同時に『白羽だから仕方ない』っとでも言いたげな表情を浮かべる。

 

「穂乃果にも見習ってもらいたいです」

 

「ひどいよ海未ちゃん!!?私だって頼まれれば手伝うよ!!」

 

「よく手伝いを頼まれる白羽と全く頼まれない穂乃果。その時点で先生方からの信頼に差がありますね」

 

「海未ちゃんが最近ひどいよ~~!!」

 

海未の中々にひどい言葉を受けた穂乃果は体育座りで拗ねてしまった。それを見たことりは穂乃果を必死に慰めている。

 

「もう!白羽君が帰ってきたら海未ちゃんにひどい事言われたって言いつけるから!!」

 

「ちょっ!白羽を出すのは卑怯ですよ!!」

 

「ふんっ!それで白羽君に慰めてもらうもん!」

 

「ズルいですよ穂乃果!!」

 

「まぁまぁ、2人共落ち着いて。柏木ちゃんもいるんだし……………」

 

「はっ!!す、すみません………みっともないところを」

 

「いえいえ!気にしてませんよ♪」

 

 

 

(しろはっちの言う通り。本当に仲が良い人達ね)

 

 

桜は3人の事を見ていると本当に仲が良いのだと感じ取った。白羽から聞いていたがここまでとは思わなかった。

 

 

(なるほど……………しろはっちが懐いたのも分かるわね)

 

 

桜は観察したことと今までのやり取りを見て、穂乃果とことりと海未。μ'sの3人がどんな人間なのかを大体だが把握した。

 

 

「ねぇねぇ!柏木ちゃん!」

 

「桜で良いですよ?しろはっちもそう呼んでますし」

 

「じゃあ桜ちゃん!よかったら中学校にいる時の白羽君の事教えてくれない?」

 

「あ、それ私も聞きたい♪」

 

「わ、私も!!」

 

「ええ、いいですよ。じゃあ、まずは―――――」

 

桜は穂乃果達の提案を承諾し、中学校での白羽の様子を話し始めた。自分達が知らない白羽を知れると思い、穂乃果達はワクワクさせながら桜の話に耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、3人は練習することを忘れて、桜との交流を楽しんだ。まぁ、会話の内容はほとんどが白羽の事なのだが。そして、せっかくの機会なので桜は『μ'sの歌とダンスが見たい』と言った。その提案に穂乃果とことりはノリノリで承諾する。しかし、海未だけは恥ずかしいと言って断ろうとしていたが、桜に『踊ってくれたらしろはっちの寝顔写真あげますよ』っと言われてしまい『やります!』と即答した。

 

 

ちなみに、寝顔写真は昼休みに居眠りしている白羽を桜が許可なく隠し撮りした物である

 

※良い子はマネしないでください

 

 

 

「「「♪~~~~♪~~~」」」

 

3人が披露したのは数日前のファーストライブで歌ったSTART:DASH!!。と言うより、まだμ'sはこの歌しか歌えないので当然なのだが。

 

「…………………………」

 

桜は歌っている穂乃果達を真剣な表情で見ている。

 

「ハァ……ハァ………桜ちゃん、どうだった!?」

 

数分後、穂乃果は歌い終えると桜に感想を聞くために詰め寄った。それを見た桜は真剣な表情から一転、いつものような笑顔を穂乃果に向ける。

 

「ええ、凄かったです!私μ'sのファンになっちゃいました!!」

 

「ホント!?やったよ海未ちゃん!ことりちゃん!私達にもファンが出来たよ!?」

 

「ええ、やりました!」

 

「うん♪」

 

桜の言葉に穂乃果だけでなく、海未とことりも嬉しそうな表情を浮かべる。初めてファンが出来たとなれば、誰だって嬉しいものだ。

 

「あっ!すみません。もうそろそろ失礼します」

 

「えっ?もう?」

 

「はい。この後用事があって。また来ていいですか?」

 

「うん!もちろん!」

 

「いつでも来てください」

 

「ことりも桜ちゃんがまた来てくれるの楽しみにしてるね♪」

 

「ありがとうございます。じゃあ、失礼します」

 

そう言って、桜はドアを開けて出て行こうとしたが、突然動きを止め、穂乃果達の方に再び視線を向ける。

 

「あっ!そういえば、西木野真姫さんって知ってます?」

 

「えっ?う、うん。知ってるよ」

 

突然、桜の口から真姫の名前が出たことで3人は驚いた表情を見せる。

 

「実はこの前……………………その人としろはっちがデートしてましたよ!!」

 

「「「…………………………………は?」」」

 

 

 

 

桜がそう言った瞬間、その場にはピシャリという効果音が流れ、屋上の空気が凍った。

 

 

 

 

 

 

「それでは、失礼しま〜す♪」

 

ニコニコしながらそう言って、桜は今度こそ屋上から出て行った。そして、残された3人は怒りと嫉妬がまじりあったような表情を浮かべる。

 

 

―――知らない。

 

―――そんなの知らない。

 

 

白羽と真姫が最近仲良くなっている事は穂乃果達も知っている。正直、そのことにやきもちは焼くが、いくら3人でも白羽の交流関係まで口を出すつもりは無い

 

 

 

しかし、自分達に秘密でデートしたことは許せない。本来、白羽が誰とデートしようが自由。許す許さないの話ではないのだが、それでも、やはりムカつく。

 

 

※乙女心は複雑なのである。

 

「海未ちゃん、ことりちゃん。白羽君が戻って来たら、3人でお説教しよっか♪」

 

穂乃果は以前、ことりが見せていたような黒い笑みを浮かべ…………

 

「フフフッ、そうですね。じっくり話を聞かせてもらいましょう♡」

 

海未は般若のような表情を見せ…………

 

「シロ君…………ことりのおやつにしちゃお♡」

 

ことりは目の焦点が合っておらず、虚空を見つめながらなんか怖い事を呟いている。

 

 

今の3人は完全にアイドルがしちゃいけない顔をしている。

 

 

この瞬間、優木白羽は今日、五体満足で家に帰れないことが確定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、屋上を出て行った柏木桜は…………

 

 

「う~~~~~ん、あれがμ'sかぁ…………あれだけしろはっちが褒めるから、楽しみにしてたけど―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――大した事ないわね」

 

 

桜は普段出している明るい声や表情ではなく、深く冷たい声色、そして心底つまらなそうな表情でそっとそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

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