純白の少年とスクールアイドルの物語   作:ハトル

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猫は可愛い!! 後編

 

 

前編のあらすじ………

前田先生からの依頼で、学院の生徒会の手伝いをすることになった白羽。希から頼まれた仕事も終わり、μ'sの練習へ行こうと思った矢先、星空凛が白羽を訪ねて生徒会室へとやって来た。そして凜に助けてほしいと言われ、白羽は凜に連れられ学院を出る。

 

 

 

 

果たして、凛の頼みとは一体………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………迷子の猫探し、ですか??」

 

「そうにゃ!!」

 

「…………………帰っていいですか??」

 

「なんでにゃ!!?」

 

凛から告げられた頼みとは、まさかの迷子の猫探し。あまりに予想外な頼み事に白羽は回れ右して学院に戻ろうとする。しかし、凛は白羽の制服を掴んで離さない。

 

「ちょっと待つにゃぁぁぁ!!」

 

「じょ、冗談です冗談!!手伝うので離してください!!制服が伸びますって!!」

 

「…………………ほんと??」

 

「本当です。ちゃんと手伝いますから」

 

「よ、よかったにゃ~~」

 

白羽の言葉を聞いて凛は心底安心したような表情を見せる。しかしこの時、凛は気が付かなかったが、白羽の方がよっぽどホッとしたような表情で安堵していた。

 

 

―――はぁぁぁ~~~。良かったぁぁぁ~~~

 

 

もちろん、白羽は元からどんな頼み事でも凛からの頼みであれば手伝う気満々であった。しかし、額に汗を流しながら切羽詰まったような表情で『助けてほしい』なんて言われて何事かと思い、かなり不安な気持ちを抱いていたので、内容を聞いて心底安心した。

 

 

「で?何でわざわざ僕に頼みに来たんですか?」

 

「えっ?だって優木君、猫マスターなんでしょ?」

 

「…………………………何ですかソレ??」

 

凛の言葉に白羽は首を傾げながらポカンと口を開けて『何言ってんのコイツ?』みたいな表情を浮かべる。

 

「朝に君が言ってたことにゃ!?」

 

 

―――あ~~、そういえばそんな事言ったような気が……

 

 

凛に言われて今朝の出来事を思い出し、そういえばそんな事を言ったと気づく。おふざけで適当な事を言っていたのですっかり忘れていたようだ。

 

「それで、その猫はどんな猫なんですか?」

 

「え~っと………この子なんだけど」

 

「……………………あれれ??」

 

凛は猫が写った一枚の紙を白羽に差し出す。そこに写っていたのは、今朝、白羽によく懐いていた赤い首輪を付けた白猫だった。

 

「あっ!!この子って……!?」

 

「やっぱり、優木君と遊んで子だよね………」

 

「……………………ですね」

 

 

―――よく考えたら、首輪付けてんだから迷子の猫だよね………うっかりしてた

 

 

「じゃあ、探しましょう」

 

「うん!今こそ優木君の猫パワーを発揮する時にゃ」

 

「いや無理ですって!流石にそんな簡単に…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――10分後

 

 

「見つかりましたね。めっちゃ簡単に………」

 

白羽は迷子になっていた白猫を抱きながらそう呟く。まさか探し始めて10分足らずで見つかるとは思わなかったので、白羽は口角をピクピクさせ苦笑いを浮かべている。

 

「まぁよかった。早く見つけられて」

 

そう言って白羽は抱いている白猫の顎を撫でる。撫でられた白猫は嬉しそうな鳴き声を出し、白羽の手にスリスリしている。

 

『ニャアー♡』

 

「………………そ、そうだね」

 

「星空さん?なんでちょっと引いてるんですか?」

 

「もしかして、優木君って猫だったりするにゃ?」

 

違います

 

凛の疑問に白羽は即答で返す。凛がそんな事を言った理由は白羽があまりにも異常だからだ。まさか、白羽が『にゃあにゃあ~』って言いながら適当に歩いていると、白猫の方からやって来るとは思わなかったのだ。白羽も白猫(ターゲット)の方から自分に近づいて来た時は自分の事ながら若干引いた。

 

 

※ちなみに、白猫だけじゃなく全く関係ない野良猫たちも白羽に寄って来たので軽い騒ぎになった。

 

 

「それで、この子の飼い主は―――」

 

「――クシュン!」

 

「ん?」

 

白羽が白猫の飼い主を聞こうとすると横にいた凛は白羽の言葉を遮り、一つくしゃみをした。別に不思議な事でもなんでもないのだが、先程まではそんな素振りを見せなかったので白羽は何となく気になった。

 

「風邪ですか?」

 

「う、ううん!………ちょっと肌寒いだけにゃ!!」

 

「そ、そうですか……?」

 

凛の何かを誤魔化すような言い回しに白羽は疑問の表情を浮かべる。

 

(寒い……かな?)

 

冬はすっかり過ぎ去り、最近は少しずつ暖かくなってきているというのに、そんな事を言う凛に対して白羽は首を傾げた。

 

「さぁ!早く行っくにゃ~!」

 

「えっ!?ちょ!待ってくださいよぉ~!!」

 

白羽がそんな考え事をしていると、凛は元気よく声を出し白猫の飼い主の家に走って行く。白羽も猫を抱えながら凛の後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「優木君、今日はありがとにゃ!!」

 

「いえ、これくらいお安い御用です!」

 

あの後、白羽と凛は無事白猫を家へと送り届けた。飼い主の人からかなり感謝された二人は何かお礼をしたいと言われたが、2人共すぐに学院に戻らないといけないのでキッパリと断り、今は学院へと向かっている

 

「それで………クシュン!!」

 

「大丈夫ですか?さっきからくしゃみ多いですけど……??」

 

「だ、大丈b―――クッシュン!」

 

「星空さん??」

 

「クシュン!へっくしゅん!」

 

「??……………っ!!?」

 

先程から何度もくしゃみをする凜を見て、白羽はある可能性が頭をよぎる。凛は朝に会った時や学院を出る時にはくしゃみをする素振りなど見せなかった。それが出始めたのは先程、自分に寄って来た猫に囲まれた少し後からだった。

 

 

(もしかして…………)

 

「星空さんって………()()()()()()とか言わないですよね?」

 

「……………………ギクッ」

 

 

―――今『ギクッ』て言っちゃったよこの人

 

 

「な、なんのことかにゃ~………ふゅ~♪ぴゅ~♪」

 

「吹けもしない口笛はやめてください」

 

「……………………うぐっ」

 

凛は冷や汗をダラダラと流しながら誤魔化そうとするが、今の反応で彼女が猫アレルギーなのを確信した白羽は怒りで頬をピクピクさせながら悪魔のような笑顔を浮かべる

 

「猫アレルギー…………なんですね?」

 

「ハ………ハイ」

 

「フフフッ……ほ・し・ぞ・ら・さ~ん??」

 

「ひぃぃぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで………なにか言うことあります?」

 

「た、大変申し訳ありません」

 

あれから、白羽は近くの座れる場所に凛を座らせ、猛ダッシュで近くの薬局へ行き、動物アレルギー用の薬を買いに行った。凛の話によるとアレルギーのレベルはそんなに高くないらしく、薬を飲めばこれ以上悪化することは無いらしい。

 

 

 

…………だが、そんなことは関係ないし、それで白羽の怒りが収まるわけがなかった。

 

 

 

「いや、謝って欲しいんじゃないんです。なんで猫アレルギーなのに猫探ししてるんですか?」

 

「え~っと………優木君もいるんだし、触らなかったら大丈夫かな~って――」

 

「―――はい?」

 

(ゆ、優木君怖すぎにゃ~!!)

 

にっこりと笑いながら淡々と聞いてくる白羽の顔は凛にとって恐怖でしかなかった。凛は普段怒らない人間が怒ると怖いということを学んだ。

 

「何で言ってくれなかったんですか?言ってくれたら僕一人で探しましたよ?馬鹿(バカ)なんですか?」

 

「凛はバカじゃないにゃ!!?」

 

「あ、すいません。阿呆(アホ)でしたね」

 

「アホでもないにゃああああ!!!」

 

 

それからも白羽のお説教は長々と続いた。凛も自分が悪い事は百も承知であるが、長い時間これだけバカだのアホだの言われ続ければ怒りも湧いてくる。

 

 

「もう!凛の事バカとかアホとか言いすぎにゃ!!凛は先輩だよ!?優木君より3つも年上なんだよ!」

 

(………………………イラッ)

 

 

凛の逆ギレを聞き、白羽は自分の気持ちも知らないでそんな事を言う凛に対して少しだけイラッとした。白羽も本当はこんな事をグチグチと言いたいわけでは無い。しかし、これ以上同じ事をしてほしくない。自分の事をもっと大切にして欲しい。

 

ただ純粋に凛の事を心配していたのだ…………

 

それなのに!!そんな思いで心を鬼にしたというのに、まさかの逆ギレ!!これにはいくら白羽であってもムカつく。

 

 

「へぇー、そうですかそうですか。僕より3つも年上のお姉さんなのに、ご自分のアレルギーの危険性も理解出来ないんですか?」

 

「………………うぐっ」

 

「………………はぁぁ~~~」

 

白羽はため息を一つ吐くと同時に凛の隣に腰かけた。

 

「もう、さっきも聞きましたけど何で言ってくれなかったんですか?」

 

「だって、凛がお願いしたのに優木君一人に探させるなんて……」

 

 

―――まぁ、気持ちは分かりますけど………

 

 

こっちから頼み事をしておきながら、その仕事を全部友達にやらせる。そんな事、例えアレルギーの発作が出ると分かっていても凛には出来なかった。そして、その気持ちを白羽は理解出来た。例え自分が凛の立場でも同じ事をしていただろうと確信する程。

 

 

「それに…………」

 

「………それに?」

 

「早く………見つけてあげたかったんだもん……」

 

「…………………………星空さん」

 

そう言いながら足を抱える凛を見て、白羽は何処か自分と重なるのを感じた。白羽が凛を心配しているのと同じように凛も迷子の猫が心配だったのだ。大げさな言い方になってしまうが、凛は自分の身を犠牲にしてまで猫を助けようとした。

 

 

その姿を見て、白羽は自分と凛を重ねた。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学2年生の頃に起きた、ある()()()を思い出す。

 

 

 

 

 

 

『君はドが付くほどの阿呆なのか!?!?』

 

 

 

 

 

『なんで……なんで貴方は、自分を大切にしてくれないんですか』

 

 

 

 

 

『テメェ………やっぱ()()()()()よ………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、白羽も似たようなことをした。

 

 

 

自分の身を挺して………大切な人を助けようとした

 

 

 

自分の身を犠牲にして………大切な人を守ろうとした

 

 

 

()()()()()()()()………大切な人を救おうとした

 

 

 

 

 

(まぁ……あんな狂行(バカな事)した僕が言える立場じゃないか)

 

 

 

それに比べれば、今回凛がやったことなど可愛い物だと感じ始めた白羽は怒りを沈め、そっと笑みをこぼす

 

「フフッ…………フフフッ、あはははっ!」

 

「な、何!?なんで笑うにゃ!?」

 

「いえ!別になんでもないですよ~♪」

 

白羽は笑みを浮かべるのと同時に降ろしていた腰を上げ、凛の目の前に立つ。

 

「いいですか?次からは絶対こんなことしないでください!冗談抜きで危ないです!」

 

「…………はい」

 

「めっ!!です!」

 

「…………はい」

(めっ!って言う人初めて見たにゃ。可愛い)

 

「それじゃ…………服脱いでください

 

白羽はそう言いながら座っている凛に対して手を差し出す。

 

「はい……………って何言ってるにゃ!!?!?!」

 

今の言葉を聞いて凛は爆速で立ち上がり、自分の肩を抱きながら白羽から距離を取った。顔を真っ赤に染め上げながら。

 

「優木君のえっち!!変態!最低にゃ!!」

 

「ん??何勘違いしてるか知りませんけど、猫の毛がついてるかもしれないのでブレザーを脱いでくださいって言ったんですけど??」

 

「…………………………ま」

 

「……ま?」

 

「紛らわしいにゃああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ~、結構ついてますね」

 

 

―――まぁ、あれだけ猫に囲まれればつくよね………

 

 

あれから白羽は凛のブレザーを剝ぎ取り………じゃなくて、脱いでもらったブレザーにコロコロを当てて毛を取っている。わざとでは無いものの先ほど自分が大量の猫を呼び寄せてしまったことに白羽は罪悪感を感じた。

 

 

(優木君…………なんでコロコロ持ってるにゃ?)

 

ナチュラルにカバンからコロコロを取り出して自分のブレザーの毛を取っている白羽を凛は苦笑いを浮かべながら見ている。当然だ、今時の男子中学生でコロコロをカバンに常備している人間なんて見たことない。

 

 

「はいっ!綺麗になりましたよ」

 

「ありがとにゃ!!」

 

凛は白羽から渡されたブレザーを嬉しそうに受け取り、ニコニコ顔で羽織る。

 

「じゃあ、僕は学院に戻りますけど、星空さんも戻りますか?」

 

「うん!かよちんを迎えに行かないと」

(多分………今パンクしてると思うし)

 

 

皆さん、前回の生徒会室での白羽が口にした発言を覚えているだろうか?

 

 

―――確かに、小泉さんは少し気が弱い所があるけど………でも!そこが魅力的っていうか……

 

―――友達思いで、優しくて………ああもう!!とにかく、小泉さんはすっっごく可愛い女の子なの!!

 

 

………という、優木白羽(ラノベ主人公野郎)のタラシ発言を。

 

 

 

もはや説明はいらないと思うが………小泉花陽はこの発言を外からバッチリ聞いていた。その言葉を聞いた瞬間、花陽はありきたりにデフォルメの湯気をぼふんっ!と発生させ、顔を真っ赤にしてその場を逃げ出した。

 

まぁ、いつものパターンである。

 

 

「そういえば、小泉さん置いてきて良かったんですか?」

 

「う、うん。多分大丈夫にゃ。学校に戻ったら探しに行くにゃ」

 

 

―――猫の次は小泉さんを探すのか………

 

 

「僕も探しましょうか??」

 

「い、いや……かよちん、今は優木君に会いたくないと思うにゃ………」

 

「…………………え‶っ?」

 

凛が顔を背けながらそう言うと、白羽は一瞬で顔を真っ青にして心の底から絶望したような顔を見せる。最近、花陽と仲良くなれて喜んでいた白羽にとって凜の一言は声も出せない程に打ちのめされるものだった。

 

「ア、アハハ………ハハッ………アハハ。ソ、ソウデスヨネ……こんな奴にアイタクナイですよね」

 

「ち、違うにゃ!そういう意味じゃなくて……!!」

 

「アハハ……ハハハッ………僕、川に身投げして死にますね」

 

「ちょっと待ってえええええええ!!」

 

凛は本当に川の方へと歩いていく白羽を結構本気の羽交い締めで止める。目を背けたくなるほどの痛々しい白羽の後ろ姿に、このまま行かせたらマジで身投げすると考えたからだ。

 

「離してください!!もう生きていける気がしません!!」

 

「一旦落ち着くにゃ!!っていうか、かよちんの事好きすぎだにゃ!!」

 

 

この後、川に飛び込もうとする少年とそれを何とか止めようとしがみつく女子高生。そんな2人のやりとりは5分程続いた。そして………

 

………その間、ずっと周りから不審な目で見られていた事は言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの………ご、ごめんなさい。取り乱しました」

 

「う、ううん。大丈夫にゃ!」

 

学院に戻っている最中、白羽は迷惑をかけてしまった凛に深々と頭を下げる。あの後、凛は花陽が白羽の事を嫌っていない事を伝えて、なんとか落ち着かせることに成功した。

 

 

―――よかった、本当に良かったぁぁぁ

 

 

花陽に嫌われたと勘違いした白羽は、それが誤解だと教えてもらい心の底から安堵している。

 

 

「そういえば星空さん………ん?」

 

ふと凛の方に目を向けると、さっきまで隣を歩いていた凛の姿は無く、後ろを振り返ると彼女はいつの間にか足を止めて熱心に何かを見ていた。

 

「……………………」

 

「星空さん??」

 

凛が立ち止まった場所は女性ものの洋服を多く扱うアパレルショップだった。白羽が凛の名前を呼んでも集中している凛には声が届いていない。そんな姿に一体何をそんなに熱心に見ているのか気になり、白羽は彼女の視線の先に目を向ける。

 

「……………………」

 

(これって………スカート??)

 

白羽が視線を向けた先にあったものは、店の前にディスプレイされているピンクを主体にして白いフリルが付いた可愛らしいスカートであった。

 

「………………可愛いですね」

 

「えっ?………そ、そうだね。かよちんに似合いそうにゃ!」

 

「………星空さんにも似合うと思いますよ?」

 

「へっ!?り、凜はこういうの似合わないよ!」

 

「いや、絶対似合いますって!!」

 

「ううん、似合わないよ。だって凛は………女の子っぽくないし」

 

「……………………ん??」

 

「ほら、こんなに髪も短いでしょ?こういうのはかよちんみたいな可愛らしい子が着た方が良いにゃ!!」

 

「……………………ん??」

 

凛は少し悲しみを含んだ笑顔を浮かべながら、遠回しに自分は可愛くないと口にする。

そんな凛の言葉を聞いた白羽は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(女の子っぽくない?このルックスで?)

 

………と思った。

 

 

「………………う~~~ん??」

 

「ゆ、優木君??」

 

白羽は口元に手を置き、頭を傾けて何言ってるか分からないとでも言いたげな表情を浮かべる。そして、凜の正面に立ち、今からキスでもするのではないかと勘違いするほどの至近距離まで顔を近づけた。

 

(ち、近いにゃ!!?顔がすっっごく近い!?)

 

当然、そんなに顔を近づけられたら凛だって恥ずかしい。羞恥心で今にも爆発しそうなほどに顔を赤らめるが、白羽はそんなのお構いなしとでも言いたげに真剣な眼差しを向ける。

 

 

 

 

そして……………

 

 

 

 

 

「いや…………星空さんは可愛いですよ?」

 

 

 

 

 

 

裏表なく真っ直ぐに、そして純粋に、彼女に対して抱いた印象を言葉にした。

 

 

 

「………………にゃあっ!!?!」

 

その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔は一瞬でかぁぁっと熱を帯び、耳まで真っ赤にして照れた表情を見せる。

 

「な、ななな何言ってるにゃ!!!??」

 

「何って、だから星空さんは可愛いなぁって―――」

 

「―――にゃあああああ!!!」

 

「むぐっ!?!?」

 

凜はこれ以上聞くとほんとに恥ずかしくて死ぬと感じ、白羽の口を手で押さえて、彼の言葉を途中で止めた。

 

「ハァ…ハァ…ゆ、優木君!!凛を揶揄わないで!」

 

「いや、僕は揶揄ってるわけじゃ…………」

 

「凜は!……こんな可愛いのは……似合わないよ!」

 

「……………………星空さん」

 

凛は顔を下に向けながらう少し強めな口調でそう言い放った。しかし、彼女の言葉には何処か悲しそうな雰囲気がにじみ出ていた。

 

 

「凛ね……小学校の頃からずっと男の子見たいだねって言われてたの。スカートを履いても揶揄われてたんだ…………だからね、凛はやっぱり女の子っぽくないんだよ」

 

 

そう言って凛は下に向いていた顔を上げて、必死に強がりな笑顔を見せる。自身が言った『女の子っぽくない』と言う言葉に泣きそうになりながらも、必死に笑顔を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼女が泣きそうな眼をしていることに優木白羽が気づかないわけがなかった

 

 

 

 

 

「星空さん!!」

 

「……………………えっ!?」

 

白羽は凛の話を聞き終えた後、なんの前触れもなく彼女の手を掴んだ。突然手を掴まれた凛は驚きと困惑の表情を浮かべながら白羽を見る。

 

「ちょっと来てください♪」

 

「えっ!ちょ、優木君!!?」

 

そう言って白羽は凛の手を引っ張り、アパレルショップの中へと入っていった。

 

「いらっしゃいませ~♪」

 

「あの~、すみません。あそこの服って試着できますか?」

 

白羽は先程まで凛が眺めていたピンクのスカートを履いたマネキンを指さす。

 

「はい!もちろんできます」

 

「よかった~、じゃあ星空さん」

 

「……………………は、はい?」

 

「あのスカート、試着してみましょう!!」

 

「……………………へ??」

 

訳が分からないまま無理矢理店に引っ張ってこられた凛は口をポカンと開けながら素っ頓狂な声を出す。

 

「え……な、なんでにゃ??」

 

「何でって……本当は着てみたいんですよね?スカート」

 

「……………………っ!!??」

 

「着ればいいじゃないですか。きっと似合いますよ」

 

 

白羽は凛の手をしっかりと握りながらそう口にする。彼女の心のモヤモヤを少しでも払えるように、何処までも優しい笑顔を浮かべながら。

 

 

「……………………で、でも」

 

「でも自分は女の子らしくないから。自分は小泉さんみたいに可愛くないからって思ってる。だから――」

 

「―――そうだよ!!」

 

凛は白羽の言葉を先程よりも強めの口調で遮った。自分の心が見透かされているような気持になり、白羽に対して苛立ちのような感情が湧いてきた。そのせいで、店内にいた店員やお客は2人に視線を向けて注目する。しかし、そんなのお構いなしに凛は言葉を続ける。

 

「何度も言ってるにゃ!!凜は………かよちんみたいに可愛くない。女の子っぽくもない。だから!!―――っ!?」

 

「――――星空さん」

 

先程、凜がやったように白羽は彼女の言葉を遮った。言葉ではなく、自身の手で彼女の頭を優しく撫でることで凛の言葉を止めた。

 

「星空さんの顔って小さくて可愛いですよね」

 

「……………………………へっ?」

 

2,3回程凛の頭を撫でた後、白羽は突然そう言い放った。

 

「眼もパッチリしてて大きいですし、肌も白くてスベスベで綺麗だし」

 

「……………………ゆ、優木君?」

 

「確かに髪は短いですけど、サラサラツヤツヤで綺麗な髪ですよ」

 

「あ、あの……ちょ、ちょっと?」

 

「語尾の『にゃあ』っていうのも可愛いですよね。星空さんに合ってるっていうか♪」

 

「も、もう………分かったにゃ」

 

凛がそう言っても白羽は全然止まろうとしない。まるで、こんなもんでは足りない!とでも言わんばかりに目の前の少女を褒め続ける。

 

 

「いつも元気一杯で、いつも笑顔で……星空さんと一緒に居るとこっちまで笑顔になるんですよね」

 

(も、もうやめて…………)

 

「友達想いで、小泉さんの為に行動できる所とか、凄い魅力的だと思います。それに―――」

 

「もう分かったにゃあああ!!!!」

 

「―――むぐっ!!?」

 

 

もうこれ以上は本当に限界なようで、凛は白羽の口を手で塞いで無理矢理に言葉を遮った。

 

「もう!優木君は結局何が言いたいにゃ!?」

 

「……………あるでしょ?」

 

「……………えっ?」

 

「ほら………こんなにあるじゃないですか。貴女の魅力的な所。まだ出会って日の浅い僕にもこんなに見つけられるんです。それぐらい……貴女は、星空凛さんは可愛い女の子ですよ」

 

 

白羽は凜の手を優しく両手で包み込み、精一杯の笑顔を向けてそう言った。その顔からは“純粋”や“無垢”といったものしか感じられない程綺麗なものであった。

 

 

「小学校の頃に揶揄われたって言ってましたけど、その男子達の顔や名前覚えてます?」

 

「……………………」

 

 

凛は白羽の質問に言葉ではなく、首を横に振ることで答える。

 

 

「じゃあ、忘れてください。そんな顔も名前も覚えてない男の言葉なんて。そんな人達の言葉より、僕の言葉を聞いてください」

 

「………………」

 

「星空さんが、貴女が自分自身のことを魅力的でない。可愛くないと言うなら、僕が星空さんの魅力を伝えます」

 

白羽は凛の手を握っていた自身の手を彼女の赤く染まっている頬まで持って行き、慈愛の限りを尽くして撫でる。そして、少し下を向いている彼女の顔を上げさせると、2人の目線が交わった。

 

「何度でも何度でも!貴女が、貴女の魅力に気付くまで!何度でも伝えます!」

 

「~~~~~っ!!!??」

 

 

白羽は凛を励まそうとしているわけでは無い。ただ、知って欲しいのだ。星空凛に星空凛という女の子の魅力を。

 

励ましでなく、お世辞でもなく、ただ事実を伝える。その言葉が沈んでいた彼女の心に光を照らした。

 

 

「隙アリ!!」

 

「にゃ!!??」

 

突然、白羽は掴んでいた凛の手を勢いよく引っ張り、彼女の身体を試着室へとぽ~いっと放り投げた。

 

「じゃあ、服持ってくるんでそこで待っててください」

 

「ちょ、ちょっと待って!?」

 

「あの店員さん、ちょっといいですか?」

 

「へ?………………あ!はい!」

 

「無視しないでにゃあああ!!!」

 

それから、白羽は凛の言葉を無視し続けた。もう何を言っても止まらないと感じた凜は一つため息を吐いて、諦めてような表情を浮かべ、試着室で大人しくすることを決めた。

 

 

 

 

「はい、星空さん!これどうぞ!!」

 

「……………………う、うん」

 

白羽は店員さんから受け取った服を凜に渡す。せっかくなのでスカートに合いそうな上の服も一緒に持ってきた。

 

「それじゃ、着替えたら出てきてくださいね」

 

そう言って、白羽は試着室のカーテンを閉める。

 

「………あの、すみません。さっきは店内でバタバタしちゃって」

 

「い、いえいえ…………気にしないでください。むしろご馳走様でした

 

白羽が店の店員に頭を下げると、店員は頬を染めながらニヤニヤした表情を浮かべた。店員だけでなく、店内にいる他の客も白羽の事を微笑ましく、生暖かい視線を向けている。

 

 

忘れているかもしれないが、ここはアパレルショップの店内で当然だが店員だけでなく、白羽達以外のお客さんもいる。そして、白羽の殺し文句は凛だけでなく、聞くものすべてを照れさせるような内容だったので、周りの人間は凛と同じように顔を赤らめて恥ずかしそうな表情を浮かべている。

 

 

 

(凄いの見ちゃった………)

 

(若いっていいわね~~♡)

 

(…………可愛い)

 

(………………青春だね~)

 

(あの子、見かけによらず大胆ね♡)

 

(10歳ぐらい若返った気がするわ……)

 

 

 

「…………ん?なんか注目されてる?」

 

そんな視線を受けて、白羽は困惑の表情を浮かべるが『自分の髪が白いことで注目されてる』っと勘違いし、凛がいる試着室へと視線を戻す。

 

(まだかな~??早く見たいな~~♪)

 

そんな視線より、凛のスカート姿の方が気になるようだ。

 

 

 

 

 

 

――――――――数分後

 

 

「………………お、おまたせ」

 

「「おおお~~~!!!」」

 

試着室のカーテンが開くと、そこには見事なまでにスカートを着こなす可愛らしい凛の姿があった。その姿に白羽と横にいた店員は声を上げて称賛する。

 

「可愛いです!すっごく可愛いです!」

 

「~~~~っ!!?!」

 

「ホントよく似合ってます!ですよね店員さん!?」

 

「は、はい。とてもよくお似合いです」

(大丈夫かしら?この娘………恥ずか死するんじゃ)

 

店員の言う通り、凜は顔真っ赤になりながら手で顔を覆っている。もうこれ以上は限界とでも言いたげな表情で。

 

「どうです?気に入りました?」

 

「……………………うん」

 

凛は鏡に映る自分の姿を見て、小さな声でそう呟く。それは、彼女の心から漏れた言葉であった。小学校の頃からずっと感じていたコンプレックス。女の子っぽくないし、髪は短い、だからこんな服は自分に似合わないと言い聞かせてきた。だけど、星空凛はやはり女の子なのだ。女の子っぽくなくても、髪が短くとも、可愛いものには憧れる。

 

 

その気持ちがあふれ出てしまい、彼女は鏡に映る自分の姿から目を離せなかった。

 

 

「………………ふふっ」

 

 

それを見た白羽は一つ笑みをこぼすと同時に、自身の財布を取り出した。

 

「じゃあ、これ買いましょう!!」

 

「…………………………………えっ!?」

 

「店員さん、お会計お願いします!」

 

「ま、待って!?凜お金持ってきてないにゃ!?」

 

「あ、はい。大丈夫です!僕が買うんで!」

 

 

―――いや~~、今日お金持ってて良かった~~

 

 

そう言って白羽は凛に対し、超良い笑顔で親指を立てながらサムズアップした。

 

「いや、ダメダメ!優木君に買ってもらうなんてできないにゃ!?」

 

「ん?何でですか?」

 

「だって…………優木君は年下だし………」

 

(別に遠慮することないのになぁ~。そもそも僕が無理言って着させたんだし)

 

白羽にとっては服を買ってあげるなんて別に大したことではない。昔、ことりの誕生日に服をプレゼントしたこともあるし、なんでもない日にリボンを送ったこともある。というか、白羽にとってはそれで凛が笑顔になってくれるなら安いものだという考えであった

 

「や、やっぱりだめにゃ!!凛の方がお姉さんだもん!」

 

だが、凛の言葉ももっともだ。白羽はまだ中学生。友達とは言え、まだ出会って3か月も経っていない子に決して安くはない服を買ってもらうなんて、凛には出来なかった。

 

「また今度にするにゃ!また今度、自分で買いに来るから。ね?」

 

「………………ホントですか?」

 

「……………………うっ」

 

「…………ホントに買いに来るんですか?『やっぱり凛には似合わないにゃ!』とか言って買わないつもりじゃないんですか?」

 

「……………………うぐっ」

 

凛の今度買いに来る宣言を聞いて、白羽はジト目で凛に詰め寄る。白羽は確信していた。このタイミングを逃せば彼女は絶対に自主的にスカートを買いにこないと。だから、多少強引でも、無理矢理にでもこの場で買った方が彼女の為になると判断した。

 

「それじゃあ、スカートだけ買ってきます。それならいいですよね?」

 

「……………………う、うん」

 

(よしっ!!)

「じゃ、行ってきます!!」

 

そう言って白羽は店員とともにレジの方へと歩いて行った。凛は感謝の気持ちより申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら制服に着替え始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました!」

 

数分後、白羽は新品のスカートが入った袋を持ちながら、着替え終わって店の外で待っていた凛の元に戻って来た。

 

「はい!どうぞ!!」

 

「……………………う、うん」

 

 

 

―――なんか『イイモノ見せてくれてありがとうございました!!』って何故か店員さんからお礼言われてすごい割引してもらったけど、どういう意味だったんだろう?

 

 

 

何故か大幅に割引してくれたことに困惑した白羽だったが、まぁオマケしてくれたならいいか!っと思い、すぐに考えることを辞めた。

 

「……………………」

 

「星空さん……??」

 

白羽から差し出された袋を凜は申し訳なさそうな表情で受け取り、受け取った後も浮かない表情で下を向いている。

 

「えいっ♪」

 

しかし、白羽はそんな凜の顔を見て、彼女のおでこに軽いデコピンした。

 

「イ、イタイにゃ……!?」

 

「なんでそんな顔するんですか?」

 

「…………だって」

 

「もしかして、迷惑でしたか?」

 

「そ、そんなことないにゃ!すっごく嬉しいよ!!」

 

その言葉を聞いた白羽は安心し、先ほど同じように暖かい笑顔を浮かべながら凛の頭を優しく撫でる。

 

「じゃあ、そんな顔してないで笑ってください!そんな顔させたかったわけじゃないんです。僕は、星空さんに喜んで欲しくてしたことなんですから」

 

「………………っ!!」

 

その言葉を聞いて凜は反省する。

目の前にいるこの子はただ純粋に、自分に喜んで欲しかった……そんな気持ちでスカートを買ってくれたのに、それなのにこんな表情をしてしまった。

 

 

だからこそ、凛はもう余計な事を考えないことにした。今はただ、ありがとうって気持ちをこの少年に届ける為に…………

 

 

「うん!優木君、ありがとにゃ!」

 

 

…………星空凛もいつもの笑顔を浮かべ、彼に心から感謝した。

 

 

「………………っ!!?」

 

 

短い髪を風に揺らされ、その隙間から見せる彼女の笑顔は白羽が見惚れ、目が離せなくなってしまうほど可愛いらしいモノだった。

 

その笑顔を見た瞬間に白羽は嬉しい気持ちで胸がいっぱいになると同時に、()()()()()が湧いてきた。

 

「あの………星空さん――」

 

 

――Prrrr♪

 

 

「「ん??」」

 

白羽が何かを言おうとした瞬間、凜の携帯に一本の電話が入る。凜が携帯の画面に視線を向けると、そこには小泉花陽という文字が映し出されていた。

 

「ん?かよちん?……もしもし!……うん……うん………わかったにゃ!」

 

「小泉さんがどうかしました??」

 

「かよちん、もう学校出て家に帰ったみたいにゃ」

 

「そうですか……僕は学院に戻りますけど、星空さんも帰りますか?」

 

「そうだね。凛も帰るにゃ!」

 

「分かりました。それじゃあ、また学院で!」

 

「うん………バイバイにゃ!!」

 

そう言って凛は走りながら白羽と別れ、離れていく。白羽はそんな彼女を見送り、学院に戻ろうとした瞬間……

 

「優木君!!」

 

凛はおもむろに足を止めて振り返り、少年の名を笑顔で呼ぶ。

 

沈んでいく夕陽に照らされたその姿は、先ほどまで顔を下に向けていた姿とは比べものにならない程に輝いていた。

 

「ホントに、ありがとにゃ!!」

 

「……………………ふふっ」

 

それだけ言い残して凛はまた振り返り、行ってしまった。本当はもっと色々言おうと思ったのだが………

 

 

 

熱を帯びて、さっきより真っ赤になった顔を白羽に見せたくはなかった。

 

 

 

「あ、やばい!!……()()するの忘れてた!!」

 

凜が去って行くのを手を振りながら見送った白羽は先ほど、花陽からの電話で言えなかった()()()()を伝え忘れていたことに気づく。

 

「ま、いっか……また今度言えば♪」

 

 

白羽にとって……いや、μ'sにとって大切な事なのだが、今は凛の笑顔を見れただけで満足であった。

 

 

「さぁ~ってと、用事も終わったし、皆さんの所に帰ろう♪」

 

 

白羽は伝え忘れた事をあまり気にせず、ホクホク顔で学院へと戻って行った。

 

 

 

 

この後、屋上で待っているμ's()からお説教と言う名の拷問が待っているとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――おまけ

 

 

「……………………た、ただいま」

 

「兄さん、おかえりな……さい……ってどうしたんですか!?顔が真っ青ですよ!」

 

「だ、大丈夫大丈夫。ことりさんのおやつになっただけだから」

 

あの後、白羽は屋上に戻った瞬間に穂乃果達から詰め寄られ、真姫とデートした件について洗いざらい話すように脅迫された。まぁ、正直に話しても3人の怒りがそれで収まるわけもなく、結局お説教されたのは言うまでもないだろう。

 

 

そして、その言葉を聞き、兄のげっそりした顔を見て……真白の優秀な脳は瞬時に回答を導き出した。

 

(成程…………兄さんがまた何かやったんですね)

 

※ある意味正解

 

「お疲れ様です。お風呂でも入りますか?」

 

「うん……………………そうする」

 

そう言うと、白羽は重い足取りをなんとか動かし、お風呂場へと向かって行った。あまりにもどんよりとした兄の背中に真白は心配そうな表情を浮かべる

 

 

数分後、お風呂に入って体を温めた白羽は力なくリビングのソファーに寝転がった。

 

「……………………眠い」

 

「兄さん……どうぞ」

 

その姿を見て、真白はソファーに腰かけて自身の膝をポンポンっと叩く。膝枕をしてあげるという意思が伝わった白羽は、遠慮なく妹の膝に頭を乗せた。

 

「重くない?しんどくなったら退くからね?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そっか……ありがとね!」

 

白羽は風呂に入って眠くなったのか、とろんとした声と表情で真白にお礼を言う。

 

「ん”んん”………い、いえ。気にしないでください」

 

その表情に真白は悶絶しそうになったが、今悶絶すればせっかくのゴールデンタイムが無くなってしまうので何とか堪えた。

 

「そういえば、新作のゲームはお買いになれたのですか?今日買いに行くと聞いてましたが?」

 

「あ~~~、実は……今回は見送ったんだ」

 

「えっ?よろしかったんですか?兄さんずっと楽しみにしてて、最近お小遣い貯めてましたよね」

 

「…………うん!」

 

「……………………そうですか」

 

兄の顔を見て、真白はある程度の事を理解した。兄がこういう顔をするときは、決まって誰かを救おうとして動いた時。昔、自分も救ってもらった一人だからこそ分かるものだった。

 

(また人助けですか。まったく兄さんは………まぁ、そういう所が素敵なんですけど)

 

 

 

「それで兄さん……………ん?」

 

「………すぅ………すぅ………」

 

真白が再び膝で眠っている兄の方に視線を向けると、疲労が一気にきたのか、白羽は可愛らしい寝息をたてながら眠りに落ちていた。

 

「ふふっ♪おやすみなさい………兄さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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