今回はμ’sのあの子が登場します
穂乃果さんが持ってきた雑誌は全国のスクールアイドルに関することが載っている物だった。
「アイドルだよ!アイドル!」
「アイドル………ですか?」
「そう!こっちは大阪の高校で、これは福岡のスクールアイドルなんだって!」
スクールアイドル…………まさか……
「スクールアイドルって最近どんどん増えてるらしくて、人気の子がいる高校は入学希望者も増えてるんだって!」
「あの…何でいきなりスクールアイドルの話を?」
「実は朝にUTXっていう高校に行ってみたんだけど、そこのA-RISEって人達がものすっっごく人気だったの!!」
やっぱり……あの人達に影響されたのか…………
穂乃果さんが言いたいことが分かったのか、園田さんは音も立てずに教室から出て行った
「それで私考えたんだ!」
「あの………穂乃果さん」
「ん?どうしたの?」
「園田さん、出て行っちゃいましたけど……」
「………あれ?」
僕は園田さんが座っていた場所を指さし、穂乃果さんもそちらを見て園田さんが教室を出ていったことに気が付いた
「海未ちゃん!!まだ話し終わってないよ!!」
「………わ、私はちょっと用事が…」
「いい方法思いついたんだから聞いてよ~!!」
「………はぁ〜、私達でスクールアイドルをやるとか言い出すつもりでしょ」
「っ!?……海未ちゃんエスパー!?」
「誰だって想像つきます!!」
デスヨネ―。ここまで言われて気づかない人はそうそういないと思う。やっぱり、穂乃果さんってちょっとおバカなのかな?
…………でも、スクールアイドルか……悪くないかもしれない
「だったら話は早いね。今から先生の所に行ってアイドル部を!!」
「お断りします」
「ええー!なんで!?だってこんなに可愛いんだよ!こんなにキラキラしてるんだよ!」
「そんなことで本当に生徒が集まると思いますか?その雑誌に載っている人達はプロと同じくらい努力し、真剣にやってきた人達です。穂乃果みたいに好奇心だけで初めても上手くいくはずないでしょう!」
「………うっ、それは」
「はっきり言います………アイドルは無しです!!」
「……………」
園田さんの言葉を聞いて穂乃果さんは顔を下に向けてしまった。おそらく返す言葉が見つからないのだろう
「ちょっと……お二人とも落ち着いてください」
「そうだよ、海未ちゃんも言い過ぎだよ」
「……………すみません。でも、穂乃果も少し頭を冷やしてください」
そう言って園田さんは行ってしまった。まぁ今の状況じゃ話し合い何てできるわけないしな……
―――――――――――――――――――――
それから、僕は穂乃果さんと一緒に学院の屋上に来ている。ことりさんは用事があると何処かに行ってしまった。多分、園田さんの所に行ったんだと思うけど
「あーあ。いい考えだと思うんだけどなぁ……」
「………確かに、人気が出れば生徒も集まるでしょうけど、園田さんが言ったことも間違ってませんしね」
「………だよね」
普通に考えれば、園田さんの言った通りうまくいくとは思えない方法だ…………でも、可能性があるのは確かなんだよな。穂乃果さんとかアイドルに向いてそうだし
「~~~~♪~~♪~」
「「…………ん?」」
屋上でこれからどうするかと考えていると、綺麗な歌声とピアノの演奏が聞こえてきた。何処から流れてるのか気になり、耳をすませて聴くと歌が流れてくる場所は音楽室だった。歌っている人はどうやら音楽室にいるらしい。
「「…………」」
僕と穂乃果さんは顔を見合わせ、音楽室に向かった。
音楽室の前に着き、扉の窓から中を覗いてみると、そこにいたのはピアノを弾きながら、綺麗な声で歌っている赤毛の先輩がいた。
「さあ!大好きだバンザ~イ♪ 負けない勇気~♪ 私達は今を楽しもう♪ 」
「…………綺麗な声だね」
「………はい、そうですね」
穂乃果さんは彼女の歌声に魅了され、僕は彼女の歌を奏でる姿に目を奪われた。それほどまでに彼女の歌は人を引き付ける魅力で溢れていた
「大好きだバンザ~イ♪ 頑張れるから~♪ 昨日に手を振って♪ ほら~前向いて~♪」
彼女が歌い終わると穂乃果さんは彼女に向けて扉越しに拍手をした。そういう僕も精一杯拍手をした。
「ヴェエエ!!!???」
歌っていた先輩は僕たちに気づき、驚いた声を出した
……なんか変な声で驚かれた
「すごい!すごい!すごい!歌上手だね!私、感動しちゃったよ!」
「はい!僕もです!すっごく綺麗でした!」
僕達は先輩の歌に対して自分たちが感じた気持ちを素直に伝えた。先輩は照れ臭くなったのか、顔が少し赤くなった
「べ、別に……ていうか何で男子が?……ああ、中学のテスト生の子ね」
「はい。あの、すみません…邪魔してしまって」
「……べ、別に良いわよ」
良かった~。勝手に覗いてたから怒られることも覚悟してたけど
「あの!」
「「??」」
「いきなりなんだけど……貴女、アイドルやってみたいと思わない!?」
「!?」
穂乃果さん!?本当にいきなりすぎますって!!
まだ自己紹介もしてないんですよ!!
……ほら!この人も「何言ってんの?」みたいな顔しちゃってますから!
「……何それ、イミワカンナイ!」
先輩は穂乃果さんにそう言い放って音楽室を出て行ってしまった。当然だ、会ったこともない他人からいきなりそんなことを言われても「はい!」なんて答える人間はいない。
「穂乃果さん………いきなりすぎます。まだお互いに名前も知らないんですよ」
「だよね……ア、アハハハ……はぁ〜」
そう言い穂乃果さんは苦笑いし、ため息をついた。
いや、ため息をつきたいのは僕ですよ!
「……………穂乃果さん、本当にスクールアイドルやるつもりですか?」
「うん、やるよ!だって…可能性感じたんだもん!」
「……………」
海未さんの言った通り、始めようとしたきっかけは好奇心だったのだろう。でも…遊び半分でやろうとしてないことは目を見れば分かった。
この人…………本気なんだ。本気で、この学校を廃校から救うつもりなんだ
「…………………じゃあ、まずはダンスからやってみます?」
「……………え?」
「ダンスの練習ぐらいならすぐに始められますよね」
「手伝ってくれるの?」
「はい!どうせ止めても聞かないですよね。それに……僕も、この学校は無くなってほしくないですから」
「………し、白羽く〜〜〜ん!!!」
「ぐわっ!?」
手伝ってくれるのがよっぽど嬉しかったのか、穂乃果さんは泣きながら僕に抱き着いてきた。勢いが強すぎて倒れそうになったけどなんとか堪えた。
「ほ、穂乃果さん……苦しいです」
「えへへっ!ごめんね、嬉しくなちゃってつい」
ことりさんもそうだけど、何で年頃の女の子が男子に抱き着けるの?嬉しくなったらハグする病気にでもかかってるんですか?
「……まあいいですけど」
「よしっ!それじゃあ、これから2人で頑張っていこうね!!」
「………2人じゃないと思いますけど」
「え、何か言った?」
「いえ、別に。それより練習行きますよ。簡単なステップ位なら教えられますから」
「うん!」
穂乃果さん…………僕達だけじゃないですよ。
あの
それから僕達は踊れそうな場所に移動した。当然、部活でもないので教室などは使えず、しかたなく校舎裏の空いているスペースを使うことにした。
「ワン!ツー!スリー!フォー!……あっ!?」
「う、うわあっ!!」
「……大丈夫ですか?」
僕がカウントをとり、穂乃果さんがそれに合わせて踊る。やはり練習を始めたばかりなので、基本のステップでも手こずっている。
「………あはは、ごめんね。さっきからミスばっかりで」
「最初はみんなそんなもんですよ。さぁ、もう一回やってみましょう!」
「うん!」
僕は座り込んでしまった穂乃果さんに手を差し出した。彼女もそれを取り、笑顔で立ち上がった
「もう一回お願いします!」
「はい!……ワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!シックス!セブン!エイト!」
それからも穂乃果さんは何度も失敗した。それでも、この人は何度も立ち上がって練習を続けている。僕も穂乃果さんが失敗し、倒れるたびに手を差し伸べ続けた。
「うわわわっ!!あいたたたた……く~~~っ!」
「大丈夫で…………っ!!」
また穂乃果さんが転び、先ほどと同じように手を差し伸べようとしたが……ある人がこちらに近づいて来たので、途中で手を止めた
――――どうやら、僕の手は必要ないようだ
「…………穂乃果」
「……………海未ちゃん?」
僕達に近づいてきたのは園田さんとことりさんだった。気づかなかったけど、おそらく2人とも少し前から見ていたのだろう。
「1人で練習しても意味がありませんよ…………やるなら、3人でやらないと」
そう言い、園田さんは手を差し伸べた。
「………海未ちゃん!」
穂乃果さんは園田さんが差し出した手を取り立ち上がった。2人はお互いに微笑みあっている。
なんかいいよね、あの2人の関係って
「それで、ことりさんもやるんですよね?」
「うん!でも、シロ君はあんまり驚いてないね」
「ええ、お二人ならきっと協力するだろうなって思ってたので」
それに、園田さんもアイドルに興味がありそうだったし
「白羽君!これで4人だよ!」
「はい。それで、これからどうしますか?」
「もちろん、アイドル部を申請しに行くよ!」
そうして僕達はアイドル部申請の為、生徒会室に向かうことになった。どうやら部活を立ち上げる為には生徒会に申請書を提出し、許可を貰わないといけないらしい。
「………生徒会か」
あれ、生徒会ってことは………あの2人もいるよね
―――――――――――――――――――――
というわけで、やってきました生徒会室!!
絢瀬さんと東條さんがいるかもしれないから少しテンションが上がっています!!
「「「「失礼します」」」」
「どうぞ」
あ、絢瀬さんの声だ!
………待てよ……東條さんは昨日会ったから心配ないけど、絢瀬さんって僕のこと覚えててくれてるかな?
もし「……誰?」なんて言われたら立ち直れないよ?
僕はちょっと不安な気持ちを抱えて生徒会室に入った
「何の用かし…………優木くん?」
「あ、覚えててくれたんですね!お久しぶりです、絢瀬さん。東條さんもこんにちは」
「昨日ぶりやね」
「「「……え!?」」」
僕が2人と顔見知りな事にびっくりしたようで、穂乃果さん達は驚いた表情を見せた
あ!そういえば、皆さんには言ってなかったな。僕が絢瀬さん達と面識があるって。
絢瀬さんは僕がここにいる事にびっくりしたのか驚きの表情を見せ、東條さんはまるで来る事が分かっていたかのように、少し微笑んでいる。
もしかして……東條さんの占いって結構当たるのかな?会う機会は少ないと思ってたのに、いきなり会っちゃったよ
「……中学の生徒である君が何の用?」
「用があるのは僕じゃなく、こっちの3人です」
そう言うと絢瀬さんの視線は僕から穂乃果さん達に移った。
「そう……それで、何の用?」
「え!?えっと……こ、これを出しにきました!」
穂乃果さんは3人の名前が書かれている申請書を絢瀬さんの机に出した
「……これは?」
「アイドル部、設立の申請書です!」
「それは見れば分かります」
「では、認めていただけますね」
「いいえ、部活は同好会でも最低5人は必要なの」
………え?そうなんですか!?
ちょっと皆さん、聞いてた話と違いますけど!?
「ですが、校内には部員が5人以下の所も沢山あるって聞いてます!」
「設立した時は、みんな5人以上いたはずよ」
成る程……つまり、設立する為には5人必要だけど、その後は例え1人でも部活を続けて行くのは問題無いというルールなのか
「じゃあ、あと1人」
「いや、穂乃果さん。僕を数に入れないでください!僕は中学の生徒なので学院の部活に入れるわけないですよ!僕はあくまで手伝いです!!」
「あ、そっか!」
ここに来る前、申請書に僕の名前書こうとしてたからその時にも説明したのに…この人、本当に大丈夫か?
「あと2人やね」
「あと2人……分かりました。行こう」
「待ちなさい」
出ていこうとする僕達を絢瀬さんが呼び止めた
「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?中学の子まで巻き込んで」
いや、巻き込まれてませんよ。むしろ自分から言い出しましたし
「廃校を何とか阻止したくて!スクールアイドルって今凄い人気があるんですよ!だから――」
「だったら、例え5人集めてきても認める訳にはいかないわね」
……………え、今なんて言った?
「え!?どうして……!?」
「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思い付きで行動した所で、状況は変えられないわ」
「「「…………」」」
穂乃果さん達は絢瀬さんの言葉を聞き黙ってしまった。この人が言っていることは間違ってない、だから反論しようとしても出来ないのだろう。
――――でも……なんだろう?この違和感は
「変な事考えてないで、残り2年自分のために何をするべきか、よく考えるべきよ」
そう言い、絢瀬さんは部活申請書を突き返してきた。それは5人集めてから持って来いという意味ではなく、何度出しても認めないという意味なのだろう
「……………行こう」
穂乃果さんは力無くそう言い、生徒会室を出て行こうとする。僕も出て行こうとしたのだが、また絢瀬さんが僕達を呼び止めた。
「ごめんなさい、優木君だけは残ってくれる?少し話がしたいの」
「「「「え?」」」」
いや、僕を呼び止めた。穂乃果さん達は心配そうな顔で僕を見ている。
「分かりました……穂乃果さん、先に帰っててくれませんか?」
「え?……でも」
「穂乃果ちゃん、海未ちゃん……行こう」
「ことりちゃん…………」
「ことり……」
「シロ君なら……大丈夫だから!」
どうやらことりさんは分かってくれているみたいだ。僕も絢瀬さんに話がある事を
「うん……分かった。じゃあね白羽君」
「穂乃果………分かりました。それでは優木君、また明日」
「はい!お疲れ様でした」
そう言い、3人が生徒会室から出て行くのを見送り、僕は絢瀬さんと東條さんの方に再び顔を向けた
「……それで、僕に何の用ですか?」
「どうして、君はあの娘達を手伝っているの?」
「……どうして?」
「君はあくまで中学の生徒。学院の廃校は貴方とは関係ないはずよ。なのにどうしてそんな事をしているの?この学校に思い入れなんてないでしょ」
「……………」
「話を聞かせてもらったけど、貴方……クラスの子達とあまり上手くいってないそうね。まだ入学したばかりとはいえ、このままだと本当に孤立するわよ。そうなれば、共学化の計画も無くなる。あの娘達にも言ったけど、貴方も自分の為に何をするべきか、よく考えるべきよ。もし……テスト生の義務感でやっているなら、いい迷惑だわ」
「…………エリチ、ちょっと言い過ぎやで」
「希は黙ってて」
絢瀬さんは意地悪で言っているわけではない。言い方はキツイけど、全部僕の為に言ってくれている。
絢瀬さんの言う通り、僕は中学の生徒だ。テスト生と言っても廃校を何とかする為に入学したのではなく、共学化の試運転としてここにいる。なら、クラスメイトと打ち解けるように努力した方がいい。そうした方が学院の為にもなる…………………でも
「確かに、僕は皆さん程この学校に対して思い入れとかは無いです。穂乃果さんには、無くなってほしくないって言いましたけど、その気持ちも皆さんよりは薄いでしょうね」
「だったら「でも」…?」
「……………悲しそうだったんです」
「「え?」」
「3人共、どこか泣いてるような気がしたんです。それ程、この学校が廃校になると聞いてショックだったんでしょうね」
「「…………」」
「あの3人は僕と違って本気です。この学校が大好きで、本気で廃校を阻止したいと考えてます。別にテスト生の義務感でやってる訳じゃありません。困っているから助けたいんです」
「「…………」」
「だから、僕はこの学校の為というより、あの人達の為に廃校を阻止したいんです………泣いてほしくありませんから。僕が手伝う理由はそれだけで十分です」
「「…………」」
…………あれ?なんか変な事言いました?
なんか反応して欲しいんですけど。黙られると、なんか変な事言ったんじゃないかって不安になるんですけど
「…………そう」
「ふふっ、やっぱり優木君はええ子やね」
「…………ど、どうも?」
え、なんで東條さんはそんな微笑ましい物を見るような目を向けるんですか?そんなに変な事言ったかな?
「…………それで、話は終わりですか?」
「………ええ、わざわざ引き留めてごめんなさい。もう行って大丈夫よ」
「……………」
「…………何?」
僕は先程感じた違和感が何なのか気になり、絢瀬さんの事をジッと見た。その視線が不快だったのか絢瀬さんは少し顔を歪めた
「す、すみません!………あの……」
「何?」
「…………いえ、なんでも無いです。失礼します」
そうして僕は生徒会室を出て行った。本当はアイドル部の事で僕も話をしようと思ったけど、あの様子だと絶対認めてくれないよな〜
―――少なくとも今は
「……さて、これからどうするか」
「……白羽君!」
「……え?」
僕がこの先どうするか悩んでいると、横から声がかけられた。
僕はその声が誰なのか分かり、ロボットのようにギギギと首を横に向けると、そこには帰った筈の穂乃果さん達が少し顔を赤らめて、嬉しそうな表情で立っていた
「え…………な、なんでまだ居るんですか?」
「えーっと……やっぱり白羽君が心配だったから」
「す、すみません」
「シロ君、カッコ良かったよ!」
「…………もしかして、聞いてました?」
「「「うん!(はい)」」」
うん、一旦落ち着こう。今の状況を整理してみよう。
まず穂乃果さん達は僕が心配で帰らずに待っていてくれた。うん、それは嬉しい。ありがとうございます
問題はさっきの会話を3人が聞いてたって事だ。
え、僕さっきなんて言ってた?
―――困っているから助けたいんです
―――僕はこの学校の為というよりあの人達の為に廃校を阻止したいんです
―――泣いてほしくありませんから
長々と何口走ってんのぉぉぉぉ!!!
っていうか助けたいって何様だよ!!!
だから東條さんはあんな顔で僕を見てたのか!?
どうしよう……恥ずかしくて死にそうなんだけど!!
こうなったら…………
「…………さよなら!!」
逃げよう
「「「白羽(優木)(シロ)くん!?」」」
僕はその場の空気に耐えられず、3人から走って逃げた。3人も追いかけてきたが今は1人にして欲しい!!今、絶対に僕の顔は真っ赤だ。こんな状態で穂乃果さん達の顔なんて見たら恥ずかしくて本当に死ぬ!!
僕は全力で走ったが、追いかけてきた園田さんに校門の所で捕まった。
園田さん、足速いな。いや……僕が遅いだけか
「白羽君、ありがとね!私達の為に」
「さっきの言葉、嬉しかったですよ」
「うんうん!私もすっっごく嬉しかったよ!」
「忘れてください!!」
捕まった後、穂乃果さんと園田さんは良い笑顔でお礼を言ってきて、ことりさんはまた僕に抱きついている
………これ絶対揶揄われてるよね
「……それで、これからどうしますか?」
「「「…………」」」
「人数が足りないなら、部活を作るのは無理です」
「…………」
やっぱり、まだ絢瀬さんに言われたことが頭にあるのか、穂乃果さんは顔を下に向けてしまった。
「ガッカリしないで。穂乃果ちゃんが悪い訳じゃないんだから」
「生徒会長だって、気持ちは分かってくれてるはずです…………でも、部活として認められなければ、講堂は借りられないし、部室もありません。何もしようがないです」
「これから一体どうすれば」
これからのことで悩む園田さんとことりさん。確かに今の状況は一見詰んでいるように見える。
だけど、こんなことでは諦めない人間が目の前にいるんだ。
………なら、僕は背中を押してあげればいい
「………部活じゃなくてもいいんじゃないですか?」
「「えっ?」」
「ですよね、穂乃果さん!」
「うん!……白羽君の言う通りだよ!」
「どういうことですか?」
「だって、皆さんがやりたいのはアイドル部じゃなくてスクールアイドルなんですよね。なら、別に部活じゃなくても活動はできます」
「だけど……部活じゃなくちゃ何もできないよ」
「部活を作れないのは、生徒会長が言ってたことが正しいから仕方ないと思う。でも、それが諦める理由にはならないよ!私、こんな所で諦めたくない!!」
そうですよね……貴女はこんな所で諦めるような人じゃない
「部活は今の人数ではできません。なら、できないことに悩むのではなく、今の自分達には何ができるのかを考えましょう」
「………穂乃果…優木君。そうですね、私も諦めません」
「……うん!私もこんな所で諦めたくない!」
僕達の言葉を聞き、ことりさん達の顔にもようやく光が戻った
「それで、具体的にはどうするんですか?」
「私はライブをしたい!」
「ライブ?」
園田さんの質問に穂乃果さんは元気よく答えた
…………ライブかぁ
確かに、アイドル活動で最初に思いつくのはライブだろうな。でも、問題は色々ある。そもそも場所は借りれるのかな?
「あの〜ライブをするのはいいんですけど、場所はどうするんですか?講堂は借りられないんですよね?」
「あ、待ってください!確か…………」
僕の疑問を聞いて、園田さんは生徒手帳を取り出し、何かを調べ始めた
「……やっぱり、生徒は部活動に関係なく講堂を借りれるみたいです」
「本当!?じゃあ明日の朝に、もう一度生徒会室に行こう!」
「「はい(うん)!」」
「じゃあ、会場は講堂ということで。日程とかは帰りながら話し合いましょう」
「「「うん(はい)」」」
講堂が借りれるのはありがたい。これなら場所を探す手間が省ける。
それから4人でこれからのことについて話し合いながら帰宅した。話し合いの結果、ライブの日程は一か月後にある新入生歓迎会の日になったのだが……………準備期間が短いんだよな
場所は何とかなるようだけど、他にもまだ考えないといけないことが山ほどある。正直、間に合うのか不安だ
「それで、シロ君。ちょっと聞きたいことがあるんだけど………」
「はい……?」
「生徒会の二人とはどういう関係なのかな?
…………仲良さそうな感じだったけど」
ことりさんは僕の肩を掴み、笑顔で詰め寄ってきた。
なんか黒いオーラを纏って見える
…………え、なんか怖い。それと痛いです
「あ!それ私も気になってた!」
「私も驚きました」
「…え、えっと~、実は…………」
僕は絢瀬さんと東条さんとの関係を3人に説明した。関係と言っても二人とも2回しか会ってないから顔見知りってだけなんだけど
「…………というわけです」
「よかった〜♪」
説明し終えるとことりさんは機嫌を直してくれた。
それにしても、なんであんなに怒ったんだ?
「ま、まぁ僕の話はいいです。それより、ちょっと気になったことがあるんですけど」
「「「??」」」
「絢瀬さん……生徒会長って学校だとあんな感じなんですか?」
「あんな感じ……ですか?」
僕の質問が抽象的すぎたのか、3人とも首を傾げている
「なんていうか、前にあった時と印象が全然違ったので」
「シロ君が前に会った時はどんな感じだったの?」
「ん~~~もっと柔らかい雰囲気だったというか」
「「「柔らかい?」」」
ことりさん達は信じられないような顔で僕を見てきた。まぁさっきのことがあったから無理もないか
「あとは……笑顔が綺麗だったとか!」
前に会った時、笑った顔がすごい印象的だったんだよな。でも、さっきはずっとムスッとしてたし
「「「…………」」」
…………あれ、なんかまたことりさんが怖い笑顔で迫ってきてるんだけど。穂乃果さんと園田さんもなんか呆れてるような顔でこっちを見てるし
「…………シロクン?」
「は、はい!!」
「…………正座♪」
「え……?」
「…………正座♪」
「いや、でもここは外ですし」
「もう一度言わせるの?」
「…………ハイ」
僕はことりさんの圧に負け、歩道のど真ん中で正座をした。それから、何故かことりさんの説教が始まった。まぁ、ことりさんの圧が怖すぎてほとんど話は耳に入ってこなかったんだけど
「海未ちゃん、白羽君ってもしかして……鈍感?」
「多分、そうだと思いますよ」
「あ、あはは…ことりちゃんも大変だね」
お二人とも、聞こえてますよ!!「鈍感」ってなんですか!?っていうか今大変なのは僕ですから!!
それから20分程経ってから穂乃果さんが止めてくれたお陰でなんとか収まった。
正直、もっと早く止めてほしかった
――――――――――――――――――
ことりさんからなんとか解放され、僕は帰宅した。
…………ことりさんの機嫌は結局治らなかったけど
「…………ただいま」
「おかえりなさい、兄さん。今日もお疲れ様です」
「うぅぅぅ……真白ぉぉぉ~!!」
家に入ると、真白が可愛い笑顔で出迎えてくれた。僕はそんな真白を思いっきり抱きしめた。
うん、やっぱり真白が一番だわ!
「に、ににに兄さん!!どうしたんですか!?」
「なんでもないよ~!」
それから、5分程真白を抱きしめていたのだが「いつまでやってるんですか!!」っと怒られてしまった。
けど、まんざらでもなかったのか真白も少し嬉しそうだった。
「…………ライブかぁ」
やっぱり不安だ。準備期間は一か月しかないし、まだ場所以外のことは決まっていない。
それに…………いや、やめよう。考えても仕方ない
「…………ツバキに相談してみるか」
3人の事を手伝うと決めたが、アイドルの事など分かるわけないのでツバキに電話をかけた。
『もしもし、どうしたんだ?』
『ツバキ、今大丈夫?』
『ああ、問題ないよ』
『実はさ…………』
――――――――――――――――――
『なるほど、スクールアイドルの手伝いか』
『うん、それで……1ヶ月後のライブに向けて何をやったらいいと思う?』
『そうだな………歌やダンスの練習はもちろん、衣装の用意、グループの名前を決めること………後は体力をつけることだな』
『体力?』
『ああ、踊りながら歌うことは想像以上に体力が必要なんだ。それにアイドルは歌う時、笑顔を崩してはいけないからな。走り込みなんかもしておいた方がいい』
確かにテレビに出ているアイドルって歌う時はずっと笑顔だよな。よく考えれば体力なしにそんなことできるわけがない
『へぇー、良く知ってるね』
『…………ほとんど姉の受け売りだけどな』
『なんか言った?』
『いや、何も言ってないよ』
……今、絶対なんか言ったよね。
『それで、お前の方はどうなんだ?クラスで馴染めたのか?』
『……ううん、友達はできたけど、ほとんどの女子には避けられてるよ』
『……そうか』
スクールアイドルを手伝うのはいいけど、こっちも何とかしないとだよな。
『……帽子取ればいいんじゃないか?』
『……………簡単に言うね』
『お前は目元まで帽子で隠してるから、ほとんど顔が見えない。その事も避けられてる原因のひとつだと思うぞ』
…………確かにそうだ。顔を隠してる人間とそうじゃない人間、どちらが話しかけやすいかなんて考えるまでも無い
『…………でも、それでさらに避けられたら』
『お前は人の目を気にしすぎだ。その先輩達には見せられたんだろう』
見せたというか、成り行きでそうなっただけです!!
『…うっ、でも気にしちゃうんだよ』
何度も言ったが、この見た目がコンプレックスというわけではない。ただ奇異な視線を向けられるのが嫌なんだよな
『…………なら、お前にとって大切な何かを見つけろ。人でも趣味でも、スポーツとかでもいい』
『え?』
『そうすれば周りの視線なんか気にならなくなる』
大切なもの?そんなので本当に気にならなくなるものなの?
………というか意外だな。他人に興味がないツバキがそんな事を言うなんて
『趣味とかは無いけど……大切な人なら真白や母さん、ツバキだって』
『そう言ってくれるのは嬉しいけど、そう言う意味じゃないよ。俺達は昔から付き合いがあって、もはや兄弟みたいなものだ』
『…うん』
確かに僕はツバキの事をどこか兄のように思っている。僕が困った時は必ず助けてくれるし、こうしてよく相談にも乗ってくれる。そんな人間がいればそう思ってしまう
『そうじゃなくて、お前の学校でだ』
『……なら、穂乃果さん達とか』
『その高坂って人の事も、困っていたから助けたいと思ったんだろ。その人達だったからお前は動いたわけじゃない。もしその人達じゃなく、別の誰かがやっていても、お前は動いたはずだ。それは周りにいる他人と大して変わらない』
『…………』
『白羽……さっき言ってたスクールアイドルの手伝いだけど。もし「やりたい」という気持ちではなく「困っていたから助けたい」という気持ちでやるなら、やめといた方がいい。お前の為にも、その人達の為にも』
ツバキの言葉に僕は反論が出来なかった。ツバキの言う通り、僕は手伝いがやりたいのではなく、困っているから助けたいという気持ちが強い
「手伝いがしたい」という事と「助けたい」という事は似ているけど、全然違うものだ
『悪いな、こんな言い方して。別に困っている人を助けるのは悪い事じゃない、その優しさはお前の美点のひとつだ。でも、『やりたい』という気持ちで手伝わないなら、お前の中でまだその3人は特別ではないという事だ』
僕にとって大切な何かを見つけろ……か
『もし見つけられれば、きっとお前は一歩踏み出せるはずだ』
『…………本当?』
『……ああ』
『……分かった。ありがとね、相談に乗ってくれて』
『気にするな。また何かあったら連絡してくれ』
『うん、じゃあおやすみ』
電話を切った後、ツバキの言った言葉がずっと頭に残っていた
―――お前にとって大切な何かを見つけろ
―――そうすれば周りの視線なんか気にならなくなる
もし僕がそれを見つけられたら、他人の目を気にせずに生きていけるようになるのかな?
―――もし「やりたい」という気持ちではなく「困っていたから助けたい」という気持ちならやめといた方がいい。お前の為にも、その人達の為にも
その通りだ。やりたい事をやっている人達をそうじゃない人間が手伝っても邪魔でしかない。何よりあの人達に対して失礼だ
「…………やりたいっていう気持ちか」
でも、絢瀬さんにも言ったように、あの人達に泣いてほしくないって気持ちに嘘はない………でも、それは誰に対してもそうだ。例え他人でも、知らない人でも、泣いてるのを見ると放っておけない。
でも、あの時言った言葉は…………
「あの人達の為に廃校を阻止したい……この気持ちもやりたい事じゃなくて、助けたいって気持ちからくるものなのかな?」