白羽のイラスト書き直したり、この後の展開考えてたらすごい間が空きました
――――――――――――――――放課後
いよいよ明日は本番。今日が最後の練習だ。
これまで以上に気合いを入れて屋上にやってきた!
……………のだが
「………海未さん、どうかしたんですか?」
「…………」
朝まではいつも通りだったはずの海未さんが、何故か足を抱えてうずくまっていた。
―――あれ、またこの展開?この前の穂乃果さんと同じじゃない?
「…………やっぱり無理です」
―――ホントに何があったんですか!?
「え?どうしたの?海未ちゃんならできるよ!」
「…………出来ます」
「「「え……?」」」
「歌もダンスもこれだけ練習してきましたし、
でも……人前で歌うのを想像すると……」
「緊張しちゃう?」
なるほど、これは難しい問題だな。メンタルの問題なら下手に言葉をかけても逆効果になるかもしれないし。そもそも海未さんの性格からして、初めてのライブで緊張するなと言う方が無理な話だ。
「う~~ん、どうしましょう?」
「そうだ!そういう時はお客さんを野菜だと思えってお母さんが言ってた!」
「野菜?…………………私に一人で歌えと!?」
「………そこ?」
――――どんな想像したんですか?
「はぁ~、困ったなぁ……」
「でも、海未ちゃんが辛いんだったら何か考えないと………」
「そうですね。このままだと緊張して歌えない、なんてことにもなりかねません」
「人前じゃなければ大丈夫なんです!人前じゃなければ………」
いや、アイドルなんですから人前じゃないと意味がありませんよ。でも、『頑張ってください!』とか言っても逆にプレッシャーになる可能性があるからなぁ…
「…………穂乃果さん、どうします?」
今回はあんまり良い案が思いつかないので、僕より海未さんの事が詳しい穂乃果さんに託すことにした。
「よし!………海未ちゃん!色々考えるより慣れちゃった方が速いよ!」
「………な、慣れる?」
「うん!じゃあ行こう!」
「行くって、何処に行くんですか?」
「それは………………」
――――――――――――――――秋葉の大通り
「ここだよ!!」
「「「秋葉?」」」
穂乃果さんに連れてこられたのは、秋葉の大通り。
夕方ということで人がいっぱいいる。
「ここでライブのチラシを配ろう」
「ひ、人がたくさん………」
「当たり前でしょ!そういう所を選んだんだから。ここで配ればライブの宣伝にもなるし、大きな声出してればその内慣れてくると思うよ」
なるほど、確かにいい考えだな。人が多いこの場所で慣れさせるってことか…………でも、大丈夫かな?
「海未さん……大丈夫ですか?」
「…………」
「…………海未さん?」
(お客さんは野菜、お客さんは野菜、お客さんは野菜…………)
「…………あれ?」
―――全然反応が無いんだけど……本当に大丈夫か?
「ダメかな?ことりちゃん、白羽君」
「いえ、僕は大丈夫です」
正直、僕も苦手だから遠慮したいけど、そんなこと言ってる場合じゃない。
「私も平気よ。でも、海未ちゃんが…………」
「「ん……??」」
ことりさんに言われて海未さんの方に視線を向けると、そこにはガチャガチャを回している海未さんの姿があった
「あ、レアなの出たみたいです………」
「海未ちゃん!!」「海未さん!!」
―――ヤバい!!この人、現実逃避し始めてるぞ!!
「………なら、あそこに行きましょう」
「「「あそこ??」」」
―――――――――――――音ノ木坂学院・校門前
僕が提案したのは学院の校門。慣れた場所の方がチラシ配りもしやすい筈だし、ここなら秋葉よりは人が少ないから、海未さんも怖がったりしないだろう。
「ここなら、秋葉よりはマシですよね」
「白羽君ナイスアイデア!!」
「まぁ、ここなら……」
「じゃあ、始めるよ。μ's ファーストライブやりま~す!!よろしくお願いしま~す!!」
「よろしくお願いしま~す!!」
穂乃果さんとことりさんは問題ないみたいだ。
海未さんは…………
「………よ、よろしく、お願いします」
声もあんまり出てないし、積極的に行かないから無視されてるな。う~~ん、今回はあまり声をかけない方がいいかな。
それに………僕も、海未さんの心配してる場合じゃない。僕だって苦手だけど……頑張らなくちゃ!!
(まだ、女の人は苦手だけど………)
「…………あ、明日の講堂で μ'sのファーストライブがありま~す!!是非見に来てくださ~い!!」
僕も穂乃果さん達に負けないぐらいの声でチラシを配り始める
<<<海未side>>>
「お、お願いしま~す…………」
先程から、全然受け取ってもらえません。穂乃果のようにやろうとしても、恥ずかしくて声が出ませんし
………やっぱり、無理です
「…………はぁ~」
「海未ちゃん!ダメだよそんなんじゃ!」
「穂乃果はお店の手伝いで慣れてるかもしれませんが、私は………」
「ことりちゃんも白羽君もちゃんとやってるよ!」
穂乃果に言われて、2人に視線を向けると、しっかりと声を出してチラシを配っている二人がいた
「μ'sファーストライブで〜す!!」
ことりはこういうのが得意そうなので驚きませんが
「よろしくお願いしま~す!!明日、是非見に来てくださ~い!!」
「………白羽」
白羽、女性に声をかけるのは辛い筈なのに…………
「ほらっ!!海未ちゃんも!それ配り終えるまで辞めちゃだめだからね!」
「えっ!む、無理です!!」
「海未ちゃん、私が階段5往復出来ないって言った時、何て言ったっけ?」
「うっ………わ、わかりました!やりましょう!
よろしくお願いしまーす!!μ'sファーストライブやりまーす!!」
白羽だってあんなに頑張っているんです。私だけ、何もしないわけにはいきません!!
<<<白羽side>>>
「海未さん………」
………どうやら、大丈夫そうだな。よしっ!海未さんも頑張っているんだ。僕も負けていられない!!
「よろしくお願いしま~す!!」
「………あ、あの」
「え?………あ!小泉さん!!」
チラシを配っていると、以前会った小泉さんが話しかけてきた。星空さんは一緒じゃないのかな?
「お久しぶりです。あの時はありがとうございました」
「う、ううん……大丈夫だよ」
「………それで、何か用ですか?」
「え、えっと………ライブ。み、見に行くね」
「………ほ、本当ですか!?」
「……う、うん」
「穂乃果さ~ん!!ちょっと来てください!!」
直接ライブを見に行くと言ってくれた人は初めてだ。僕は嬉しくなり、穂乃果さん達を呼んだ。きっと喜ぶはずだし、モチベーションも上がるはずだ。
「どうしたの?……あれ、この子は?」
「この人は1年生の小泉花陽さんです。明日のライブ見に来てくれるそうです!!」
「は、初めまして……」
僕が穂乃果さんに小泉さんを紹介すると、小泉さんは少し照れた表情を見せ、頭を下げて挨拶をした
「ほ、本当!!!?」
「来てくれるの!?」
「では、1枚2枚と言わずこれを全部……」
そう言って海未さんは持っているチラシを全部小泉さんに差し出した。
海未さん……それはさすがにダメです!!
「海未ちゃん………」
「分かっています………」
「「「あ、あはは………」」」
2人のやり取りに、僕とことりさんと小泉さんは苦笑いを浮かべた。
「す、すみません。小泉さん」
「う、ううん………大丈夫だよ」
せっかく見に来てくれると言ってくれたのに、なんか変な物見せちゃったよ
「じゃ、じゃあ、私は帰るね。またね、優木君」
「はい!さようなら」
小泉さんは海未さんからチラシを受け取り、帰っていった。もしかして、小泉さんってアイドルが好きなのかな?
「…………小泉さん、か」
―――――――――――――――――――――――
それからチラシ配りを終え、僕はことりさんと一緒に衣装を取りに行っている。3人分の衣装となると1人で持っていくのは大変だということで、僕が付き添うことになった。ちなみに穂乃果さんと海未さんは先に穂むらに行っている
「………こ、ことりさん?」
「…………ふ~~んだ」
「………さっきから何拗ねてるんですか?」
「…………ふ~~んだ」
「こ、ことりさん………」
何故かことりさんは唇を少し尖らせて、そっぽ向いてしまっている。それでさっきから全然顔を合わせくれない………どうしたんだ?
「……シロ君はいつから女たらしな子になっちゃったの?」
「なってませんよ!!??なんでそんな事になってるんですか!!??」
え!?ことりさんには僕ってそんな風に映ってるんですか!??………さすがにショックなんですけど
「だって………また女の子の知り合いが増えてるんだもん」
―――ああ、小泉さんの事か
「穂乃果ちゃんとはすっかり仲良くなってるし、男の子が苦手な海未ちゃんとも、いつの間にか名前で呼び合うようになってるもん」
そういえば、僕と海未さんが名前で呼び合うようになった時も、ことりさんちょっと不機嫌になってたな。
「私知ってるんだよ。シロ君が穂乃果ちゃんに『魅力的です』とか『素敵な笑顔』とか言ってたこと」
「え……?」
ん?………ああ!もしかして、前に穂乃果さんが落ち込んでいた時にかけた言葉の事かな?
「私には、そんなこと言ってくれたことないのに………」
「ことりさん……?」
「ふ~~んだ、どうせ私は穂乃果ちゃんみたいに魅力的じゃ無いも~ん」
「…………………」
………流石に今のは少しイラッとした。機嫌を直してくれないことにではなく、ことりさんが自分の事を魅力的じゃないと言ったことに
「…………ことりさん!」
僕はことりさんの頬をつねった。つねったと言っても、痛みを感じないように優しくだが
「え!?……ひ、
「…………次、さっきみたいな事言ったら本気で怒りますよ」
「シロ君……?」
「ことりさんが何に対して拗ねているのかは分かりません。それでも、これだけは言っておきます。ことりさん………貴女は魅力的な人です。綺麗なところも、優しいところも、穂乃果さんにも負けないぐらい魅力的です。だから……たとえ冗談でも、そんなこと言わないでください」
「…………」
「…………えいっ!!」
僕は掴んでいることりさんの頬を横に引っ張って、口角を上げさせた
「僕が何かしたなら謝ります…………だから、笑ってください。僕は、ムスッとしてることりさんより、笑っていることりさんの方が好きですから」
「…………………………………ずるいよ、シロ君」
僕はことりさんの頬から手を離し、少し距離を取った。
「………すみません。痛くありませんでしたか?」
「ううん、大丈夫だよ。私もごめんね」
「いえ、もう気にしてないので大丈夫です。それより、もうあんなこと言っちゃダメですよ!」
「うん♪」
良かった。機嫌も直ってくれたようだ。
…………それより、なんであんなに拗ねてたんだ?
「シロ君、早くいかないと穂乃果ちゃん達に怒られちゃうよ♪」
「はい。そうですね…………」
…………ま、いっか!!
ことりはすっかり機嫌が良くなり、鼻歌を歌いながら衣装の仕上げを頼んでいるお店に向かった。
―――――――――――――――――――――――
お店で衣装を受け取り、僕達は穂乃果さんの家の穂むらにやって来た
「お待たせ~」
「すみません、ちょっと遅くなりました」
「あ!ことりちゃん、白羽君。これ見て!!」
部屋に入ると、穂乃果さんと海未さんはパソコンを開いてA-RISEの動画を見ていた。
「わぁ!すごい!!」
「えぇ、本当に上手いですよね………」
A-RISEのレベルは高い。それも、プロのアイドルにも負けない程。ダンスについて少し学んだからこそ、彼女達がどれだけ凄いのかが分かる
「あっ!もしかしてそれ衣装?」
僕達が持ってきた紙袋に気づいた穂乃果さんが期待の眼差しで聞いて来た
「うん!さっきお店で最後の仕上げしてもらって。シロ君と取りに行ってたの」
「ワクワク!!」
「………じゃ~ん!!」
ことりさんは持ってきた衣装を出し、二人に見せた。完成したのは、前にことりさんがデザインしていたピンクが主体の可愛らしい服だった。
「わぁあ!!可愛い!!本物のアイドルみたい!」
「ホント!?」
「うん!すごい!すごいよことりちゃん!!」
穂乃果さん、テンションが上がるのは分かりますが、少し落ち着いてください。あと、肘で僕の事をグイグイ押さないでください。
「シロ君にも少し手伝ってもらって、なんとか作れたんだ!!」
いや、手伝ったと言ってもほんとに少しだけど………
「…………ことり、白羽」
「「ん?」」
穂乃果さんとことりさんがテンションを上げて話していると、今まで黙っていた海未さんが口を開いた
「そのスカート丈は?」
「「…………あ」」
―――あ、やばい。すっかり忘れてた。
――――――――――――数日前
僕とことりさんが衣装の事を話し合っていた時……
「いいですか?スカートは最低でも膝下でなければ履きませんよ!!いいですね!!」
海未さんはことりさんの肩を掴み、凄い形相で詰め寄っている
「は、はいぃぃ~~~~!!」
「ちょっと、海未さん。落ち着いて………」
「白羽は黙っていてください!!!」
「は、はい!!!すみません!!」
…………………………ということがあったんだよね。あの時の海未さんはマジで怖かった。実際ことりさん泣いちゃってたし。そのあと、ことりさんが僕に泣きついてきて、慰めるのが超大変だった
「言ったはずです。最低でも膝下まで無ければ履かないと」
海未さん、そんな怖い顔で詰め寄ったら、ことりさんがまた泣いちゃいますって。あと可愛い顔が台無しですよ
「だ、だってしょうがないよ。アイドルだもん」
「アイドルだからと言って、スカートは短くという決まりはない筈です!」
「それはそうだけど………」
「でも、今から直すのはさすがに………」
「そうですよ、本番は明日なんですから………」
「そういう手に出るのは卑怯です!ならば、私は1人だけ制服で歌います!!」
そう言って海未さんは立ち上がり、部屋を出ていこうとする
「ちょ、ちょっと海未さん……!」
「大体3人が悪いのですよ。私に黙って結託するなんて」
「だって…………………絶対成功させたいんだもん。歌を作って、ステップを覚えて、衣装も揃えて。ここまでずっと頑張って来たんだもん。この4人でやってよかったって!頑張ってきて良かったって!そう思いたいの!!」
「…………穂乃果さん」
「思いたいの~~~~~!!」
穂乃果さんは窓を開け、夜に向かって大声で叫んだ。
…………近所迷惑ですよ
「何をしているのですか!?」
「それは、私も同じかな。私も、4人でライブを成功させたい!」
「ことり………」
「僕も見てみたいです、この衣装を着て、歌っている皆さんを」
「白羽………いつもいつも、ずるいです」
そう言って海未さんは、穂乃果さんの顔を見つめ……
「………………分かりました」
……優しく微笑んだ。
ーーーやっぱり、優しい人だよな
「海未ちゃん!…………だ~~い好き!!」
「私も~~~!!」
穂乃果さんとことりさんはよっぽど嬉しかったのか、海未さんに抱き着いた。海未さんも2人のハグを受け入れて、一緒に笑っている。
やっぱりいいよな………人が笑顔になる瞬間は
「ほらっ!シロ君もおいで!」
「うんうん!白羽君も一緒にぎゅ~ってしよう!」
「ぼ、僕はいいですよ。海未さんも嫌でしょうし」
「「えぇ〜〜」」
なんでそんなに残念そうなんですか!!女の子なんですからもっと恥じらいを持ってください!
「…………白羽なら、別にいいのですが」
「海未さん?なんか言いました?」
「い、いえ!!何も言ってません!!」
(わ、私はなにを言っているんですか!!!???)
「海未さん??」
なんか、海未さんの顔が赤いような気がするんだけど?
「ねぇ!今から神社にお参りに行かない?明日のライブの事をお願いしに行こうよ!!」
「え、今からですか?僕はいいですけど………」
―――流石にこんな時間だから、2人共断るのでは?
「私もいいと思うよ!」
「私も構いませんが」
―――あ、意外とノリノリだった
「よしっ!!それじゃあ神社に行こう!!」
――――――――――――神田明神
穂乃果さんの思いつきで僕達は神田明神にやって来た。この一ヶ月、練習で毎日来ていたのでここの長い階段にもすっかり慣れたものだ
「それじゃあ、みんなでお参りしよう!!」
「あ、僕はいいです。皆さんだけでどうぞ」
「「「えぇぇぇ!!?」」」
―――声デカいですよ
「な、何で?白羽君も一緒にやろうよ!!」
「僕の事はいいですから、ほら!3人でお参りしてきて下さい」
―――願い事はあるけど……神様に頼むつもりは無い
そう言うと、3人は神社の方に歩いていった。穂乃果さんは最後まで頬を膨らませてこちらを見ていたけど
「どうか……ライブが成功しますように!いや、大成功しますように!!」
「緊張しませんように………」
「みんなが楽しんでくれますように」
3人は自分達の願いを口にし、手を合わせた。数秒の間、目を閉じて願い事を祈った。
「明日か………楽しみだね!」
「うん!」
「はい」
参拝を終えると、3人は夜空を見上げて、手を繋いでいる。きっと、明日のライブの事を考えているのだろう
「よし!明日のライブに向けて、今日は早く帰ろうか!」
「うん♪」
「そうですね」
「はい。じゃあ、今日もお疲れ様でした。明日は頑張りましょう!」
「「「うん(はい)!!」」」
それから、3人には先に帰ってもらった。一緒に帰ろうと言われたが『寄るところがある』と言って断らせてもらった………まぁ、嘘なんだけど
「………………さてと」
僕が神社に残った理由は――――
「もう出てきていいよ………
――――ツバキと話す為だ
「なんだ、気づいていたのかい?」
「……まぁね。それで、なんで此処にいるの?」
「夜の散歩でここに来ていたら、白羽達が来たから邪魔しないようにと思ってね」
「ああ、そういうことね」
そう言えば、ツバキって夜が好きなんだよな。昔、夜だと人が少ないから散歩すると気持ちが良いって言ってたし
「……それで、何か用?」
「いや、用があるってわけじゃないよ。さっきも言ったが、お前と会ったのは偶然だし。せっかく会えたから、お前と話したいと思っただけだ」
「そっか………………ありがとね」
「何がだ?」
「この一ヵ月色々協力してくれて。お陰でライブができるよ」
「大した事はしていないよ、ダンスの振りを考えたのはお前だ。俺は少し教えただけ」
以前言ったように、今回のライブのダンスはツバキに協力してもらって僕が考えた。もし、ツバキが手伝ってくれなかったらダンスは完成しなかったかもしれない。
「やっぱり、穂乃果さん達に会う気は「無い」………デスヨネー」
「何度も言ったが、俺が手伝ったのはお前の為だ。俺はあの人達に興味はない」
「ソ、ソウデスカ……」
相変わらずだな……何回か穂乃果さん達に紹介しようとしたんだけど『会う気は無い』と言われて、結局紹介できてないんだよね。
「………………白羽」
「何……?」
「……………これは、お前のために言う」
ツバキは何かを心配するような表情で僕の事を見てきた。僕はその顔と声色でツバキの言いたい事が直ぐに分かった。
「……明日のライブは「ツバキ」…ん?」
「分かってるよ………分かってるから。大丈夫」
「なんだ、気づいているのか?明日のライブが――」
ツバキが伝えたい事、それは――――――
「―――
――――――現実だ
「………うん」
これは、少し前から分かっていた事だ。確かに、3人の歌と踊りは上手くなった。けど、問題はそこじゃない。そもそも、このライブは条件が悪すぎる。新入生歓迎会ならば、部活に入っている人は忙しくてライブを見に行く暇などないだろう。部活に入ってない人も結成して僅か一ヵ月、名前も売れていないスクールアイドルのライブをわざわざ見に行く人はいない。明日のライブを見にくる人は間違いなく少数………………いや、誰も来ない可能性だってある
「………その様子だと、伝えてないんだな」
「うん……」
「理由を聞いてもいいか?」
「……………………
「ん?」
「
「……………そうか」
僕の答えを聞いたツバキは優しく微笑んだ。まるで、そう答える事が分かっていたように
「あのさ………僕って、酷い奴かな?」
「それはお前次第だ。このまま
「……………」
「でも………このまま指をくわえて見てるつもりはないんだろ?」
「……………うん」
「何とかするんだろ、お前なら」
「……………出来るかな?」
「大丈夫だ。お前なら、
「僕達が仲良くなった時の話?………懐かしいね」
――――あの時のツバキ、今と違って少し荒れてたからね
「泣いて欲しくないなら、お前が守れ。一度決めたのならやり遂げて見せろ」
「………うん」
僕の願い事…………それは、ライブの成功じゃない
…………あの人達が笑ってライブを終えること
これは、神様に頼んではいけない。
僕が……自分の力でやらなきゃいけないことだ
「じゃあ、そろそろ帰るか。家まで送っていくよ」
「ありがとう……」
―――――――――――――――――――
僕とツバキは神田明神を後にして、並んで帰路についている。
「それで………明日はどうするつもりだい?」
「う〜〜ん………とりあえず、チラシ配りで声をかけまくってみるよ」
「そうか……………………普通だな」
―――酷くない!?
「普通って!?それしかできないでしょ!!」
本番は明日。今更何か対策を打つ時間なんてない。出来ることと言えば、音ノ木坂の生徒に声をかけて、来てくれる人を探すしかない
「それで人が集まらない事は、お前だって分かってるんだろ?」
「……………」
核心を突かれて、反論が出来ずに顔を下に向けていると、ツバキは―――
「…………まぁ、頑張れよ。応援してるから」
―――軽い感じでそう言った。
「えっ!?な、なんかアドバイスとか無いの!?」
「アドバイスって、音ノ木坂の生徒でもない俺に何を言えと?」
「うっ………そ、それはそうだけど………」
こういう時はいつもツバキが助言をくれていたので、今回も何か言ってくれるのではないかと思ってたんだけど……
「アドバイスなんて必要ない………お前だって考えはあるんだろう?」
「………まぁ、一応」
ツバキの言う通り、僕の中でも少し考えはある………でも、上手くいく保障何てどこにもない。
「なら大丈夫だ。
「っ!?その言葉って……!!」
「ん?……どうかしたか?」
僕は驚いた表情をツバキに向けた。なぜなら、ツバキが言ったのは以前僕が穂乃果さんの背中を押すために言った言葉だったからだ。
「ふふっ……………あははははっ!」
ツバキの言葉を聞いて、僕は笑いをこらえることが出来なかった。もちろん、ツバキの言葉が可笑しいと思って笑ったわけでは無い。ただ………嬉しかった
「どうした??何か変な事言ったかい?」
「ううん、全然!ただ………ツバキが僕に言ってくれたように、血のつながりは無くても、僕達は兄弟なんだなって思っただけだよ」
「ん???」
僕の言葉を理解できずにツバキは顔を傾けている。
まぁ、いきなり笑いだしたらそういう反応になるよね
「あ!………じゃあ、僕こっちだから!ありがとね、わざわざ忠告しに来てくれて!」
夢中になって話していると、いつの間にか家の近くまで来ていた。僕は先ほど抱えていた不安が嘘のように消えて、笑顔でツバキにお礼を言った。
「気にするな、明日は頑張れよ」
「うん!」
「全く、相変わらず鈍感だな。他人の好意にも、
自分自身の
ツバキは帰っていく白羽の背を眺めながらそう呟いた。その顔はまるで、手のかかる弟を見守る本物の兄のようだった。