「――このとき
放課後の図書室のカウンターで、なでしこは受付のリンとその背後で髪を結う恵那と一緒に、少し前に出かけた
あのときのキャンプで、火
「なでしこがじゃんじゃん肉焼くから、後半あたしはだいぶ苦しかったけどね」
リンは苦笑いをする。
「リンちゃんおなかぽんぽこりんだったからねぇ」
なでしこはスマホをスライドし、食後におなかを大きく膨らませたリンの写真を表示した。
「いやこれはブランケットにくるまって丸っこくなってるだけだ」
リンは画像のブランケットを指さした。
あの日はなでしこが持参したブランケットにくるまり『秘密結社ブランケット』を結成した日でもある。
「二人とも、楽しそうで良かった」
恵那は二人の様子に満足したように笑みを浮かべた。
「でも、四尾連湖って、確か、牛の幽霊が出るとか出ないとかってウワサがあるよね? なでしこちゃん、よく平気だったね」
「うん。幽霊さんが出る丑三つ時の前に寝ちゃったから、大丈夫だったよ」
そう言った後、なでしこは口元に手のひらを添え、悪巧みする越後屋のような笑みを浮かべた。
「ここだけの話、リンちゃんは一人で寝るのが怖かったみたいで、夜中にあたしのテントにもぐりこんできたんだけどね」
そして、またスマホをスライドし、二人でシュラフにくるまって添い寝する写真を見せた。
「やめろ。あれは一生の失態だ」
リンは恥ずかしそうにうつむいた。
あの夜、トイレに行った帰り、湖のそばで大きな角が生えた獣らしき影がぼえーぼえー言ってるのを見たらそうなのだ。
ただ、後から聞いた話では、あれは酔っぱらった鳥羽先生だったらしい。
「水辺に出る幽霊と言えば、お前ら知ってるか? 『
「地獄に誘う呪いの手……?」
なでしこは震える声で繰り返し、その恐ろしげな響きに寒気を覚えた。
君影草池――山梨の池の心霊スポットとしては四尾連湖以上に有名であろう。
元々は農業用のため池として作られた池だが、かつて老婆が入水自殺をしたことがあり、その幽霊がいまもさまよっているといわれる。
近年でも事故や自殺が相次いでおり、一説によると、突然水面から白い手が飛び出してきて、池に近づく人を水中に引きずり込んでいるとかいないとか――。
「おいヤメロ」
リンが、カウンターの影を睨んで言った。
「なでしこを怖がらせるなと言ってるだろう」
すると、にひひと笑いながら、千明がひょっこりと顔を出した。
「最近、これが密かな楽しみなんだよな」
「悪趣味なヤツだ」
リンはため息をついた後、どこから取り出したのかブランケットにくるまってガタガタ震えるなでしこの方を見た。
「大丈夫だ。君影草池にまつわる話は、全部ウソっぱち、というより、創作話だ」
「創作話?」
ぴくっ、と耳で反応するなでしこ。
「ああ。あの池は、古い農業用のため池だったのを、観光協会が整備して本格的な公園に作り直したんだ。名前の通り、君影草――すずらんの花が植えられていて、春には見ごろになるよ。他にも桜や紅葉でも有名だし、水鳥が来るからバードウォッチングも楽しめる場所なんだ」
リンは自分のスマホを操作し、君影草池を紹介するネットのサイトを見せて説明した。
桜や紅葉の写真の他にも、新緑や雪化粧をした写真など、四季に応じて異なる雰囲気の写真が掲載されている。
遊歩道や東屋もあり、池の周りを一種しても一〇分ほどと、散歩にはちょうど良さそうな場所だ。
「でも、なんでこんなのどかな公園が、心霊スポットみたいに言われてるの?」
なでしこはスマホからリンに視線を戻す。
「お婆さんが入水自殺したっていう話はかなり昔からあるそうだけど、イマイチ出所がはっきりしないらしい。少なくとも、ホントにそんな事件があったっていう信頼できる情報はないよ。これはあたしの想像だけど、公園として整備される前は結構荒れたため池だったらしいから、近隣の子供達から自然発生的に生まれた怪談的なヤツじゃないかな。ほら、近所に古い空き家があると、すぐにお化け屋敷だ、とか言われたりするだろ?」
うんうん、と千明が頷く。
「そういう根拠もない怖い話をして目立とうとするヤツ、よくいるよな」
「お前だお前」
と、リンは律儀にツッコミを入れてからさらに続ける。
「で、元はそんなたわいのない子供たちのウワサ話だったんだけど、とある芸能人が、さっき千明が言ってた『地獄へ誘う呪いの手』の怪談話を披露して、一気に全国レベルのメジャーな心霊スポットになっちゃったんだ」
芸能人がテレビなどで紹介したことで、冷やかしや肝試しに来る人が多くなった。
インターネットが普及したことで情報はさらに拡散され、ウワサはさらに広まった。
検索サイトで『君影草池』と検索すると、心霊スポット探索の動画や記事がすぐに引っかかる。
観光系のものより心霊系の方が多いくらいだ。
「嘆かわしいな。我が山梨が誇る観光スポットが、そんな心霊スポットとして紹介されるなんて」
千明は、自分から言い出したことを思いっきり棚の上に放り投げ、両手を広げてやれやれと首を振った。
「よーし。次の野クル都伝調班の活動は、『君影草池』に決定だ。次の休み、行ってみようぜ」
「お前、結局自分が遊びに行きたいだけだろ」
リンはやれやれと首を振り、さらに
「あと、都電調班って、どんな略し方だ」
と、これも律儀にツッコむ。
「でも、あたし、ここ行ってみたい」
なでしこは君影草池の画像を見ながら目を輝かせた。
「決まりだな。じゃあ、イヌ子に言って、プラン立ててもらうわ」
千明はスマホのライーンを使ってあおいにメッセージを送った後、リンたちを見た。
「リンと恵那も、一緒にどうだ?」
「いや、あたしはその日キャンプの予定だから、遠慮するわ」
と、リン。
「ゴメン、あたしもバイトが入ってるの」
恵那も申し訳なさそうに言った。
「そっか、残念」
となでしこが言う。
「じゃあ、何かお土産買って来るね」
「うん、楽しみにしてる」
そう言った後、恵那は
「よし、できた」
と言って、リンの髪を地面から手が生えたような形に結わえ、満足気にうなずいた。
「…………」
「…………」
「……なんか、イケてるなこれ」
鏡を見たリンは、まんざらでもなさそうに言った。
「え?」
と、みんな目が点になった。
そして、休日。
野クルメンバーが君影草池に着いたのは夜の七時過ぎだった。
本来はお昼過ぎに到着予定だったが、近くに温泉施設が併設された道の駅という壮大なトラップが仕掛けられてあったのだ。
地元のブランド牛を使った格安の焼肉ランチの後に入る温泉のワナを回避するすべは野クルには無く、三人とも休憩場でがっつり眠り込んでしまい、すっかり暗くなってしまったのである。
「まあ、焼肉の後に温泉っていう時点で、こうなることはあたしには判っていたがな」
千明は腕を組み胸を張って言う。
途中で寝過ごして到着が夜になるのは、野クルではよくあることだった。
「なんで威張るねん」
と、あおいがツッコんだ。
「ホンマやったら、公園の散策はとっくに終えて、今ごろお土産買ってご飯食べてるはずやったんやけどな。こうなったら、プランBかCに変更せなアカンで」
「さすがイヌ子くん。このような事態も想定し、複数のプランを立ててくれて感謝する」
「おおきに。えーっと。まず、プランBは、ここで一時間ほど散策してから駅に行く、や。駅の売店は九時まで開いてるから、公園の散策を一時間以内に終わらせれば、充分お土産は買えるで。それから電車に乗っても、十一時くらいには家に帰れるやろ。まあ、この場合、晩御飯はファミレスか牛丼屋かコンビニか家でカップめんかになってまうけどな」
「プランCは?」
「ここの散策はやめて、どこかで晩御飯食べてから駅に行く、やな。ちなみにウチのオススメはこっちや」
「いや、それだとなんのためにここまで来たんだって話になるだろ」
「まあそうなんやけど、でも、この有様やで?」
あおいは周囲を見回す。
季節は冬。陽はとっくに沈み、公園内は街灯もほとんど無く真っ暗だ。
その上、入り口付近だけでも枯葉で散らかり放題、案内板は古びてボロボロと、荒れ放題である。
ネットで見た写真とは大違いの、実に残念な公園といった印象だ。
正直、あまり散策したいとは思わない。
「公園として整備されたのも、もう二十年くらい前の話らしいからなぁ。この様子やと、最近はあんまり手入れされてへんのちゃう?」
「でも、せっかく来たんだしな。野クル都伝調班の目的は、心霊スポット認定された観光地の誤解を解くことだ。なでしこに、ここが怖い場所ではなく楽しい場所であることを伝えるまでは、帰るわけにはいかん」
「そない言うても、完全に逆効果やで、コレ」
いつもなら観光地ではハイテンションで写真を撮りまくるなでしこが、いまは実におとなしい。
それも当然で、夜の荒れた公園は、お化け屋敷よりも不気味な雰囲気だ。
「ま、いちおう行ってみようぜ」
千明は懐中電灯を取り出し、先頭に立って公園に入った。
仕方がないので、あおいとなでしこも後に続く。
君影草池は、周囲一キロのかなり小さな池である。
入口付近に東屋があり、昼間ならそこから池を一望できるが、この時間は真っ暗で何も見えない。
ライトで照らしても、夜の闇を映した水面が見えるだけだ。
東屋からは、池に沿うように遊歩道が続いている。
三人は遊歩道に沿って歩いた。
「……おや?」
遊歩道の先に、千明と同じような懐中電灯の明かりが見えた。
どうやら先客がいるらしい。
二人組の若い男性だ。
「はい! 『山梨心霊スポット探訪チャンネル』、今日は『君影草池』にやってきましたー!」
男の人がテンション高めに言って手を叩く。
もうひとりは、その様子をスマホのカメラで撮影しているようだ。
「なんや? 動画撮影者か?」
と、あおい。
「『山梨心霊スポット探訪チャンネル』って、最近ちょっと話題の動画クリエイターだな」
千明は、やれやれと首を振った。
「ああいうヤツらのせいで、せっかくの観光地が、心霊スポット扱いされてしまうんだろうな。実になげかわしい」
「まあ、こんな時間に来てるウチらも、同類やと思われてるかもしれへんけどな」
邪魔をして文句を言われるのもイヤなので、三人はしばらくその場で撮影が終わるのを待った。
男たちは入り口付近での撮影を終え、そのまま公園の奥の方へ入って行った。
少し時間を置いてから、なでしこたちも遊歩道に沿って歩いた。
だが、夜の公園はやはり真っ暗で不気味だ。
もちろん、冬なので桜もすずらんの花も紅葉も新緑もない。
「……ここまで来てこんなことを言うのもナンだが、コレ、近所の公園歩くのと何が違うんだ?」
千明がミもフタもないことを言う。
「いやアキが行く言うたんやろ。言い出しっぺが、なに言うてんねん」
「まあ、完全に来る時期も時間も間違えたのは確かだな」
公園内はさっきの動画撮影者以外に人はおらず、しんと静まり返っている。
東屋から離れたため街灯も無く、ライトで照らしても、見えるのは枯れ木か枯草か暗い池だけだ。
なでしこは公園に到着してから一言もしゃべっておらず、あおいの腕にしがみついて震えている。
「心霊スポットうんぬんの前に普通にコワイやろコレ。もう帰ろうや」
「そうだな。また春になってから来るか」
千明がようやく同意し、三人で来た道を戻ろうとした。
その時。
「――うわあぁ!!」
公園の奥の方で、悲鳴が聞こえた。
「なんだ!?」
声が聞こえた方を見ると、なにかが、ものすごい勢いで走って来る。
さっきの動画撮影者だ。
千明たちは驚いて立ちすくむ。
そのそばを、男たちは走り抜け、そのまま公園の外へ出て行った。
「なんだ? なにがあったんだ?」
千明が慌てた声を出す。
大の男が二人、悲鳴を上げ、一目散に逃げて行った。
ただ事ではないかもしれない。
「アキちゃん! アレ!!」
それまでずっと黙っていたなでしこが声を上げ、池の奥の方を指さした。
千明が、なでしこが指さした先にライトを向ける。
闇を溶かしたような黒い水面に、老婆の顔が、半分だけ浮かび上がっていた。
出た!! ――と、千明たちが叫ぶよりも早く。
なでしこが、老婆の方へ走り出す。
そして、その勢いのまま池のふちでジャンプし、水の中に飛び込んだ。
あまりに予想外の行動に、千明とあおいは一瞬立ち尽くしてしまう。
たが、千明がはっとした表情になり、
「イヌ子! 119に電話だ!」
と言って、自分も老婆の方へ走った。
それであおいもようやく事態を把握し、スマホを取り出して緊急通報する。
老婆は幽霊などではない。
なんらかの理由で、池に転落した正真正銘の人間なのだ!
なでしこが老婆に肩を貸した状態で池から上がって来た。
千明もそれに手を貸し、遊歩道の端に座らせる。
幸い、老婆に意識はあるものの、かなり長い時間水の中にいたのだろう。体温はかなり下がっていた。
通報を終えたあおいも走って来た。
「救急車は一〇分くらいで来るそうや」
「一〇分……長いな」
千明が歯がゆそうに言う。
千明たちに医療の知識はないが、冷たい水の中に長い間いると低体温症に陥って危険だ、というくらいは知っている。
真冬の夜に池に落ちたのだ。陸に上がったとはいえ、この寒さでは、老婆はもちろんなでしこも危険だろう。
とにかく、身体を温めなければならない。
千明は老婆の濡れた衣服を脱がせると、自分のコートとマフラーを老婆にかけた。
もちろん、それだけでは充分とは言えないだろう。
「くそ、たき火台とか持ってきておくべきだった」
悔しそうに言う。
今日は日帰りの観光なので、キャンプ道具は持ってきていない。
そもそもこの公園がたき火をしても大丈夫なのかも判らない。
「いいよ。たき火しちゃおう」
なでしこが、いつになく大胆なことを言う。
「緊急事態だもん。あおいちゃん、燃えそうなもの集めて」
「判った」
あおいは近くに散らばっている枯葉を集め始めた。
「でも、点火棒もマッチもないぞ? どうやって火を点ける?」
千明が言った。
「アキちゃん、焼肉食べた後にもらったガム、まだ持ってるよね?」
「え? 持ってるけど、そんなもんどうするんだ?」
なでしこは千明から板状のガムを受け取ると、包装をはがし、銀紙を縦長の形に破いた。
さらにその中央部分を端から破り、
「なでしこちゃん、これでええか?」
あおいが大量の枯葉を抱えて戻ってきた。
枯葉を遊歩道の真ん中に置き、なでしこは千明の懐中電灯から電池を取り出した。
そして、いま作ったくびれ状の銀紙の両端を、それぞれ電池のプラス極とマイナス極に当てる。
とたんにくびれの部分から煙が上がり、一秒もしないうちに火が点いた。
それを枯葉にかざすと、すぐに燃え移った。
「おお! なんだ今の!?」
千明が興奮して声を上げた。
「火種がないときのサバイバル術だよ。この前、テレビで見たんだ」
なでしこは、えへへと笑った。
火は勢いよく燃え上がり、なでしこと老婆の身体を温める。
これで、かなりマシになっただろう。
しばらくして、公園にサイレンの音が近づいてきた。
東屋の前に救急車が停まり、救急隊員がストレッチャーを運んでくる。
事故ということで、その後からパトカーもやってきた。
火の始末と警察への説明は千明とあおいに任せ、なでしこは老婆と一緒に救急車に乗り、病院へ向かった。
日付が変わる頃、千明とあおいはなでしこの姉・桜の自動車で病院に着いた。
なでしこが池に落ちた老婆を助けて一緒に病院に運ばれたことを連絡したら、すぐに桜が駆けつけてくれたのだ。
なでしこは服を着替え、薄暗いロビーの椅子に座っていた。
千明たちに気づくと、にっこりと笑って手を振った。
「なでしこ、大丈夫か?」
駆けつけた千明たちに、なでしこは「うん」と応え、
「お婆さんも、もう心配ないって」
と付け加えた。
老婆は近所に住んでおり、君影草池の周りを散歩するのを日課にしていたそうだが、その日は水辺を歩いていたら誤って池に転落してしまったそうだ。
救急隊員が駆け付けたときには軽度の低体温症に陥っていたものの、池から引き揚げた後の処置が的確だったため、それ以上重篤な状態には陥らずに済んだそうだ。
特に、あの場ですぐにたき火をしたのには、救急隊員やお医者さんも感心していたという。
「あんたはどうなの? 風邪ひいてない?」
桜が訊く。
「うん。あたしは全然平気」
そう言って、なでしこは元気をアピールするためステップを踏んでパンチを数発しゅっしゅと打った。
まあ、気温五度の本栖湖周辺の道端で数時間昼寝して風邪ひとつひかなかった元気の子だ。
寒さにはめっぽう強い。
ウワサでは、真冬の富士山頂でもブランケット一枚で生きていけるとかいけないとか。
「しかし、お前あのとき、よくためらいも無く池に飛び込んだな」
千明が感心した声で言う。
「あたしだって、怖くて逃げだしそうだったぜ」
「うん。あたしも、ホントはすごく怖かったの。でも、幽霊だったらもちろん怖いけど、もし幽霊じゃなかったらもっと怖いことになる、って思ったら、勝手に身体が動いていたの」
「にひひ。それでこそ、我が野クルのエースだぜ」
千明はなでしこの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ほんま、なでしこちゃんがおらんかったら、大ごとになってたで。ありがとうな」
あおいはなでしこの肩を抱き寄せて言った。
「まったく。あんたはムチャするんだから」
桜は笑顔で息をついた。ため息、というよりは、安堵の吐息だった。
「さ、帰るわよ。千明ちゃんもあおいちゃんも、送って行くね。遅くなったから、超特急の安全運転で行くからね」
「あざーす!」
千明とあおいは元気よく言って頭を下げた。
病院を出て車に乗り込んだところで、なでしこが、
「あ、そうだ。お姉ちゃん」
と、思い出したように言う。
「あたしたち、結局版ご飯食べそこなっちゃったから、途中でコンビニに寄ってくれない?」
「ふふ。何年あんたの姉をやってると思ってるのよ。ほら」
桜は大きなレジ袋を取り出し、なでしこに渡した。
中にはおにぎりやサンドイッチなどの食べ物とお茶やココアなどの温かい飲み物がたくさん入っている。
「やったぁ! さすがお姉ちゃんだよ!」
なでしこはレジ袋を受け取ると、千明たちと分け合った。
桜がエンジンをかけ、アクセルを踏み込む。車がゆっくりと走り出す。
なでしこはツナマヨおにぎりの包装をはがし、パクリとかぶりついた。
パリパリの海苔とふっくらご飯の食感に、ツナのうま味とマヨネーズの酸味が交じり合う。
「うーん! 美味しい~!!」
なでしこはとびっきりの笑顔を浮かべ、夜の帰路についた。