夜、テントで寝袋にくるまって寝ていたなでしこは、にぎやかな声で目を覚ました。
外から、ワイワイガヤガヤと、なにやら楽しそうな声が聞こえてくる。
「……ん……なに……?」
なでしこは首を起こしてテントの出入口を見た。
たき火がされているのか、外はぼんやりと明るくなっており、火を囲んで数人の人影がゆらゆらと揺れている。
みんなでおしゃべりをしているようで、なんとも楽しそうな雰囲気だ。
なでしこは寝袋から手を出し、そばに置いてあるスマホを取って電源ボタンを押した。
時間は深夜二時を過ぎたところだ。
みんなとっくに寝たと思ったのだが、こんな時間になにをしているのだろう?
眠れなくて起き出し、みんなで夜更かしを始めたのだろうか。
楽しそうな声は途切れることなく聞こえてくる。
誰かがふざけてへんな踊りを披露し、みんなが一斉に笑い声を上げた。
さらには追いかけっこまで始める。
ねぼけ
――もう。夜更かしするなら、あたしも起こしてくれたらいいのに。
みんなで騒いでいる中、とても一人で寝てなんていられない。
なでしこは寝袋から出ると、こんなこともあろうかと買っておいたポテチやチョコレートやチータラスティックなどをリュックから取り出し、テントのファスナーを上げて外に出た。
「みんな、なに楽しそうにしてるの? あたしも入れてよー」
そのとたん、楽しそうな笑い声は消え。
「……あれ?」
テントの外は、闇が広がっているだけだった。
たき火も、楽しそうに騒ぐ人の姿も、なにもない。
スマホの心細い明かりが、なでしこの手元をぼんやりと照らしているだけだ。
なでしこはランタンを取り出し、周囲を照らした。
少し離れた場所になでしこのたき火台があり、そこから、煙が一筋ゆらゆらと揺れながら上がっていた。
周りに人の気配は無く、それどころか、テントのひと張りさえ立っていない。
なでしこは思い出した。
――そういえばあたし、今日はソロキャンプに来たんだった。
ひとりでキャンプに来たから、千明とあおいの野クルメンバーも、リンも恵那も、姉の桜もいない。
さらには、シーズンオフだから他の泊り客もほとんどおらず、キャンプ場はほぼ貸し切り状態だったはずだ。
しかし、さっきは確かに人のざわめきがあった。
一瞬なら寝惚けていたのかとも思えるが、スマホで時間を確認し、リュックからお菓子を取り出すほどには目が覚めている。
勘違いではないだろう。
ついさっきまで、誰かいたのだ。
――いや。
もしかしたら、
不意に、ランタンの明かりが消えた。
「……ひいぃ!」
なでしこはテントに飛び込むと、寝袋にくるまり頭からブランケットをかぶってさらにラジオで深夜放送スマホで音楽を大音量でかけ、ガタガタと震えながら夜を明かした。