もしも十二国記の転生者が王になったあと蝕で真・恋姫♰無双の世界に流されたら?   作:d_chan

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第1話 徇王を探せ!

「徇王はまだ見つからないのか……」

「もう5年も経つがいまだに手がかりすらみつかっておらん。白雉が鳴いていない以上生きているのは確かだが」

「もしかして異世界に流されてしまったとか。いやまさかな」

「いま、なんとおっしゃいましたか?」

 

 

 うららかな午後、慶国の金波宮では、景王が私的に客を招いていた。

 青空のもと、東屋には3人の影がある。

 5年前から続く懸案事項について、延王尚隆と景王陽子が会話を続けていた。

 尚隆は覇気ある大柄な青年で、陽子は赤髪緑目、男装が特徴的な少女だった。それぞれが麒麟に選ばれた王である。

 黙って会話を聞いていた偉丈夫は遠慮がちに座りながら――伏礼は慶国では廃されている――思わずといったように口を挟んでいた。

 非礼にあたるが二人の王は気にも留めない。この場においては有難かった。

 

 

「いや、だから蓬莱には異世界が登場する作品が多くって。もちろん空想上の話だったけれどこうしてこの世界がある以上、他にも異世界があるんじゃないか?」

「異世界。蓬莱や崑崙ともまた異なる世界。もしや徇王が蓬莱や崑崙にいないのもそれが理由ではないか」

 

 

 突飛な意見に思える。だが、今の状況そのものが突飛といえた。なにせ全く見つからないのだ。手がかりすらない。同じく蝕で流された泰麒の発見にも時間がかかったが、あの時と同じく総出で探しているにも関わらず。蓬莱とて狭くはないが、王気を頼りに5年も探せば手がかりくらいは見つかってよいはずである。

 泰王捜索の経験があるからなおさらだ。この場にいない復興途上で忙しい泰王、驍宗も共に捜索に力を貸している。いずれの国も舜国、徇王には大いに借りがある。

 

 

 うすうす蓬莱にはいないと気づいてはいた。とはいえ異世界。概念そのものがなかったので、盲点といえた。

 陽子と言葉交わすが、蓬莱では異世界は一般的な知識であったらしい。もちろん、空想上の話であるという注釈をつけたが。 

 

 

 転生者。憑依。オリ主。チート。中二病。銀髪オッドアイ。TS。最低系。ニコポやナデポ。

 陽子も聞きかじりの知識を教えてくれたが、前衛的過ぎて尚隆には理解できない部分もある。

 

 

 もしこの場に徇王がいればのたうち回っていたことだろう。踏み台転生者には黒歴史が多すぎる。

 なにせ彼は銀髪オッドアイであった。生まれてから昇山に失敗するまでは、調子に乗っていたからなおさらである。

  

 

「しかしどうやって探すか」

「薄くだが王気が感じられるのだから、それを辿ってみればいいんじゃないか?」

「ふむ、目印があれば行けるやもしれませんね」

「おお、延台舗、景台舗まで。有難く!」

 

 

 離れて黙って見ていた麒麟の二人も加わり議論が盛り上がる。

 最後にいくつか問答を終えると、偉丈夫――舜国左将軍は満足気に頷いた。

 

 

「ありがとうございます。主上捜索への一筋の光明が見えました。急ぎ王宮へと戻らねば!」

「いやまて、本当に存在するかは分からないぞ?」

 

 

 声をかけるも、礼を失さない程度にかけていくと騎乗して飛び去っていくのが見えた。

 彼の従卒たちが一糸乱れず後を追う。全員騎獣が白で統一されている。左将軍ご自慢の白馬義従を陽子たちは遠目に見送った。

 思えば、偽王の乱では彼らに世話になった。尚隆がぽつりと言った。

 

 

「それしても即断してから行動が早いな。さすがは公孫瓚だ」

「思いつきでいったんだけど、大丈夫だろうか」

「ははは、陽子だからこそ思いつけたんだろう。俺も異世界とは思いもつかなかった」

「やめてくれ。まだ実在するかもわからないのに」

「公孫瓚は実在するがな!」

 

 

 言ってみたものの、三国志を知らない陽子にはあまりピンとこなかったようだ。

 事実公孫瓚は実在する。いや、していた。陽子たちの世界、崑崙つまり中国の地で。はるか2000年以上昔に。初めてその名を聞いたとき尚隆は仰天したものだが。

 しかし本人ではない。同じように徇王によって名付けられた者たちが舜には大勢いる。

 徇王の名を聞いたとき尚隆は、思わず納得したものだ。その名を――張角。

 

 

 その後、本当に異世界が発見され陽子の元に莫大な謝礼が送られてくることを彼女は知らない。

 その額は慶国の国家予算を優に超える額であり、意図せず陽子の政権支持につながることとなる。

 5年後、徇王発見および帰還の際には前を上回る謝礼が払われ、冢宰の浩瀚が驚く顔を初めて見たと陽子は語った。

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