TMA Prince City 〜ひと夏の物語〜   作:ふゆきんぐ☆

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こちらは、大人気NFTシリーズ「The Mafia Animals」のファンアート、「TMA×擬人化」を題材とした、ファン小説です。
TMA擬人化はえるみさん(https://twitter.com/eruminft?s=20)の手がけるシリーズで、現在は新たにTMAプリンスというシリーズを展開なさっているので、そこからこの小説が生まれました。

あまり長いシリーズにはなりませんが、連載物となっております。

連載終了までゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。


バーにて

TMA Prince Cityには「電子街」と呼ばれる繁華街がある。名前の由来は誰も知らないが、夜になるとネオンの灯りに照らされたその通りは良くも悪くも怪しげな雰囲気を醸し出し、島内外でも人気を博していた。

 

世の中の動きに反して、太陽が高いうちは眠っているのが繁華街の常識。今はまだどの店もシャッターを下ろし、長い夜に向けて眠りに就いている。

そんな通りの一角、雑居ビルの狭い階段を登った先にあるバーで、トーマは昼間から酒を浴びやさぐれていた。

 

時は少し遡る。

 

ワゴンに荷物と共に押し込められたトーマは、そのままTMAドームへと運ばれ、文字通り『配達』された。車の中でうっかり眠ってしまった彼を、カフェのスタッフたちは『荷物』としてアイドル達の休憩室に運び込んだというわけである。

 

どうやって守衛の目を潜り抜けたのかは分からない。

 

とにかく食べものと共に運び込まれた彼は、荷物の確認をしにきたスタッフに見つかり、悲鳴を上げられ、駆けつけた警備員に押さえつけられ、しばらく拘束されていた。『不審者が侵入している』との知らせを受けて一応確認に来たムカイに「なんやお前、遂に不法侵入したんか」とゲラゲラ笑われるまで、完全に凶悪犯のような扱いを受けていたのである。

 

それが誤解だということが分かりドームのスタッフたちに平謝りされたわけだが、問題はトーマを荷物として運び込んだカフェスタッフたちとその後のムカイの対応だ。というわけでトーマはあれからずっと拗ねたままなのであった。

 

「全く、こんな事でなんで俺がお前に気ぃつかわなあかんねん。」

「まぁまぁ、ちょっと手荒がすぎたからな。坊ちゃんには刺激が強かったんだろうよ。」

「そもそもカフェのスタッフだけやったらこんな手荒な真似せんかったんとちゃいます?」

「あぁ?何だお前、俺のせいだってのか?」

「……まぁ、結局のところは……いだっ!」

 

いつも自分をこき使ってくるムカイが小突かれる姿を見て、ちょっと溜飲を下げたトーマは改めて椅子に長い脚を組んで座る男に目を向けた。

 

パラキートカフェで荷物を運ぶと言って来た彼は、かなり人目を惹く壮年の男性であった。今も煙草を燻らせるその姿が実にサマになっている。

 

「なんだ坊ちゃん。俺に何か用か?」

「あ、いえ、あの、ムカイさんとはどういうご関係で……?」

「はっはっは、ご関係ときたか。おいどうするムカイ、夫婦ってことにでもしておくか?」

「勘弁してください、俺には愛する妻がいるんで。」

 

わっはっは、と愉しそうに笑う男の正体はいつまで経っても掴めない。のらりくらりとされ続け、だいぶ酒も回ってきた。

 

「あのぉ……えぇと、あれ、誰でしたっけ……。」

「あ?あぁ、そう言えば名乗ってなかったか。俺はハイアット。ムカイとは古い付き合いでな。」

「ハイアットさん、トーマにあまり余計な事吹き込まんといてください。」

「トーマ?そうか、お前トーマってのか。」

「はい……。ハイアット……ハイアット……?」

「初対面で目上の人間を呼び捨てってのはいただけねぇなぁ。」

「あ、いや、そうじゃなくて、俺、貴方をどこかで見たことがある気がするんです……。」

 

そう呟き、頭を抱えて考え込み始めるトーマを、ハイアットは実に面白そうに眺めていた。

 

「なかなかおもしれぇ坊拾ったなぁ、ムカイ。」

「今のところ運転手くらいしか能ないですけどねぇ。」

「シオンちゃん、おかわり頼むよ。」

 

顔なじみの店員を呼びつけると、空いたグラスを盆の上にそっと置く。シオンと呼ばれた店員は、ニヤっと笑い、「まいどありぃ」なんて威勢のいい言葉を言いながら、ピンクの髪を揺らして厨房へと入っていった。

 

しばらくたって、新たなグラスにたっぷりのブランデーを入れてハイアットの元へ持ってきたのは、先程のシオンとは別の少女だった。やや緊張した面持ちをしている。

 

「失礼します。ブランデー、お持ちしました。」

「あれ?初めて見る子だな。おぉい、シオンちゃん、この子新入りかい?」

 

そう尋ねた時、入口のドアが開き、カランカランとベルがけたたましい音を立てた。

 

「ちょっと、早速新入りをナンパするなんていただけないわね、ハイアットさん。」

「やぁ、ママ。なかなか帰ってこないから寂しくて、つい、な。」

「またそんな色気駄々洩れの顔しちゃダメよ。レイラがビックリしちゃうわ。」

「レイラ?あぁ、君、レイラっていうのか。最近入ったの?」

「この夏だけのシーズンバイト、ってやつよ。」

「へぇ、シーズンバイトを雇えるなんて、デローザバーも盛り上がってるじゃないか。」

「うちはいつだってカツカツよ。ミントの紹介だったから断れなかっただけ。」

 

このバーのママ、デローザははぁ、と溜息を吐きながらも、優しい顔つきでレイラに手招きした。

 

「ほらほら、貴女は昼間しか働けないんだから。厨房の整理、終わった?」

「終わりました。」

「あら、仕事早いじゃない。じゃぁお酒の補充お願いしちゃおうかしら。」

「分かりました。」

 

ペコリと頭を下げたレイラはそのまま厨房へと入っていく。その後ろ姿を、トーマはボーッと眺めていた。

 

「なんだ、坊。お前、レイラみたいなのが好みか?」

「いや、別にそう言うわけじゃないです。可愛いなとは思いましたけど。」

「はっはっは、結局好みなんじゃねぇか。」

「いいじゃないですか、可愛い女の子見る機会なんてそうそうないんですから。ところでハイアットさん、俺、思い出しました。」

「あぁ?」

「昔、歌手じゃなかったですか?ばぁちゃんと観たテレビに映ってたと思うんです……!」

 

ばぁちゃんかよ!と言いながらムカイがゲラゲラと笑いだしたので、片眉を上げたハイアットは靴の先でムカイの脛を蹴飛ばした。

 

「ってぇ……。」

「お前、俺の過去を笑いやがったな?」

「そんなんちゃうでしょ。俺はこいつがばぁちゃんとか言うから……。」

「年寄り扱いすんじゃねぇ。」

「そういうの被害妄想って言うん知ってます?」

 

うるせぇな、と悪態をつきながらブランデーを流し込む。ふと目をやると、若かりし頃のハイアットがまだ少女の面立ちのデローザと共に映っている古ぼけた写真が視界を掠めた。

 

あの頃、ハイアットは島で鬱屈とした生活を送っていた。

 

器量が良く、人当たりも良い彼は、とにかく女にモテる。わざわざ自分で仕事をせずとも、服も、食事も、住まいも、全てを与えられて生きていくことが出来た。

楽な生活。だが常に己を駆り立てるような焦燥感のようなものが体を、心を、支配してくる。

 

かなりやんちゃもやった。元々身を置いている組織は決して良いものとは言えなかったし、刺激を求めてどんどん悪い方へと進んでいくのを止められなかった。

 

そんな矢先である。怪我を負って逃げ込んだ路地裏で、ラジオから流れる音楽を聴いたのは。

今トーキョーで大人気だというその歌は、ティマプリ島に居る限りほとんど耳にする機会が無いものだった。

それほど当時のこの島は閉鎖的だったのである。

 

それからは、早かった。少ない荷物をまとめて、島外へ向かう交易船に忍び込んで。まんまと島を脱出してからは、トーキョーで長い時間を過ごすこととなる。

たまたま知り合った芸能事務所の人間と組んで、アイドルとして歌った。

そこそこの人気は出たが、トップまで上り詰めるにはあまりにも特殊な世界。

 

(ティマプリ島を外からこじ開けてやる……!)

 

そんな野望を持ち始めたのはいつの頃だったか。

 

「……さん!ハイアットさん!」

「あ?」

「ボーっとしすぎやろ!やっぱり年には勝て……いだっ!」

「俺には色々と考える事があるんだよ。」

「……気ままに好きなように動いとるだけやんけ……。」

「あ?」

「おい、トーマ、お前も調子に乗って飲みすぎるんやないで!?」

「えぇ~~~?」

 

気づけばべろべろに酔っぱらい始めたトーマに溜息を吐いたムカイは、レイラとシオンに水とおしぼりを頼むと、彼をソファまで担いでいき、そこに放り投げるようにして寝かせた。

 

「おうおう、なんだかんだ言いながら随分気に入ってんじゃねぇか。」

「明日からの足が使えなくなったら困るんで。」

「おぉい、坊、水くらいてめぇで飲めよー?」

 

半目でむくりと上半身だけ起こしたトーマは、レイラが持ってきた水をゆっくり飲むと、ほーっと息を吐きだしながらソファに沈んでいく。

そのまま目を瞑ってスース―と寝息を立て始めたので、シオンはおしぼりを畳んで額の上にそっと乗せてやった。

 

カランカラン、とまた入口のドアが開く。

 

「あら、もう来たのね。」

「すまんな、時間が読めないんだ。」

「仕方ないじゃない、忙しいんでしょう?今日だってお忍びじゃなきゃこんなところ来られないでしょうに。」

「まぁそこは大丈夫だ。この店の立地はかえって来やすいからな。」

 

入って来た男は、懐からおもむろにパイプを取り出す。デローザがさっとパイプ用の道具を差し出した。

男はそのままカウンターに座り、いそいそとパイプに煙草の葉を詰め始める。

 

「おいおい、挨拶もせずに煙草かよ。」

「なんや、忙しいんか暇なんかどっちやねん。」

「忙しくてゆっくりパイプも吸えないんだ。少し待て。」

「市長様は大変ね?ジャンボさん。」

 

デローザがパイプに火を入れた。ジャンボ、と呼ばれた男は何度かパイプに呼気を入れたり出したりを繰り返す。やがて、白煙がゆったりと立ち上った。

 

「ふぅ、やっと一息つけた。デローザ、ありがとう。」

「お礼言われるようなことじゃないわよ。今日は……飲めないんでしょう?」

「まだ仕事があるからな。」

「残念だわ。ボトル、一等地にキープしてあるからね。」

「あぁ。今日はパイプをゆっくり吸う時間が取れそうだからな。……奢りますよ。」

「はっはぁ、そう来なくちゃな!市長様よう。」

 

ジャンボの肩を組むようにして隣にどっかりと座ったハイアットは、高級ブランデーをロックグラスになみなみと注いだ。

 

「ハイアットさん、随分久しぶりですね。」

「おう。お前が市長になった時以来じゃないか?」

「そうですねぇ。今日はなぜここに?」

「流れって奴だよ。」

「……ムカイ、苦労してるようだな。」

「分かってくれるか?ほんまハゲたらどうするんやっちゅーくらい大変やねん。」

「まぁ、飲め。」

 

もうひとつのロックグラスに、半分ほどブランデーを注ぎ、そこにキレイな円形の氷を3つほど入れる。

デローザが軽く混ぜたそれは、少しひんやりとして、口当たりが実にまろやかだった。

 

「ふぅ。ジャンボ、時間作ってもらっておおきに。色んな意味で助かったわ。」

「いや、構わんよ。この前のライブ、大成功だったそうじゃないか。流石だな。」

「あいつらにライブさせるんがこんなに苦労するとは思わんかってな……。」

「結局鉄砲玉だからな。制御はおいそれといかないだろうよ。」

 

市長との密談。そこだけ切り取れば実に後ろ暗い雰囲気の漂う状況なのだが、しばらくジャンボはムカイの愚痴を受け止め、その様子をデローザが見守るというなんともほっこりした空間となっていた。

ジャンボがボトルキープしていた酒瓶は気づけば空になり、ハイアットがその隣で気持ちよさそうに寝息を立て始める。

 

 

やがて、話を終えたジャンボが店を後にする頃トーマが目を覚まし、バーでは開店準備が始まった。

酔いつぶれたハイアットはそのまま店に残し、トーマとムカイは店を後にする。

未成年のレイラも、定時は開店して1時間後だ。オープンだけ手伝うと、今日はもう上がりのシオンと共に帰っていった。

 

それと入れ替わるようにして、数名の男たちが店へと入っていく。

 

「あら、ファング、久しぶりじゃない?」

「ママ、久しぶり。さっき若い子がここから出て行かなかった?」

「昼間に掃除やら片づけやらをしてもらってるの。かわいい子たちだったでしょう?」

「ピンク髪の子はシオンだっけ?もう一人の子は初めて見たんだけど。」

「シーズンバイトの子よ。島の子じゃないから、名前はナイショ。」

「何だ、秘密の多い女なのか~。気になるなぁ。」

 

そんな何てことない会話が繰り広げられ、バーは賑やかさを増していく。

夜の街に光が灯り、電子街は怪しげな魅力を放ち始めた。

 

ネオンから遠ざかるようにして、トーマも、レイラも、シオンも家路を急ぐ。

 

ファングはバーのカウンターで、つい先ほどこっそりと捉えたレイラの写真を見ながら、「やっぱり、似てる、よな……。」と呟きつつ、グラスを傾けた。

その呟きは誰にも届かないまま、夜の闇へと消えていく。

 

ティマプリ島の夜は、まだ始まったばかりだった。

陽が登るまでの長く、短い時間。島は『本当の顔』を時折晒しながら、人々を静かに包み込む。

若者たちは、それぞれの家で布団に潜り込み、ただ時の流れに身を預けた。夢の世界を味わいながら。

 

 

 




お読みいただきありがとうございました!
今回もまた新たなキャラクターが登場しておりますが、ここで漸くトーマとレイラに接点が出来ております。
……あれ?アミは?カフェバイトは??と思われたでしょうが、そうです、アミはカフェでバイト中です!
カフェでは雇ってあげられなかったレイラに、働き先をきちんと用意するミント姐さん、いい女ですね!

また次作もお付き合いの程よろしくお願いいたします!
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