TMA Prince City 〜ひと夏の物語〜   作:ふゆきんぐ☆

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こちらは、大人気NFTシリーズ「The Mafia Animals」のファンアート、「TMA×擬人化」を題材とした、ファン小説です。
TMA擬人化はえるみさん(https://twitter.com/eruminft?s=20)の手がけるシリーズで、現在は新たにTMAプリンスというシリーズを展開なさっているので、そこからこの小説が生まれました。

あまり長いシリーズにはなりませんが、連載物となっております。

連載終了までゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。


毒を食らわば皿まで

「リッカルドさん、遅かったですね。料理来てから、大分経ちますよ……?」

「あ?あぁ、実はミントに会ってな。」

「げ……!じゃぁさっさと食って行きましょう。休みの日にシャチョーに会うなんて真っ平ごめんですよ。」

「いや、ムカイと来ている感じじゃなかったぞ?若い女の声がしてたからな。」

「あぁ、じゃぁミントさんが雇ってる子たちか。なぁんだ、びっくりした。」

 

アルはホッと胸を撫でおろした。

 

「先に食ってればよかっただろ。」

「……さすがに俺が先に食べてるわけにはいかないでしょ。」

「今更そんなこと気にすんなよ。あ、なんだよパスタくっついちまってるじゃねぇか。頼み直すか?」

「いや、これでいいっすよ。リッカルドさん食わないなら俺もらうんで。」

「馬鹿お前全部食う気か?半分寄こせ!」

 

えぇ~?と言いながらも、アルはパスタを半分以上取り皿によそい、リッカルドに手渡した。

卵とチーズの濃厚なソースに、ピリッとした黒コショウとカリカリに焼かれたベーコンがアクセントになっている。麺が伸びてしまいすっかり柔らかくなってしまっているが、それでも絶品と言っていい味だった。

 

「失礼。麺が伸びるまでリッカルドさん捕まえちゃって悪かったわね、アル。」

「!!!ミントさん!!!……どっから聞いてたんすか……。」

「ナイショ。お詫びに一品持ってきたんだから、チャラにして頂戴。」

 

そう言うと、ミントは手に持っていた皿をコトリとテーブルの中央へ置いた。

 

大きな皿に盛られたガーデンサラダ。ふんわりとしたフリルレタスの上に、パプリカやスライスした玉ねぎ、人参、ブロッコリー、トマトなどが鮮やかに散りばめられている。そして、その中央に物言わぬ山脈のような重厚さで佇む肉の塊。よく見ると薄くスライスされた線が入っている。

 

「……裏メニュー、ってやつかい?」

「えぇ。うちとこの店のコラボ商品ってやつよ。評判良ければこの店ではサラダとして、うちのカフェではサンドウィッチとして出す予定なの。」

「……つまり試食なんだな?」

「ふふっ、もう少しでパンも届くから、サンドイッチにしてね?」

 

じゃ、感想よろしく、とだけ言い残し、ミントは去っていった。全く、お詫びと言いながらしっかり仕事な辺りが流石である。

 

「えっと……美味そうっすね……。」

「味は間違いないだろうよ。多分この肉の感じ、企画はミントじゃないしな。」

「……ハイアットさんっすか?」

 

リッカルドはその問いに応えなかったが、眉間の皺が「YES」と答えを告げていた。嫌な顔をしたまま、取り分け用のトングで肉をつつく。

斜めになった肉はその美しいピンク色の断面を覗かせ、それで漸く均一に2㎜ほどにスライスされたローストビーフなのだと知れた。

 

「こりゃまた……見事だな。」

「うわすげぇ……!中ピンクじゃないですか!火ぃ通ってるんですかね……?」

「見ろ、ドリップがほとんど出てねぇ。火の通し方、切り方、どれをとっても完璧だ……!」

 

リッカルドは半ばうっとりとしながら、ローストビーフと野菜を取り分けた。数種類のソースと、サンドウィッチ用のパンが乗ったワゴンが先程そっと差し入れられていたので、その中からグレービーソースと思わしきものをかける。

口に運ぶと、肉のどっしりとした旨味が広がってきた。しかし肉は驚くほど柔らかく、簡単に嚙み切れる。

二人はしばらくの間、無言でローストビーフを堪能した。

 

ソースを変えれば違った味わい、そして一緒に口に入る野菜の種類が変わることで無限の組み合わせを生み出している。

 

もちろん途中からサンドウィッチにすることも忘れない。ふわりと柔らかいパンはほんのり温かく、冷えてシャキシャキの野菜と、グッと力強い肉とのコントラストが実に良い。

 

ほぼほぼ食べきり。口の中をワインで洗い流して漸く、リッカルドは口を開いた。

 

「あー……、くそ、これはまた勝てねぇな。」

「……ステーキ屋、潰されましたもんねぇ……。」

「うるせぇ、言うな。」

 

嫌な記憶を散らすように、手で空を払う。あれは手痛い失敗だった。島に入って来た新しい事業家とかいう若造の話がなかなか面白く、試しに買った格安物件。

居抜きの飲食店をリフォームまでして引き渡すというから乗ってやったのだ。

事前に他のリサーチもせず、口車に載せられてステーキ屋を出したのがいけなかった。

 

前々からそのすぐ目の前に、「パラキートカフェ」の新店が出店することが決まっていたらしい。まだその当時パラキートカフェは島内に3店舗ほどしかなかったが、丁度フードメニューに力を入れ始めた頃で、カフェにしてはしっかりとした量と質のフードを開発していた。

当時はまだハイアットが経営陣の陣頭指揮を取っていた頃だったので、まぁ容赦なく叩きのめされた、というわけである。

 

「くっそあのジジイ、何が引退だ……!」

「引退したんじゃなかったんすか?」

「お前、この肉食って分かんねぇのか?あの人、まだバリバリの現役だ。間違いねぇ。」

「ミントさんの上に居るってことなんすかね。」

「いや、わからん。今は実質的にミントが経営のトップなはずだからな。まぁあの人のことだ。気まぐれに現れて無理難題を吹っかけてたってなにも不思議じゃねぇよ。」

 

リッカルドに飲食店経営を諦めさせた張本人であるハイアットは、島外からの『出戻り』だ。今でこそこうして開け、多くの観光客で賑わうティマプリ島だが、ほんの十年程前までは本当に外との交流が少ない閉鎖的な島だった。

それを『開国』させたのがハイアットである。

 

島外、特にトーキョーの文化を持ち込み、島を外に向けて開かせるための土台を作った人物。その割に要職についたりすることなく、自由気ままに商売をしたり喧嘩をしたりするものだから、本当に厄介極まりない。

 

「……美味かった、ってことだけ伝えてやるか。」

「リッカルドさん、なんだかんだ言ってミントさんに優しいっすよね。」

「バカ野郎、女には優しくしとけ。……後が怖ぇ。」

 

そう言うとリッカルドは席を立った。

 

部屋を出たところで店員と出くわしたらしく、デザートを頼む声が聞こえてくる。気遣いのでき、男気溢れる『兄貴』。人と馴れ合うことを好まないアルが、進んで近くに居る、数少ない人物であった。

 

ところで、リッカルドが自ら足を運ぶ先に、自分は行かなくても良いのだろうか。まるで、兄貴分を顎で使っているように見えないか。

ふとそんな考えが頭をよぎる。アルは慌てて席を立つと、部屋を出た。幸いミント達が居る部屋はアル達の部屋と同じ並びにあったらしい。廊下の向こうにリッカルドの背中が見えた。

 

「あ、リッカルドさん、俺もミントさんに一言お礼を……。」

 

そう声を掛けた瞬間、ミントが食事を取っているはずの部屋から悲鳴が聞こえてくる。

 

「!?え、大丈夫っすか!?」

「……アル、貴方、自分が何者であるかという自覚が無さすぎるわ。」

「え?」

「もしかして俺を追ってきたのか?そんなに気ぃ使わなくていいって言っただろ。」

「いや、だって俺もご馳走になっちゃったわけですし……。」

「変なところ真面目ね。あーあ、うちの若い子たちが失神寸前よ。」

 

ミントが部屋の中をチラリと覗いて苦笑した。

 

「いい?アイドルってのは遠くに居るから憧れるもんなの。だからプライベートは徹底的に伏せられる。……ただ、ファンサも大事は大事だから、そこの辺りはきちんと判断しなさいね。」

「……わかってます。」

 

ミントが一緒に食事を取っていた相手がどうやら自分のファンらしいと察したアルは、ふぅ、と溜息を吐くと、両の頬を掌でパン!と叩き、スイッチを切り替えた。にこっと笑顔を作り、部屋をチラッと覗く。

 

「邪魔してごめんね。食事、楽しんで。」

 

キャアアアアアアア!!!という悲鳴が聞こえ、中に居た3人の女の子達が抱き合って泣き始める。

 

アルはミントに「サラダもサンドイッチもほんとに美味かったっす。ご馳走様でした。」とだけ告げると、そそくさと部屋に戻っていった。

 

「すっかりアイドルってのが定着したな。」

「勘弁してくださいよ。シャチョーが言うから仕方なく付き合ってんですよ?」

「その割にはしっかりやれてるじゃねぇか。」

「まぁ、女の子に騒がれて悪い気はしないっすけど、面倒なことも多いんで。」

 

違ぇねぇな、と笑いながら会計を済ませ、リッカルドは地下駐車場に待たせていた車へと乗りこんだ。

運転手がドアを閉め、反対側のドアを開けてくれる。

乗れ、と顎で合図をされて漸く、アルもリッカルドの隣へと腰を下ろした。

 

「ったく、ホントにお前は頭が固ぇってか、クソ真面目ってか、なんとかなんねぇのかそれ。」

「……すいません、一応。」

「悪い事じゃねぇから謝らなくていいんだよ。ま、いいか、それがアルだからな。」

 

リッカルドはアルの頭を乱暴にガシガシと撫でると、静かに煙草に火を点けた。

 

静かな車内に、控えめなクラシックが流れている。心地の良い沈黙だ。アルは自然と落ちてくる瞼をそのままに任せ、夢の世界へと旅立とうとした。その時。

 

パンっ!

 

鈍い音と共に、車のサイドミラーがひび割れた。

 

「!!!」

「!?リッカルドさん、今のって……!」

「黙ってろ、舌噛むぞ。」

 

リッカルドは、運転席と後部座席を隔てるアクリルパネルの小窓を全開にした。

 

「商店街を突っ切るな。迂回してそのまま教会の敷地に突っ込め。」

「分かりました。」

 

車は進路を大きく変え、今まで突っ切って来た商店街から離れる。

 

「商店街の方が入り組んでて都合がいいんじゃ……?」

「バカ野郎、この辺りは一般人もいるんだ。何か起きてからじゃ遅ぇ。」

「こんなところに来る一般人なんて居ないでしょ……!」

「ムカイの策で、お前らのポップアップショップとやらが商店街にできてんだよ。ファン殺したくねぇだろ?」

「はぁ!?!?よりにもよってなんで商店街に!?!?」

 

心底疑問だという顔をするアルを見て、リッカルドは軽く溜息を吐くと手短に説明した。

 

「商店街っつったらはぐれ者共の塒だ。そこを開拓して一般人が当たり前に流入するようになったら、やつらはどこへ逃げる?」

「そりゃ、もっと奥の、立ち入り禁止区域とか……。」

「だろ?で、そこは俺たちのナワバリだ。ナワバリに入るには、ファミリーに入るしかねぇ。そうすりゃはぐれ者共をこっちが管理できんだろ。」

「確かに……!」

「それがお宅のシャチョー様たちの策ってわけだ。……っ!あいつら正気か!?また撃ってきやがった……!」

 

商店街を逸れて人気の少ない海岸沿い倉庫地帯に入った途端、追ってくる車からの銃撃が過激化した。

タイヤに被弾していないのが幸いだが、この弾数を撃ってこられてはそれも時間の問題だろう。

 

「アル、いけるか?」

「誰に聞いてんすか。」

 

リッカルドは座席の下からアタッシュケースを引っ張り出す。アルも同様に、銀色に光るケースを引き出すと、ためらいなく開けた。

ピカピカに整備された最新式の拳銃を、アルは慣れた手つきで取り出し、軽く点検してから弾倉(マガジン)を装填。

 

これで撃鉄を起こし、引き金を引けばいつでも発砲できる状態だ。

 

「顔バレたらヤバイだろ。なんか隠すもんとかねぇのか?」

「どうせスモークガラスだろ?バレねぇよ……!」

 

眼を爛々と輝かせ、ニヤリと口角だけを上げたアルは、窓をほんの少し、ギリギリ銃と手が通るだけの隙間を空け、リアガラス越しに追跡してくる車を見ながら引き金を引いた。

 

追って来た車は、見事前輪に被弾し、ギャギャギャギャギャ!!!と派手なスリップ音を響かせながら回転している。

 

そのまま、波止場のブロックに激突して停車したのだが、その様子を見ようともせず、アルは静かに銃を分解すると、アタッシュケースへと戻した。

 

「相変わらず。お前の腕はピカ一だな。」

「この位は朝飯前っすよ。それより、追われる心当たりあるんですよね?」

「……まぁな。」

「……奴ら、何者なんです?」

「ステーキ屋。」

「はぁ!?」

 

車はそのまま埠頭を抜け、島内陸部の教会が見えてきた。

一般にも広く開放されているその教会の敷地は、存外広い。

 

外周をぐるりと回るように車を走らせると、背の高い雑草に覆われた空き地へと差し掛かった。

道を逸れ、雑草を踏み潰すようにして空き地へと乗り入れる。車が通過してしまえば、雑草はまた勢いよく元に戻り、車を隠すように茂った。

空き地の外からは車の姿を視認するのが難しくなると、やがてその車体は地面に呑まれていった。

 

正確には、偽装した車用エレベーターに乗ったのである。

 

それは、選ばれし者しか知り得ない、『地下』への入り口であった。

 

 

 

 




さて、今回はまさかのリッカルドさん回でございました。
リッカルドさんとアルの食べ歩きについては「書きます!」とお約束していたので、無事にお届けできて嬉しい限りです。

リッカルドさんとアルはどうして拳銃なんて物騒なものを扱えるのでしょうか……。
それについてはまた少しずつ明らかになっていきますので、どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます!!!
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