同じ映画をこんなに見たのは人生初です。それだけ今回の映画は最高でした。
いよいよ本格始動する今日。
何故だかエンジニアの人たちには緊張感が漂っていた。本格始動するから、緊張感があるのは当たり前なのだが、そういう緊張感ではない。こう、なんだか、問題が起こった時の緊張感が漂っているのである。すれ違ったサポートスタッフの人にどうしたのかと訊けば、どうやらユーロポールの防犯カメラネットワークセンターに何者かが侵入し、それを目撃した職員が殺害されてしまったらしい。
ITの知識なんてほとんどない私でも、それが一大事であることはわかった。人が一人亡くなっているのだから。確か、今日回線を繋ぐのがそのセンターだと聞いたので、その犯人の本命はもしかしたらこのパシフィック・ブイなのかもしれないな、と思った。コンピュータは内側からの攻撃に弱いと聞くし。これが杞憂ならいいのだが。
とにかく、その事件のことでここに警察が訪れるらしいとも聞いた。
初日だというのに幸先が悪すぎる。グレースちゃんたちは大丈夫だろうか、でも、清掃スタッフである私には何も出来ないので、見守るしかない。
今日も私は清掃スタッフとしての業務があるので、清掃カートをゴロゴロと推しながら進んで行く。そしたら、丁度牧野局長さんと直美ちゃんが威厳のありそうな男性と、物腰柔らかそうな若い男性……それから、眼鏡をかけた小学校低学年くらいの男の子と一緒に歩いてくるのが見えた。恐らく男性2名は警察の方だろう。だけど、あの男の子はなんだろうか。どうしてこんなところにあんな小さな男の子が来ているのだろう。
「局長さん、直美ちゃん、お疲れ様です」
「ああ、春霞くん。お疲れ様。……彼女は清掃スタッフの春霞くんです。春霞くん、こちら警視庁の刑事さん方だ」
「春霞です。よろしくお願いします」
「黒田と言います。こちらは部下の白鳥です」
「よろしくお願いします」
多分、警視庁の中でもかなり上の階級の人なんだろうな、と雰囲気から察することが出来るくらいの威厳が伝わってくる。
「ねぇ、ボクはなんていうお名前なの?」
私は膝を折り、目線を合わせて男の子に尋ねた。
そうすれば男の子は笑顔で、「ボク、江戸川コナン!!」と名乗る。うん、かわいい。
「この子はホエールウォッチングの船と間違えて警視庁の船に乗ってしまってここに来たんだよ」
確かに八丈島には船がたくさんあるし、間違えてしまうのも無理はないのかもしれない。
「そっか、コナンくんか〜。よろしくね!」
「うん!よろしくね!」
しっかり挨拶ができていい子だな、コナンくん。
当たり前だが、パシフィック・ブイでは子どもと触れ合う機会なんてない。だから、この場所にこうやってコナンくんがいるというのは、とても新鮮で貴重な時間なのである。子どもは癒しだ。
「では、春霞くん。我々は彼らをメインルームへ案内しなくてはいけないので失礼するよ」
「はい。引き止めてしまってごめんなさい。お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様」
「直美ちゃんも、またあとでね!」
「ええ、またあとで」
局長さんと直美ちゃんは刑事さんたちの案内の為、彼らと共にメインルームへと向かって行った。やはりあの事件、ただの事件ではなさそうだ。これから色々大変なことになりそうだな、とぼんやりと考えた。
主人公の名前の読みは「はるか」です。
由来は日本酒の『春霞(はるかすみ)』。組織とは関係ないですが、何となく日本酒の名前を付けてみたかったので。ただ、日本酒の名前って人の名前に出来そうなものが少なくてめちゃめちゃ大変でした。