僕のご先祖様は地獄の鬼で、イラストレーター!   作:東風ますけ

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どうも東風です。ご高覧いただきありがとうございます。
なんだがごちゃごちゃしてる話ですが、楽しんでいただけたらありがたいです!

それでは本編!どうぞ!


鬼の彼女は地獄のイラストレーター

 

一つ、昔話をしよう。

 

地獄(じごく)沙汰(さた)金次第(かねしだい)。という言葉がある。

この言葉の意味はほぼそのままで。

地獄での出来事、扱いは金次第で軽くなったり、重くなったりするところから来ている。

 

そして、僕は今。

 

(それがし)にお金を払ってくれるならイラストを描いてあげるぞい」

 

もっとお金持っとけば良かったと絶賛後悔中なのだ。

 

………状況を説明したいから時を少し戻すよ。

 

コホン。

 

僕の名前は『常世(とこよ) (げん)』。なかなか珍しい苗字だろ?ネットで検索しても全く出てこない苗字なんだ。そんな僕はいわゆる小説家って奴だ。

小説家としてはまだまだ新米でね、全然食ってけてないんだ。

昨日なんてもやし四本だ。

 

………世知辛(せちがら)い。いつから現実はこんなにも残酷になったんだろうか。

 

でね。そんな食生活を送っていたら必ず訪れるもの、あるよね?

 

そう、『()え』だ。

それはもうとびっきりの。

 

グギュルルルゥゥゥゥ。

 

「………ヤバい。意識が朦朧(もうろう)とし……て………き……………」

 

…………。

 

………。

 

……。

 

\チーン/

 

………どれくらいの間眠っていたのだろう。周りは暗く、なんだか無性(むしょう)に暑い。熱すぎる。

肌がパリパリ焼ける音が耳に響く。このままだと丸焼きになっちゃうなぁ…。

 

【おーい。目ェ覚ませぇーおーい】

 

「う………あと十時間…」

 

【寝過ぎじゃボケぇ!】

 

「う………あと二十時間……」

 

【いい加減にしろォォォォォ!!常世 幻!起きろ!】

 

なんか僕を呼ぶ声がする。でも(ねむ)いもんは眠いのだ。

 

「う……あと三十時間だけ…」

 

【もういい!お前!地獄行き!】

 

「………え?地獄?」

 

目を(こす)って顔を上げるとそこには大きな、大きな鬼が………?

 

「鬼!?!?」

 

【あー。ごずっち、めずっち】

 

「「なんでしょうか閻魔(えんま)様」」

 

【そいつ、地獄に連れてっといて】

 

「「わかりました」」

 

「ちょっ!?えっ!?裁判権!裁判権を下さい」

 

【死後の世界にそんなモンあるわけなかろう。しっかり罪を(つぐな)ってこい、この寝坊助(ねぼすけ)がっ!】

 

「ほら行きますよ」

 

「私たちについて来てくださいね」

 

「………はい」

 

僕は言われるがままに目の前の牛頭馬頭(ごずめず)コンビに着いて行く。

 

この時点で僕はもうすでに、結構後悔していた。

………もやし、ケチらなきゃよかった。十本食べてればまた違ったのかな?

 

でも、本当に後悔するのはそのあとだった。

 

■■■■■■

 

ごずっちとめずっちに案内された僕は、目の前に広がり続ける非、現実的な光景に興奮を抑えきれなかった。これでも小説版の端くれ。物語が次々と脳内に(あふ)れ出てくる。

 

が、僕はまだまだ新米(しんまい)。ベテランの先輩達には逆立ちしても、勝てやしないだろう。

 

くっそ!こんなことならカメラを持ち歩いておけばよかった!

 

(ある)いは、超絶精巧(ちょつぜつせいこう)な絵が描ければ……。

 

「はぁ」

 

どうしてもこの景色を収めたいのに、残念かな。その手段を僕は持ち合わせてやしなかった。

 

──────筈だった!

 

「某にお金を払ってくれるならイラストを描いてあげるぞい」

 

僕は声の主の方へ視線を移す。

 

そこにいたのは、幻想的な美しい薄紅色(うすべにいろ)(くちびる)と、長い髪をした女鬼(めっき)だった。

 

………そして冒頭へ戻る。

 

「………あの」

 

「ん?なんぞい?」

 

「僕今手持ちがなくて……ツケとかってできますか?」

 

「まぁできんこともないぞい。じゃがお主に返済できるのか?」

 

「う……!それは!」

 

「ふーむ。ないようじゃな。……あいわかった!某も鬼ではない!……いやまあ鬼じゃけど。お主の未来に賭けてツケてやるぞい!」

 

「本当ですか!ありがとうございます!」

 

「ちなみに、お主。名はなんじゃ?……っとと。まずはこちらから名乗るべきじゃな。

某の名は『常世(とこよ) 媿(はじる)』だぞい!さて、其方(そなた)の名は?」

 

「………?」

 

僕は首を(かし)げる。

 

「………?じゃないわ!ほれ!某は名乗ったぞい?次は其方の番じゃ!」

 

僕は混乱した頭をなんとか黙らせて名乗る。

 

「僕の名前は『常世 幻』。媿さんと同じ、常世です」

 

「………もしかして其方は………某の子孫か?某は900年ほど前に鬼になったが、その時は某の夫とその子供しか居らなかったぞい?」

 

「………やっぱりそうですよね。ネットで調べても全くヒットしない苗字ですから。」

 

まさか地獄でご先祖に会えるなんて!………でも、この人は優しそうなのに、なんで地獄にいるんだろうか?というかご先祖が地獄にいるのはなんたかいたたまれない気持ちになる。

 

僕が勝手にシリアスになっている中、媿さんは。

 

「………クックック!フハァッハッハッハ!実に、実に運命とは美しゅうのお?なあ?我が子孫幻よ?

 

ま、そんなことは置いていてだな………で、どんな絵を描いて欲しいんじゃ?」

 

もう自分の仕事をやる気マンマンだった。

葛藤(かっとう)って程じゃないけど、僕の心配を返して欲しい。

 

「そうですね、じゃあ、あそこと、あそこと、あそこと………」

 

僕は描いて欲しい所を指差していく。

 

「ふむふむ。こうじゃな」

 

シャカシャカシャカっと、媿さんは手際(てぎわ)よくスケッチしていく。

 

そして、スケッチブックが5冊ほど埋まった。

 

「ありがとうございます!このお代はいつか必ず!」

 

「まあそんな張り切らんでもいいぞい。某も子孫と(たわむ)れることができて楽しかったぞい。………そういえば幻、お主、どうやって現世に戻るつもりじゃ?」

 

「そういえばそうでした!媿さん、どうしましょう!」

 

僕は今更狼狽(うろ)えた。あー。完全に忘れてた…。

 

「まぁ落ち着け幻。其方がここに来た原因は?」

 

「………!お腹空いていたことです!」

 

媿さんは(ふところ)から竹皮で包まれた何かを取り出した。

 

「むすびじゃ!食うが良い!」

 

「いただきます!………1週間ぶりの炭水化物………うめぇ!!」

 

幸せを噛み締めるのも束の間。僕の体が薄くなる。どうやらお別れのようだ。

 

「媿さん!このご恩はいつか!必ず!」

 

「程々に……な。幻、頑張るんじゃぞい」

 

「はいっ!」

 

そして僕は現世に戻った──。

 

────そしてあれから3年が経過した。

 

僕は媿さんが描いてくれたスケッチを元に、様々な物語を作った。そのまま推し絵として使わせてもらったのだが、これが大反響!

媿さんの実力は時代さえ超越(ちょうえつ)した。

 

おかげさまで僕はもう、もやしのみの生活から脱却(だっきゃく)することができた。まあ今ももやし主体の生活だけどね(もやし好き)。

 

今の僕ならきっと、媿さんの見事なスケッチ代を払うことが叶うだろう。

 

媿さん………次はいつ会えるんだろうなぁ?いっそのこと、もう一度仮死状態にでもなってみるか?ははっ!なんてね。そんな危ないことして会ったら殴られてしまうしね。僕はそんなリスキーなことしたくないし、媿さんもきっと望んで無いだろう。

 

僕はスクランブル交差点の信号が変わるまでの間、そんなことを考えてた。僕が立ち止まっても、人の海、東京では今もなお、行き交う人々が自分の道を進み続けている。

 

「ま、ゆっくりと、寿命が来るまで、再会は取ってときますか」

 

目の前の信号が青に変わる。反対側から人が波の如く押し寄せてくる。

 

僕もまた、自分の道を進み続けようとしたその時。おそらくは反対側から歩いてきたのだろう。目の前には深く帽子を被った女の人が立っていた。信号の真ん中で、人が進み続ける中、ただ一人だけ立ち止まっていた。

 

「その必要は無いぞい。幻」

 

「………!その声は!媿さん!」

 

「閻魔から長期休暇をもぎ取ってきたぞい!」

 

帽子の(つば)を指で突き上げてニヒルに笑う媿さんは、僕が出会った誰よりも────

 

「また会えて嬉しいですっ!」

 

「あぁ。某もじゃ!」

 

────かっこよかった。

 

そして、やっと今に至る。

 

「なぁー幻。なんかゲームしようぞ」

 

「いいですけど、頼んだイラスト終わりました?納期、明日ですよ?」

 

「某を誰だと思ってるんじゃ?」

 

「鬼ですね」

 

「何も間違ってないが、なんだか(けな)されているようで釈然(しゃくぜん)としないぞい」

 

「ははは!気のせいですよ。さて、何します?」

 

「おおっ!そうじゃな!それでは────」

 

僕たちは今、一つ屋根の下。共同生活をしている。

僕が文章を書き、媿さんが絵を描く。そしてそれをライトノベルとして出して銭を稼いでいる。

僕たちはそんな持ちつ、持たれつつの暮らしをしている。

 

この物語は僕が、鬼の彼女。僕のご先祖様である媿さんと、最高の作品を作る物語だ!

 

 

 

 

 

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