僕のご先祖様は地獄の鬼で、イラストレーター! 作:東風ますけ
いまさらキャラクター紹介
常世 幻
中肉中背。170センチ。黒髪長髪。髪をひとつしばりにしている。黒いTシャツと黒い長ズボンを愛着している。童顔だぞ!ショタっぽい顔つきだ!
常世 媿
痩せ型。142センチ。髪は薄い桜色。髪は大体下ろしているが、色々なヘアスタイルを試している。
『鬼』と書かれた帽子に、『じゃないよ』とかかれた白いパーカーを愛着している。控えめに言ってクソダサい。パーカーのポケットに手を突っ込みがち。
……余談ですが、常世という苗字が激レア設定だが、現実では210人いるし、東京には40人いるらしい。かっこよ。
それでは本編! とうぞ!
鬼の目にも涙。という言葉がある。冷酷な鬼でも時には人情が通じて、涙を流すことがある。同じように、ふだん厳しく無慈悲な人でも、たまには情に感じて慈悲心をおこし、優しい態度をとることがあるという意味だ。
そして、なんとなく予想がつくと思うのだが、ご先祖様は今──!
──号泣していた!
「よがっだ…!! ずびびびび!! よがっだよぉ!!」
「わわ! な、泣かないでくださいご先祖様!」
「だっでぇ! だっでぇ! 乗客みんな守り切ったんだよぉ! 誰も死なせなかったんだよぉ! すごいよおおおおおお!!!」
某鬼退治の某列車編の某柱の人の生き様にとても感動している媿さん。あと
「あの鬼許さん」
「とりあえずこ昼ごはん食べましょうよ。媿さん」
「そうじゃな。それはそれとしてあの鬼許さん。卑怯者じゃ」
僕は原作勢だけど、とりあえず黙っておこう。
テレビの電源を消して、昼ごはんを作る。
「待て、幻」
「なんですか媿さん」
「某の奢りで外で食わぬか?」
「いいんですか!」
「もちのろんじゃよ。どのくらいモチモチかというと、正月によく貰う餅くらいモチモチじゃな」
「絶妙にわかりにくい例えですね」
「しばくぞい」
「でた金棒。駄目ですよ媿さん。暴力は駄目です」
「しばくぞい」
「聞いてねぇこの人! …鬼だったわ」
「ハンバーグっ♪ ハンバーグっ♪」
笑顔で金棒を素振りしているせいで、今から食べに行くのがハンバーグなのか、それとも僕がハンバーグにされるのかわからないぞ。ちなみに僕は後者の可能性が高いと思う。
「早くハンバーグ食べに行くぞい!」
「前者でしたか。えぇ。行きましょう媿さん」
「ハンバーグ♪」
腕をブンブンと振りながら支度をしている媿さん。この人本当に僕のご先祖様なのか? 子孫じゃなくて? だんだん父性溢れてきちゃったよ?
「幻! 其方免許証は持ったか!?」
「えぇ、ばっちりですよ媿さん」
「レッツゴーだぞい!」
「帽子、忘れてますよ」
「およよ。いつもすまんな幻。これでも某、反省してるんだぞい」
「気にしないでください。僕も案外このやり取りが面白いですから」
「うーむ。某はいい子孫を持ったのぉ。今度閻魔に会った時は自慢してやるかな」
「そういえば閻魔さまって家族とか居るんですか?」
「あやつは独身じゃな。いつも婚活しとるぞい。こないだの合コンは会場に居られなかったらしい」
閻魔大王が合コン……。地獄の誰か止めなかったのか?
「閻魔さま、身体大きいですもんね」
「それもあるが……ほら。閻魔って嘘を嫌うじゃろ?」
「あっ(察し)」
「……だから某はいつも合コンなんてやめて、普通に旦那様を探せとあれほど言ったんじゃけどなぁ……」
媿さんが下を見て、遠い目をしている。
「僕は閻魔さま、可愛いと思いますけどね」
「!? おい待て幻。早まるな。其方は正直者じゃが、閻魔のやつを怒らせるとコキュートスに閉じ込められるぞ」
「なんでそこだけ西洋なんですかね?」
「和洋折衷って言葉があるじゃろ? それじゃよ」
「そんな無茶苦茶な……」
ぐー。
腹の虫が2匹鳴いた。
「……お昼ご飯。食べに行きましょう。媿さん」
「……賛成だぞい」
そこから僕らは車で5分ほどのファミレスに入った。
僕も媿さんに釣られたので二人揃ってハンバーグを注文した。
「好きですよね。ドリンクバー」
「地獄にもあったからなぁ。某のお気に入りは黒縄地獄味だぞい」
「こ、黒縄地獄! 八大地獄の一つですよね! やっぱり苦いんですか? それとも辛いんですか!」
「コーラ」
「どうせそんなことだろうとは思ってましたよ。この感じだと阿鼻地獄……無間地獄とも呼ばれる一番怖い地獄も、大したことな──」
媿さんはこの世の終わりのような顔で、俯きながら呟いた。
「デスソース。……千倍」
「僕が悪かったですご先祖様」
「あれは……言葉では形容し難い地獄だったぞい」
「飲んだんですか……」
「酒に酔ってな。……それ以降某は酒を飲むのを辞めた」
「賢明な判断です。ご先祖様。……というか何のためにそんな激辛が?」
「あー。昔な、『百鬼夜行』と呼ばれる妖怪の軍があったんじゃよ。そこのお頭様がな、まー大層な激辛好きでな。……で、そいつは中々にイケメンでカリスマじゃったから、そいつが飲むと真似してみんな飲んだ。そしてみんな倒れた。あの最強の戦士たち『百鬼夜行』が原因であるお頭様を除いてみんなノックダウンじゃよ」
「その『百鬼夜行』って人たち、バカですね」
「お主がい……いや何でもないぞい。そうじゃな、あいつらみんなバカじゃよ」
「本当に強かったんですか? その人たち」
「強いなんてもんじゃないぞい。あの魔王でさえ『百鬼夜行』には手を出さず地獄に侵略できなかったからな」
「ま、……魔王? 今、魔王って言いました?」
「うむ。魔王のレベルは250。当時は最強じゃったな」
「……いやあの。僕が引っかかってるのはそこじゃなくてですね! 魔王のいた時代は最終戦争時代。……1200年以上昔ですよ!?」
「うむ。懐かしいな」
「そ、その感じだともしかして……ご先祖様。年齢のサバ読んでました?」
「ん? 幻。お主、何か勘違いをしてないか?」
「ご先祖様が自分で、鬼になったのは『900年前』だって言ってたじゃないですか!」
「うむ。鬼になったのは、確かに900年前だぞい? ……なるほどな」
ご先祖様がいくら長生きしたとしても、人間の寿命は100年程度だ。だからご先祖様が生まれたのは、最大でも千年前が限界だ。なのにどうしてそれよりも昔のことを、まるで見てきたかのように語れるんだ?
「幻。そういえば其方にすっかり言い忘れていた。某の耳、いつも髪の毛で隠れてたからな」
そう言いながらご先祖様は、髪を持ち上げて耳を露わにする。
「──えっ?」
ご先祖様の耳は、尖っていた。それは、森の番人の特徴。
「実は某、元の種族はエルフだぞい。黙っててごめんだぞい。てへぺろ!」
舌をペロっと出すご先祖様。
「ええええええええ!?!?!?」
鬼の目にも涙という言葉があるが、泣きたいのはこっちである。
「ハンバーグランチセットになります」
「「いただきます」」
それはそれとしてハンバーグはとても美味しかった。
だがそれはそれ、これはこれである。
帰ったら質問攻めしようと、僕は心の底で決めたのだった。