推しの魔法少女すぐ死ぬ   作:Feles

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「私は私の為に貴方を殺すのです」

皆の為の(どうぐ)になることが、アイツの悲願だなんて信じたくもないね。


生き地獄系強制変換レイジモンスター

誰か俺を殺してくれないか。

 

「…なんだって?」

 

巷では“魔法少女殺し”なんていう二つ名で有名なんだ。

たしか“不死身”なんていう風にも呼ばれていたな。

まぁ、そんなことどうでもいいんだ。

そんな俺を、誰か殺してくれないか。

 

「もっかい言ってくれるか…?」

 

俺は怪人だ。

どうしようもない悪性を抱えた最低最悪の怪人だとも。

性善説を鼻で嗤えるような、わぁるい奴なんだよ。

生きていてはいけないと思うだろう?

こんな醜悪な存在は殺さなければと、そう思うだろう?

だったら俺を、殺してくれないか。

 

「…俺を救う(ころす)為に、もう1人同じ怪人(もん)を創るって?」

 

自分語りをしてもいいか。

俺が持って生まれた固有魔法は“不死身”だ。

待ってくれ、どうか最後まで聞いてくれ。

こんなの聞かされた時点で、無理だと思うのは分かる。

事実、俺はこうして死に損なっている。

本当に申し訳ない。

でも、俺にはどうすることも出来ないことなんだ。

自殺なんて試した後なんだ。

だから、どうか俺を殺す方法を考えてくれないか。

 

「確かに、そうだな」

 

でないと、また俺はお前達を殺すことになる。

…いや、違うんだ、これは脅迫とかじゃないんだ。

これは俺の“(サガ)”の問題なんだ。

俺は、人間の“憤怒”の中で生まれ堕ちた。

一番最初の、本当に最初の俺は、ちょっと怒りっぽかっただけなんだ。

それが今や人間を視界にいれるだけで、殺さずにはいられないくらいに膨れ上がってしまった。

我慢しろよって、言われると、本当に辛い…

いや、違うな、ごめんな。

最初の俺なら別に、誰にも迷惑を掛けずに、誰にも知られることもなく、野垂れ死んで終わりだったんだろうな。

 

「理論上、全世界から憤怒(いかり)が消えれば俺を完全に殺せる筈だな」

 

…これは俺のせいなのかな。

…俺が人間に近付いちゃったのが悪かったのか、分からないけどさ。

顔は見えなかったから、誰とかどんな奴とかは言えないんだけど、急にリンチにあったんだよ。

そのままそこで初めて死んだんだよ俺。

そうだよ、俺ってば滅茶苦茶弱い怪人だったんだぜ!

…どうでもいいよな、ごめん。

まぁ、なんだろう、理由とかは知らないけどさ、怪人だとは思われてなかったと思う。

だから、ホームレス狩り?っていうの?

たぶんそんな感じじゃないか?

…ん?そう言えば俺の見た目は人間だから妄言だと思われてるかもなのか…。

まぁ…信じなくてもいいよ。

 

「へぇ…お前がなるのか、俺の神様に」

 

でな、死んで終わりなら良かったんだけどな。

最初に言ったよな、俺は“不死身”だって。

お前達も使ってるよな、魔法。

魔法って、何を使ってるか、分かるか?

魔力…?

なんだそれ…俺はそんなの知らないな。

 

「…ふざけるんじゃねぇよ」

 

話は変わるんだけどさ。

普通の怪人は、自分の存在を削って魔法を行使してるって知ってたか?

おぉ、怖がらなくていいぞ、魔法少女は違うからな。

えっとな、怪人を構成するものが何かは分かるか?

…人間の死体と、人間の悪意だ。

それで、死体の方はただの入れ物なんだ。

だから、怪人の本質は悪意の方…つまり感情とか心だ。

だいたい察しは付いたと思うけど、魔法は感情を使うものなんだ。

怪人の強さっていうのは、固有魔法の強さは当然なんだが。

生まれた時点での、感情の総量でも変わるんだよ。

どんだけ魔法が強くたって、それを使うための燃料がからっきしなんて笑い話にもならないわな。

 

憤怒(ねんりょう)がねぇなら、感じれば(つくれば)いいよな…」

 

じゃあ、話を戻すが。

俺の“不死身”は何を使うか分かるか?

感情、それは正解なんだがな。

じゃあ、誰のって言ったら、俺のじゃないんだよ。

さっき言ったろ、普通の怪人はって。

俺は違ったんだよ。

その辺の人間が抱く感情使って“不死身”を強制してくるんだよ、固有魔法(こいつ)は。

嫌んなるぜ、なぁ?

何をキレてたのか知らないけどさ、俺をリンチしてた奴らの怒りを諸に押し付けられてな。

町を1つ潰したわけ。

あと、魔法少女を1人。

そうだよ、俺のじゃないから、制御出来ないんだよ。

俺に分かるのは怒りだってことだけで、誰が何に怒ってるのかなんて分からないんだよな。

ていうか、なんだよ、俺をボコボコにして上機嫌だったんじゃねぇのかよってなぁ?

 

「ハハハ…理解できないってか?」

 

ふぅ…落ち着かないとな。

いや、八つ当たりっぽくなって悪いな。

…あ?何泣いてんだよ…。

やめろよ…今更同情するのかよ…。

本当に…ムカつくなぁ…!

なんで人間は、俺みたいなの生むのかなぁ…!

もういいんだよ、保護じゃなくてさ、駆除してくれよぉ!

 

「怪人なんてどいつもこいつも自分勝手なもんだろ」

 

お前に分かるのかよ!

何処の誰のかも分からねぇ自分とは違う感情に、好き勝手に身体を使われるのが!

誰からも殺意しか向けられないことが!

人間から与えられ続ける感情に、侵食され続ける俺の気持ちがぁ!

怪人としては、大成功だろうなぁ!

もうきっと俺は誰からも忘れられないぜ!?

でもさぁ、俺は誰かに愛されたかったよ!

もうさ…何処までが俺だったのか、分かんねぇよ…!

ぐぅうう…はあぁあ…!

 

「俺が何度だって蘇って、いつか必ずお前を救って(ころして)やる」

 

…今すぐ逃げるか…俺と殺るか、選べ。

 

「約束だぜ、ダイヤモンド」




推しの為なら死ねる!
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