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「やぁ、修羅。久しぶりに会いに来たよ」
「…
「性に合わなくてね?」
「我が家に不法侵入される俺の身にもなれ。急に来られては、茶の用意も碌に出来んだろう」
「アッハッハ! 本当に優しい奴だねぇお前は!」
地底―――もとい、旧地獄の都に住む鬼にして
「如何なる理由であれ、客人は
「いい饗しの精神だね。なら、お言葉に甘えて茶の一杯を貰ってもいいかい?」
「…
大嶽修羅が煎れる茶は大変美味いという話しは、妖怪の山全体に広がりつつある。
この『鬼の
ちなみに、その話しが広がる要因となったのは新聞を書く天狗であるとか何とか。
「待たせたな。ほら」
「おう、ありがとね。―――うん、美味い」
茶を啜り、鬼に似合わぬ穏やかな表情を浮かべる彼女。
数百年、いや数千年前から彼を知る星熊勇儀は、その美味い茶を飲んで感傷に浸り始めた。
あの邪智暴虐の化身の如き鬼が、こうも美味いお茶を煎れれる様になったとは…と。
「いやはや、偶には茶を飲むのも悪くないねぇ」
「酒を飲み過ぎているからそう感じる。伊吹も貴様も、少しは酒を減らせ」
「そりゃ無理ってもんさ、修羅。わたしも萃香も、いや、鬼は皆揃って酒を飲まずにはいられないのさ。アンタの方こそ、酒をもっと飲みなよ」
「酒は数年に一度飲むだけで充分だ。酒を飲むと、働き難い」
「アンタ、本当に働いてるのかい? 似合わないねぇ!」
「喧しいわ。鬼とて働きはしようよ」
鬼ともあろうものが働くとは、と、けらけら笑う勇儀。
似合わない自覚は大いにある。
だが、それを他人に―――何より、この全く働いていない友人に言われると、それなりに腹が立つ。
「河童や天狗達の手伝いねぇ…楽しいのかい?」
「それなりに、な。暇潰しにもなるし、誰かの力になれるのは善い事だ」
「…変わったねぇ、本当に」
―――心底つまらなそうな顔で、湯呑みを置く。
「昔のアンタは、何処に行ったんだか。なぁ、修羅」
「…『鬼神魔王』と呼ばれた俺は、もう居ない。今は、隠居するだけの翁に過ぎん」
「そんなに、あの人間との戦いが胸に響いたのかい?」
「そうだ。敗者らしい真似をして、今に至る。ただそれだけの事なんだよ、星熊」
「あんたにとっちゃ、そうかもね。だが、私達にしてみればそれだけの事じゃない」
鬼神魔王と呼ばれ恐れられていた男が、一人の人間に敗北し、山の奥底に籠もり、弱者に協力する。
約束をした訳でもないのに、何故大人しくなる。何故、もう一度戦おうとしない。何故、戦う事から避ける。
鬼神は何処だ。魔王は何処だ。あの暴虐無道な鬼は、鬼達ですら畏怖したあの鬼は何処に行った!?
鬼達は納得していないのだ。あの鬼神魔王が、あの大嶽修羅が、再戦を挑まず平和を生きている事に。
飢えているのだ。どこまでも。
「何をすれば―――アンタの
「さぁな。それを知ったとして……
古くからの友人というのは難儀なもので。
互いに信頼しているからこそ―――何をするにしたって遠慮も容赦もない。