個性:キングギドラ   作:ヴィーナス

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第九話:王雷爆破

『さぁ!!ここまでトップオブトップ!ぶっちぎりの首位を突っ走るのがこの王様!!龍千 龍姫だああぁぁぁ!!』

 

 歓声は少なく、しかし着実にその脅威は知らしめられて。私へ注がれる視線は、警戒か羨望か。何はともあれ、試合場を挟んで爆と向かい合う。

 

「降参は今のうちだよ」

「馬鹿かテメェは。そのアホ面ぶっ飛ばすまで負けられねぇよ」

「言うねぇ。トラウマスイッチ押してあげる。小便は済ませた?神様にお祈りは?会場のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」

 

 まぁ。

 

『じゃあ行くぜ!準決勝、スタートオオオオォォォォ!!』

 

 どれも許さないけど。

 

「「死ねぇ!!」」

 

 ほぼ同時に駆け出し、跳躍。爆破と翼脚が交差して着地。当てられて外したか。油断はしないし、手加減も無しだ。次郎、三郎、やれ。

 

 吐き出される光線が爆を襲う。爆破で空中に逃げるなんて事はせずに、その身体能力と爆破の加速で地上戦を主体として避けていく。スルスルと近付いてきて、真っ向から挑んでくる。

 

「楽しいねぇ、爆!」

「うるせぇ黙れ!」

 

 正面から爆破で目眩ましかな?そう思っていたら、ターボして正面から殴りかかってくるのを、身体を回して尻尾で横薙ぎに払う。それを既の所で避けて、爆破が叩き込まれる。

 

「あっついなぁ……ジャージ焼けちゃうじゃん!」

「気に入らねぇ、直撃でその台詞かよ」

 

 翼で身体を覆って防ぐと、爆が憎悪に満ちて私を見る。まだまだこれからだと言わんばかりのその様子に、この楽しい一時が長く続く事を祈るだけだ。

 

 翼脚を地面に着け、左右のギドラが威圧するように首を伸ばす。尻尾を地面に叩き付け、仕切り直しとばかりに咆哮する。それと同時に走り出し、殴り掛かる。懐に潜り込んで、爆破しようとして伸ばした手を掴み、ぶん投げる。

 

「飛んでけ!」

「なわけねぇだろ!」

 

 爆破で空中の姿勢を整え、上から強襲してくる。仕方ないと爆破を受けてから飛ぶ。空中戦では分があるので、押し通すつもりで左右のギドラに殺せと指示する。多少反発されたためにしょうがなく掴めと訂正する。

 

「射程が違うねぇ爆ぅ!!」

「だったら何だってんだ!」

 

 全体的な機動力は私、瞬発的な機動力なら爆か。だが、それで主導権を握れる程私は甘くない。誤射の可能性から、水平に光線を撃てないことに舌打ちしながら、爆の頭を抑える。

 

 高度不利を感じたのか、目眩ましと同時に瞬時に後ろに回る――屋内戦闘訓練で、緑にやったあの――動きで背後を取ろうとする。しかし、伊達に頭が三つあるわけじゃない。回ろうとした爆の首根っこを右のギドラが捉える。そのままぶん回して平衡感覚を失わせてからぶん投げる。

 

「そらっ、どうよ!」

「気色……悪ぃ!!」

 

 爆破の反動で場外への逸脱を防いだ爆が、何とか着地してフラフラと立ち上がる。そんな爆に上空から光線を浴びせる。着弾した場所が粉砕され、細かい破片が舞う。

 

「ほら!ほらほらほら!もっと爆破してよ!もっと、もっと!」

「マゾがよぉ……お望み通りにしてやるよ!!」

 

 強烈な閃光を伴う爆破。直視した私は目をやられたが、まだ4つある。引かずにそのまま光線で薙ぎ払い、翼脚で上から叩きつけるようにして殴る。

 

 しかし、土煙に隠れた爆は横から三郎に取り付く。角を掴み、三郎が驚いて暴れる。

 

 うわー!?ちょ、取って取って!いだだだだ!

 

 動くな!馬鹿!取れないだろうが!動くな、動くな!

 

 暴れる三郎にしがみつきながらも、爆破して三郎が悲鳴を上げる。爆破されて金粉を撒き散らしつつ、首を伸ばして抵抗するものだから、私の手が届かないし翼脚もそこまで精密に動くわけじゃない。次郎が爆を引き剥がそうとするが、本当に抵抗が激しい。頭上で爆破祭りされてるせいで、治ってきた目がまたやられそうだ。

 

 待って、コイツ!?死ぬ!死ぬ!やだー!

 

「おわっ!?」

 

 一際大きい爆破が頭上で放たれる。三郎の意識が無くなったことから察するに、持っていかれたか。

 

「ギドラァ……てめぇの言う通りに爆破してやったぞ……!!」

 

 三郎の頭を片手に、ギラついた顔でそう宣う。

 

 良いね。

 

 何がだ。頭一つ持っていかれてるんだぞ。

 

 だからこそだよ。潰し甲斐がある。

 

「やるね、爆」

「……だよなぁ、お前が本気を出すのはここからだよなぁ」

「殺してやる」

 

 翼を羽ばたかせ、瞬時に距離を詰めて膝蹴り。後ろに跳ぶことで衝撃を軽減させた爆と、至近距離で目線が交差する。そのまま身体を回転させて尻尾でその胴体を捉える殴打を叩き込む。今度は手応えがあり、そのまま場外まで吹っ飛ぶかと思ったが、ギリギリの所で爆破して勢いを殺して耐える。

 

「今の、肋が何本か逝ったな?ほら、まだやれるだろ」

 

 何とか立っているような爆に、脚をギドラの逆脚にして前蹴り。倒れ込むように避けた爆に光線を放つ。対人用に威力はかなり落としているが、それでもこの直撃は十二分に痛い。それを、爆は超えてきてくれる。

 

「ったりめぇだろうがクソがぁ!!」

 

 光線を受けているというのに、両手で爆破してくる。距離があったお陰でそこまで脅威では無かったが、突っ込んできた爆を捕まえる。首を持ってしまって、爆が苦しそうに暴れる。

 

「ざけんな……てめぇ、に……負けられるか……!!」

「そうだよなぁ、爆。お前は天才だ。だが、私が常に隣りにいた。それがお前の人生最初で最大の不運だったな」

 

 パッと離せば、呼吸を整えながら脇腹を押さえている。既に限界は近い……いや、超えているか。

 

「爆、もう辛いだろ」

「うるせぇ」

「お前の最大の一撃、受け止めてやる」

 

 爆が、少しだけ目を見開く。そこから、少しだけ距離を取る。

 

「お前じゃ勝てないの、証明してやるよ」

「今の言葉ァ、後悔するんじゃねぇぞ!!」

 

 痛いだろうに、跳躍。左右別方向に爆破して回転する。なるほど、遠心力。それで倒そうってか。良いね。

 

「爆、やっぱり……」

 

 こちらを見据える爆と目が合う。その目は憎悪と殺意に満ち溢れていて、寒気すらする。

 

「強いね」

 

▼▽▼

 

『すげぇ煙……何も見えねぇ。どうなってる?』

 

 破片が舞い散り、煙が充満した試合場。まだ、煙は晴れずに勝者が生まれたのかすらわからない。

 

『なぁ、イレイザーどうなってる?』

『分からないが……まだ、勝負はついてないんだろうな』

 

 その通り。そう言わんばかりに羽ばたき、土煙を霧散させる龍千。試合場の真ん中に龍千がいる。その前には、出血する手を押さえる爆豪がいた。

 

『あれを喰らって無傷!?』

『いや、そういう訳じゃ無さそうだ』

 

 身体の至る所に火傷を負っているがどうせ治ると、余裕綽々の立ち姿で爆豪を見下ろしている。ジャージも所々焼けているが、再生した左側のギドラが煽るようにカラカラと笑っている。

 

 ドクターストップが掛かるより早く龍千が動く。ジャージの上着を脱ぎ捨てて翼を地面につけると、落雷を呼ぶ。轟音と閃光、空中の電化を感じながら全力を解放するかのように咆哮する。首から鱗に覆われていき、脚は逆脚になり、その腕は自切するように消えていく。その身体は巨大化し、10mはあろう巨躯へと変貌する。

 

『何だあれ!?』

『龍千の"個性"……その、真髄か?』

 

 その怪獣が、咆哮する。地を震わせ、王威を示すが如くに吼える。真ん中の首が、爆豪を睨みつける。そして、喉が発光すると同時に口から雷撃が放たれる。明らかに過剰威力なそれは、試合場を煌々と照らし、瞬く間に床を割り爆豪を吹き飛ばしていく。

 

 雷撃が終わり、また雷が試合場に落ちる。それが納まると、龍千は元の姿に戻っていた。足下に落としていたジャージを着直して、ミッドナイトを見やる。

 

「爆豪くん場外、決勝戦進出は龍千さん!」

「まだ……だ……まだ……」

 

 あの雷撃を至近距離で喰らってなお、立ち上がり龍千を睨みつけている。龍千は、その様子を見ると驚いた表情の後に溜め息をついて爆豪へと歩み寄る。

 

「ギドラ……!俺は……テメェを……」

「爆」

 

 出血しながら、崩れ落ちそうな身体で龍千へと手を伸ばす爆豪。その手を取って、抱き寄せる。

 

「楽しかったよ。爆の本気も受け取った。そして、最後まで立っていたのは私だ。だから、今はゆっくり寝てね」

 

 そのまま首を掴むと地面へ叩き付ける。その豹変に、誰もが押し黙る。

 

「……気絶したか、搬送ロボ」

 

 搬送ロボに爆豪を任せ、試合場に背中を向けて通路へ消えていく。その足取りは軽く、楽しそうなものであった。それを見送り、セメントスとミッドナイトは頭を抱えた。

 

「直すのにどれくらい?」

「今度は短くします。昼休憩一回分くらいですな」

「……試合場が直るまで、休憩とするわ!」

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