個性:キングギドラ   作:ヴィーナス

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第十一話:護国

 王となったのは私の力だ。

 

 王となれたのは我らの力だ。

 

 王であるのは我らなのか?

 

▼▽▼

 

 体育祭が終わってからというものの、行く先々で声をかけられたり、知らない内にファンクラブが出来たり、雄英高校内でも認知されていた。特に……。

 

「ギドラ様、おはようございます」

「おはよう」

 

 こんな感じに私の統治下に人が増え始めた。緑や爆が知ったらまたやってるよアイツと言うだろうが、自らの持たぬ圧倒的な力に人は夢を見るものだ。その夢が、希望か絶望かはさておき、それ故に私はソイツらの王として夢を見させる権利と義務がある。とはいえ、統治下に入ることを目当てとしていないものもいる。

 

「おはようございます」

「……おはよう」

 

 例えば、今声をかけてきたコイツ。金髪、長身、色白の女。その目は狂気と確固たる意志を宿している。コイツは、本質的に統治下には入ろうと言う無い。それでも何か目的が合って私の統治下に入ろうとしている。

 

「お前、名前は?」

「メトフィエラ・エクシヴァ、普通科のB組にいます」

 

 まぁ、それを受け入れて、私や他に害があれば止めてやるのも王の仕事だ。こんな狂人一人に警戒するのも疲れる。

 

「気に入った。名前くらいは覚えてやる」

「ありがとうございます」

 

 さて、私への指名はどれだけ来てるかな。若干ワクワクしながら席につき、相澤先生が来ると本日のヒーロー情報学……もとい、コードネーム決めの授業が始まる。その最初にヒーロー達からの指名の数が発表された。

 

「例年はもっとバラけるんだが……今年はかなり異質だな」

「……はぁ?」

 

 私への指名は無し。思わず机を叩いて立ち上がる。

 

「あっ、りゅ、りゅーちゃん!ほら!僕もないからさ!」

「ギドラが無くて俺があるだぁ?見る目無い奴らばっかだな」

「黙れお前ら。相澤先生、私への指名は本当に無いの?」

「……結論から言えば、そうなる。最も、例年であれば大抵一位が多めに指名を受けるが……言うなれば、目立ちすぎた。いや、規格外が過ぎたな」

「クソ野郎共め……!」

 

 キレそう。

 

 ああ、分かるさ。

 

 見る目無いなぁ、プロって。

 

 だが、どうする?この後の職場体験に響くぞ。

 

 そこは学校側で何とかしてくれるでしょ。

 

 ……それが王か?

 

 うわでた。

 

 面倒くさい拗ね方しげっ……。

 

 締まってる締まってる!首締まってる!

 

 締めてる。二度とその口を開くな。

 

 わかった、わがっ……。

 

 離してあげてよ!食い込んでるって!教室だよ!?

 

 チッ……気に入らない。私は王だ。紛うことなき王だ。だとしてそれが相手から来るのではなく、こちらから行くような事を王と呼べるか?

 

 そうは言ってもさぁ、仕方ないじゃん。おわー!?待って待って待って待って!!仕方ないのは本当じゃん!待ってよ!

 

 仕方ないだと?その程度で過ごせるものか。

 

 苦し……死ぬ……。

 

「これを踏まえて指名の有無を問わず、いわゆる職場体験に行ってもらう。お前らが先の襲撃で体感したプロの世界を実際にその目で見て実りある実習にしてくれ。それから龍千、一人で喧嘩するな」

「チッ……はーい」

 

 納得はいかないが、理解は出来る。常々言っているが、人は自らの持たぬ圧倒的な力に夢を見る。しかし、それは悪夢でもある。自分自身では敵わぬ相手を自分の下へ呼び寄せられるか、という話だ。そして、授業はヒーロー情報学に入り、そのままヒーローネーム決めへと移る。

 

 ヒーローネームは、緑の影響で以前からポツポツとだが考えていた。だが、最初から決まっていたようなものだ。

 

「私のヒーローネームはキングギドラ。王故に、この名を名乗る」

「流石の自信ね。その名に恥じない活躍を期待するわ」

 

 王たるギドラ、私の名でありこの身に宿した"個性"の名前。それこそが私であり、この名は私を指し示す物他ならない。

 

 しかし、緑がデクを名乗るとは思いもよらなかった。

 

 確かにな、アイツの発想の転換には驚いたが……ああいう奴と言われても納得は出来る。

 

 発想の転換というか、人からの呪いというか……ま、僕らからしたらどうでも良いし好きにしたら良いんじゃない?

 

 まぁね。私が干渉する事じゃないし。緑の好きにしたらいいよ。

 

 その放課後、相澤先生に呼び止められる。

 

「龍千、お前に一件だけ指名が来た」

「マジ?どこから?」

 

 渡された紙には、聖獣事務所と書かれていた。

 

「……ドが着くほどのマイナー?」

「俺も調べてみたが遭難者の救助、密猟者の取締りなどをメインに行っているようだ。だがどうにも情報が少なくてな、もしかしたらお前向きじゃないかもしれない」

「ま、私を指名するだけの度胸を認めてあげよう。私、ここで」

「分かった」

 

 私を指名、ねぇ。

 

 しかも全然知らないところだし。

 

 何か作為を感じるな。だが、我らを選ぶその勇気を認めるか。

 

 そうだね。じゃあ、準備しようか。

 

 そして、職場体験当日。

 

 富士山麓に事務所を構える聖獣事務所に向かう。人のいない駅で降りて飛ぶ。数十分程飛んで事務所を発見し、地上に降り立つ。人の気配も無いし、鬱蒼としてるし何だここ。

 

 ……誰か来る。

 

 三郎の言う通り、振り返れば人影が見える。背中にトゲを持ち、被膜を持つ男。

 

「ようこそ。お待ちしておりました」

「聖獣事務所の人、みたいだね」

「はい。私、ここの事務所でヒーローをしていますバランと申します」

 

 ……囲まれたな。

 

 なーんか不穏だね。

 

「その力、やはり……」

 

 極彩色の羽根を持つ女性がそう呟く。周りには、先のバラン、トゲの甲羅を背負う男、小柄な一本角の女性。四方を囲まれている形になり、両のギドラが警戒を発する。

 

「その傲慢さ、凶暴性。何があなたをそこまで荒ぶらせるのです」

「ちょっと何言ってるのか分からないなぁ。私、お前らと面識無いし」

 

 翼を広げ、お互いに臨戦態勢に入る。

 

「一万年の眠りにつくとき、くにを守る為にと言ったあなたを信じていたのに」

「何?私、お前らを知らないんだけど」

「最早思い出せもしないと言うのなら、この手で鎮めるまで!」

 

 氷、炎、そしてそこから発生する風。二人一組で轟の超上位互換って感じ。そんで上昇気流を被膜で掴んで滑空、そしてあの虫羽根が指揮、か。

 

「来いよ、お前ら如きに負ける私じゃない」

 

 直後、トゲの甲羅を背負う男が地面に脚を叩きつければ凄まじい冷気が地を這う。一本角の女性が吠えれば空気が揺らぐほどの熱が放たれる。

 

 それを避けて空中に飛べば、やはり上昇気流でバランが飛んでくる。その上挟むように虫羽根まで来やがる。

 

「モスラ、俺がコイツの動きを止める!」

「分かりました。アンギラスとバラゴンはそのまま風を送り続けてください」

「ああ!」

「はい!」

 

 竜巻の様になった気流に飛び込み、遠心力と風速を備えた高速の体当たりが飛んでくる。ギドラがいなかったら反応出来なかったかもしれないが、それを正面から受け止めてぶん回してモスラと呼ばれた虫羽根に向けてぶん投げる。

 

 バランが体勢を立て直して滑空してくる。また気流体当たりをされても面倒なので、まずは地上の2人から倒すか。上空からトゲトゲした方を踏み潰す勢いで強襲する。

 

「アンギラス!」

「バラゴン、やれ!」

 

 一度は躊躇したバラゴンだが、咆哮しながら跳躍して三郎に噛み付く。その熱と顎の力で三郎が悲鳴を上げて暴れる。そこに滑空してバランがまた体当たりを仕掛けてくる。それを光線で迎撃して、バラゴンの尻尾を左手で掴み翼脚で顔を掴む。

 

 アンギラスと呼ばれた奴の氷のトゲが脚に刺さったので、イラつきながら尻尾で殴打しまくる。そこに、後ろから顔を掴まれて上を向かされ、そこから胸に針が突き立てられる。この感覚と嫌な予感から、毒であると断定する。

 

「いってぇな!!クソが!」

 

 右手でモスラの首を掴み、アンギラスに叩き付けて肉ごと引き剥がしたバラゴンをモスラの上に数回叩きつける。刺さった毒針を周辺の肉ごと引き千切り、再度強襲してきたバランを翼脚で受け止めて木に叩き付ける。そこまでして、しかしそれでもアンギラスが作り上げた氷柱に巻き込まれて封印される。

 

「冷たいな……ああ、イライラする!」

 

 胸の奥底から湧き上がる嫌悪感に憎悪と怒りを乗せて叩き割る。全身から放電して氷柱を砕いて地上へ降りれば、バラゴンはいないし、バランも見当たらない。アンギラスによって氷のフィールドが形成され、モスラも一歩引いた位置にいる。

 

 何か企んでる?

 

 知るか。お前らはいつも通り後ろと横だ。

 

 分かってるよ。

 

 言われなくともだ。

 

 両手足を地面に着いたアンギラスが突っ込んでくるのに対して光線を放てば、背中のトゲで光線を弾かれる。そのままモーニングスターの様な形状の尻尾が振るわれ、横っ腹にぶち当てられる。久し振りの直撃に、痛みを堪えながら尻尾を抱えてジャイアントスイング。だが、それも地面が陥没する事で阻止された。

 

 うわぁ!?

 

 さっきのチビ犬か!

 

 地中からとは、やるね。

 

 上!上、上から来る!!

 

 仰向けになった私の腹に、バランの膝が突き刺さる。ここまでやられたのは殆ど初めてで、味わったことの無い気持ち悪さと痛みにさっきからイライラしっぱなしだ。

 

「ってぇな……ふざけんな」

 

 雷雲招来、最大電力で吹き飛ばしてやろうと雷を呼び込む。それも奴らの熱と氷結による上昇気流と、バランがそれを利用して竜巻を作ることで雷雲を霧散させられる。さっきからこいつ等私の邪魔しかしないな。

 

 落とし穴から這い出れば、またモーニングスターが迫ってくる。それを翼脚で受け止めて、引き寄せて首を掴む。勢いそのままに地面で削りながら飛行する。バランが上にいることを確認して、急降下してくる瞬間に地中からバラゴンが飛び出してくる。

 

 バラゴンにアンギラスをぶつけ、バランは回転して受け流し地面に激突させる。そのままバランの尻尾を掴んでゼロ距離で光線を当てながら空中に誘拐する。

 

「飛べるのはお前と羽虫くらいだからな。先に殺してやる」

 

 右のギドラが先程までの礼だと言わんばかりに意気揚々と首に噛み付く。そのまま雷撃を放ちながら、思う存分にタコ殴りにしていく。つもりだったが、また羽虫に邪魔される。今度は後ろから、心臓を狙って毒針が刺されている。仕方ないので、後ろ手で頭を掴み、握り潰さんという程の力を込めつつ、左のギドラが腹いせとばかりに翼を千切ろうとする。

 

「何が……あなたを……そこまで……!」

「知るか。死んでから考えろ」

 

 その時、地上からバラゴンが飛んでくる。右の尻尾に噛み付いて、バランスを崩して高度が落ちる。コイツしつこくない!?

 

「しつこいなぁ……イライラする!」

 

 獣脚になった脚でバラゴンを掴み、高度を落として地上で踏み潰す。やたら頑丈で地面にめり込んでるが、まだ生きてる。右手のバランの背中にあるトゲをバラゴンにぶっ刺し、羽虫を前蹴りで吹き飛ばしてついでに光線を吐いておく。

 

 アンギラスが再び氷柱を形成し、光線を防ぐ。バラゴンも悲鳴を上げながら地中へと潜航し、バランは氷柱を登って高度を稼いでいく。

 

「そろそろ諦めたら?私も色々痛いんだけど」

 

 一歩、踏み出したときに足下に何かがあることに気付いた。

 

「石?」

 

 ギドラに警戒させながら、それを拾い上げる。何故にこの石に対してここまで興味を惹かれるのか分からないが、それでもこれは手に入れるべきだと本能が囁く。

 

「それは……」

 

 石?いや、何か力か記憶を感じる。羽虫もこの石を見て動きを止めた。

 

「何これ」

「古代の記録ディスク、遥か太古の記録、誰かの記憶、誰かの遺した物。何故、それがここに……」

 

 そう言いながら、無警戒に近付いてくる羽虫。その歩みに敵意は無く、警戒しながらこの石を差し出す。すると、微弱な磁力をこの石から感じる。

 

「ああ、なるほど」

 

 差し出した石に、少しだけ電力を通す。すると、情報が取り出せる。その情報は形を成し、我々の前に現れた。手のひらサイズの3本首の竜。

 

「魏怒羅……!」

「ギドラ?こいつが?」

「そう……なのね。あなたでは……なかったのね」

「だから初めから人違いだって言ったじゃん」

 

 その竜は、何度か鳴くと姿を消す。それを皮切りに、戦闘態勢を解いた聖獣事務所の奴らも近寄ってくる。

 

「じゃ、事の経緯を話してもらおうか。じゃないと暴れるよ」

「分かりました。まずは事務所の中へ」

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