個性:キングギドラ   作:ヴィーナス

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第十五話:伏雷

「あっはっはっはっはっは!!!」

 

 職場体験が終わった翌日、久し振りにあった幼馴染に私は遠慮無しの爆笑をかましていた。両隣のギドラもゲラゲラ笑っている。瀬呂と切島と一緒に腹抱えて笑っていると、爆がワナワナと震えだす。

 

「クセついて洗っても戻らねぇんだよ……笑うな!!」

「やってみろよ8:2坊や!!」

「ジーニストJr.がよぉ!!」

 

 ゲラゲラ笑っている内に、始業の時間になる。久し振りの学校、久し振りのヒーロー基礎学。その題目は救助訓練レースとなる。会場となる運動場γは、ごちゃついた工業地帯を模した場所で地上から進めば相応に厳しい場所になるが……。

 

 僕らに負ける道理無くない?

 

 無論だな。上から行けば一瞬だ。

 

 だね。最初の授業みたいなハンデ付きかな?

 

 外からスタートし、何処かにいるオールマイトの所まで辿り着いた人の勝利。だから、私からすれば余りにも簡単な作業。

 

「無論、特待生である龍千少女」

「おっ、待ってました」

 

 ビシッ、と目の前に出されたのはエキシビションと書かれたカード。

 

「……つまりルール説明をしろと」

「そう言うことになる」

 

 そんな訳で、街外に到着。オールマイトが救難信号を出すよりも早く電気を操作して捜索を開始する。電子機器を持っているためそこから微量に漏れ出す電磁波や電力、オールマイト自身の熱などを探知するべく全神経を集中させる。

 

『では、位置について』

 

 見つけた。

 

『スタート!!』

 

 直上に飛翔しながら方向転換。ここまで1秒。

 

 目的地まで飛翔。ここまで3秒。

 

 オールマイトを発見し、フワッと着地。ここまで5秒。

 

「……ビビったよ、まさか5秒で来るとは」

「特待生だもん。エキシビションはこんなもんでしょ」

 

 やった事と言えば、放送のために使った機器の電磁波を辿り場所を標定する。やろうと思えば上鳴でも出来ることだ。ま、言わないけど。

 

「じゃ、5秒切り目指して頑張ってね」

「いや無理だろ」

「オイラお前みたいに人間辞めてないからさ」

 

 峰田を蹴り飛ばしながら、最初の組が位置につくのを見る。瀬呂、尾白、芦戸、飯田……そして緑。まぁ、"個性"の相性からしても瀬呂か飯田か……緑はやり方次第かな。そう思いながら爆の隣に立てば、やや嫌な顔をされるが静かにモニターを見上げていた。

 

『スタート!!』

「うん、やっぱり上に行くのが定石だね」

「んなもんお前に言われなくともだわ」

「そうかな……おっ」

 

 緑は何処か爆を思わせる動きで飛び跳ねていく。なるほど、あの馬鹿みたいな出力の"個性"をようやく制御、又は小出しに出来るようになった……んでもってそれを全身に纏う事であの動きを可能にしてるのか。

 

 成長してるな、奴。

 

 隣で爆の歯ぎしりが聞こえる。チラリ、と横を見ればモニターを睨みつけている。

 

「そういえば、爆は職場体験どうだったの?」

「……くだらねぇ時間を過ごした」

 

 足を滑らせて落ちていく緑を見送りつつ、爆の方へ視線を向けること無く続ける。

 

「私はねぇ、パトロールだとか……組手だとか。それなりに良かったよ」

「ドマイナーな所行った割に、満足そうじゃねぇか」

 

 その言葉に目を丸くする。してやったり顔で話を続ける。その様子は珍しく、私に勝ち誇るかのようで……癪に障る。

 

「知ってたんだ」

「後から聞いたぜ。お前を指名したんだってな」

「うん、そうだよ。私を指名するんだから、それなりに度胸は認めないとだからね」

 

 さて、と。

 

「ま、緑にはこれからに期待ってやつかな。爆も負けてられないね」

「……アイツに俺が負けるわけねぇだろ」

「そうだと良いね」

 

 爆に睨まれて、きゃーこわーいと大袈裟な演技をして逃げる。

 

 お前、してやられたから逃げたろ。

 

 殺すぞ。

 

 潰すために緑をダシにして煽ったんでしょ。

 

 悪い?爆にも強くなってもらわないと。

 

 潰したいからでしょ、それ。

 

 潰し甲斐なきゃやってないよ。

 

 破壊神め。

 

 これから、まだまだだよ。

 

 授業を終えた私達は更衣室へ向かう。ずっと前から気付いていたが、更衣室通しを繋ぐ覗き穴がある。ギドラが隣の音を聞けることから存在と位置は知っていたが、実害が無いため放っておいたのだが……気付かれたか。

 

 そう思った矢先、峰田が騒ぎ立てたのを耳郎が気付いて迎撃態勢に入る。そして、覗き込んだ瞬間に耳郎がブチかましたのを見て左のギドラの角を掴む。

 

 ちょっと折るよ。

 

 そろそろ生え変わりだからいいけどさ、最初に断ろうよ。

 

 黙りな。どうせ私の一部なんだし。

 

 ポキリ、と折ったそれを壁の穴へ突き刺し余った部分も折って壁のフリをさせる。

 

「……折って良かったんですの?」

「生え変わりがそろそろだからね」

「生え変わりとかあるんや」

「あるよ。たまに鱗も落ちるし、"個性"由来だけど金が混じってるから綺麗なんだよ。ほら」

 

 

 やたらとデカい図体をしているために、やや狭く感じる更衣室。左のギドラが八百万にちょっかいをかけるのを引っ叩き、鱗を一枚剥がして麗日に渡す。

 

「はぇ〜……綺麗……」

「良いでしょ。手入れは欠かしてないからさ」

「そうすると、尻尾とか翼もそういうのあるのかしら」

「尻尾の先端に棘あるでしょ。これ普通に生活してたらいつの間にか落ちちゃってさ。刺さると大惨事だよ」

「ねぇねぇ!ずっと気になってたんだけどさ、尻尾触って良い!?」

「良いよ。この身体に恥ずべきところは無し、好きにしな」

 

 ちょっ、待て!コイツ!

 

 いいじゃん。ちょっと葉隠に触られるくらい……いや、見えなさすぎでしょ。触られて初めて居場所を認識したわ。

 

 尻尾をツンツンニギニギする芦戸、右のギドラを撫で回す葉隠、普通に左のギドラと会話してる蛙吹、興味津々に翼を突く八百万、興味なさげにしつつも尻尾を巻きつけてみれば初な反応をしてくれる耳郎。

 

「これ、敏感だったりしないの?」

「鱗に覆われてるからね。人の骨を折っても大丈夫な尻尾だよ」

「凄いね!ギドラ……だっけ、カッコよくて可愛い!」

 

 この俺が可愛いだと!?

 

 梅雨ちゃん、俺の事可愛いって!

 

 バカ2匹が喧嘩始めてるわ。

 

「ま、褒め言葉として受け取っておくよ」

 

 頭上で喧嘩するバカ共をシバいて、時間が押していると急がせる。

 

 その日のHRで、相澤先生が林間合宿の存在を仄めかす。補習など入る訳がなく、期末試験はどうだっていし前々から知ってはいたが、今はそれよりも大事なことがある。

 

「緑」

 

 ガシッ、とその首を掴んで持ち上げる。翼で覆い隠して外界と遮断する。

 

「お前、オールマイトと何してた」

「がっ、あ……は、なしてよ、りゅー……ちゃ……」

「答えろよ」

 

 ギリッ、と柄にもなく力が入る。

 

「おい」

 

 翼を掴まれる。右のギドラが見れば、爆だった。

 

「今忙しい」

「お前、デクにビビってんのか?」

 

 ……あ?

 

「言葉に気をつけろよ爆」

「じゃあ何だ。そのクソみてぇな行動はよぉ」

 

 爆が、あの爆が、私を煽っている。緑を離し、爆を見る。

 

「あの頃のクソナードから成長して、いつか自分に追いつくんじゃと思ってんだろ」

「それなら何?」

「お前、同格にビビってるんだろ」

 

 翼を広げて爆に正対する。

 

「……言葉に気をつけろって言わなかったか?」

「本当の事だろ」

 

 見下ろした爆は、真っ直ぐ私を射抜いている。なるほど、随分と成長したわけだ。あの体育祭以降、初めての喧嘩だな。

 

「爆、緑、ちょっと面貸せよ」

 

 問題無用。ギドラが緑と爆を確保すると職員室へ向けて歩きだす。その間、2人ともごちゃごちゃ言っていたが全部無視する。

 

「セメントスせんせー、訓練場借りるよ」

「えっ、ちょっ、待ちなさい!申請とか書類とか」

「待たなーい」

 

 外へ躍り出て飛翔する。そのまま訓練場デルタに着陸すると2人を投げ飛ばす。各々着地し、私を見る。

 

「ここは私御用達の訓練場デルタ。被害が外に出なければ何をしてもOKの無法地帯!時間は多分……セメントスが来るまで」

 

 翼を地に着け、電気を滾らせ、咆哮する。

 

「死ぬんじゃあねぇぞ!!」

 

 駆け出し、光線を放ち目眩まし。デクが飛び退いたのを左のギドラで追いつつ、爆を上から潰すように拳を振り下ろす。十字に腕を組み、勢いを利用して受け流されたる事を感じて飛び退く。

 

「や、やめようよりゅーちゃん!」

「うるさい緑、たまには全力で身体動かそうよ!」

 

 横薙ぎに蹴りを放てば、避けれないと判断した爆が敢えて踏み込み懐に入る。それを顔を掴んで阻止して、緑に投げ付ける。爆発を撒き散らしながら止まる爆に、緑が制服を気にして慌てて飛び退く。そこへ飛び込んで緑の腕を掴み、上へ放り投げる。

 

 再び突っ込んできた爆を避けて飛翔、緑を下から蹴り上げて更に上へと吹き飛ばし、追撃の爆を光線で追い払いながら緑の様子を窺う。

 

「着地、出来るようになった?」

「余所見してんじゃ、無ぇ!!」

 

 手を伸ばした爆の足を尻尾で掴み、背中から地面へ叩きつけてから放り投げる。緑の方を見れば、またブツブツ言いながら目線が交差する。

 

 来るか。

 

 今回は上手く着地。同時に"個性"を発動したままこちらに飛び掛かってくる。しかし、引き絞った腕は放たれること無く回転して尻尾で殴り飛ばす。

 

 が、尻尾の下を潜り抜けたデクが見える。そこへ殴りかかってきた爆の胴体を掴み、上から叩き付ける。

 

「がっ……」

「げっ……」

 

 うつ伏せの緑の上に仰向けになった爆の2人を翼で押さえつけて、咆哮する。すると、セメントが盛り上がって来て覆い尽くされる。それを正面突破して2人を抱えて逃げようと翼を広げ飛ぼう……として力が抜けてずっこける。3人揃って地面を転がり、振り向けば鬼の形相の相澤先生とセメントスがいる。

 

「チッ……思いのほか早かったか」

「今の舌打ちは何だ。いや、それよりも……」

 

 私達が抵抗しないことを見て、セメントスが後処理を始める。その作業のど真ん中で、3人とも正座をさせられ相澤先生の有り難いお言葉を聞き流す。

 

「そもそも、だ。無許可でここを使用した上に私的な乱闘まで起こしやがって」

「ギドラの方から仕掛けてきた」

「誘拐されちゃって……」

「……。」

 

 早く終わんないかなぁ。

 

 同じこと言わない当たり合理的だね。

 

 聞いていない相手に喋ることが合理的か?

 

「聞いてるのか龍千」

「はーい、聞いてまーす。誠にごめんなさいでしたー」

 

 ガミガミと暫く続き、首謀者である私には反省文と清掃が科せられ、2人は反省文で済んだ。そんな帰り道。

 

「怒られちゃったねぇ」

「チッ……てめぇのせいで余計な時間を食っちまった」

「あはは……怒られるで済んで良かったね……」

 

 ふと、緑と目が合う。

 

「でも、珍しいね。りゅーちゃんの方からこういう事するなんて」

「……デクと同意見なのはクソほど腹立つが……お前、こんな事するくらい腹立ってたろ」

 

 爆までこちらを見てくる。珍しい、この2人が結託するなんて。

 

「ふっ……ふふっ、あっはっはっはっはっは!!」

「んだよ、何がおかしい」

「私に勝ってから聞きな。今日は迷惑かけたね、お返しだよ」

 

 そう言った瞬間、逃げようとした2人をギドラが首を甘咬みして捕まえ、胴体を抱えて飛ぶ。最高速には全然及ばないが、それでも2人が日常生活では味わえない速度を出して飛んでいく。

 

「2人ともそんな暴れないでよ、落としちゃう」

「離せ!」

「お、落ちる!離さないで!」

「どっちなのさ」

 

 サービスだ。おら、もっとくっつけ。

 

 破壊神に抱きしめられてもなぁ。

 

 2人とも着地できるんだから離しても良いんじゃない?

 

 それは私のポリシーに反するから無し。

 

「ほら、急降下するよ。舌噛まないでね」

 

 ほぼ直角の急降下。緑の悲鳴と爆のGに耐える呻き声を聞きつつソフトランディング。2人を離せば、緑は息を切らして地面へと手を付き、爆も顔を青くして壁に手を付く。

 

「はぁ、はぁ、死ぬかと思った……」

「時速何kmだ、ありゃ……」

「うん、生きてるね。満足満足、じゃあね」

 

 そんな2人を置いて家へ入る。そのうち帰るでしょ。

 

 帰宅の挨拶をして自室へと戻り、机の上に置いてあったモノを取る。

 

パキャ

 

 小さな音を立てて、それはへし折れる。

 

 私の身体の一部。生半可な攻撃では傷すらつかないモノ。不機嫌に任せて鱗や角を一緒くたに纏めたソレは今や粉々になって机の上に散らばる。

 

 ……生え変わりがあるとは言え、僕ら強くなりすぎたかな。

 

 ここ最近、こういう不機嫌の時に物に当たってみると以前より遥かに簡単に壊してしまえる。全力を出した相手など、職場体験の時くらいしかない。

 

 ソレを、上回る可能性が緑にはある。

 

 まだ、その日じゃない。けれど、ソレは直ぐ側に来ている。

 

 楽しみにしているよ、緑。




 書き忘れていましたが、書いて頂いた感想は全て目を通しております。余り自分を出すのが得意ではないのでこの場を借りてお礼を申し上げます。更新は遅いままではありますが、これからも応援の程をお願い致します。
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