個性:キングギドラ 作:ヴィーナス
幕間:1 王、学食、窓辺にて
ヒーロー科に入りたくて、ここに来た。
でも、この"個性"がヒーローに届かないのは知っていた。
ただ糸を出せるだけの"個性"。
それでも、王様に憧れた。
「あっ、見て」
クラスメイトの視線の方向。我らが王様はヒーロー科の人達と談笑していた。その煌めく金色の鱗と長髪がやたら眩しく見えた。その少し近くに座り、手を合わせる。
「王様、今日も綺麗だね」
「……うん」
王様に心を折られた者は多い。ヒーロー科の試験は知っての通りロボを相手にした実戦形式で、幸か不幸か私は王様と同じ試験会場だった。
圧倒的で、絶対的で、破滅的だった。
ほぼ不意打ちに近い開始の合図に、即座に反応し飛翔。そこから雷を落とし続けて私達が会場に着く頃には、全部のロボを倒してしまっていた。運が良かったのは、雄英側もこれは初めてだったようで、私達の入試は一時中止して準備ができ次第再び入試が行われた。特に意味はなかったが。
あの時の王様の咆哮を、破壊を、王威を、覚えている。
忘れられるものか。
同じ会場になった時から、周りの学生とは雰囲気から違った。満ち溢れた自信、緊張など微塵も感じさせない立ち方、雲行きを案じた私達の上を超高速で飛ぶ黄金。
手の届かない存在。
「ねぇ、後ろ」
不意に、誰かに肩を叩かれる。
「はい?」
振り返ると、王様の3つある首の一つがそこにいた。
「うわ!?」
何で、どうして、そう考えていると、ニヤニヤと言った感じで私を見つめてくる。
「見てたの、バレたんじゃない?」
「もしかしてそう、なんですか?」
そう問いかけてみると、意地の悪い笑みを浮かべながらカラカラと鳴き、次いで威嚇するように牙を向く。その程度の威嚇でも、私には十二分なものだった。
すると、私の今日のお昼ご飯である鯖の塩焼き定食に目をやった。少し考えるような仕草の後、鯖の塩焼きを舌で指した。
「これ、あげれば許してくれるんですか?」
その言葉に早くしろ、と言わんばかりに頷く。少々心苦しいが、塩焼きを箸で掴み開かれた口の中へ入れようとして向き直った時。王様に引き戻されたのか、頭はそこには無かった。
「ごめんね、うちのバカが」
そう言うのは、王様。龍千さんその人である。先ほど来ていたのは、左の頭らしくやや拗ねたような表情でそっぽを向いていた。
「あ、いえ、そんな」
「普通科の子、体育祭前に声かけてくれたよね」
ドキン、と心臓が跳ねる。そのとおりだ。私は、少しでもその王威に触れたくて体育祭前に、偶然出会った王様に声を掛けていた。応援しています、と。体育祭が終わって尚、王様は覚えていてくれた。
「は、はい!応援してますって……」
「うん、ありがとうね。じゃ、これからもよろしく」
そう言って、王様は去っていく。
「……良かったじゃん。覚えられてて」
「……うん」
ここから、更に沼へはまるが如く。私は既に心を奪われていた。