個性:キングギドラ   作:ヴィーナス

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第二話:王の名は

「実技試験、総合成績出ました」 

「……唯一抜きん出て並ぶ者無し、か」

 

 圧倒的な点差。不可逆的な"個性"の差。どうしようもない生まれながらの力。

 

 会場にいたロボットを全て破壊し、地中にいたはずの0Pロボットも機能不全を起こしていた。周りの受験生も会場に入ることすらままならずに終わっていた。

 

「あんなのが同じ会場にいたら自信無くすなぁ」

「破壊の限りを尽くして特待生か」

「あんな"個性"を放っておくのもどうしようもないって判断よ」

 

 その決断は、誰しも納得した。1位たる爆豪の様な天賦の才だけでなく、7位の緑谷の様に高潔なる精神から起こされる行動だけでなく、天災とも言える一種の特異点たる"個性"を持つ。現状唯一の弱点は抹消の"個性"が効くこと。裏を返せば、イレイザーヘッド以外にあの偽りの王を止めることは出来ないということだ。

 

 コンクリートジャングルにて無敵に近い"個性"のセメントスでも、あの雷撃は止められないだろう。狙撃も、あれだけの雷雲を有する彼女を標的として視界に収められるだろうか?眠り香であるならば、3つの頭を持つ彼女には三倍効くかもしれないが、恐らくは副次的な暴風雨によって届かないだろう。

 

 では、オールマイトは?

 

▼▽▼

 

「"個性"把握テスト、ね」

 

 入学早々に、あの時私を止めたイレイザーヘッドがそう宣言した。特注のジャージに身を包み、気怠そうに欠伸をする右のギドラとそんな事しなくても良いのにと顔を見合わせる。

 

 入試1位たる爆がボールを渡されて思い切り投げるのを見て、内心感嘆する。流石は爆、"個性"の扱いも天才肌らしく直感的に制御している。しかし、それを見た生徒の反応が気に入らないのか、最下位は除籍処分とするそうだ。まぁ、私がなるのは1位だが。

 

 でもどうする?器用な事出来ないよ。

 

 我々は強力だが、人間の種目に合わせると割を食うぞ。

 

 そこを何とかするのが人の知恵さ。

 

 第一種目:50m走

 

 尻尾を叩き付けて反動で飛んで3秒07。出だしは遅いけど加速と最高速には自信アリ。

 

 第二種目:握力測定

 

 一回目は自分の腕で測って300キロ。二回目は翼脚で測って握力計を壊した。怒られた。

 

 第三種目:立ち幅跳び

 

 飛んだ。

 

 第四種目:反復横跳び

 

 翼脚を広げて端に起き、尻尾でバランスを取る。そのまま左右に揺れて2位。

 

 第五種目:ボール投げ

 

 雷雲を起こし、翼脚で雲の中にぶん投げて誤作動を起こして数値を弄る。二人目の無限となった。帰ってこなくて怒られた。

 

 ここで、緑が爆を0.1m上回る記録を出した。青白い指を握りしめて、まだやれると宣う緑の目には狂気にも近いものがあった。爆は信じられないという顔をしていたが、私が尻尾と左のギドラで止めたせいか、出るに出られなかったようだ。

 

「緑」

「りゅう……ちゃん……」

「……身体に見合わない"個性"だな」

「ま、前にも言ったと思うけど、た、多分、身体が壊れないように無意識に使えなくなっていたんじゃないかな」

「まるで他の人から与えられたみたいじゃないか。借り物の力なら、制御はし難いだろ」

「これは……ォ……ぼ、僕の力だ」

 

 翼で視界を遮り、左のギドラで咥えて目線を合わせさせる。

 

「いつか、私を倒せるといいな」

 

 パッと離すと、ぐえっ、なんて言いながら転ぶように着地する。さてはて、気を取り戻してテストだテスト。

 

 第六種目:上体起こし

 

 尻尾と翼脚とギドラを使って1位。

 

 第七種目:長座体前屈

 

 2位。

 

 第八種目:持久走

 

 飛んで1位。カーブする際に翼脚で地面を削りながら曲がっていたら怒られた。知るか。

 

 結果発表は無論、私が1位。最下位は緑。

 

「あ、除籍処分は嘘」

 

 それを聞いた緑谷は崩れ落ちていたが、相澤先生は本気だっただろ。見込みがあると判断してもらえただけだ。これからに期待って感じだな。

 

 保健室帰りの緑を見かけたので捕まえる。

 

「うわぁ!?り、りゅーちゃん……」

「明日からも頑張りなよ、緑」

「ありがとう……?」

「スタートラインに並べただけだからね、伸び代は誰よりもある。待っているよ」

 

 ちゃんと脚から下ろして、羽ばたく。空の旅は常に警察やヒーローの監視から逃れられように少々高めに飛ばなければならない。特待生としてはタブーだが、そんなもの一々気にしている方が面倒だ。何より、私が電車に乗るより飛んだほうが皆の為になるし。

 

▼▽▼

 

 今日から本格的に始業していくが、至って普通の高校生活から始まった。とはいえ、遅れを取るつもりは更々無いし、伊達に頭が3つあるわけではない。21番の出席番号で一番後ろなのを利用して、翼脚で板書して左手と左のギドラで携帯を弄り、右のギドラと右手で課題になりそうな所はさっさと終わらせていく。

 

 そうして迎えた昼。安価な学食であるが、特待生であれば免除というモノを貰っている。私は食べる量が量なので、ここがいくら学生向けとはいえ、出費は痛かったろうに。ありがたく食べさせて頂く。

 

「隣、いい?」

 

 声がした方を向くと、A組女子達が勢揃いしていた。翼脚で手を差し伸べて、許可するとニコリと笑って机を囲む。

 

「失礼、食べてた途中だったから」

「いいよ!」

 

 一通りの自己紹介を終えて、食事を終えると午後の授業が始まる。一昔前の衣装に身を包んだオールマイトの登場だ。

 

「わーたーしーが!ドアから来た!」

 

 戦闘訓練を宣言したオールマイトは、次いでヒーローコスチュームを壁から迫り出させる。

 

「形から入るのも大事だぜ!さぁ、着替えたらグラウンドβに集合してくれ!」

 

 この"個性"を持つ私は、基本的に単体で完結している。しかし、ヒーローは顔を隠すものであるし、格好良さを求めるのもまた一興。

 

 私のコスチュームはロボットの様な銀色に近い色で構成されている。目の部分が緑色のヘルメット、四肢関節部のプロテクター。胴体を覆うアーマーと翼には翼膜を保護するアーマー。尻尾を攻防共に使えるように先端に小型の二又槍を装着して完成。

 

 名付けて……メカキングギドラ、とか?

 

 そんな風に考えていると、目の前をぴょこぴょこと通り過ぎる長い耳を暫く見つめて、確信を持って右のギドラで捕まえる。

 

「ぐえ……苦し……」

「やっぱ緑か、似合ってるじゃん」

「あ、りが……と……」

 

 左のギドラで持ち替えて、マジマジと観察する。恐らく市販の物の流用?耐久力は低そうだし、"個性"補助の類も見受けられない。

 

「元は自前?」

「そう、お母さんが作ってくれて……」

「いい人だもんね、引子さん」

 

 地面へ下ろして、手でポンポンと頭を撫でて左のギドラが爆にちょっかいかけていたのを止める。

 

「ん、似合ってるじゃん爆」

「うるせぇ黙ってろ」

「形から入るのも大事、だよね」

 

 爆と目線が交差するが、ニコリ、と返してみると舌打ちと共にそっぽを向かれる。連れないなぁ。

 

 あ、オールマイト。

 

 授業始まるから静かにしててね。

 

 オールマイトの説明を聞いた所、2対2に分かれてヒーローチーム、ヴィランチームとして核の争奪と確保を目的として争う形式のようだ。しかし、私がいる故に21人だが、そこはどうするのだろう。

 

「特待生の龍千少女、君は単独で動いてもらう」

「期待されてるのか、されてないのか。さておいて分かりました」

 

 最初は緑と麗日、爆と飯田の因縁対決から始まった。緑の成長と爆の焦りの混じった戦いを見届け、エキシビションマッチに近い形で最後、私の番が来る。

 

「見てな爆、緑。凄いモノ見せてやる」

 

 私の相手に立候補したのは轟と八百万。推薦組と特待生の対決になったが、今回は私がヴィランだ。

 

「待ってるよ。推薦組」

「特待生だか何だか知らねぇが、勝つ」

「負けませんわよ」

 

 5分の猶予を貰った為に、まず最上階を更地にして階段を破壊して一本道にする。5分経ったのを確認して、入口側の窓から飛び出して建物に侵入する前の二人を上空から奇襲する。

 

「上!」

 

 影で気付き、間一髪で二人は建物に滑り込んだようだ。長居は無用と咆哮するギドラと共に飛び立って最上階へ。

 

 それで?あの二人相手にどう立ち回る?

 

 面倒だから早く潰そうよ。

 

 完全勝利じゃないと私じゃないの。狭いと動きにくいし、決戦場はここだよ。おっと、来たみたい。

 

「ようこそ、龍の巣へ」

「悪いが正面突破だ」

「おわっ、冷たい」

 

 足元が凍り、動けなくなる。勝ったつもりかな?

 

「足は無事でいたいだろ」

「でも私、ヴィラン何だよね」

「危ない!」

 

 右のギドラで光線を吐き、翼脚で氷を叩き割って一歩下がる。八百万の咄嗟の行動で直撃は受けなかったが、飛び道具の有効性が身にしみたようで柱の陰から出てこない。

 

 仕方ないので、その柱ごと光線で破壊する。飛び出して来た轟が再度氷を張るが、それを左のギドラで迎撃し、爆発の煙の中を通ってきた八百万を右のギドラが光線を吐いて牽制する。轟が11時、八百万が2時位の方向にいて、核の確保を狙っている。

 

 こちらも勝利条件がアイツらの確保なら、そうすれば良い。

 

 そうだね。でも、出来るだけ全部受け止めてからやり返したいじゃん。全力でも勝てないって教えてあげたい。

 

 趣味悪。

 

 何とでも言いなよ。

 

 私の光線が電気エネルギーであることに気付いた八百万が、絶縁体を作り出してガードする。しかし、勢いは殺せずにそのまま吹っ飛ばされていく。氷の壁を作って遮蔽物として、光線から身を守ろうとするが、それら全て翼脚で粉砕していく。

 

「さぁ、もう終わり?」

 

 絶縁体があるのをいい事に、先程から右のギドラが八百万を光線で拘束し、氷壁も氷による足止めも駄目と悟った轟は瓦礫に身を隠している。呆気ないね。

 

「じゃあ……終わろっか」

 

 八百万に飛び掛かり、上から絶縁シートを抑え付けて瓦礫を載せて確保。それを見て、幾つか氷壁を立てて確保に向かった轟を見て、氷壁を全部ぶち壊しながら翼脚で壁に叩きつける。

 

「降参するか?」

「するわけねぇだろ」

 

 後ろで絶縁シートが裂かれる音がして、翼脚が凍っていく。仕方ないので、両手で轟に確保用のシールを巻く。

 

「残念、人に使うのにまだ躊躇がある。翼脚が凍ったくらいじゃ、私は止まらないよ」

 

 凍った翼脚に力を込めて割る。振り返ると、八百万がシートから出てきた所だった。

 

「さぁ、一対一だ」

 

 小手調べに翼脚でジャブ。正面から盾で受け止められたが、脆い。握り潰して尻尾で腕を絡め取って吊り上げる。

 

「残念、相手が悪かった。私の翼脚は鉄くらいなら壊せるからさ、次はもっと硬いもの期待するよ」

『ヴィランの勝利!さぁ、三人とも戻ってきてくれ!』

 

 オールマイトの判定が下り、満足気に帰る。

 

 あれで勝てないって分かったかな。

 

 実力差は身に染みただろうな。

 

 本当はもっと暴れたかったけどね。ちょっと不完全燃焼。

 

 破壊神だ!

 

 いつかヒトを殺すぞ。

 

 犯罪者になるんだったら、徹底的にやりたいよね。全身全霊で戦って、翼砕けて爪が折れて、首も飛んで尻尾も断たれて満身創痍に追い込まれてまだ暴れ足りないってぐらいに。

 

 破滅願望か、イカレ野郎め。

 

「さて、さっきの戦いはどうだったかな」

「私は初手外したのが悔しいなぁ……。狭いから追っても追いつけそうになかったし」

「……凍っても動いてくるのは予想してなかった。完全に、俺は龍千を見誤っていた」

「光線を耐えても、衝撃には耐えられずに釘付けにされ、あの様な負け方を……私自身を鍛えねばなりませんわ」

「うむ!場を自分の為に整えて万全を期した龍千少女の勝ち、というよりは相手が悪かったというか……」

「あれがオールマイトなら、どうしてた?」

 

 そう言われたオールマイトが、少しだけ口を閉じた。

 

「……まず、君を核から遠ざける。あとは君を足止めすれば確保は相方がしてくれる」

「アレを見ても、一人で遠ざける事ができる?」

「出来るさ、私はオールマイトだからね」

 

 視線が交差する。嘘をついてるわけじゃ無さそうだ。出来るかはともかく、何が何でもやってやる、そういう意志を感じる。

 

「なら、いつかオールマイトと殴り合えるのを楽しみにしておくね」

 

 授業は終わり、保健室送りになった緑が気になるが、爆が皆の静止を無視して帰ったのについていく。

 

「何しに来た」

「んー……平気?緑に」 

 

 胸ぐらを掴まれそうになったので右のギドラで止める。

 

「その話はするな」

「オコだね」

「……アイツには勝てると思ってた。今まで勝ってたから。お前には勝てないって思い知らされたあの時と、同じ感覚を今日感じた」

「かっちゃん!りゅーちゃんも……」

「お、目覚めたね」

 

 緑はどこか決心した顔をしていた。暫く、俯いていたが話を続けた。

 

「言わなきゃいけないと思ってた、ずっと……二人には……」

 

 爆が、緑を振り返る。私も緑の方に顔を向ける。

 

「僕の"個性"は……人から授かった"個性"なんだ」

 

 そこから、緑は長々と喋った。今までの関係も、隠していた事も含めた独白に近いモノ。それを聞いた爆は、今の今まで肥大化させていた自尊心が破壊されたお陰か、珍しい感情を爆発させた。

 

「んだよそれ……。何だってんだよ!俺は、今日、お前に負けた!たったそれだけなのに!氷の奴見て、勝てねぇかもしれねぇって思った!ポニーテールの奴の言うことに、納得しちまった!ギドラには、昔から、今の今まで勝てねぇって思ってた!クソ、クソが!」

 

 彼の目に、らしからぬ涙が見える。

 

「デク!!てめぇには二度と負けねぇ!絶対にだ!」

 

 私の方を向いたかと思えば、それはこちらにも来た。

 

「てめぇもだギドラ!お前に勝って、吠え面かかせてやる!」

「……へぇ、待ってるよ」

 

 そう言いながら手を伸ばすと、爆が珍しく頭を撫でさせてくれた。手でワシャワシャと撫でると、振り払われる。

 

「じゃあ、また明日」

 

 空へ羽ばたく。爆もようやく私を超えると宣言してくれた。これで……これで、ようやく私は二人から明確に超えるべき相手として見られた。

 

 でも、潰すんだろ?

 

 じゃなきゃ煽らないよね。

 

 歯向かってくるんだもん。

 

 破壊神め。

 

 何とでも言いな。私は生まれながらの王で、アイツらとは格が違う。だからこそ、超えてくれる日を楽しみにしているのさ。……ま、潰すけどね。だって、私はキングギドラだもん。

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