個性:キングギドラ 作:ヴィーナス
「禍々しいな。王というには、不釣り合いだな」
「じゃあ、私は何?」
「魔王と呼ばせてもらおう」
「魔王ねぇ……ありきたり!5点!」
試合開始と同時に黒影が体当たりを敢行し、ぶつかり合う。だが、それでも。
「彼らは、底知れぬ所の天使を、王として頂いている」
「止まらないか……!!」
一歩、一歩と距離を詰める。
「ひとつの星が、天から地に落ちて来るのを見た」
黒影は私を押し戻そうと必死だが、やはり止められない。
「その星には、底知れぬ所の穴を開く鍵が与えられた」
ついに常闇の元まで後一歩まできた。
「そして、底知れぬ所の穴が開かれた」
「グッ!?」
常闇の首を掴み、ゆっくりと持ち上げる。
「すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった」
場外へ運ばれながら、微力な抵抗を示す常闇に、肩透かしを食らった気分になりながら語る。
「
常闇を放してやれば、そのまま着地する。場外で私の勝ちだ。
「常闇くん場外!3回戦進出は龍千さん!」
「……足元にも及ばないか……!」
「そうだよ。私、最強だから」
見下ろして、背を向ける。
「何れ、追いついて見せる」
「……そう、待ってるよ」
やはり、ここのヒーロー志望達は違うようだ。私に負けようとも折れやしない。ああ、何とも得難い感情だ。よもや私に反逆するものが幾人も出てくるとは。
破壊神め。そうやって全部壊すつもりだろ。
そうだよ。切島に勝った爆と、次で殴り合う。その為に今は回復に勤しむとするよ。
切島じゃ爆には勝てないと?
当たり前。爆は……そうだね。爆は、頭が回るし洞察力も凄い。その上、精神的にまだ成長する余地もある。それから、それから……。
分かった分かった。お前が爆に入れ込んでいるのは分かった。
それを殺してぇなぁって思ってるのが更に酷い。
うるさいなぁ。殺すよ。
ガチオコじゃん……。
この体育祭だけで何回破壊衝動抑えられなくなってるんだかな。
せめて自制くらいして欲しいよね。
だって、緑とか爆とかちょっと潰したいが過ぎるもん……。
うわキッ
……再生の手伝いくらいはしてやるぞ三郎。
あ、やっべ。衝動で殺ったけど、生首どうしよう。
いつも通り灰にするか。
だね。オラッ!
「……何をしている」
エンデヴァー……。
No.2ヒーロー、か。厄介な時に出くわしちゃった。
「何も。ちょっと喧嘩してただけ」
「その"個性"、どうなっている?」
「決勝に向けた敵情視察?」
「……そのつもりは無い」
「なーんか気になる間だなぁ。いいけど。じゃあ、自己紹介から」
翼を広げ、胸を張り、堂々とする。
「私は龍千 龍姫、又はキング・ギドラ。"個性"はこの身体。あとちょっと電気操れる位」
カラカラと笑いながら、エンデヴァーにメンチを切る右のギドラを諌めつつ、手を差し出す。
「ああ、それと」
差し出された手を、怪訝そうに取ったエンデヴァーに宣言する。
「私は王だ。生まれながらの王だ。お前なぞすぐに超えて見せる」
「……アイツとは別の意味で気に食わんな。生まれ持った力、生まれ持った傲慢さ、生まれ持った性格」
そのアイツが誰なのかは不明だが、エンデヴァーは続ける。
「その様子では、何れ足元を掬われるぞ」
「足元を?それこそ本望だ。掬える奴がいればな」
瞬時に手を離し、距離を取られる。心なしか炎も温度が上がっている気がする。
「……その殺意、いや、破壊衝動か」
警戒したまま、エンデヴァーはそう呟く。大袈裟に肩を竦めてみたが、解いてくれないみたいだ。
「生来のものさ。私をここに……ヒーローへ縛り付けるものは多い。エンデヴァー、貴方だって分かるでしょ?私と敵対した時の恐怖が」
「その時は、倒すだけだ」
「オールマイトに比較される私を?オールマイトに届かなかったお前がか?」
眉間にシワが寄り、炎が勢いを増す。臆すること無くエンデヴァーとの会話を続ける。
「かつて、オールマイトはその身一つで天候を変えた。私は晴天を雷雨に変えられる。オールマイトの移動速度は東京大阪間を14秒、私は音の壁を超えられる。どうだ、勝てるか?」
「勝つ。でなければヒーローの意味が無い」
「お前も傲慢だな。それは生来のものか?それとも後天的なものか?でなければ、何に狂った。本物のヒーローにも、父親にもなれなかったお前が」
「……やはり、お前は未熟だな」
は?
「若い実力者ほど、自分の身の程を知らぬものだ。お前も何れ知るだろう。小人の妬心と、本物のヒーローを」
そう言って、溜め息混じりに去るその背中に、憎悪と激情が沸いた。その感情のままに翼脚で殴り掛かる。
「お前は」
振り返る事も無く翼脚を掴むと背負い投げられる。地面へ叩き付けられてエンデヴァーを見上げる形になる。
「アイツというものを知らんようだ」
騒ぎを聞きつけて、ヒーローが集まりつつある。その状況を感知して、即座に立ち上がり、その場を後にする。
アイツ……大人の対応したら勝ちだと思ってる。
気に食わんな。興が冷める。
黙れ。私は負けていない。
このイラつきのままに歩き、控室に入る。ドアを閉めて、近くにあったパイプ椅子を握り潰して放り投げる。
「……手加減しないよ、爆」
「そうかよ」
は?
「イラツイてんなぁギドラ」
何で爆が……あぁ、私が間違えたのか。
爆はニヤニヤしながら煽ってくる。
「椅子に八つ当たりして、恥ずかしい宣言までして」
「黙れよ」
残念だが、今の私にそれを受け止める余裕は無い。爆の表情が本気のそれに変わり、顎を引いてこちらを見据えてくる。
「二度とお前に勝つと言えなくしてやる」
「その減らず口、ぶっ飛ばてやる」
ここで手を出しては仕方ないと切り上げて、その場を離れる。次の爆との対戦が楽しみで仕方ない。エンデヴァーへの憎悪は未だ冷めやらないが、爆との対戦の方へ気が逸れて随分落ち着いてきた。さて、もうすぐかな。
「……お呼びだ、行くぞ」
準決勝、爆との戦いに赴く。あの時の様な手加減は無しだ。思いっきりやり合おう、爆。