個性:キングギドラ   作:ヴィーナス

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第八話:王影爆炎

「禍々しいな。王というには、不釣り合いだな」

「じゃあ、私は何?」

「魔王と呼ばせてもらおう」

「魔王ねぇ……ありきたり!5点!」

 

 試合開始と同時に黒影が体当たりを敢行し、ぶつかり合う。だが、それでも。

 

「彼らは、底知れぬ所の天使を、王として頂いている」

「止まらないか……!!」

 

 一歩、一歩と距離を詰める。

 

「ひとつの星が、天から地に落ちて来るのを見た」

 

 黒影は私を押し戻そうと必死だが、やはり止められない。

 

「その星には、底知れぬ所の穴を開く鍵が与えられた」

 

 ついに常闇の元まで後一歩まできた。

 

「そして、底知れぬ所の穴が開かれた」

「グッ!?」

 

 常闇の首を掴み、ゆっくりと持ち上げる。

 

「すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった」

 

 場外へ運ばれながら、微力な抵抗を示す常闇に、肩透かしを食らった気分になりながら語る。

 

一つにして無数(The One Who is many)、それが私だ」

 

 常闇を放してやれば、そのまま着地する。場外で私の勝ちだ。

 

「常闇くん場外!3回戦進出は龍千さん!」

「……足元にも及ばないか……!」

「そうだよ。私、最強だから」

 

 見下ろして、背を向ける。

 

「何れ、追いついて見せる」

「……そう、待ってるよ」

 

 やはり、ここのヒーロー志望達は違うようだ。私に負けようとも折れやしない。ああ、何とも得難い感情だ。よもや私に反逆するものが幾人も出てくるとは。

 

 破壊神め。そうやって全部壊すつもりだろ。

 

 そうだよ。切島に勝った爆と、次で殴り合う。その為に今は回復に勤しむとするよ。

 

 切島じゃ爆には勝てないと?

 

 当たり前。爆は……そうだね。爆は、頭が回るし洞察力も凄い。その上、精神的にまだ成長する余地もある。それから、それから……。

 

 分かった分かった。お前が爆に入れ込んでいるのは分かった。

 

 それを殺してぇなぁって思ってるのが更に酷い。

 

 うるさいなぁ。殺すよ。

 

 ガチオコじゃん……。

 

 この体育祭だけで何回破壊衝動抑えられなくなってるんだかな。

 

 せめて自制くらいして欲しいよね。

 

 だって、緑とか爆とかちょっと潰したいが過ぎるもん……。

 

 うわキッ

 

 ……再生の手伝いくらいはしてやるぞ三郎。

 

 あ、やっべ。衝動で殺ったけど、生首どうしよう。

 

 いつも通り灰にするか。

 

 だね。オラッ!

 

「……何をしている」

 

 エンデヴァー……。

 

 No.2ヒーロー、か。厄介な時に出くわしちゃった。

 

「何も。ちょっと喧嘩してただけ」

「その"個性"、どうなっている?」

「決勝に向けた敵情視察?」

「……そのつもりは無い」

「なーんか気になる間だなぁ。いいけど。じゃあ、自己紹介から」

 

 翼を広げ、胸を張り、堂々とする。

 

「私は龍千 龍姫、又はキング・ギドラ。"個性"はこの身体。あとちょっと電気操れる位」

 

 カラカラと笑いながら、エンデヴァーにメンチを切る右のギドラを諌めつつ、手を差し出す。

 

「ああ、それと」

 

 差し出された手を、怪訝そうに取ったエンデヴァーに宣言する。

 

「私は王だ。生まれながらの王だ。お前なぞすぐに超えて見せる」

「……アイツとは別の意味で気に食わんな。生まれ持った力、生まれ持った傲慢さ、生まれ持った性格」

 

 そのアイツが誰なのかは不明だが、エンデヴァーは続ける。

 

「その様子では、何れ足元を掬われるぞ」

「足元を?それこそ本望だ。掬える奴がいればな」

 

 瞬時に手を離し、距離を取られる。心なしか炎も温度が上がっている気がする。

 

「……その殺意、いや、破壊衝動か」

 

 警戒したまま、エンデヴァーはそう呟く。大袈裟に肩を竦めてみたが、解いてくれないみたいだ。

 

「生来のものさ。私をここに……ヒーローへ縛り付けるものは多い。エンデヴァー、貴方だって分かるでしょ?私と敵対した時の恐怖が」

「その時は、倒すだけだ」

「オールマイトに比較される私を?オールマイトに届かなかったお前がか?」

 

 眉間にシワが寄り、炎が勢いを増す。臆すること無くエンデヴァーとの会話を続ける。

 

「かつて、オールマイトはその身一つで天候を変えた。私は晴天を雷雨に変えられる。オールマイトの移動速度は東京大阪間を14秒、私は音の壁を超えられる。どうだ、勝てるか?」

「勝つ。でなければヒーローの意味が無い」

「お前も傲慢だな。それは生来のものか?それとも後天的なものか?でなければ、何に狂った。本物のヒーローにも、父親にもなれなかったお前が」

「……やはり、お前は未熟だな」

 

 は?

 

「若い実力者ほど、自分の身の程を知らぬものだ。お前も何れ知るだろう。小人の妬心と、本物のヒーローを」

 

 そう言って、溜め息混じりに去るその背中に、憎悪と激情が沸いた。その感情のままに翼脚で殴り掛かる。

 

「お前は」

 

 振り返る事も無く翼脚を掴むと背負い投げられる。地面へ叩き付けられてエンデヴァーを見上げる形になる。

 

「アイツというものを知らんようだ」

 

 騒ぎを聞きつけて、ヒーローが集まりつつある。その状況を感知して、即座に立ち上がり、その場を後にする。

 

 アイツ……大人の対応したら勝ちだと思ってる。

 

 気に食わんな。興が冷める。

 

 黙れ。私は負けていない。

 

 このイラつきのままに歩き、控室に入る。ドアを閉めて、近くにあったパイプ椅子を握り潰して放り投げる。

 

「……手加減しないよ、爆」

「そうかよ」

 

 は?

 

「イラツイてんなぁギドラ」

 

 何で爆が……あぁ、私が間違えたのか。

 

 爆はニヤニヤしながら煽ってくる。

 

「椅子に八つ当たりして、恥ずかしい宣言までして」

「黙れよ」

 

 残念だが、今の私にそれを受け止める余裕は無い。爆の表情が本気のそれに変わり、顎を引いてこちらを見据えてくる。

 

「二度とお前に勝つと言えなくしてやる」

「その減らず口、ぶっ飛ばてやる」

 

 ここで手を出しては仕方ないと切り上げて、その場を離れる。次の爆との対戦が楽しみで仕方ない。エンデヴァーへの憎悪は未だ冷めやらないが、爆との対戦の方へ気が逸れて随分落ち着いてきた。さて、もうすぐかな。

 

「……お呼びだ、行くぞ」

 

 準決勝、爆との戦いに赴く。あの時の様な手加減は無しだ。思いっきりやり合おう、爆。

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