とあるビーチ――――そこで一組のカップルが楽しいひと時を過ごしていた。
陽光に照らされる海を一望できるビーチに到着するキャンピングカー。
ドアが開き、バラクラバで顔を隠した兵士と女性が姿を現す。
「海だ~!!」
潮風に金髪を揺らしながらはしゃぐ女性は既に水着姿だ。
ビーチに押し寄せては引く波に足をつけて海の冷たさを実感していると、兵士が水着に着替えてやってきた。
「ルーカス、こっちこっち!」
彼の『任務』の関係で外せないバラクラバ――――それでも露出した目元と口が笑っている。その下の素顔は私しか知らない――――
その手を引っ張り、波打ち際で引いていく波を追いかけては押し寄せてくる波から逃げるという繰り返し――――それでも大好きなルーカスと一緒にこうしていられるのは幸せだ。
「えいっ」
思い切りルーカスに抱きつき、その逞しい身体を堪能する。
目元の表情で彼が照れているのが分かる――――私にしか見せない顔だ――――
リサが抱きついてくる。自分よりそれなりに年上だけど、ふたりきりの時はティーンエイジャーの少女のような表情を見せてくる。俺にだけ――――ああ、可愛すぎる!!
「まだこれくらいで照れてるの~?」
そう言いながらいたずらっぽい笑みを見せるリサ。幾度かベッドを共にしたとはいえ、未だにこの瞬間に感じるときめきは色あせない――――
などと思っていると、いきなり冷たい海水をかけられた。
「私を捕まえられる?」
そのいたずらっ子の笑みを残して走るリサ。
「待て~!」
後ろから追いかけてくるルーカスの声は今の瞬間を心から楽しんでいると言わんばかりに弾んでいた。
足を止めて冷たい海水を浴びせる。
「やったな~!」
ルーカスが海面に大きな手を差し入れ、思い切り持ち上げてくる。
「あははは!」
大量の海水を浴びながら笑う私。
――――しばらく笑いあって、ルーカスと一緒に水平線を見つめる。
「ねえ、ルーカス。後ろからぎゅっとしてくれる?」
そのおねだりに彼は何も言わず応じてくれた。――――私を優しく包み込む腕や背中と密着した逞しい身体から彼の温もりを感じる。そして自分を包む腕に手を回し、愛おしく抱きしめる。
――――美味しい料理、作りすぎちゃったかな?
自らの腕で包み込んだリサの感触にそんな感想を抱きつつ、その温もりを感じていると彼女の手が俺の腕を抱きしめてきた。
こうしているとリサと俺がひとつになったような感じがする――――胸が満たされるような気分だ。
――――その時だった。
リサの耐水スマートウォッチに緊急通信が入ったのは。
『――――休暇中にすまない!君がいるハワイ付近を飛行中の旅客機がエンジン故障により墜落する可能性がある!急行して旅客機の緊急着陸をサポートしてくれ!』
するとリサの表情が凛としたそれに変わる。
そして俺と視線を交わし、頷く――――海に向かって走り出す――――――――
リサの周囲に現れた光の粒子が彼女を包み込んだかと思うと次の瞬間には銀色の装甲を陽光で輝かせるパワードスーツに身を包んだ姿へと変わった。
『行っけええええええぇぇぇぇ!!!!』
脚と背中のスリットに内蔵された推進器から圧縮された粒子が放出され、一気に超音速で急上昇していく。
リサは俺にとって可愛くて、格好良くて、世界で一番愛おしい女の子で――――――――そして最高のヒーローだ――――
心の中でそうつぶやきながらルーカスが見上げた空には、青白い光の粒子で航跡を残しながら急上昇していく一点の光が見えた――――――――
如何でしたか?
お気付きかもしれませんがリサが纏ったパワードスーツは『漆黒の騎士』本編に登場するエクセリオンと同じで、このエピソードは本編から更に未来、人の命を奪うのではなく救う為にエクセリオンの能力が発揮されるような時代のお話です。
楽しんで頂けましたら幸いです。
【人物設定】
・リサ
性別…女性
年齢…27
人種…アイルランド系
《解説》
本編より未来の時代においてエクセリオンの圧倒的な能力を人命救助の為に使う組織に所属する女性。
人を助ける為に危険を顧みない勇敢さを持つ一方で甘えん坊かつ食いしん坊な一面を隠し持っている。
・ルーカス
性別…男性
年齢…23
人種…アイルランド系
《解説》
リサと同じ組織に所属する傭兵。パワードスーツに対する適正こそ無いものの兵士として優れた能力を持っておりパワードスーツ適正者であるリサの護衛を命じられている。
とはいうものの長期間に渡って行動を共にし続けた結果、恋仲となっており最近は彼女の好きな料理を覚えることに力を入れている。