大好きなキミとのひととき   作:趣味全開人生

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絶望に心を蝕まれていた兵士は希望と出逢う。



№010『渇いた心に花束を』

 

 

――――国連北米行政管区:ニューヨーク

 

 

 

ヒーローが超人で構成されたテロ組織を叩くべく他地域のヒーローとチームを組んで遠征したのとタイミングを同じくして裏社会に潜っていた超人の犯罪集団が街中で暴れているとの通報が入った。

 

 

 

「はっはー!!!いつもの、糸を出す全身タイツの真っ赤な野郎はいねえ!鬱憤を晴らさせてもらうぜ!」

 

超人のひとりが手のひらで雷球を生成し、それを略奪し尽されてもぬけの殻になった店へと投げる――――爆発音が響く。

 

 

 

と、その時。

 

 

 

市民の避難があらかた済んだ筈のエリアに車両のエンジン音が響く――――

 

 

 

燃え盛る自動車の残骸を体当たりで吹き飛ばし、ときには踏みつぶしながら猛スピードで急行してくる複数の装甲車。

 

 

 

「私は超大型猛獣の鎮圧に向かう!」

 

部隊の指揮官であるアメリア・ライザー大尉が装甲車のハッチから飛び出し、戦闘服の下に着込んだ強化スーツの発する電気を纏いながら驚異的な跳躍力で建物を軽々と飛び越えていく。

 

 

 

「幹部級は任せな!」

 

高 飛龍(ガオ フェイロン)中尉が装甲車から飛び降り、予想されている潜伏ポイントへと駆け出す。

 

 

 

――――そして装甲車は超人集団が略奪を行っているエリアへと突入した。

 

 

 

「各自、武器使用自由!敵性超人集団を掃討しろ!」

 

その指示と共に装甲車から多数の兵士が展開し、小銃の連射音が響き始める。

 

 

 

身体を包む漆黒の戦闘服にヘルメットとバラクラバ、ゴーグルで隠された顔。彼らが何者であるかを物語るのは、戦闘服に付けられたワッペンのみだった。

 

 

――――レイラン・ディフェンス――――業界では中規模の民間軍事会社。

 

 

 

「金で雇われたハイエナ共が!」

 

超人が兵士たちに襲い掛かる――――だが、銃弾の雨が超人の接近を阻む。

 

 

 

「身体能力は向こうが上だ、接近戦は避けろ!」

 

指示を飛ばしながら自らも小銃を撃つルカ・ルキヤノヴィッチ・ロシュコフ中尉。

 

 

 

高い身体能力にモノを言わせて強引に接近しようとする超人たちだったが、そのことごとくが兵士たちの正確な射撃によって阻止され次々と倒れていく。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

超人集団をまとめていた幹部級が手から刃物のように長く切れ味のある爪を生やし、両手を振り回す――――だが、飛龍(フェイロン)ことフェイの素早く正確なナイフ捌きであしらわれていく。

 

 

相手をなかなか仕留められないことに苛立ったのか、爪が更に大きく変形し日本刀に近い刃渡りにまで伸びたかと思うと右腕を横なぎに大きく振ってきた。

 

 

脚を屈めて姿勢を低くし頭上を爪が通り過ぎるのを確かめた次の瞬間、相手が左腕を大きく振りかぶるのが見える。

 

 

 

咄嗟にバック転すると同時にさっきまでフェイが居た場所に爪が斧のように振り下ろされ深く食い込んでいた。

 

次の瞬間、着地と同時にフェイの手に握られた拳銃が火を噴く。

 

 

 

いかに強化された皮膚組織といえども近距離からの銃撃には耐えられず、敵は頭から血を流しながらそのまま仰向けに倒れた。

 

 

 

「よーし、一丁上がり!」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

全高5メートル、全長15メートルにもなる巨大なライオンが咆哮し爪を振り回すなかアメリアは電気の軌跡を描きながら華麗に回避していく。

 

 

そして業を煮やしたライオンがアメリアを丸呑みにせんと大きく口を開いて一気に襲い掛かってくるが、それを待っていたと言わんばかりにアメリアが戦闘服の下に着込んだ強化スーツが最大出力になり眩いスパークを纏う!

 

 

突き出されるナイフ――――その切っ先がライオンの牙と接触した瞬間、大きな火花が弾けライオンが仰け反る。

 

 

 

――――その一瞬で大きく跳躍したアメリアがライオンの頭部に取り付いて爆発物を仕掛け、再び跳躍する――――

 

 

 

派手な爆発と共に頭部があった場所から黒煙を噴きながら倒れるライオン――――と同時に着地するアメリア。

 

 

 

「――――報告、超人集団は無力化した。繰り返す、超人集団は無力化した」

 

 

 

こうしてヒーロー不在の街を襲った超人集団は鎮圧されたのだった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――数日後:ニューヨーク・グランド・セントラル駅

 

 

 

街の市長から会社に莫大な謝礼金が支払われ、今回の作戦に参加した兵士にも臨時で多額のボーナスが支給されることになったとの知らせを聞いてすっかり上機嫌になったフェイがルカに歩み寄る。

 

 

 

「よー、ルカ!歩兵部隊を指揮して連中の大半を全滅させたって聞いたぞ!しかも死者無しで」

 

 

「――――ああ。そうすれば報酬が増えるからな」

 

 

 

いつものように無表情で応えるルカ。

 

 

「やれやれ、興味があるのはカネだけってわけか。いつも通りだな――――もうちょっと周り見てみればいいのに」

 

 

肩をすくめながらルカの歩調に合わせて大階段を下りるフェイ。

 

 

 

 

その脳裏に数年前のルカの姿がよみがえる。

 

 

『――――俺が兵士になったのは皆を救えるヒーローになりたかったからです!』

 

 

 

国連軍に関する特集番組の取材に訪れた記者にバラクラバ越しでも分かる爽やかな笑顔でハキハキと答えるルカ。

 

 

 

(そりゃあんな事があったら金しか信じなくなるわな)

 

 

 

――――と、フェイが回想に浸っていたその時。

 

 

 

女性の悲鳴と共に男がバッグを抱えて大階段を駆け下りてくる!

 

 

ルカが反射的に男を捕えようとした次の瞬間、再び声が聞こえてくる。

 

「待て、泥棒――――!」

 

 

 

ひったくり被害者とは別の女性が男の後ろから俊足で駆け下りて荷物を奪い取ったかと思うと勢い余って前のめりになり転げ落ちそうになる――――

 

 

 

「危ない!!」

 

 

女性の身体を抱え、そのまま階段を数段転げ落ちるルカ。

 

 

 

 

「ルカ!」

 

ひったくりを拘束したフェイが思わず叫ぶ。

 

 

 

「――――大丈夫ですか?」

 

 

そう声をかけ、初めて女性の顔をまともに見たルカが思わず目を見張る。

 

 

 

 

――――おそらく東アジア系であろう小柄な体躯にも関わらず、整った顔立ちに強い意志を感じさせる僅かに濃い眉。そして何より正しいことを躊躇わず実行するであろう光の意思を秘めた眼差し。それがルカにとっては大きな存在に感じられた。

 

 

 

バラクラバに覆われ、その表情は窺い知れなかったが、ゴーグル越しに僅かに見える目元は数年ぶりに感情を表に出していた。

 

 

 

 

――――続く

 

 

 

 






今回は1人の女の子が人間に絶望した兵士さんの心を再生させるストーリーとして続きますのでお楽しみに!



【人物設定】



・ルカ・ルキヤノヴィッチ・ロシュコフ

性別…男性

年齢…27

人種…スラブ系(ロシア系)

階級…中尉

《解説》
民間軍事会社『レイラン・ディフェンス』社(レイランの部分は雷嵐の中国語読み)に所属する傭兵。

元々は国連軍所属で当時は『皆を救えるヒーローになりたい』という信念を胸に戦っていたが、ある事件を契機に金しか信じない拝金主義者になり収入の良いレイラン・ディフェンス社に転職した。



・高 飛龍(ガオ フェイロン)

性別…男性

年齢…25

人種…アジア系(中国系)

階級…中尉

《解説》
レイラン・ディフェンス社の社員でルカの同僚。愛称はフェイ。

ルカと比べて軽装でヘルメットではなくキャップ帽を被っているのが特徴。バラクラバ越しでも分かるほど整った顔立ちでプレイボーイとしての一面もあるが仲間を気遣う世話焼きでもある。

また、特殊な訓練で身体能力を強化しており幹部級の超人とサシで戦える実力者。



・アメリア・ライザー

性別…女性

年齢…28

人種…ドイツ系

階級…大尉

《解説》
ルカが所属する部隊の現場指揮官であり、身体能力を強化するスーツを戦闘服の下に着込んでいる。指揮官ではあるが部隊内でパワー系の敵と接近戦で渡り合える者が彼女以外にいないため、一時的にルカに部隊の指揮を任せる事が多い。

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