大好きなキミとのひととき   作:趣味全開人生

11 / 12

ある事件によって人間を信じなくなった傭兵ルカ。

そんな彼の日々はある女性との出逢いによって大きく変わっていく。



№011『彼女との時間』

 

 

――――レイラン・ディフェンス社基地

 

 

裏面ゲートのカメラ前に自転車が止まり、乗っていたアジア系の女性が許可証をカメラにかざす。

 

やがてゲートが開き、自転車はそのまま基地内へと進んでいく。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「こんにちはー!フードデリバリーです!」

 

兵員の居住エリア入口に立ち、ハンバーガーとサラダが入った袋を手に元気な声で挨拶する女性。

 

 

 

「ああ、ありがとう――――」

 

女性を出迎え、礼を言いながら袋を受け取ろうとしたルカが女性の顔を見て驚く。

 

 

 

「あ、この前の!」

 

 

――――数日前にひったくりを捕らえた時に出逢った女性だった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

「今日は非番なんですね、ロシュコフ中尉」

 

 

女性――――キャロライン・リーが自転車を押しながら隣を歩くルカをチラリと見る。

 

 

 

「ええ、ウチは割と働きやすいので」

 

 

 

すると、町の人々が手を振ってきた。

 

「キャリー(キャロラインの愛称)、この前ひったくりから荷物を取り返したって?」

 

「すげえ!ヒーローだな!」

 

 

笑顔で手を振り返すキャリー。

 

 

 

「――――――――」

 

そんなキャリーの横顔を見つめるルカ。

 

 

 

 

「ヒーロー、か」

 

そんな呟きが漏れる。

 

 

 

「ヒーロー?いやいや、そんな柄じゃないですよ」

 

照れくさそうにするキャリー。

 

 

 

「だとしても町の人達はあなたを慕っている」

 

ルカの脳裏によみがえる、ひったくりから荷物を取り返したキャリーの姿。

 

 

 

「自分から危険に立ち向かうのは勇気がいることです。――――誰にでも出来ることじゃない」

 

ゴーグル越しにうっすらと見える目がキャリーに向けられる。

 

 

 

「も~、おだてすぎですって!」

 

キャリーは照れながらも嬉しそうに笑うのだった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「今日は楽しかったです、それじゃまた!」

 

ルカに手を振るキャリー。

 

 

 

そして自転車で去っていく彼女の後ろ姿が見えなくなるまで見送るルカ。

 

 

 

 

――――レイラン・ディフェンス社基地・兵舎

 

 

士官に与えられた個室でシャワーを終えたルカがベッドに転がる。

 

 

――――脳裏にキャリーの笑顔が浮かぶ。

 

 

 

(――――あんなに楽しかったのは久しぶりだ)

 

微かに笑みを浮かべながらそのまま眠りにつくルカ。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――――数日後

 

 

会社の業務の一環で町をパトロールしていたルカが公園に差し掛かった時。

 

 

「――――ん?」

 

 

子供の泣き声が聞こえ、声がした方を見ると――――

 

 

 

「え!?」

 

木に引っかかった風船、そして木に登ってそれを取ろうとするキャリーの姿が見えた。

 

 

そして風船を手に飛び降りたキャリーは無事に着地し、泣いていた子供に風船を手渡し、その手にヒモを巻く。

 

 

 

「おねえちゃん、ありがとう!」

 

笑顔でお礼を言い、去っていく子供――――それを見送ったキャリーがルカに気付く。

 

 

 

「相変わらずヒーローですね。正直見ててヒヤヒヤしましたよ」

 

 

「えへへ、困ってる人を見るとほっとけないですから」

 

 

 

その笑顔にルカの心がズキリ、と痛む。

 

 

 

『――――俺が兵士になったのは皆を救えるヒーローになりたかったからです!』

 

 

 

過去の自分自身の言葉が今の自分に突き刺さる。

 

 

 

「――――ロシュコフ中尉?」

 

 

 

心配そうに見つめてくるキャリーにルカは「大丈夫です」と返すことしか出来なかった。

 

 

 

――――続く

 

 






~次回予告~


キャリーとルカの交流が始まってから数ヵ月。未だにルカの心を蝕む過去の事件が明かされる――――


№012『へし折られた心』


ご期待ください!



【人物紹介】


・キャロライン・リー

性別…女性

年齢…29

人種…アジア系(中国系)

《解説》
ニューヨークで生活する女性で愛称はキャリー。フードデリバリーの配達員をする傍ら、町で困っている人々を助けておりヒーローとして慕われている。

古くからアメリカにいる中国系移民の7世(2090年代生まれ)だが商売人だった先祖が他の人種のコミュニティーとも積極的に交流してきた影響で様々な方面に知り合いがおり、キャリー自身も日系人の祖父やヨーロッパ系の母を持つ。

なお、実家は裕福だが祖父母や両親があまりにも心配性で、キャリーが外を出歩く時に10人以上の兵士を護衛につけようとするなど過保護だった為に嫌気が差して家出し、自立して生活している。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。