大好きなキミとのひととき   作:趣味全開人生

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今回は「身体が大きい女の子だって本当は誰かに甘えたり包まれたりしたいんじゃないか?」という疑問からイメージを起こして書いてみました。



№002『大きくても甘えたい!』

 

 

 

 

幼い女の子が芝生の上を走る。

 

 

 

「充(みつる)お兄ちゃん!!」

 

 

その視線の先には女の子よりも幾つか年上の少年がいる。こちらに気付き、膝を屈めてくれる――――

 

 

 

 

そのまま少年に飛びつき、まるで猫が飼い主に甘えるかのような幸せそうな表情で胸に顔を埋める。

 

 

(灯里(あかり)、相変わらずだなあ――――)

 

 

充は自分の胸に顔を埋める女の子の頭を撫でながら、その後ろで倒れる女の子の父親とそれをAEDで蘇生させる兵士達の方を見た。

 

 

 

 

しばらくして跳び起きた父親が、安静にするよう指示する兵士を振り払って充に詰め寄る。

 

 

「充くん、結婚はまだ許しませんよ!!」

 

 

 

この人は何を言っているのだろうか。

 

 

 

泣き喚きながら兵士に引きずられていく父親を呆れ顔で見送りながら灯里の方を見る。

 

 

「何して遊ぼうか?」

 

 

 

 

 

――――ボール遊びに疲れ、充の膝に頭を預ける灯里。

 

 

 

「ねえ、お兄ちゃん!」

 

 

甘えるような声で話しかけてきた灯里に充が視線を合わせる。

 

 

 

「いつかお兄ちゃんみたいに大きくて強いお姉ちゃんになるね!」

 

 

「うん、楽しみにしてる」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――――そして20年後。

 

 

 

「 ど う し て こ う な っ た 」

 

 

私――――夕島 灯里( ゆうじま あかり )のいつもの口癖だ。

 

 

 

隣に立つ充の顔が低い。私の190センチを超える巨躯が恨めしく思える瞬間だ――――

 

 

 

 

黒い防弾チョッキに『UN FORCES』の白文字が目立つ装備に身を包む私はそんな鬱憤を発散すべく自主的な訓練に励んでいる。

 

 

「夕島、そこまで無理にやらなくてもいいんだぞ?」

 

心配そうに見つめてくる充――――バラクラバで表情は見えないが目元だけで分かる。

 

 

 

 

「いいえ、隊長――――もう少しやらせてください」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

5~6キロの荷物を抱えながら走る灯里の表情は切羽詰まっているようにも見える。

 

そんな事を考えながら並走する芦屋 充( あしや みつる )。

 

 

 

昔は普通に仲良く遊んでいたけれど、彼女が中学に入学した辺りから充本人も国連軍高等工科学校に入学し互いに忙しくて会う機会も無くなった――――

 

 

――――そして国連軍のうち国連各行政エリアの治安維持を担う部署に配属され、教育期間を終えて正式に少人数ながら部下を率いる下士官として勤務するようになり数年。

 

 

 

新たに配属された部下のひとりとして再び現れた灯里を見た時の衝撃は忘れられない。

 

 

最後に会った時は自分より10センチは背が低かったのに、それがすっかり逆転してしまっていた。

 

けれども、それ以上に自分を見つめる瞳がどこか悲しげだった――――

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

5~6キロの荷物を抱えて出発地点から2.6キロ離れたゴールに辿り着いた時には肌という肌から汗が浮き出て顎や腕から地面へと垂れ落ちていた。

 

 

「今回も18分切ったな」

 

 

笑顔で褒めてくれる充だが、私の意識はそれをハッキリ捉えていなかった――――

 

 

 

(睡眠時間削ってトレーニングするんじゃなかった――――)

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「気が付いた?」

 

 

その声と共に目を覚ますと、私は頭を充の膝に預けていた。

 

 

 

「あっ、隊長――――」

 

 

起き上がろうとするが、充の手がそれを制した。

 

 

 

「無理し過ぎたみたいだから、もう少し休みなよ。灯里」

 

その口調には、上官と部下としてではなく幼馴染として話そうというニュアンスが感じられる。

 

 

 

 

「――――――――ごめん、お兄ちゃん。私、迷惑かけてばっかりで」

 

そんな自分が恥ずかしくなって視線を横にそらす。

 

 

 

 

 

「ん、確かに無茶し過ぎて倒れちゃうと規定された訓練に影響が出るからほどほどに、ね?」

 

 

「はい…」

 

 

すると、両頬に手が優しく添えられた。――――包まれるような安心感。

 

 

 

「でも、灯里はめっちゃ頑張ってると思う。だからそんなに自分を追い詰めなくてもいいし自分に自信を持ってほしいな?」

 

 

 

 

その言葉に思わず自らの両手を充の手に重ねる――――

 

 

「………うん」

 

 

 

少し驚いたかのような充の目を見つめながら私は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――――数日後

 

 

 

「隊長、報告書をお持ちしました」

 

 

「ああ、確認しておこう――――」

 

 

 

その言葉と共に報告書を受け取ろうとした充と灯里の手が重なる。

 

 

「あ、――――確かに受け取った」

 

 

 

「はい。では失礼します」

 

 

 

 

――――持ち場に戻る灯里の胸中には新しい感情が芽生えていた。

 

 

恥ずかしいような、それでいて嬉しいような――――

 

 

そんな幸せな気持ちが溢れてきている。

 

 

 

 

もう身長差は全く気にならなかった。

 

 

 

 

 

 

――――その頃、オフィスには悶々とする充の姿があった。

 

 

(この前の訓練の時から灯里可愛すぎる!無理!死ぬ!)

 

 

 

両手で顔を覆う――――きっとバラクラバの下は真っ赤になっている筈だ。

 

 

 

 

この2人の恋がどうなるか、それは神のみぞ知るところ――――

 





【人物設定】


・夕島 灯里( ゆうじま あかり )


性別…女性


年齢…22


人種…アジア系(日系)


階級…上等兵


《解説》
国連軍の兵士で、主に各行政エリアの治安維持を担う警察的な役割を持った部署に配属されている。幼馴染の充に対して無自覚ながら恋心を抱いており、低すぎる身長を伸ばそうと必死になった結果、逆に追い越してしまった事を気にしていた。





・芦屋 充( あしや みつる )


性別…男性


年齢…25


人種…アジア系(日系)


階級…伍長


《解説》
国連軍の下士官で、国連軍高等工科学校(モデルは陸上自衛隊高等工科学校)の出身。

灯里の事は単なる幼馴染で可愛い妹分として見ていたが、異性として意識するようになり悶々とする日々を送ることになる。

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