大好きなキミとのひととき   作:趣味全開人生

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とある冬を過ごす女性と兵士の物語――――




№008『融けた氷、雪の祝福』

 

 

 

――――国連極東行政管区:大阪梅田エリア

 

 

 

 

――――仕事を終えてすっかり暗くなった空を見上げながら冷えた空気で満たされた街を歩く女性――――奏 美琴( かなで みこと )。

 

 

街のビル群、街路樹は年末という事もありイルミネーションで彩られ地上に星空が現れたようだった。

 

 

 

(いつもの所かしら――――)

 

 

 

心の中でそう呟きながら駅前の広場に向かう。

 

 

 

 

案の定、バスターミナルの一角に停車した装甲車の周囲を数人の兵士が警備しているのが見えた。

 

 

「今晩は~翼(つばさ)、居ます?」

 

 

美琴は特に臆することもなく、戦闘服に身を包みバラクラバとヘルメットで頭を覆い隠している兵士達に恋人の居場所を尋ねる。

 

 

 

「天津(アマツ)少尉ナラ迷子ノ子供ヲ送リニ行キマシタヨ」

 

数年前に赴任してきたという翼の部下のひとりであるトーマス・ベイカー特技兵が推し活の為に必死で覚えた日本語で応える。

 

 

 

 

「やあ、奏さん。変わらずお元気そうで何よりです」

 

翼を支えるベテラン下士官である王 英翔 ( ワン インシィァン )軍曹がバラクラバ越しでも分かる温厚な笑顔で話しかけてくる。

 

 

 

「しかし、冷えますな――――そうそう、天津少尉ですが最近は仕事でも表情が柔らかくなりましたね。我々にも休暇を勧めてくださるようになりました」

 

 

「ソウソウ、今ジャ遠慮ナク休暇取レ、ッテ言ワレマス」

 

 

王の言葉にベイカーが同意するなか恋人の変化に驚きを見せる美琴。

 

 

 

「以前はかなり無理をされてて荒れる時もありましたが、それがウソのようです」

 

その表情は上司というよりは弟を慈しむようなものだった。

 

 

 

「そう、一昨年にあなたと出逢ってからですね。変わられたのは」

 

 

 

――――そこへ、ベイカー達とほぼ同じ格好をした青年が現れる。

 

 

 

「美琴、来てくれたか」

 

青年――――天津 翼( あまつ つばさ )少尉が美琴に歩み寄る。

 

 

 

バラクラバから覗く眼差しは出逢った頃の刺々しい雰囲気が感じられず穏やかだ。

 

「じゃあ、王、ベイカー。後は宜しく」

 

 

 

片手を上げ、フランクな雰囲気でそう言うと翼は美琴と共に同居しているマンションのある住宅街へと足を向けた。

 

 

 

 

「久々に長期休暇取れて良かったね、翼」

 

 

「ああ――――ここのところ忙しかったからな」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

高層ビルやそれを彩る煌びやかな光、人々の活気が遠ざかっていく。

 

そして空を見上げると白い粉のような雪が街灯の明かりに照らされながら降り始めた。

 

 

 

「もう降ってきた――――美琴、寒くないか?」

 

 

「うん、大丈夫――――それに翼といる時の雪って特別な気分になれるから大好き」

 

そう言いながら翼の背中に腕を回し、胸に顔を埋める美琴。

 

 

 

最初は驚いた翼だったが、やがてその腕が美琴を包み込む――――

 

 

 

 

そして街灯に照らされる雪がライスシャワーのように2人の頭上に降り注ぐのだった――――

 

 

 

 






【人物設定】


・奏 美琴( かなで みこと )


性別…女性


年齢…28


人種…アジア系(日系)


《解説》
ごく普通の会社員で、作中の2年前に無差別殺人の標的にされた所を現在の恋人である翼に救われる。

その後、翼との交流の中で彼の心を融かし、恋人関係となった。





・天津 翼( あまつ つばさ )


性別…男性


年齢…27


人種…アジア系(日系)


階級…少尉


《解説》
国連軍の士官で、行政エリアの治安維持を行う警察的な部署に配属されている。

元々生真面目な性格だったが、それが災いして仕事を沢山抱えるようになりオーバーワークに苦しめられる。これが原因で不信感の塊となり徐々に荒れていったという経緯を持ち不愛想な上に刺々しい雰囲気を放っていくようになった。


しかし、偶然出逢った美琴との交流を経て穏やかな表情を見せるようになり恋人関係に進展した。現在は彼女と同棲しており来年にはプロポーズするつもりでいる。





・トーマス・ベイカー


性別…男性


年齢…24


人種…イギリス系(北米エリア出身)


階級…特技兵


《解説》
翼の部下で爆発物処理の技術を有する特技兵。アニメや漫画が大好きで各国のサブカルチャー事業が集まる聖地である極東(旧日本)エリアにはプライベートで何度も旅行に訪れていた。

その為、現地の人間と意思疎通が可能なレベルで日本語を習得しており「日本語を話せる」という事で極東エリアに配属された。


プライベート時はアニメグッズを買い集めたり、Blu-rayを鑑賞したりするほか、宿舎のベッドには「ちびかわ」のぬいぐるみを置くなどかなりのオタク。





・王 英翔 ( ワン インシィァン )


性別…男性


年齢…32


人種…アジア系(漢民族)


階級…軍曹


《解説》
翼の部下で隊員達をまとめるベテラン。階級こそ翼より下だが部隊の中では最も経験が長く翼を弟のように見守っている一面もある。(故郷の弟が翼に近い年齢というのもある)

杏仁豆腐が大好物であり、妻子との旅行で横浜中華街に行った時は必ずと言っていいほど杏仁ソフトクリームを食べる。

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