大好きなキミとのひととき   作:趣味全開人生

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超人に対抗する特殊部隊の兵士として活躍するジェフ。

彼の強さは、彼を想う人によって支えられている――――





№009『帰る場所』

 

 

――――深夜の闇にエンジン音がこだまする。

 

 

 

封鎖された道路をライトもつけずに走行する装甲車――――暗視装置で安全は確保されている――――その内部では装備に身を包んだ兵士達が通信機越しにブリーフィングを受けていた。

 

 

「今回の超人テロ集団は相手側の異能力を無力化する特殊な道具を持っている――――つまり我が方の超人チームによる鎮圧は不可能との結論が出た」

 

 

「よって諸君らの出番というわけだ。異能力におぼれ驕った奴らに人間の底力を思い知らせてやれ」

 

 

 

上官の激励に闘志を燃やす兵士達――――

 

 

 

やがてテロ集団が占拠しているビル近くまで来たところで装甲車から次々と兵士達が降りてくる。

 

 

いずれも顔はバラクラバに覆われ、唯一露出している目元も今はヘルメットに取り付けられた暗視ゴーグルを下ろしたことでほぼ完全に覆われ、人でありながら異形のごとき姿になっていた。

 

 

 

シールドを構えた兵士数人が先陣を切り、小銃を携行した兵士達が後ろに続く。

 

裏口に到着し、手持ち式の特殊なレーダーで扉の向こう側にトラップが仕掛けられていない事を確認すると工兵が扉に爆薬を設置しシールドを持った兵士と目線を交わす。

 

 

「3…2…1…0!」

 

 

火花が飛び散り、倒れる扉。

 

 

 

そのままシールド兵を先頭に突入していく部隊。と、そこへビルを根城にしていた敵のひとりと鉢合わせする。

 

 

「――――!!」

 

敵が手のひらに火球を生成し始めるが、火球が完成するより速く兵士の小銃が火を噴き敵を撃ち抜く。

 

 

――――敵の死亡を確認し、そのまま進んでいく。

 

 

 

そして開けた場所に出た途端、待ち伏せしていた敵の激しい火球攻撃が部隊を襲う!

 

即座にシールド兵が3人ずつ横に並び、その後ろに数人の兵士が集まった。

 

 

 

敵の攻撃が弱まった隙をつき、シールド兵による即席のシェルターの横から上半身を出して迅速かつ正確に敵を撃ち抜き、素早くシェルターに戻る。

 

 

「スタングレネード!」

 

隊長の号令と共に兵士達が次々にスタングレネードを投げ、眩い光と轟音で敵側の視界が遮られた。

 

 

 

「今だ!一気に制圧しろ!」

 

目と耳を一時的に無力化され狼狽える敵に対して、シールド兵のお陰で閃光の影響を免れた兵士達が容赦なく銃弾を浴びせる。

 

 

――――――――――――

 

 

部隊が次々と超人を撃破していく中、別ルートでビル上層階の非常口を目指して駆け上がるひとりの兵士。

 

 

その兵士の武装は部隊のそれと比べてやや軽装であり、オリーブグリーンの戦闘用ジャケットとグレーのパンツ、ヘルメットの代わりに被ったキャップ帽が比較的ラフな印象を与える。

 

 

だが、バラクラバの目元に宿る眼差しは決して未熟な兵のそれではなかった。

 

「こちらハンター、間もなく目標に接触する」

 

 

キャップ帽の上から着けたヘッドセットに短く呟き、目的の非常口前に到着する。

 

 

暗視機能付きのサングラスを装着し、非常口横のキーパッドに素早く番号を打ち込む。

 

 

 

拳銃を片手にドアノブに手をかけ、捻って扉を開く――――と同時にサングラスのセンサーが拾った情報がビル周囲の中継ドローンを経由して移動式サーバーを載せたトラックに送られる。

 

そして、それは光を増幅し昼間のような明るさに調整された映像として時間差ゼロでサングラスに送り返され、レンズに投影される。

 

 

 

ネットワークの支援が必要という制約こそあれど、従来の装備と同じ機能を有しつつ、大幅に軽量化したハイテク装備が兵士の身体を包んでいた。

 

 

それは――――彼が持つ“疾さ”を最大限に活かす為だ。

 

 

肉眼では闇しか見えない空間を駆け、出会った敵を素早く撃ち抜く――――が、人数差の不利から他の相手の反撃を許してしまう。

 

とっさに横へ全力で跳んでそのまま拳銃の引き金を引き絞り、肩から着地すると同時にその勢いのまま身体を横回転させて片膝立ちの体勢で再び銃を構え銃声を轟かせる。

 

 

 

装備の軽さ故の素早い身のこなしと射撃の速さで3人の超人を瞬く間に屠った兵士はそのままビルの奥へと向かい、テロ集団を束ねる頭領と対峙した。

 

 

「ガードマンなら休暇中だ。無期限のな」

 

 

そう言いながら銃を構える兵士。

 

 

 

「――――能力もない雑魚風情が調子に乗るなよ」

 

頭領は降伏するつもりはない、と言わんばかりに腕を鋼に変え拳を鳴らす。

 

 

 

「死ね!!」

 

人間の身体の限界を超えた速度のストレートパンチを連続で繰り出すも、兵士からすれば身体や筋肉の動きでパンチの軌道が見えていた――――そしてパンチが来る位置を予測して躱すのは容易かった。

 

 

 

馬鹿な――――と言わんばかりに唸る頭領。その隙を突いて拳銃を構え連続で発砲。

 

硬化の範囲外である頭部を守る為に頭領が両腕を振りかざす――――と同時に視界を自ら塞いでしまう。

 

 

 

そして一瞬で後ろに回った兵士のナイフが頭領の首に突き立てられた。

 

 

 

「――――こちらハンター、標的が抵抗したため応戦。標的は死亡した」

 

ヘッドセット越しに短く報告する兵士――――ジェフ。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

テロ集団によって囚われていた人質が助け出され、応援でやって来たトラックに移送されていく。

 

 

 

そんな彼らを見守る兵士と隊長。

 

「テロ集団の奴らは人質を商品として売り飛ばす予定で、そのため暴行は加えられなかったようです」

 

 

「そうか――――奴らの取引相手が判明すれば直ちに拘束するぞ」

 

 

 

と、そこへジェフが現れ、隊長が労いの言葉をかける。

 

「マーフィー軍曹、ご苦労。物資の輸送トラックが丁度君の住んでる辺りを通るから乗せてもらって帰るといい」

 

 

「感謝します、隊長」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

とあるマンションの一室、ダイニングに女性の鼻歌が響く。

 

 

ジェフから戻るとの連絡があり、彼が作っておいたサラダを皿に盛りつけてテーブルに並べていると鍵が開く音がし、振り向くと同時に肩まで届く金髪が揺れた。

 

 

 

「お帰り、ジェフ!!」

 

 

足早に玄関に向かい、ジェフの背中に両腕を回して抱きしめる。

 

「ただいま、グレース」

 

 

そう言いながらグレースを抱き返すジェフ。

 

 

 

「シャワーを浴びてくるよ。昨日作っておいた料理レンジで温めといてくれるかな?」

 

 

「うん、食べるの楽しみ!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

ジェフがベッドで横になっていると、グレースが部屋に入ってきた。

 

 

「ジェフ、しばらく休暇だよね?」

 

 

「ああ――――そうだけど、どうしたんだ?」

 

 

 

グレースはその問いに答えず、ジェフの上に跨る。

 

「構ってー!!デートしてー!!」

 

 

 

久々に子供じみた表情を見せるグレース。

 

――――そうえいば2ヶ月ほど帰ってシャワーして食べて寝て仕事に行くの繰り返しだ。休日も家事や買い物で使い切ってしまう。

 

 

 

 

「そうだな、ここ最近ほったらかしになってしまったし久々に楽しむか」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

花が咲き誇る丘のてっぺんに上がり、グレースが一面に広がる花にはしゃぐ。

 

 

「こんなに綺麗な場所があるなんて!」

 

「ああ――――俺もこういう場所があるなんて思わなかった」

 

 

 

素性を隠す為に装備を身に着けているにも関わらず、思わず日々の任務を忘れて花の海を見渡し胸いっぱいに香りが混じった空気を吸い込む。

 

 

と、そこへ風が吹き無数の花びらが空へと舞い上がった――――

 

 

 

思わぬサプライズに歓声を上げながら丘を駆け降りるグレース。

 

 

 

「――――」

 

 

地上には一面に広がる色鮮やか花、晴れ渡った青空をキャンパスにして舞い上がる無数の花びら。

 

その中心にいるグレースが今までのどの瞬間よりも幻想的で目を離した隙に消えてしまいそうな儚さを纏っている。

 

 

 

 

気が付けば、グレースの傍に歩み寄っていた。

 

 

ジェフの慈しむような眼差しがグレースを見つめ、最初は照れくさそうにしていた彼女も恋をする少女のような表情で見つめ返してくる。

 

 

 

そして自然と唇が重なる――――

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

――――数年後

 

 

 

ジェフとグレースは再びあの丘を訪れていた。

 

数年前にグレースと愛を誓い合った時と変わらぬ、一面に広がる花。

 

 

 

何もかもがあの時のままだった。――――2人の左手、薬指に銀色の輝きがある点を除いて。

 

 

 

ジェフの手がグレースの肩に重なり、優しく抱き寄せる。

 

同時にグレースもジェフの肩に顔を寄せて、自らの肩に重なったジェフの手に自分のそれを重ねた。

 

 

 

――――この幸せな時間を大切にしていこう。

 

 

ジェフはそんな決意を胸に秘めるのだった。

 

 

 







【人物設定】



・ジェフ・マーフィー


性別…男性


年齢…24


人種…アイルランド系


階級…軍曹


《解説》
国連軍の対超人専門部隊に所属する兵士で、部隊とは別に単独で作戦行動をとるエージェントでもある。

恋人のグレースとは元々アパートの隣人同士で互いに気が合い現在の関係になった。





・グレース・キャンベル


性別…女性


年齢…23


人種…イングランド系


《解説》
IT企業の会社員でジェフの恋人。仕事が出来る切れ者だが、その胸の内に甘えん坊な一面を秘めておりジェフの前ではそれを包み隠さずさらけ出す。


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