ジャケジャケの実の海兵   作:ぷに凝

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“化け皮”

目が覚めて、自分の身体を見下ろした瞬間それが赤子の体であったことに気づいた瞬間、俺は自分が「転生」したと気づいた。

 

そして、自分が住んでいた家が「ロックス海賊団」を名乗る連中によって襲われたことでここがワンピ世界であることに気づき。

 

「──おぉ?なんだこりゃ。赤ん坊か?」

 

宝箱の中に閉じ込められていた所、若い“ガープ”という海兵に拾われたことで俺は海兵になった。

 

とまぁ、俺の略歴を話すとそんな感じだ。“ロックス海賊団”はたしか、原作開始時点から40年近く前に存在した伝説の海賊団だ。

船長“ロックス”を始めとした白ひげやカイドウ、ビッグマムといった強豪ぞろいの最強の海賊団。俺の実家はその一味に襲われ、赤子であった俺は船員の一人によって宝箱の中にぶち込まれた。

 

ロックス海賊団は確か、ゴッドバレー島で起きた事件でロジャーとガープによって壊滅させられたって話だったはずだ。その時ロジャーに拾われたのが……っていうのは知ってたが。まさかガープの方も赤子を拾っていたとは思わなんだな。

 

しかも中身は俺。これってどうなんだ?まさか俺、ASL兄弟の4番目の義兄弟って間柄になんのか?うーん、実感が湧かない。

 

それもそうだろう。ルフィもエースもサボもまだ生まれていない。三人が生まれる頃には俺はアラフォーだ。義兄弟ってよりおじさんって呼ばれそうだよなぁ。いいなぁそれ。あの3人におじさんと呼ばれるような存在になりたい。

 

ということで、俺は海兵として実力を身につけることにした。ガープが養父、ASL兄弟とは歳の離れた兄(暫定)となる予定のキャラが弱くちゃ締まらないだろう。四皇レベルとは行かなくても、七武海、四皇大幹部レベルの強者にはなりたい。

何、あのコビーが僅か数ヶ月で六式を習得できる世界観だ。死ぬ気でやればきっとどこまでも強くなれるはず。

 

というわけで、俺はとにかく海兵として色んな任務に駆り出しまくって、修行しまくった。そのおかげか、12歳になる頃には覇気を習得。最初は見聞色を。次に武装色。残念ながら覇王色はなかった。覇王って柄でもないしな。

 

しかしここで俺は行き詰まった。壁にぶち当たったとでも言うべきか。

12歳で覇気習得。これは海兵の基準で言えば非常に優秀な部類に入るらしい。そもそも覇気習得が必須の階級が中将以上って話だったしな。俺はまだ単なる“一等兵”だが、このままキャリアを重ねていけば中将の地位は約束されたも同然って話だった。

 

だが、逆に言えばそこまで。俺にはわかる。このまま何十年も鍛え続けたところで“大将”の地位にはあと一歩届かない。俺が目指す強さはまさに大将クラスだが、このまま鍛え続けたところで、良くて中将の中でも上位って程度の強さに収まるだろう。

 

勿論、世間的にはそれで十分と言える肩書きだ。原作ではピンキリすぎてあまり強い印象がない中将でも、海軍という組織単位で見れば上澄みも上澄みだ。そもそもガープさんだって中将だしな。まぁ、あの人は別格としても。

 

これが“才能”って奴なんだろう。僅か2年で“四皇”の地位に上り詰めたルフィや、数ヶ月で劇的な成長を遂げたコビーといった逸材と、“凡夫”でしかない自分の差だ。

 

さて、どうしようか……と悩んでいたところ、絶好のチャンスがやって来た。

 

“悪魔の実”が手に入ったのだ。

 

現在俺は12歳。手に入れたのは、俺の部下である“ヒナ”ちゃんだ。と言ってもほとんど同年代だが。

原作ではスモーカーとほぼ同期だったヒナちゃんだが、スモーカーと年齢が近い俺の存在によって改変が起きたのか、随分と親しい仲になってしまった。

 

“師匠”と呼び慕ってくる彼女を邪険にすることもできず、たまに稽古を付けるだけの部下というよりは師弟に近い関係性だ。そんな彼女がある日、日頃のお礼にと敵船から没収した悪魔の実を俺に譲ってくれたのだ。

 

素晴らしい。ちょうど伸び悩んでいた時期だった。ここで悪魔の実の能力を獲得できれば、戦術の幅は大きく広がるだろう。

 

悪魔の実は食べるまでどんな能力かわからない。が、とんでもない大外れと言えるような能力はほとんどなかったはずだ。

どんな能力も使い方次第。ルフィだってゴム人間だしな。別に大して強い能力じゃなくてもいいんだ。一見弱そうに見える能力でも、必ず使い道が……。

 

 

“ジャケジャケの実”だった。

 

 

とんでもない大外れ。終わった。ご視聴ありがとうございました……。

 

 

……超人系“ジャケジャケの実”。

 

それを食べた人間は“ジャケット人間”となり、体をジャケットに変化させることが出来るようになる。そしてこのジャケットを着た人間を能力者は支配し、着用者の体を乗っ取ることができる。

 

そんな一見強そうに見えるジャケジャケの実ですが、実はこの能力には”致命的な欠点“があります。

 

それは「着るわけがない」ということです。

 

ジャケットとなった人間はその時点で脱力し、ただ着られるのを待つだけの哀れな服へと変貌します。さらに、見た目的にも能力者の容姿がまるまる反映されるため“間違えて着る”といった事故もほとんど起こりません。

 

また、この能力のキモである“人格乗っ取り”も、着用者の身体能力を最大限発揮できるだけの理解力がなければ意味がありません。そもそも能力者が好戦的な性格でなければジャケットを着せたところで単なる“弱体化”にしかならないのです。

 

それが、最弱の悪魔の実筆頭“ジャケジャケの実”なのです。

 

……と、冷静になるためにセルフ解説をしてみて改めて思う。

 

バカじゃん。と

 

マジでこの能力考えた奴誰?責任者出てこいよ。誰だよ大昔に“ジャケットになりたい”とか考えた奴は。お前のせいで数百年後の子孫の人生が終わったんだが?

 

……落ち着け。冷静になれ。まだ絶望するには早すぎる。

 

そうだ。一度使ってみればいい。それから判断すればいい。

 

よっしゃ行くぞ!“ジャケジャケ二人羽織”!!

 

……。

 

なんこれ。

 

やっぱ考えた奴バカだわ。聞いてるか?尾○栄一郎。

この俺の哀れな姿を見てみろよ。

 

「あれ?師匠?例の悪魔の実は──って、何やってるんですか。ヒナ軽蔑です」

 

とかなんとかやってたらヒナちゃんに見られた。

 

死にたい。

 

 

16歳になった。2年前のルフィよりも一個年下だ。いや、新世界編時点から数えて2年前って意味で、今からだとむしろ全然未来の話になるんだが……まぁそれはどうでもいいか。

 

俺の階級は“大佐”となった。2年前、もとい未来のスモーカーと同じだな。2年前スモーカーと今の俺って、実際戦ったらどっちが強いんだろうな?“今”のスモーカーとはちょくちょくやり合っているが、負けたことはない。当然だ。相手は“覇気”なし。同年代にいいようにやられてるんじゃ“大将”は夢のまた夢だ。

 

実際、役職的には“大佐”だが、すでに中将の一部とも互角に渡り合えるくらいの実力は身についてきた。しかしそれでもまだ足りない。今の大将。後の元帥であるセンゴクさんに俺は逆立しても勝てるビジョンが見えない。あの人マジ強すぎだわ。ガープ中将も大概化け物だが、この人も相当だ。

 

あぁ、あとそろそろロジャー処刑&大海賊時代の始まりという一大イベントがやって来るな。ロジャー海賊団にも何度か挑んだが、やっぱアレとか白ひげは化け物だな。全く歯が立たなかった。自分の実力不足を痛感するばかりだ。

 

ただ、そんな風に海賊に挑みまくっていたからだろうか。俺は奇妙な異名で呼ばれるようになっていた。

 

曰く“化け皮(ばけがわ)”と。どんな名前やねん。絶対能力だけで言ってるだろ。舐めやがって。

 

そんな風にバカにしてくる奴は、オラ!こうしてくれる!オラ!オラオラ!投了しろオラ!

 

うっし、今日も平和だな。

 

 

……俺は、どこにでもいるちんけな海賊の一人だ。

 

借金で首が回らなくなって、海に逃げて、そのまま海賊に転落した。

 

そんな俺は今、海賊として“死”を覚悟している。

 

俺に“死”を感じさせてやまないのは、今俺たちの海賊船に一人で乗り込んできて大暴れしているイカれた海兵だ。

 

“化け皮”と呼ばれるその海兵。本当の名は誰も知らない。だが、とてつもなく強いという噂だけが風に流れて聞こえてくる。

 

だというのに、そいつの顔も、戦い方も、声も、一切が不明。正体不明の災害のような海兵。それが“化け皮”だ。

 

そして実際にその戦いぶりを見れば、なぜそんな噂が立つのかもわかる。

 

“見えない”のだ。仲間が確かに次々と倒れているはずなのに、“化け皮”の姿が見えない。どういうわけか、味方が同志討ちし合ってどんどんと数を減らしている。

 

“同士討ちさせる”。それが奴の能力なのかと思ったが、味方が同士討ちし合っている間にそれを周りなら見守っている別の仲間が倒れた。そしてその仲間がまた味方に襲いかかる。

 

意味がわからない。何が起きてるんだ。

 

俺は甲板から逃げ出し、船の奥の船室に閉じこもった。

 

膝を抱え、震えることしかできなかった。

 

「……おーい、開けてくれよ」

 

どれだけ時間が経っただろうか、不意にそんな声がして、俺はハッと顔を上げた。

 

「もう海兵の奴らは居なくなったよ。全員始末したと思い込んじまったらしい。残ってるのは俺とお前だけだ」

「ほ、本当か?」

 

それは、俺が最後まで馴染めなかったこの船で唯一“友人”と呼べる男の声だった。

 

良かった。生きていたんだ。

 

「とりあえず鍵開けてくれよ。顔見ないとお前かどうかもわからねェ」

「そ、そうだな。待ってくれ。今開ける!」

 

俺は心底安堵して、扉の錠を開けた。

 

そして、ドアノブを捻って部屋の外に出る。

 

「にしても、よく無事で──」

「ばぁっ」

 

そしてそこに。

 

“顔のない男”が立っていた。

 

「うわあああああああぁぁぁぁっ!!!!?」

 

……数秒後。

 

遅れて乗り込んだ海兵の証言によると、その“海賊船”は“幽霊船”に様変わりしてしまったように静寂に包まれていたという。

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