ジャケジャケの実の海兵   作:ぷに凝

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ジャケットにもジッパーはあるんだよな

俺が考案したジャケットの“半脱ぎ状態”。これには大きな弱点が存在する。

 

「“(デザート)”……」

 

相手が互角以上の強さだと普通に見切られて通用しないってことです!!

 

「“(イーグル)”!」

「どぉわぁぁ!!?」

 

というわけで俺のジャケジャケの能力は早々にミホーク相手に完全に産廃能力と化しました。ガッデム。

 

「はぁ……!クソッ、マジで剣士が遠距離攻撃すんなよ……!!」

「“攻撃範囲”が見た目通りの間合いだと思ったか?」

 

なんか言ってる!!

 

俺の知ってる限り、剣ってのは間合いの内側しか攻撃できないはずなんですけどね。なんか当たり前みたいに剣ビーム飛ばしてきてるけど。

まぁそもそもワンピ世界で間合いとか攻撃範囲みたいな常識的な価値観が通用するとは思えないしな。必殺技出してドン!!ってやった方が強い。

だけどドン!!が出来るような必殺技、俺は持ってないんだよなぁ。当たり前じゃん。我ジャケジャケの実ぞ?実質的に海っていう弱点が増えただけの一般人だぞ?

 

て言っても、能力なしでも強い奴なんていくらでもいるしなぁ。目の前のこいつに、ロジャーに、シャンクスにゾロに……。能力がないからと言って、それが弱いことの言い訳にはならない。んなことは分かってる。

さて、どうしたもんか。このままやってても埒が空かない。最初は遠距離からピストルでちまちまいやらしく攻撃したろうかなと思ったが、相手の方が遠距離火力が高い以上は下策も下策だ。

 

ここは攻める。

 

「やはりそう来るか」

「!」

 

ミホークの構えが変わる。それ絶対持つとき邪魔だろっていう十字型の刀の鍔部分を肩にかける構えだ。これは確か見た覚えがある。ゾロの“三・千・世・界”に対して繰り出した技だ。

 

「くっ……!」

「むっ」

 

どんな技かわかっていればこれほど避けやすいことはない……とか思ってたら普通に腕斬られたでござる。うーん無理!w

だって太刀筋が全然見えないんだもんよ。気づいたら斬られてるんだワ。これが。

 

「……驚いたな。腕を切り飛ばすつもりだったが」

「多分おれの方がびっくりしてるよ……」

 

いやー、やっぱ違うもんだな。

ガープさんとかロジャーとか白ひげとか……レベルが違う化け物どもは今までにも何度か見てきたが、ひょっとしたら歳の近いミホークならワンチャンいけるんじゃね?とか考えてた数秒前の自分をぶん殴りたい。

才能なんて言葉で片付けていいのかわからないが、実際そうとしか言いようがない差がミホークとの間にはある。原作知識と前世の経験があってもこんなものだ。

どうすっかなー。殺されたりはしないだろうと踏んで大人しく投降するか?アリかもな。ここは一旦引いて、充分レベルを上げてからまたいつか会った時に挑戦するとか……。

 

「し、師匠……」

「……む」

 

その時、俺はふと気づいた。

 

倒れている海兵たちの中に……頭から血を流していたヒナちゃんの姿があったのだ。あいつもミホークにやられてたのか。

 

「師匠、なら……アイツにも……」

「……」

 

おいおい。そりゃ買い被りってもんだろ。

 

確かにヒナちゃんの前ではカッコつけて先輩ぶってたけどな。俺はどうしたって凡人なんだよ。天才とか英雄の類じゃないんだ。

ヒナちゃんはまだ10代も半ばのガキだから気づいてないだけかもしれないけどな。俺の中で“黒檻のヒナ”って言ったらあのドSお姉様キャラだったから、最初見た時はただの女の子でびっくりしたもんだが。

 

そういえば、いつだったかまだ海兵に就任したての頃に海賊に攫われかけたヒナを助けてやったことがあったっけ。そのせいでヒナちゃんには必要以上に英雄視されてる節がある。

 

そうか。ヒナもミホークにやられてたか。

 

「……」

「ようやくやる気になったようだな」

 

うるせェな。

 

弟子が世話になった分お返ししなきゃいけなくなったってだけだよ。

 

「“ジャケジャケ”……」

「!」

「“二人羽織”!」

 

“剃”。と同時に“ジャケジャケ”発動。

側から見ればフニャフニャになった俺が空を飛んでいるように見える間抜けな絵面だが、これが俺の十八番だ。ただし……。

 

「能力者か。だが……」

 

こいつには通用しない。見切られて終いだ。

ミホークが剣を構える。何の技かは知らん!知ってても見えないから意味ないしな!

 

だからお前が何をしようと関係がない戦術を思いついた。

 

「“解除”」

「……なに?」

 

ジャケット状態の俺ってのは随分軽くなるもんでな。高速移動しながら使うと、風にあおられて宙に浮き上がるんだわ。当然視線は上を向く。じゃあその状態で能力を解除するとどうなる?

風で空に浮き上がった俺が、次の瞬間には重力に従って地面に這いつくばってるというトリックだ。何度も通用するもんじゃないが、一瞬でも見失えば勝機が……!

 

「下らない小細工だ」

 

……とか思ったらめちゃくちゃこっち見られてるー!!動体視力がよろしいんですね!!

っていうか、今思ったけどこれ普通に“見聞色”でバレるじゃん。え?ガバガバ?バカすぎな?

 

【悲報】俺さん、ガバガバ能力とガバガバ作戦でミホに敗北。

目の前に黒刀の刀身が迫る。あーこれ死ぬ奴?死ぬ奴か。死ぬなぁこれ。

 

……まだ死ねないだろ。

 

「“ジャケジャケ”……!」

「無駄だ。その能力はすでに……」

 

……唐突に思い出したんだが。

 

ワンピとは違う漫画で、“ジッパー”の能力を持ってたキャラがいたんだよな。ジッパーの能力って何が強いの?とか思ってたらこれが意外と多彩なことが出来る能力で驚いた記憶がある。腕をジッパーに変えてロケットパンチにしたりしてな。

 

ジッパーでさえそんなに強い能力になるんだから、一見どんな弱い能力にだって強くなれるポテンシャルはあると思うんだよな。例えばジャケットにだって……。

 

「“緊急回避”」

「……!?」

 

“ジッパー”はあるんだよな。

 

俺だってジャケジャケの能力をなんとか使えないかと試行錯誤していたんだ。ジャケット状態になる際、“ファスナー”の位置を自由に調整することができるくらいにはな。

そして、ジャケット状態になるにしても、全身がジャケットになるのではなく、腕や足など、一部だけをジャケットに変える練習もしてきた。今までずっとやりたくても出来なかったことだけどな。

 

この土壇場で出来るようになるとは。

 

ミホークの刀身に沿うようにジッパーを出現させ、俺は攻撃を回避した。

 

目の前には大きく攻撃を振り抜いた姿勢のミホーク。懐に入った俺。このチャンスを逃したら二度とこの間合いには入れない。ここで決める。

 

俺は腰の鞘からサーベルを引き抜き、居合の要領でそれをミホークの首筋へと──。

 

「どぉっ!!?」

 

振り抜く瞬間、横腹に強い衝撃が走った。

 

「……今のは危なかったぞ。海兵」

 

“蹴り”だ。

 

こいつ刀を振り抜いた勢いのままに、右足を重心にして俺の横腹に蹴り入れやがった。どんな判断力だよ……!

ってかお前剣士だろうが!蹴りとか使ってんじゃねェぞ!!ケリケリの実の全身キック人間やめろや!!

 

「くっ……」

 

距離が離れた。俺の攻撃が届く間合いが遠のいた。

 

「……まだだ」

 

だが離れたならもう一度近づけばいい。まだ死んじゃいない。何度でも別の方法で……。

 

「あっ、ぐ……!?」

「……無理に体を動かすな。さっきの一撃は骨までダメージが入った。呼吸するだけでも苦しいだろう」

「うるせェな……敵に心配される筋合いねェよ……!」

 

骨がなんだ。そんなもんはかすり傷だろう。ここでこいつをやらなきゃ……。

 

「……潮時だな」

「あ?……あ」

 

ミホークが突然、俺から視線を外して海の方へ視線を向けた。

釣られて俺もミホの視線を追ってそれを見つける。

 

海軍の艦隊だ。

 

「時間をかけすぎたな。勝負はここで預けるとしよう」

「……そうかよ」

 

……正直助かった。

 

このまま戦ってても勝機は薄かったしな。へっ、今日はこの辺りで勘弁してやるぜ。帰って農業でもしてな!!してください。

 

「貴様のことは覚えておこう。名はなんと言う?」

「……海賊に教えてやる名前なんかねェよ」

「フッ。そうか……ではな」

 

こんな化け物に名前覚えられてたまるか。正直もう二度と会いたくない。

 

ミホは俺に背を向け、海に飛び込んだかと思ったら……そのまま棺を模ったボートに乗り替えて海の彼方に消えていった。

……あいつマジであんな海を舐めきった小舟で来たの?なんならルフィが最初に乗ってたボートより余程ショボいぞ。実はお前世界最強の航海士だろ……。

 

「はぁ〜……」

 

ミホの姿が見えなくなったのを確認して、俺は大の字に倒れた。

 

改めて、この世界ハードすぎんだろ……。

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