翌日
昨夜2人から『避難訓練』がどういったものなのかこんこんと説明された。主な趣旨は「完全実力主義」の第9学区の学校に入学した生徒は教師を下に見る生徒が多々いるらしく、そんな
不審者役は教師、1年生は教師から逃げながら複数あるゴールに各自集まること、教師に挑むのも良し、だがその際は
補給ポイントもあるらしく毎年保健室と決まっているそうな。
1クラスずつ自分たちの教室からスタートし、それぞれ独自にゴールを目指すのが通例のようで。
「ようは鬼ごっこってことだよねぇ」
現在2階、智沙音は中央階段の踊り場で不審者役教師が西階段を出て連絡用通路に向かうのを確認していた、ちなみに1人である、何故か他のクラスメイトと一緒にいたはずなのに気付いたら1人で行動していて内心焦って頭を抱えている智沙音であった。
(なんで…なんで単独行動になってるのか分かんない!)
嘆いていても仕方がないので今のうちにとゴールの1つである体育館に向かうため、西階段を降りようと立ち上がろうとしたら肩を掴まれバランスを崩してしまった。
「んにゃっ!…んぅっ!」
壁に押し付けられて口を塞がれ、いきなりの衝撃で閉じていた目を開けると演劇部の部長が目をギラつかせて吐息を感じるほど顔を近づけていた、昨夜の様子とはまるで違う、獲物を見つけた獣の様に息を荒くして今にも喰われてしまうと冷や汗が止まらなくなる。
「この時を…この時を待ってたんだ…はぁっ、ひどいじゃないか、こんなにも君を想っているのに……君は気付かないどころか僕を拒否したっ」
何を言っていいるのか理解できない。そんな事よりも早くここから離れたいのに震えが止まらなくて動けない。
「はぁっ、はぁ…いい加減気付いてくれないかなぁ…僕と君は運命の赤い糸で結ばれてるんだって事を…あの虫の死骸だってそうだ君に気付いて欲しかったからああするしか無かったんだ分かってくれるよね?」
動けないことに気付いたのか智沙音の足に手を這わせ、ゆっくりと上に上にと撫でまわして来て気色悪さで鳥肌が立つ。
「ぅぅぅ~~~~っ!!??…っ!~~~っ!!」
危機感を感じて口を塞いでる腕を振り払おうとするが、さらに強く壁に押し付けられて息が詰まって酸素が足りなくなって頭がぼーっとして抵抗する力が弱まっていく。
「あぁ…僕の知らない下着だ…ということは三日前に買った物かな?もっと僕に見せてほしいなぁ、ふはっ、はははははははは!」
(やだ…やだぁ…誰か、だれか…たすけ、て…)
耳鳴りが頭に響く、キーンと鳴り響く音の中にかすかに足音が聞こえた気がしてかろうじて目線を階段に向けると、長身、金にも近い茶髪で、暗い闇の底のような目をした
学園都市レベル5第2位、垣根帝督がそこにいた。
「はははは・・・は?」
「あぁ?」
「なっ、なんで…!?」
押し付けていた腕が緩む、足りなくなった酸素をせき込みながら絞り出すような声で願った。
「…た、すけ、て…」
目の前にいた獣が吹き飛ばされた。