「がっ…!」
蹴飛ばされ廊下に転がり突然の大物が現れた事に動揺を隠せない。
そもそもこの傍若無人のエリートが少し関わった程度の女を助けた事さえありえない事だ。この男が彼女の荷物を保健室に運んだ噂はすぐに広まったので知ってはいたが、その程度の関係性で、たった一言の「たすけて」でこんなにもすぐ動けるのが意味が分からなかった。
「なんでだ…あんたは
「…あ?そんなもん教える義理がどこにあんだよ、大体だ。なんだはこっちの台詞だボケ」
「胸糞わりぃもん見せやがって、何様のつもりだテメェ」
垣根は恐ろしいほどに不機嫌になっている、相手はレベル5、打ちのめそうなど自殺行為にも等しい、だとしたらできることは1つ。
人差し指を顔の前に立て西階段の方向へと指さした。すると垣根は西階段へ顔を向け一歩足を動かそうとしたのを見てストーカーはほくそ笑み西階段とは逆の方向に走り出した。
視線、意識。もっと直接的に干渉すれば指向性だって操作することができる。これが僕の能力、いくらレベル5とはいえ隙をついてしまえば逃げ出すぐらいの事はできるはず!
(今だっ!)
が、進まない、足は動いているなぜ動かない。まさか摩擦係数を操作しているのか?しかしどうやって!?
「くっそぉ…!?」
「ナメてやがんなお前」
首を掴まれ逃げられない、完全に詰んでいる状況にもかかわらずやけっぱちにもう一度能力を行使しようと無理やり垣根と視線を合わせるが効いている様子がない。
「…効かないっ!?」
「精神系の能力だろうが、1度見ちまえば対処可能なんだよばーか」
「ミスディレクション、かまたはその逆の応用か、この学校なら重宝されるんだろうが俺に通用するかどうかは別の話っつーのはお前の頭ん中にはなかったみてぇだな」
「ここは既に俺の世界だ、雑魚の悪足掻きが通用する世界じゃねぇんだよ」
ストーカーを引きずりながら悠然と窓に近づき。
「おら」
背後からの衝撃と共に暗闇が訪れ、なんとか目を開けると青空が視界いっぱいに広がっていた。
――――
叫び声が遠ざかり何食わぬ顔で用はないと立ち去ろうとするが、袖をグイっと引っ張られ、嫌な予感がして視線を移すと子供みたいな泣き顔で離れまいとがっつり袖を掴まれていた。
「……………離せ」
「おいてかないでぇ…」
「ふっざけんな!助けてやったんだから後は自分でどうにかしろ!俺はこれ以上の面倒事はご免なんだよ!」
「やーっ!やぁーっ!!」
拒否をすればするほど癇癪のボルテージが上がっていく、引き離そうとするが絶対に離れるつもりがないのか引きずられながらしがみついて来る。
「クッソ…さっきからしがみつきやがって、いい加減立てよお前」
「腰が抜けて立てないのぉ…ヒック…うぅ」
頭痛がしてきた。正直な所なんでこの女を助けたのか自分でもよく分かっていない、ただ見た瞬間不愉快でたまらなかった。
「1人にしないでぇ、ふぇぇ…」
(何なんだこいつ…)
さっさと見捨てればいい、なのにどうして、胸がざわつく、心がかき乱される
「だぁーっ!クソったれ!」
こうして押し問答している間にも騒ぎを聞きつけた教師がここに集まって来る、ただでさえ付き合っていられなくなって帰ろうとしていたのに元の
力任せに肩へ担ぎ上げ、不本意だと階段を上がっていく。
「んにゃっ!?はぇ?」
「いいか、仕方なくだからな。窓から投げ捨てられたくなきゃ大人しくしてろ」
面倒事を回避するため仕方なく、と目を逸らしながら足を進めていった。