ガラッと足で扉を乱暴に開ける。
垣根が智沙音を担ぎ上げてやって来たのは4階の使われていない空き部屋、中に入ると少しだけ埃っぽい、外では教師と交戦している派手な音がここまで聞こえて来ている。ご苦労なこったと空き部屋へ一歩踏み出した。
縦長の部屋の奥に黒いソファとデスク、スチール製のキャビネット。部屋自体はあまり使われていないようだがどこか整頓されている、ここは垣根のもう1つのサボり場、元々生徒のサボり部屋と化していたようだが無理やり垣根が乗っ取った。
さてわきに抱えたこの少女、なぜ助けてしまったのかなど今更考えてもやり直せないので。
とりあえずソファにぶん投げることにした。
「にゃぅっ!」
乱暴にソファへ仰向けに投げ出された、もう少し丁寧に下ろしてほしい。
「もうすぐこのクソイベントも終わるだろ、それまでだ後はセンセイにでも
デスクチェアの背もたれに体重を預けそっけなくしているのに、なぜだか目が離せない。どうしてだろう、ずっと、見ていたい。
「ねぇ垣根先輩、どうして助けてくれたんですか?」
「あ?…つか何で名前知って……あぁ、あん時のクソガキかおまえ」
「先輩が荷物持って来てくれた後、質問攻めで大変だったんですよ」
知るかとぶっきらぼうに返されてしまった。それでも、もっと、もっと知りたい…話していたい。傍に、いたい
垣根先輩の周りがキラキラしてる、何でだろう、さっきまで感じていた恐怖はどこに行ったんだろう。
「あ、あの…なんであそこに来たんですか…?」
「…おまえ知らねぇのか、この時期になると問題児がどれだけ生き残れるか上級生で賭けやってて…はぁ、巻き込まれたくねぇんだよ」
「なんですと…?」
下級生が頑張っている光景を賭け事にするのは少しもやっとする。不謹慎な。
「うざってぇにも程がある」
「それで、サボろうとして…。ふむふむ」
しかしそれだけだとなぜB棟に所属している垣根がA棟にいるのか説明になっていないが、それよりも運が良かったと言えば聞こえは良いがあのままだとどうなっていたかと想像すると鳥肌が立つ智沙音、身震いしこの後あの2人になんて言い訳をしようかと頭をひねっていると影が差し込んできた。
「おまえ、襲われたってのに余裕だな」
「…え、へへ…先輩が傍にいるからですかね?」
「……………」
覆いかぶされたのを笑って返すが表情が読めない。怒らせてしまったのだろうか。
智沙音は垣根の瞳を見る。深い闇の底をすくったような暗い目。体の周りはきらりと
「………きれい」
ほろりとつぶやいたその言葉に垣根は苦虫を噛み潰したように顔を歪ませていた。
「せん、ぱい…?」
「何なんだよ…チッ」
苦しそうに舌打ちをし立ち去ろうとする垣根の腕を智沙音は
「離せっ!」
「ま、まってせんぱ」
学校全体に『避難訓練』が終了したアナウンスが鳴り響く。
乱暴に腕を振りほどき彼は出ていってしまった。
「怒らせちゃった…」
いつの間にか起き上がれるようになっていた。だけどもその場から動けず両足を抱えうずくまる、もっと一緒にいたかった、と。
「これが、だれかを好きになるってことなのかな…先生」