「えぇ、今の所は順調かと。」
『それならいい、いやはやまぁこうもうまくいくとはね、さすが智沙音君だ。相性が良かったね』
電話から聞こえてくる軽薄な声に多少の不快感を覚える保険医。日も落ち始めるこの時間に冷めた声色と皮肉な言葉が静かな保健室にあふれて来る。
相も変わらず何を考えているのか読めない男だと保険医はつくづく思う。最初に聞いた
「それよりも、
『うん?いやなに、プレゼントだよ。それに彼もいつまでもほっとかれてはかわいそうだろう?せっかくの
電話の向こうから声とは別にキコキコと音がする。
「アレイスターの逆鱗に触れませんかそれ?」
パソコンの画面に監視カメラ映像が表示されている、今近寄られたら余計な仕事が増えてしまうそれは面倒だ。
目を細めながら保健室に誰も近寄っていないことを確認する。
『今は
「
『さあねぇ…詮索もほどほどにね、覗き屋は早死にする』
話をふったのはお前だろうとイラっとしたが深呼吸をする、保身のための交渉材料はいくらでも欲しいが踏み込み過ぎると消されるのが暗部の世界だ。
「それであの子どうするんです?もう使い物になりませんよ」
『彼の役目は終わったよ。端数さんがぜひにと言っているし、こちらで引き渡すよ所定の位置に運んでくれ』
千羽智沙音のストーカーになるよう設計され、尚且つAIM
かわいそうにと心にもない事を思う。短い人生とはいえ
(まぁこうなると思って車に運んでいるけど)
荷物をまとめて保健室を出てヒールの音を鳴らしながら駐車場へ向かう。
道中に他の教師に挨拶をしたり、不釣り合いな世間話をしながら。
「そういえば今日の夜、雨が降りますね
『おあつらえ向きだねぇ、じゃ、後はよろしく』
通話が終わる頃には駐車場についていた。
確認のため車のトランクを開ける。中には体を丸めさるぐつわに目隠しをさせられた演劇部の部長、もといストーカーがいた。
廃人のようにおとなしくしているのは、人格の矯正に釣り合わない技術を脳に押し付けて不安定だった所にAIM拡散力場からの強烈な干渉、壊れるのは目に見えている。
「人格をいじくられると壊れやすくなるのは難点よねぇ、ご愁傷様」
トランクの蓋が無慈悲に閉じられる。するとタイミングを見計らったようにメールが届いた。
『千羽智沙音の回収及び
面倒なことになったと保険医は舌打ちした。