とある初恋の夢物語   作:凪子22

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「~~~~!!ふわふわ!とろとろ!ふわとろ~…」

ところ変わってとあるビルの6階にあるカフェレストラン、垣根は白身魚のアクアパッツァを黙々と食べ智沙音は街を見渡せる景色にわき目も振らず目の前のオムライスに夢中だった。

「気に入ったかよ?」

「うん!ホワイトソースとチキンライスの味がケンカせずにすごくマッチしてて、卵もドレスみたいにクルクルーって。そしてふわとろ!」

「ソースにハーブ入れてるのかなぁ?何だろう、タイム?オレガノ?」

「気に入ったかよ」

「…じーーー」

智沙音の目線が垣根の手元へ集中している。こうも熱心に見つめられると食べにくい、興味の視点があっちへこっちへとせわしない奴だ。

「先輩って乱暴な物言いの割にテーブルマナーとか所々の所作が丁寧ですよね…意外……別人みたいに店員さんと話してたし」

「喧嘩売ってんのか、こんなの基本だろ。実力があろうが身だしなみ、言動を雑にしちまえば相手側からは下に見られるわ舐めた態度をとるわで癇に障るだけだからな」

それが大人相手なら尚更の事。()()をするうえで無くてはならない嗜み程度の認識で身に着けていたが、日常生活から煩わしいトラブルを回避するのに役に立っていた。

「でもあたしには見せてくれませんよね?」

「今更外面取り繕った所で手遅れだろ、なんだよ昨日あんだけ好きだなんだわめいたくせに他人行儀の方がご所望とはなぁ?」

「!!!ち、ちがくて!そうじゃなくて!!いじわる!せんぱいのいじわる!」

「行儀が悪いぞ」

わざとからかってみたら智沙音は顔を真っ赤にしてこちらを睨み付けてきた、その後も口をとがらせて拗ねる彼女を見て垣根は頬を緩める。

ふと、普通の学生の様に談笑している自分に疑問を持つ。

 

そもそも垣根にはゆずれない望みがある「アレイスターとの直接交渉権を手に入れる」ゆえに平穏を捨て暗部へと自ら乗り込み今も画策している。

表の顔と裏の顏を使い分けている自分にとって表側はただの飾りなのに、何故この女にだけは素のままを見せられるのか? こいつに気を許しているからか? いや、それにしてはおかしな点がある。

昨日から千羽智沙音に対する垣根自身の気持ちがつかめない。どうしてこうなった?何故こいつに手を差し伸べた、その謎がとけない限りは永遠に自分はこの曖昧な関係を続けることになる、そんなのは真っ平御免だ。

『自分の中にある彼女の存在を認めればいい、そうすればこの気持ちに整理がつく』

 

(――あ?)

垣根はそこである事に気付く、今自分が何を考えたかを。

(おいおいおいおい、どうした俺っ……!)

「先輩?」

問いたださなければならない、静かに入り込んだ変数について。

「お前、強度(レベル)はいくつだ」

万が一、万が一にでも超能力者(レベル5)に届きうる可能性があるとしたら大能力者(レベル4)並みの強度が無ければ理屈が成立しないのだが帰って来た返事のせいでさらに分からなくなってしまった。

強能力者(レベル3)ですけど…?」

 

――――

 

垣根の視線が鋭く刺さる、何か気に障るようなことでも言ってしまったのだろうか。

「――――――どうなってる…」

垣根は視線を智沙音から外し顔を俯かせると呟いた、どうしたのだろうと小首を傾げる智沙音に垣根はまた一つ質問を投げつける。

「どの系統の能力だ。研究施設にはいたのか」

書庫(バンク)を使いたいが今はそれどころではない。嫌な予感が当たれば書庫(バンク)の改竄もあり得る。

「?えっと…能力名は『AIM読取(メトリー)』で10歳か11の時にはもう施設で過ごしてましたけど…」

「どこの研究施設だ、何の研究してた」

突然の垣根の質問に智沙音の頭はついていけない、なぜなら垣根の目は警戒心にあふれていた

「え…っとたしか能力開発と他人の能力の出力底上げ…」

「出力底上げ?」

目つきの鋭さがさらに増した気がした。

「う、えっとぉ『先生』が言うには、AIM拡散力場を介して『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』に干渉すれば出力も上がって無能力者(レベル0)の人たちが能力を使えるようになるんじゃないかって…」

強能力者(レベル3)でそこまでの干渉と改竄をするには強度が足りなさすぎる、それこそ超能力者(レベル5)と同等の強度が必要な話だぞ」

『先生』がそう言っていたのだから何もおかしなところはないはず…なのに、どうして、どうして昔の記憶が、『先生』の顔が曖昧なのだろう。

スプーンが手から零れ落ちる、思い出そうとしてももやがかかったかのように視界がぼやけてる。先生は言っていたはずだ研究が進めば無能力者(レベル0)の人たちを救える、それにはあたしの能力が必要不可欠で…それから、それから?

昔の事を思い出そうとすればするほど目の前が霞んでいく、無機質で真っ白な子供部屋にひとりぼっち物を見るような大人の目、ぼやけては消えていく『先生』の表情。

「えっとぉあれ?おかしいな、待ってくださいね今思い出しますから本当なんです、嘘じゃなくて…えぇ?」

 

自 分 は い っ た い 何 者 な ん だ(千羽智沙音は本当に存在するのか)

 

「もういい」

垣根は床に落ちたスプーンを拾い上げ予備のスプーンを使うように促す、そんな事よりも「もういい」と言われたことでさらに焦りを募らせ拒絶の言葉を向けられ嫌われたという事が脳内を埋め尽くす。

「ち、違うんです…ほんとうなんですうそじゃなくて…」

自己の認識が揺らいでいる中、かすかな希望は垣根に対する恋慕だけそれすらも嘘になってしまったら智沙音は壊れてしまうだろう、垣根はそんな壊れかけの少女の頭を撫でた。

「落ち着け目立ってんだよ…。それと昔のことは忘れろお前はもう研究所から出てんだ、希望だの青春だのに目を光らせて平穏に過ごせばいいんだよ」

垣根は座りなおして食事に手を付ける、少し冷めている。

「……きらいになってない?」

「惚れた腫れたは趣味じゃねぇ」

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