とある初恋の夢物語   作:凪子22

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第17話

ナメていやがると垣根は内心憤慨する。智沙音のうろたえ様と記憶の混濁、極めつけは()()()()()()()()()()()()それはこの街の闇に少しでも触れた事のある人間ならすぐに分かるろくでもない実験の弊害(へいがい)だと。

(しかしまぁ、()()()()()()()()()()()()()()

 

(俺を巻き込みてぇが為に悪趣味な人形まで用意しやがって、今度は何をさせるつもりだクソ上層部ども…!)

何の意図があってこの少女を送り付けて来たのか不明だが『第二候補(スペアプラン)』の文字が垣根の頭をよぎったことでさらに怒りのボルテージが積み重なっていく。

最初にメニューを見ながら目を輝かせていた時とはまるで別人のように青ざめた顔の智沙音は食後のデザートをキャンセルして未だに震えている。このまま見捨てるか、それとも手を取るか。どちらを選んでも上層部に踊らされるのは分かり切ったことだ。

(これ以上は不毛だな…)

上層部の思惑なんざ知った事じゃない。

 

「千羽」

ビクリと肩を震わせるその姿は歩んできた道のりも帰る家も見失った迷い子のよう。

「ここに来る前に居たのはどこの学区だ」

「……第12学区」

やることは決まった。仮初の平穏は俺には似合わないだがこいつは違う、垣根に日の当たる居場所が似合わない様に目の前にいる少女もまた深い闇の底は似合わない。

 

レストランを出て震える少女の手を取り家路につきながら垣根は智沙音を路地裏に連れ込んだ。

「明日は学校休め、どの道そんな状態じゃカリキュラムどころの話じゃねぇだろ」

「……」

自失茫然、今の智沙音には何を言っても耳には入らないだろう、それでも垣根は続けるこれが一番いい方法なんだと言い聞かせながら。

「千羽、俺達の関係はこれで終わりだ俺に縋るな、前見て自分で歩け」

「いや…いやぁ……」

「だめだ」

いやだと呻く少女を無理やり引き剝がす。

この少女はどこにでもいる普通の学生になるべきだ決して学園都市の闇に染まる人間じゃない、生きる場所が違うだけの同じ穴のムジナなんざまっぴらだ、智沙音が女子寮の門をくぐるのを見送ればただ同じ学校に通っているだけの学生に戻る。

「行け…とっとと帰れつってんだよ…」

急に向けられた殺意に怯えて立ち去るの見届けて路地裏の裏へ暗闇に向かって歩き出す。静かにただ己を殺しながら路地裏の入り組んだ角を曲がる冷徹な視線の先には素人の尾行者が怯えた表情で腰を抜かしていた。

「よぉ」

「少しばかり聞きてぇことがあるんだよ…()()()()()()()()()()()()()()

 

八つ当たりにも見える理不尽な暴力は一瞬だった。

(これでいい…)

連絡先は知らないだが互いの利害関係で暗部への窓口になっている女を知っている、保健室の主を問いたださなければならないだろう。

 

――――――

 

翌日朝一番に垣根は保健室へと乗り込んだ、理由は明白千羽智沙音のルーツ、そして垣根と引き合わせ何をさせようとしていたのかを聞き出すために。

昨日の尾行者を思い出すあの素人によれば…

「お、おれは何もじらないっ!!ただあの女を尾行じで報告するだけのじごどだったんだ!!!本当だ!じんじでぐれぇ!!」

「依頼者は誰だ」

「わ、わからねぇ…しっ、仕方ないだろ!端末でしか連絡とってねぇんだ顔も知らねぇ!女の声だったことしかわかんねげげがががががっ!」

その後哀れな尾行者が1人闇に消えた。

 

無人の保健室を見渡し出直すべきかと考え込んでいるとデスクの上に携帯端末がこれみよがしに置いてある、手に取ると図ったかのように着信音が鳴った。

「はぁい『未元物質(ダークマター)』ご機嫌いかが?」

「名前で呼んでもらいたいもんだがな。やっぱりテメェか」

「こちらとしても時間をかけたくないの、取引しましょう」

 

 

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