とある初恋の夢物語   作:凪子22

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第21話

第12学区、すでに廃棄された研究施設でうなだれる垣根帝督。

(さすがに『先生』とやらの記録はないか…)

保険医から渡されたデータには先生と称される男が所有していた土地と研究施設、そして子供の自由研究に見えるような実験データ、子供の好奇心を満たすような行動と自分に関しては徹底的に隠蔽しようと執念すら感じる矛盾に吐き気がした。

(しかしまぁ、いったい()()()()()()()()()()()()

子供の自由研究、そう言ってしまえばあっけないものだがその内容は実に人という存在を愚弄するものだった。

 

対能力者への強度(レベル)の出力底上げ及び『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』への干渉した際に生じる人格の変化。

学習装置(テスタメント)による記憶の消去又は架空の記憶、技術の定着。

第二次成長期を利用した成長ホルモンの投与、食事制限、運動量の増減による人為的な肉体操作における能力変質の検証、研究。

その他etc.etc…

 

被験者のリストを見ると千羽智沙音だけではなく他にも3人、その中にいつぞやに窓から吹き飛ばした少年もいた。

力ずくで智沙音を探し出し連れ戻すこともできる。だがその後はどうする、たとえ普通の生活に戻ってもあいつは自分のルーツも分からないまま矛盾と疑問を抱え込んで生きていく。

そうすればまた誰かの思惑に利用される。最悪の場合二度と戻ってこれないほど深く暗い闇の中へ沈んでいく。それだけは、絶対に阻止しなければならない。

(似合わねぇんだよ、あいつには)

たとえ仮初の平穏であってもあいつにはお似合いなのだ、自分とは違う。

(……っ、『調整』は済ませたはずなんだがな)

干渉された影響はもうないはずなのに智沙音の笑顔が張り付いている、笑顔が重なる、ぶれる、守れなかった女の子。羽がきれいと手を差し伸べたあの…

(時間の無駄だな)

これ以上は考えることをやめた。垣根は携帯を取り出し保険医へ連絡を入れようとしかけたがモニターをよく見ると最後の行に不自然な数列があった。

「座標か…」

マップと照らし合わせると場所は同じ第12学区のテナントビル。明らかに後から追加された数列、誘っている。

恐らく保険医も把握していない情報、罠であったとしても乗り込む価値はある。

「踊らされんのも、いいように使われるのもうんざりだ…ぶっ潰す」

 

座標にあった10階建てのテナントビル、いくつかのフロアは使われているようだが今は人の気配はまるでない。

中に入ると1階のフロアは宗教色の強いアンティークショップだった。

「薄気味わりぃ」

蓮の花弁に座した仏を取り囲んだマンダラ模様の掛け軸。

持ち手を中心に二又と三又に分かれた真鍮の骨董品。

どれもこれもうすら寒く不気味な骨董品が陳列されて自然と警戒心が高まる。

6枚の翼を広げ床に刺しこみ振動させ未元物質(ダークマター)を展開する、エコーロケーションの要領で未元物質(ダークマター)と織り交ぜ上の階に人がいないことが確認できた。

問題は下、地下フロアに1人誰かがいる。柱の表面に偽装された扉この中に地下に通じる階段がある、触れると手のひらサイズの円形がへこみ螺旋階段が現れた。

カツン、カツン、足音が響く。下りる、降りる、足元のライトを頼りに暗い穴へと落ちていく。すると先ほどまでのアンティークショップとは一変し薄暗い実験室のような部屋に繋がっていた。

酸素カプセルが規則正しく並びその中に千羽智沙音が眠っていた。蓋を開け脈を図る、生きているそれだけで今まで張りつめていた緊張がほどけていった。

「のんきに寝やがって、くそ…」

膝から崩れ落ちて安堵に満ちた悪態をつく、だけどどうしてこうも物事はいい方向にへ転ばないのだろうか、垣根が安心したのもつかの間警備員(アンチスキル)偽装した部隊を引き連れて苛立った様子の保険医が立ちふさがった。

 

「本当に最悪だわ、あの男あんたが動き出してようやくしっぽを出したと思ったら…そう…そういうことね。ふふっふふははははあっははははははは!!!」

「ぶっ壊れてる最中悪いんだが、そこをどけ。邪魔をするやつは容赦しねぇ」

「いいえぇ!?あなたはここで首輪につなぐわ!捕獲して!」

使()()()()()()()()()()()()()()それだけが望みだったのに、こんな場所で死ぬなんて本当に、最悪)

見覚えのある武装で偽装した部隊が構える、『避難訓練』に使われていた対能力者用の捕縛装備、本当にこの街は虫唾が走る。

智沙音を抱きかかえ軽蔑を込めた声で言い放つ。

「…なんでそんなチンケな装備でどうにかなると思ってんだおいコラ」

超能力者(LEVEL5)をナメんじゃねぇ!!!」

バキンッ!!世界が変わる、偽物の警備員(アンチスキル)は何が起きたか理解できないだろう、何せつま先から頭のてっぺんまで氷漬けにされているのだから。

保険医もそうなると思っていた、しかし氷漬けにされているのは足だけ。

「隠してる事まだあるよなぁ?全部吐け、そうしたら見逃してやる」

「………」

言い淀む、何もかもぶちまけてしまえばこの場はしのげる、ここで死ぬか後で殺されるか保険医が迷っていると垣根に抱きかかえられていた智沙音の体が跳ね上がった。

「……………は」

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