ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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第11章 せめて、人間らしく
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「拉致されたって、冬月副司令が!?」

 

「今より2時間前です。西の第8管区を最後に、消息を絶っています。」

 

「うちの署内じゃない!あなたたち諜報部は何やってたの!?」

 

「身内に内報、および先導したものがいます。その人物に裏をかかれました」

 

「諜報2課を煙に巻ける奴?・・・・・・まさか」

 

「加持リョウジ。この事件の首謀者と目される人物です」

 

 作戦課執務室。葛城さんの部屋でお茶汲み係のアルバイトをしていた僕は、なかなかに衝撃の場面に出会してしまった。

 

 おいおいおいおいおい。加持さんめ。僕になんの相談も無しに何を勝手してるんだ。

 

 これもゼーレって奴らの差し金なのか?だとしても冬月副司令を拉致とは、かなり大胆なことをやったものだ。

 

 

 

 

 

 僕の名前はジョルノ・ジョバァーナ。日系イタリア人。15歳の中学生だ。

 

 出身はイタリアのネアポリス。生まれも育ちもイタリアな僕だが、今は『異世界の日本』にあるネルフという組織でアルバイトをしている。

 

 本職はギャングのボスなんだがな。そこんところ、忘れられてしまっては困る。

 

 ところで最近、不思議な質問をされた事があった。僕の髪の毛の色の事だ。僕の髪は今は金髪だが、昔から金髪だったわけではない。そこんところをシンジ君やラングレーに根掘り葉掘り聞かれたんだった。

 

 結論を言ってしまうと、僕にもわからないってのが本音だ。血のつながった父親が金髪だったこともあって、多分遺伝的なものだったんだろうと思うが。そう返した後のシンジ君もラングレーも不思議がって、三人して首を傾げたものだ。

 

 さて、話は変わって今の僕だが、冒頭にも説明した通りネルフのアルバイトとして、暇を持て余していたので葛城さんの部屋でたむろしてたって所だ。

 

 そこに、ネルフの諜報機関が入ってきたってところで冒頭の会話に戻る。

 

「で、私の所にきたわけね」

 

「ご理解が早く、助かります。作戦課長を疑うのは、同じ職場の人間として心苦しいのですが、これも仕事ですので・・・」

 

「彼と私の経歴を考えれば、当然の処置でしょうね」

 

 葛城さんは諜報員の方々に逆らわず、胸元のホルスターから拳銃を取り出してテーブルに置いた。

 

「ご協力感謝します。お連れしろ」

 

 僕は黙って、ことの成り行きを見守りながら、葛城さん用に淹れていたコーヒーを口に運んだ。いくらなんでもこの流れに逆らうのは、無理があるだろう。

 

 とはいえ、厄介なことになった。なんとかして僕の方でも動いてみたいが。

 

「小僧、手出しするなよ」

 

 やはり、か。黒服連中に釘を刺されてしまったな。

 

 もっとも、そんな脅しで僕が止まると思っているなら大きな間違いだが。

 

「ジョルノ」

 

 そう思って頭の中で色々と考え始めた僕に、葛城さんがキツい視線を送ってきた。

 

 葛城さん。どっちの意味だ?その眼差しは。

 

 手出しするな、という事か。

 

 それとも、後は頼む、という事か。

 

 葛城さんはそれきり何も言わず、黒服たちに連行されていった。

 

 僕はそんな葛城さんを見送ると、改めてコーヒーに口を付けた。甘ったるいカフェラテ。ミルクはテキトーに入れたから味はイマイチだ。

 

「やれやれ。病み上がりなんだがな」

 

 僕も、丸一ヶ月エヴァンゲリオンの中に閉じ込められていたからな。あまり無理はしたくないってのが本音なんだが。

 

「そうも行かない、か」

 

 僕はポケットから携帯電話を取り出すと、さっそく加持さんの電話番号をプッシュした。もちろん電話は繋がらず、電話は留守番電話に切り替わった。

 

 二時間前、か。今から探せば、まだ間に合いそうだな。

 

 残ったコーヒーをぐいっと飲み干すと、僕はとある場所に向かった。

 

 

 

 

「帰れ」

 

「連れないな。冬月副司令の事で来たんですが」

 

「貴様には関係ない。今回の件は全て諜報部に任せてある。さっさと帰れ」

 

 本当にこの髭は、人とのコミュニケーションが全く取れない奴だな。

 

「いいんですか?今ならあんたの言う、僕の不思議な能力とやらで冬月副司令を探せますよ?」

 

「くどい。帰れ」

 

 

 

 

 あれ以上粘っても仕方なさそうだったしな。僕はさっさと碇司令の執務室から退散させてもらった。当てが外れちまったが、何、さして大きな問題はない。

 

 加持さんの事だ。冬月副司令を手にかけるなんて事はないだろう。彼が追い求めているのはセカンドインパクトの真実。それに人類補完計画のキモ、だからな。

 

 だが、何か嫌な予感がするのは否定できない。今まで表立って行動してこなかった彼が、いきなりこんな大胆な事をするだろうか。

 

 おそらくはゼーレ、その命令で動いている可能性大だな。そのゼーレの動きもどこか、加持さんを捨て駒の様に雑に扱っているように感じる。

 

 もし、彼がこの後、命の危機に瀕したなら──。

 

「仕方ない、な」

 

 彼とは同盟を結んだ仲だからな。報酬は彼が得た情報って事で勘弁してやる。

 

 僕も甘くなったな。これもこの第三新東京市に来てからの影響だろーな。

 

 とりあえず、今日のところは赤木博士のところによって帰るか。彼女なら、何か知ってるかもしれない。

 

 そう思った矢先、僕はエレベーターの中で赤木博士とばったり出会したのだった。

 

「あら、ジョルノ君。体の具合はどう?」

 

「ぼちぼちですよ。赤木博士は疲労とか大丈夫です?」

 

「ふふ。私の心配なんてしなくてもいいのよ。貴方は1ヶ月もエヴァの中で溶けていたんだから。無理せず、しっかりと休んでちょうだい」

 

「そう言ってもらえると助かりますよ。ただ、最近暇でしてね。エヴァの修理とか必要無いんですか?」

 

「本当は今の時期こそ、貴方に手伝って欲しいのだけれど、碇司令が、ね」

 

 やっぱりな。あの髭、どこまで仕事に私情を挟むんだ。

 

 僕は赤木博士の隣で、仕方ないと思いつつもため息をついた。

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

「・・・え?」

 

「いえ、なんとなく、よ。気にしないで」

 

「そーゆー言われ方は気になりますね。何が『ごめんなさい』なんですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・あの、サルベージの時の事よ。本来なら、貴方も救助対象だった。それはわかっていたのだけれど、私は、貴方の救助よりシンジ君の救助を優先したわ。何よりもエヴァ初号機を動かせる人材を、失うわけにはいかなかったから」

 

「そんな事ですか」

 

「そんな事って、貴方ね・・・」

 

 まるで咎める様な視線で赤木博士が僕を見つめてくる。隣に並んでいた僕は、どこ吹く風といった感じだがな。

 

「貴女達の事情はわかってますよ。むしろ、僕よりシンジ君を優先してくれて助かりました。僕としては絶対に、シンジ君を失うわけにはいかなかったですからね」

 

「・・・・・・そう。そう言ってもらえると、私も気が楽だわ」

 

「ただ、もし何かをしてくれるってんなら」

 

 まぁ、可愛い交換条件てやつだ。

 

「冬月副司令のこと、何かご存知ないですか?」

 

「副司令の?」

 

「ええ。今、行方不明の」

 

「行方不明!?」

 

 おや。この情報、まだ赤木博士には届いてなかったのか。

 

「ええ。つい先ほど、葛城さんのところにね」

 

 僕は諜報員が葛城さんを連行していった経緯を、簡単に説明した。それを聞いた赤木博士は。

 

「そう。ありがとう、教えてくれて。私の方でも探ってみるわ。何かあれば貴方に連絡する。これでいい?」

 

「ええ。助かります」

 

「これで貸し借りはチャラ、としてくれるかしら?」

 

「もちろん」

 

 そう僕が答えた瞬間、ちょうどエレベーターが止まったところだった。僕は軽く赤木博士に別れの挨拶を済ませたあと、帰路に着いた。

 

 さて。今日の夕食は何にするか。葛城さんはあの様子じゃ帰ってこないだろうし、シンジ君とラングレーも呼んでの夕食になるかな。

 

 まぁ、焦っても仕方ない。むしろ、綾波さんを満足させる量の料理を作る方が僕の悩みの種としては大きい。

 

 

 

 そんな風に、軽く考えていた。僕の考えは、後から振り返れば、甘かったといえるだろう。

 

 

 

 ここから、僕たちの紡いできた物語は大きな変化を見せる。その事に、この時の僕はまだ気付いていなかった。

 

 

 

つづく

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