ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 巨大な換気扇。それが空気をかき回す音が辺りを満たす場所に、加持さんは倒れていた。

 

 僕は加持さんに急いで駆け寄る。加持さんは左胸から血を流して倒れていた。どう見ても致命傷だ。

 

「・・・・・・やあ」

 

 加持さんが、ゆっくりと目を開いた。

 

「迎えに、来てくれたのか・・・」

 

「誰のことを言ってるのかはわからないが、まだ息はあったみたいだな」

 

 加持さんの虚な瞳を覗き込んで、まだ息があった事に僕は安堵し、大きく息を吐いた。

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 僕のスタンドなら、加持さんの傷を一瞬で治す事ができる!

 

 ズギュウウン!と傷が回復する感覚。

 

 ふぅ・・・間一髪、ギリギリセーフって奴だったな。

 

 服は血に汚れたまま。痛みもまだ残っているだろう。だが加持さんは驚いた様に目を見開くと、ガバリと体を起こした。

 

「これ、は・・・ジョルノ君か?」

 

「ええ。僕の『スタンド』です。気分はどうですか?」

 

 加持さんは目をぱちくりと瞬かせると、ふっとニヒルな笑みを浮かべた。

 

「死に損なっちまったな。ジョルノ君のおかげで」

 

「まだ死んでもらうわけにいかないんで。とにかく、あなたが死ぬ前に間に合ってよかったですよ」

 

「間に合った・・・・・・そう、間に合ったな」

 

 加持さんが顔を右の掌で覆うと、ゆっくりと撫で下ろす。よっぽどの修羅場だったんだろう。彼の顔には疲労の色が強く出ていた。

 

「一体、何をしたんです?いや、何が『したかった』んですか?冬月副司令を攫ってまで」

 

 僕の質問に、加持さんは苦笑しながら答えた。

 

「ゼーレの命令さ。ゼーレはこれ以上、碇司令にネルフを預けておいていいものか、その最終確認のために、副司令を尋問したかったらしい。俺はそのための誘拐の実行犯。いつ切られてもいいようなトカゲの尻尾として、最後の仕事をやらせてもらったってわけだ」

 

「なるほど。という事はつまり・・・」

 

 

 

「ああ。ゼーレと碇司令の人類補完計画は一致しない。彼らはすでに仲違いしている。やはり全くの別物だって事はわかったな」

 

 

 

 そこまで話すと、加持さんは小さく息を吐いた。

 

「俺はそのあと、冬月副司令を救出した。恐らくネルフの方が、全ての真実に近い気がして、な」

 

「自分で誘拐しておいて自分で救出するとは。加持さん、あなた死ぬつもりだったな?」

 

 僕の言葉に、加持さんは苦笑しながらも頷き返す。

 

「俺はついに辿り着いた。情報も、すでに葛城には託してある。彼女がそれを見つけてくれるかどうかは、祈るしかないがな」

 

「だからこその、あの留守録か」

 

「聞いたのかい?・・・・・・いや参ったな。あんな恥ずかしい話を聞かれるなんて」

 

 そう言いながらも、ニヒルな笑みを崩さないところを見ると、僕や他の人間が留守録を聞く可能性も考えていたようだな。

 

 まぁ、僕としては加持さん救出に間に合ったのだから、良しとできるが。

 

「とにかく、聞きたいことはまだまだ沢山あるが、とりあえずはここから移動しましょう。また別の追手がやってきても厄介ですからね」

 

「いや」

 

 立ちあがろうとする僕を、加持さんが引き止める。

 

「この情報、俺一人で持っておくには重すぎる。悪いがここで、共有させてほしい」

 

「共有?それは・・・」

 

 

 

「セカンドインパクトの真実。そして人類補完計画の、全貌だ」

 

 

 

 !!

 

 

 

「掴んだのか!加持さん!」

 

「ああ。俺は、遂に真実に辿り着いた。だが、俺には時間がない。今この場で話さなくてはならないんだ」

 

「何を言ってるんだ!あなたの傷は完璧に治した!まだいくらでも時間はある。まずは葛城さんの家まで帰ってから・・・」

 

 そう言う僕の襟元に、加持さんの手が飛んでくる。僕を締め上げ、無理やりにでも話を聞かせようとするように。

 

「ダメだ!ここで聞け!もう俺は『終わって』いるんだ!!」

 

「・・・なに?どういうことだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンチェインマイハート』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 な・・・!

 

 

 

「何ィィイイイイイイイイ!!!」

 

 一瞬。ほんの一瞬だったが!僕の全身に鎖が纏わりつく。その一瞬で、僕の身体は『バラバラになって鎖に引っ付いてしまった』!

 

「そう、俺には『時間がない』。もう俺はここで『死ななきゃならない』んだ。それは俺が『スタンド』に目覚めたときから決まっていた『運命』なんだ」

 

「な、何を言ってるんだッ!早くこのスタンドを解除して・・・」

 

「これはもはや『本能』だ。俺の『本能』が、この場で死ぬ事を望んでいる。俺に抗う術はない・・・・・・俺はすでに、『死を定められた人間』なんだ。それを邪魔するなら、俺も容赦できない」

 

 うぐ!この身体をバラバラにされる感覚、ブチャラティのジッパーを思い出す!

 

 マズい、加持さんがなぜこんな凶行に走るのかは全くわからないが、この状況はとにかくマズい!

 

 これではまるで──、

 

「はッ!?」

 

 僕の目が、暗闇の中に何かを捉えた。

 

 

 

 その巨大なシルエットは、まるで巨大な卵にカエルの手足が引っ付いたような、不気味な姿をしていて。

 

 

 

『デミ・・・・・・デミ・・・・・・』

 

 

 

 ペタペタと湿った足音を立てながら、ゆっくりと近づいてくる!!

 

 

 

「な、なんだ、コイツはッ!」

 

「そいつはゼーレのスタンド使いの『スタンド』だ。『本能』でわかる。俺の脳内で囁く声が教えてくれるんだ。コイツは俺を迎えに来たってな」

 

「迎えに来た!?さっきから何を・・・・・・はッ!?」

 

 目の前まで迫った巨大な影。それは卵型ではあったが、つぶらな瞳と、何よりも全身を真っ二つにして広げるような巨大で凶悪な口を持っていた。

 

「こ、コイツ、まさかッ!?」

 

 僕の目の前で、その巨大な口が大きく開く。

 

「悪いな、ジョルノ君」

 

 その加持さんの言葉を最後に、僕の上半身は目の前のスタンドに食い千切られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はッ!?」

 

 今、確かに感じた。僕の『レクイエム』が発動したのだと!

 

 それはつまり、僕が一度この場で死んだという事実があるという事。

 

 僕の目が、暗闇の中に何かを捉えた。

 

 これは敵の『スタンド』だ!

 

 僕は鎖に引っ付いてバラバラになった身体から、どうにか胸ポケットに手を伸ばすと、そこから『矢』を取り出した。

 

 その矢を、僕の『ゴールド・エクスペリエンス』に思い切り突き立てる!

 

 途端、僕の『レクイエム』が再び発動し、加持さんの『アンチェインマイハート』を弾き飛ばした。

 

「うおおおおお・・・!?」

 

 加持さんがあまりの衝撃に吹っ飛ばされ、壁に激突して苦鳴をあげる。

 

 僕はその加持さんの方を取り合えず放置し、目の前の卵型スタンドに向き直った。

 

「どこの誰のスタンドなのかはわからないし、知った事じゃあないが、お前は危険なスタンドだ。この場で始末するッ!」

 

 僕はそう叫ぶと──!

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアア!!」

 

 『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』の拳を、目の前のスタンドに叩き込んだ!

 

 敵スタンドが脆く崩れ去り、塵となって消えていく。

 

「ふぅ」

 

 僕は目の前の障害を排除すると、小さく息を吐いた。

 

 その背後から──!

 

「悪いな、ジョルノ君!!」

 

 加持さんの『スタンド』が襲い掛かってくる!

 

 僕は一歩だけ後退すると、その鎖状の『スタンド』の動きを躱した。

 

「加持さん。あなた・・・どういうつもりだ・・・・・・?」

 

「悪いがジョルノ君。さっきも言ったが、これは『本能』なんだ。抗う事ができない。俺はすでに・・・」

 

「敵スタンドの術中、という事か?しかし、それなら」

 

 もう、敵スタンドは滅したハズだが・・・。

 

「勘違いしているようだな・・・ヤツは無敵だ。君が『レクイエム』とやらを使おうと、ヤツを止める事は出来ないんだ」

 

「・・・・・・?何を・・・」

 

 そう訝し気に加持さんに問い直そうとした瞬間、

 

 

 

 

 

 

『デミ……デミ……』

 

 

 

 

 

 

 僕の背後から、再び『敵スタンド』の声が聞こえてきた!

 

「な、なにぃぃいいいいいいいいいいいッ!!」

 

 馬鹿な!奴はさっき確かに、僕の『レクイエム』が始末したハズ・・・!

 

 僕は咄嗟に振り返る。そこにいたのは、さっき始末したハズのヤツと全く同じ姿をしたスタンド!

 

 まさか、コイツ・・・!

 

「遠隔自動操縦か!?」

 

「これは俺の運命なんだ。覆しようのない。『本能』が俺に語り掛けてくるんだ。俺は今『コイツに食われなければならない』。それが俺の、そして『パニック・アット・ザ・ディスコ』の定められた能力・・・それを邪魔する事を、俺の『本能』は許さないんだ」

 

 加持さんが自身の右手から『鎖』を発現させる。

 

 ちぃ!まずいな、この状況。

 

 目の前には無敵の遠隔自動操縦型スタンド。そして、そいつの能力なのか、加持さんの言動もおかしい。まるで、このスタンドに「操られている」ような。

 

 2対1。スタンドバトルにおいて、数の優位性は非常に大きい。考えてみれば、敵が二人という状況は初めてかもしれない。

 

 加持さんが『鎖』をギャリンッ!と叩きつける。それを合図に、状況は再び動き出した!

 

 

 

つづく

 

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