ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 ゾンビ蟻、という言葉を耳にした事はあるだろうか。

 

 ある種の菌が、アリの体内に侵入したあとで組織全体を蝕んで成長する。

 

 そして宿主であるアリを木に登らせ、小枝を噛ませることで体を固定する。もはや用済みになってしまったアリが死ぬと、その頭の後ろの部分を破裂させて胞子を雨のようにばらまき、木の下にいるほかのアリたちを狙う。

 

 それだけではなく、そのアリに寄生した菌は、あろう事かその宿主ごとその身を草食動物に食わせ、フンとして排出されることでその生存範囲を広げるという。

 

 その驚くべき複雑なメカニズムを、いったいどう理解したらよいのだろう。菌がアリを“ゾンビ化”させる集団感染現象を、科学者たちは理解できず、永遠の謎として残すのであろうか。

 

 また、地面を這いずったり空を飛んでいたりしたはずの虫が草片、つまりはキノコに変わり果てることがある。

 

 古代中国の人は、その不思議な生き物を「虫草」と呼んだ。その正体は、生きた昆虫に寄生して数日から、長い時には数年もかけてその体を蝕み、あげく殺して虫の体外にキノコをつくる昆虫寄生菌類である。

 

 有名なのは、チベット高原に生息するコウモリガ科のガ幼虫に寄生する種コルディセプス・シネンシス、和名トウチュウカソウだ。冬には土の中で蠢いていたガの幼虫が夏には草片になることから『冬虫夏草』と呼ばれ、さまざまな薬効をもつ秘薬として漢方や薬膳料理で珍重されてきた。

 

 この様に、ある種の菌類が生物を媒体にして成長し、一つの生態系を取る種族が存在する。これは漫画やアニメ、または映画の話ではなく、実際に存在する事実としてこの世に刻まれた真理である。

 

 なんのために?何が目的で?その理由を科学者は解明できていない。とても奇妙な『事実』として、この世界に存在している真実である。

 

 さて、この特色を持った存在が、今、ジョルノ・ジョバァーナの目の前に存在している。

 

 言うまでもなく、加持リョウジに『寄生』したスタンド、『パニック・アト・ザ・ディスコ』である。

 

 彼に『寄生』したスタンドは、彼の脳に働きかけ、『本能』としてある一つの行動を命じている。

 

 すなわち、『卵型のスタンドにその身を捧げよ』というものである。

 

 加持リョウジの意識は存在する。しかし、その意識は『本能』に決して抗う事はできない。彼に寄生したスタンドが、彼の脳における最優先事項を『対となるスタンドに食われる』と定めたためだ。

 

 故に、加持リョウジは攻撃する。自身の『本能』。それが命ずる最優先事項を害するものに、己が全身全霊をもってして。

 

 加持リョウジのスタンド『アンチェイン・マイハート』は、ジョルノ・ジョバァーナに牙を剥いた。

 

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアア!!」

 

 僕の『レクイエム』が、目の前のスタンドに拳を叩き込んでいく。攻撃を受けた敵スタンドは、流砂のようにその身を粉にしてこの世界から消え去っていく。

 

 だと、言うのに・・・・・・ッ!!

 

「くそ!コイツ!」

 

 滅したはずのスタンドが、滅された瞬間に別の場所から復活する!ペタ、ペタと水気のする足音を立てて、暗闇からゆっくりと近付いてくる!

 

 しかもコイツ、さっきから徐々に増えてきている!一匹や二匹じゃあない!すでに十匹くらいまでに増えているぞ!?

 

 この無敵さ!まさしく『遠隔自動操縦型』のスタンドの特徴だ!

 

「〜〜〜ッ!?」

 

 その僕の背後から『鎖』型のスタンドが襲い掛かる!僕はその場から飛び退くことでその攻撃を躱したが・・・、

 

「加持さん!貴方!?」

 

「ダメなんだ、ジョルノ君・・・」

 

 加持さんは『鎖』をギャリンッ!と地面に打ち鳴らすと、そのうつろな瞳で僕を見つめた。

 

「君は大事な『共犯者』だ。それはわかっている。だというのに、俺の中の『本能』が囁くんだ。俺はこの場で死ななければならない、と」

 

 加持さんのスタンドが、再び僕に襲いかかってくる!

 

「くっ!?」

 

 僕は加持さんからさらに距離を置くことでその攻撃を躱した。だが!

 

「クソ!こいつ!」

 

 そうやって距離があいた僕達の間に、卵型のスタンドがずいっと割り込んでくる!

 

 そして、その大きな口を加持さんに向けて広げて──、

 

「無駄ダァ!!」

 

 『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』の蹴りが、卵型のスタンドに命中し、敵スタンドを遠くに蹴り飛ばした!

 

 スタンドと加持さんの距離は開いた!だが、加持さんはその隙を見逃さず、僕に攻撃を仕掛けてくる!

 

「ッ!?この・・・ッ!」

 

 思わず加持さんに向けて舌を打ってしまう僕だったが、許してほしい。スタンドバトルで2対1の状況なんて初めてだ。いや、スタンドの数を考慮したら2対1なんてもんじゃあない。

 

 しかも加持さんのスタンドは一度食らえば負け確定のスタンド能力だ。

 

 一発たりとも受けるワケにはいかない!

 

「加持さん!!」

 

「ジョルノ君・・・・・・」

 

 加持さんはうつろな瞳を向けながらも、僕に対するその戦意が衰える事はない。マジにヤバい状況だ。僕、または加持さんがあの卵型スタンドにやられた時点で、この勝負は負けだ!

 

 どうする!どうすればいい!?

 

「加持さん、答えてくれ!敵のスタンドの『目的』はわかるか!?」

 

 ダメ元だ。加持さんが敵スタンドに操られてる事は明白だ。だがそれでも、僕は一縷の望みをかけて彼に問いただした。

 

 すると。

 

「奴、の、目的は俺を殺すこと、だ」

 

 加持さんは、震える指で、卵型スタンド達を指差した。

 

「俺の頭の中で声がする・・・コイツの名前は、『パニック・アット・ザ・ディスコ』・・・・・・コイツの目的は、あぐッ!?ぐああ・・・!」

 

 加持さんが自分の頭を押さえて地面をのたうち回る。想像を絶する痛みがあるんだろう。

 

 だが、これはチャンスだ。加持さんには悪いが、今の加持さんは隙だらけ。

 

 この隙に、加持さんに近付いて加持さんに触れれば、何かわかるかもしれない・・・!

 

 しかし、その僕の接近を拒む様に『鎖』が飛んでくる!苦しみながらも加持さんは、僕の接近を許さないらしい。

 

「加持さんッ!」

 

「聞け!ジョルノ君ッ!コイツの能力は、『ゼーレの『矢』で貫かれた人間を始末すること』だ!俺の頭の中の声が囁きかけてくる・・・!ゼーレはこのスタンドを使って、ゼーレの裏切り者どもを始末していたんだ・・・うぐ!?」

 

 ノロノロと加持さんが立ち上がる。その背後には、同じようにゆっくりと立ち上がった敵スタンドが、加持さんに向けて大きな口を開けているところだ!

 

 僕は咄嗟に『レクイエム』の指先から『生命エネルギー』を飛ばして敵スタンドにぶつけた。途端に吹っ飛んでいく敵スタンド。

 

 コイツらのスピードが鈍くて良かった。今はそれだけが救いだな。

 

「俺はすでに『寄生されている』んだ!ゼーレの『矢』を受けた瞬間から、俺は既にこのスタンドに『感染』していた!まるでゾンビ蟻のように、俺自身がコイツに食われる事を望んでいるんだ!弱点は『ない』ッ!俺がスタンド能力を発現させた時点で、俺は既に『終わって』いたんだ!!」

 

「ッ!?」

 

 なるほど、そーゆー能力か。確かちょっと昔に似た様なスタンドに会っていたな。ポルポのスタンドだ。ヤツのスタンドも『再点火した者を矢で貫く』というものだった。

 

 なら確実なのは──ッ!!

 

「『本体』だ!加持さん、このスタンドの本体さえ倒してしまえば、この無敵のスタンドは止まる!何か、何でもいい!手掛かりはないか!?」

 

 そう。『遠隔自動操縦型』の弱点は本体がスタンドを自由に操れない事だ。本体さえ見つけてしまえば、このスタンドを無力化するのはワケない事だッ!

 

「ほ、本体は・・・・・・」

 

「ああ!知ってる事があれば、なんでも言って──」

 

 

 

 

 

「本体は、『俺』だ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 な・・・ッ!

 

「何ィィイイイイイイイイイイイイイ!?」

 

「この、スタンド、は、『矢』を媒介に、スタンドに目覚めたものに取り憑くことで、発現、している・・・・・・本体は俺なんだ・・・コイツは、だからこそ『無敵』なんだ・・・!」

 

 な、なんということだ・・・本体はスタンドのターゲットになっている加持さん自身だと!?

 

 加持さんを殺すワケにはいかない!だが、コイツを止めるには、加持さんが死ぬしかないってことじゃあないか・・・ッ!

 

 こんな凶悪な『遠隔自動操縦型スタンド』は初めてだ。マジに無敵だ!加持さんを救う術は無いのかッ!?

 

「はっ!?」

 

 あまりの爆弾発言に、僕の思考が一瞬途切れていた。その隙をついて、加持さんの『アンチェイン・マイ・ハート』が僕にぶつけられる!

 

「しまっ・・・!」

 

 一瞬のうちに、僕の体が再びバラバラになって『鎖』に引っ付いてしまった!

 

「か、加持さ・・・・・・!?」

 

「すまない、ジョルノ君。俺はどうしても『死にたい』。このスタンドに『喰われる事こそ』が俺の幸福の絶頂だ。それを邪魔するというのであれば・・・・・・」

 

「ッ!?」

 

 『鎖』に引っ付いた僕を、加持さんが思い切り振り上げる。グワッと宙に持ち上げられた鎖は、どんどんとそのサイズを縮めていき、

 

「君にはすまないと思うが、俺と一緒に死んでもらおう。『アンチェイン・マイ・ハート』は捕えた獲物を小さくする事ができる。君には、俺のポケットの中で大人しくしてもらおうか」

 

「うおおおおおおおおおおおおお・・・!?」

 

 僕の体ごと、加持さんのポケットに収まってしまった・・・・・・!

 

『デミ・・・・・・デミ・・・・・・』

 

 ポケットの向こう側には、敵スタンドの気配。加持さんは自ら敵スタンドに近付いていっているようだ。

 

 加持さん、マジにこのまま喰われる気のようだな。このままじゃあ、ポケットに入っている僕ごと、敵スタンドに喰われちまうだろう。

 

 

 

「だかようやく、加持さんに近付く事ができた!加持さんに触れる事のできる『至近距離』まで!!」

 

 

 

 僕はポケットの中でバラバラになっているが、問題ない。『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』は今!!

 

 

 

「な!これは!?」

 

 

 

 発現する!!

 

 

 

「ぐああああああああああ・・・ッ!!?」

 

 加持さんの身体に、僕のスタンドエネルギーが流れ込む。『レクイエム』のエネルギーは加持さんの身体中を駆け巡り、加持さんの体内にあったある物を感知した。

 

「まさかあの時の『矢』が、まだ加持さんの体内に残ってたとはな。感じるぞ、その『矢』に取り憑いた邪悪なスタンドのパワーを!」

 

 『レクイエム』のエネルギーが、敵スタンドのエネルギーを『0』に変えていく!

 

『デ!?デミィィイイイイイイイイ!!?』

 

「こーゆーの、除霊、っていうのか?何の因果かわからないが、この世にしがみついているスタンド。今の僕なら、あの『ノトーリアスB・I・G』もなんとかなるのかもしれないな」

 

 敵スタンドの消滅とともに苦しんでいる加持さんが、自分の『鎖』のスタンドを解除したようだ。

 

 加持さんのポケットから僕は飛び出した。地面に足をついて周りを見回せば、敵スタンドの群れが少しずつその身を浄化されていっている。

 

 僕の手には、いつの間にかゼーレの『矢』が握られている。ベネ。コイツが全ての元凶だと言うのなら──!

 

「この『矢』は、破壊するッ!!」

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアア!!」

 

 

 

 バギィィィイインッ!

 

『ギィヤアアアアアアアアアアア・・・!』

 

 『矢』が砕けると同時に、卵型のスタンドたちは完全に塵となって消えた。

 

「ジョ、ジョルノ、君・・・・・・」

 

「やれやれだ、加持さん。このスタンド、マジに無敵だった。『レクイエム』でなければどうしようもなかったな。・・・・・・このお礼は、フランス料理のフルコースでいいですよ?」

 

「は、はは・・・それくらい、いくらでもご馳走するさ・・・・・・」

 

 加持さんは苦しそうにそう言うと、糸が切れた人形のように地面に倒れ伏した。

 

 まったく。手のかかる『共犯者』だな、本当に。

 

「とは言え、これで加持さんは生き残る事ができた。ゼーレの手から完全に逃れたって事だが、さて、この後はどうするかな?・・・・・・困った」

 

 

 

つづく

 




スタンド名─パニック・アト・ザ・ディスコ
本体名─ディキ・ディキ(既に死亡)
破壊力─A スピード─E 射程距離─D
持続力─A 精密動作性─E 成長性─E

能力─ゼーレの『矢』に寄生していたスタンド。本体の精神力が未熟であったため暴走する形で発現した。『矢』で貫かれた人間がスタンド使いとして生き残った場合、貫かれた人間を本体として発動する。ゼーレに対して明確な反抗の意思を持った時に発動し、スタンド使いの『本能』を操って『卵型のスタンドに喰われる』事を命じる。スタンド使いは『卵型スタンドに喰われる』事を至上の幸福と考える様になり、それを邪魔する者には容赦せずに攻撃を開始する。『卵型スタンド』は時間と共に増えていき、倒しても復活してくる。弱点はない。


ぼくのかんがえたむてきのスタンド。のハズでしたが『レクイエム』が無敵すぎましたね。
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