ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 結局あの後、葛城邸に帰ってきた僕は、シンジ君とラングレー、綾波さんに起きた事情を説明した。

 

「じゃあ、加持さんはもうそこにはいなかったの・・・?」

 

 震える声でシンジ君が問い返してくる。

 

「ああ、すごい量の血溜まりはあったが、加持さんの姿はなかった。生きていると思いたいが、あの出血量では、もう・・・・・・」

 

 痛いほどの沈黙がリビングに流れる。僕の説明した内容はもちろん嘘だが、ここで本当の事を話して、どこかで情報が漏れる方がマズい。

 

 敵を欺くにはまず味方から。悪いがいくらシンジ君たちとはいえ、ここは譲れない。

 

「ただいま・・・」

 

 ちょうどその時、玄関から葛城さんの声が聞こえてきた。よかった、葛城さん。解放されたんだな。

 

 クワー!クワー!と鳴き声をあげて、ペンペンが葛城さんを出迎えに行った。僕たち、というよりシンジ君たちにはそんな元気は無いみたいだが。

 

「あら、みんな集まってたの?・・・・・・何よ、みんな辛気臭い顔して。何かあったの?」

 

 リビングに入ってきた葛城さんを、僕たちは沈痛な面持ちで迎え入れた。特にラングレーは加持さんと親しかったからな。彼女の頬を涙が流れる。

 

「・・・何があったの?」

 

 葛城さんの問いに、僕はリビングテーブルの上にあった電話の留守録ボタンを指差した。

 

 何かを察した表情の葛城さんは、ゆっくりと、震える指で留守録の再生ボタンを押した。

 

『葛城。俺だ』

 

 留守録から加持さんの声が流れる。その言葉を、葛城さんは静かに、食い入る様に耳を傾けていた。

 

 全てのメッセージが流れ終わった後、

 

「バカ・・・バカよ、あんた・・・ホントにバカ」

 

 葛城さんはその場で、テーブルに突っ伏して、静かに泣いた。

 

 

 

 

 あれから数日後、ネルフの実験棟にて、シンジ君たちチルドレンはシンクロテストを行っていた。

 

 まるで加持さんなど最初からいなかったかの様に、日常は変わる事なく流れ続けていく。人の死、とは、意外とそんなもんだ。悲しい事だが。

 

 だが、その悲しみが癒えない者ももちろんいる。

 

 例えば。

 

「聞こえる?アスカ。シンクロ率8も低下よ。いつも通り、余計な事は考えずに」

 

『やってるわよ!』

 

 そう強がっているラングレーではあったがその顔色は優れない。加持さんの死という現実を、受け入れきれずにいるんだろう。

 

 そのほかの2人も、シンクロテストの値は決して良くはない。綾波さんまでシンクロ率が落ちているのは僕としてはちょっと意外だったが、今思えば、彼女も加持さんという人間を受け入れていたんだろうと思う。

 

 その喪失を悲しむ彼女に、こんな時に不謹慎とは思いつつも、僕は彼女の人間としての成長を心の中で静かに喜んだ。

 

「最近のアスカのシンクロ率、下がる一方ですね」

 

「アスカだけではないわ。シンジ君もレイも、許容範囲とはいえシンクロ率は下がってきている。困ったわね、この余裕の無い時に」

 

 赤木博士と伊吹さんが互いに困惑の声を上げる。

 

『アスカ、落ち着いて。僕と息を合わせよう。ほら、吸って、吐いて・・・・・・』

 

 シンジ君がラングレーに話しかけた。ラングレーもシンジ君の声に素直に従い、大きく深呼吸を繰り返している。

 

「あら。少し改善されたわね」

 

 赤木博士の言う通り、シンジ君とラングレーのシンクロ率が回復した。本当に、微々たるものではあったが。

 

 赤木博士は小さくため息をつくと、「上がっていいわよ」とチルドレン達に通達した。メインモニターに映し出された三人がホッと揃って息を吐いた。

 

「どうします?先輩」

 

「そうね。やはりレイの零号機を優先させましょう、今は同時に修理できるだけのゆとりはないわ」

 

 先の戦いで大破した零号機と弐号機。一ヶ月以上の時間があったとはいえ、ほぼ全身を使徒に喰われた二機の修復には時間がかかるようだ。

 

「ジョルノ君」

 

「なんでしょう?」

 

「碇司令の許可が下りたわ。貴方にはこれからキリキリ働いてもらいます。覚悟してね」

 

 まぁ、しょうがないだろーな。今この瞬間に使徒に攻め込まれたらひとたまりもない。僕の『ゴールド・エクスペリエンス』を使ってでも、エヴァの修復を急がねば、な。

 

 便利屋ではないんだがな。僕のスタンドは。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 葛城ミサトは、エヴァ初号機を眺めながら考える。

 

(・・・あのアダムより生まれし物、エヴァシリーズ。セカンドインパクトを引き起こした原因たるものまで流用しなければ、私たちは使徒に勝てない。逆に生きるためには、自分たちを滅ぼそうとしたものをも利用する・・・)

 

 「それが人間なのね」とミサトは呟いた。

 

 

 

 

「どうしたんです?顔色が冴えないようですけど」

 

「そうね。少し・・・疲れてるのかもしれないわ」

 

 ジオフロントの湖畔。そこに車を止めて、ミサトと日向マコトは話し込んでいた。

 

「それよりその情報、本当なの?エヴァ13号機までの建造開始。しかも世界七個所で」

 

「上海経由の情報です。ソースに信頼は置けます」

 

「なぜこの時期に量産を急ぐの?」

 

「現在は2機も大破ですから。第2次整備に向けて、予備戦力の増強を急いでいるのでは?」

 

「どうかしら・・・ここにしてもドイツで建造中の5・6号機のパーツを廻してもらってるのよ。最近、ずいぶんと金が動いてるわね」

 

「ここに来て、予算倍増ですからね。それだけ上も、せっぱ詰まってる、って事でしょうか」

 

「委員会の焦りらしきものを感じるわね」

 

「では、今までのような単独ではなく、使徒の複数同時展開のケースを設定したものでしょうか?」

 

「そうね・・・でも、非公式に行う理由がないわ。何か別の目的があるのよ・・・」

 

 そこまで話し込んだ2人の間に、静かに生温い風が流れる。湿り気を帯びた、嫌な空気だ。

 

「もっと詳しく探りましょうか?」

 

「そうね。できるなら」

 

「まかしといてください!」

 

 意気込んだ日向はそのままこの場を後にした。ミサトはその後ろ姿を、若干の罪悪感と共に見送る。

 

 日向が自分に好意を寄せている事には気付いている。その気持ちを利用するたびに、ミサトは小さな罪悪感を抱くのだ。

 

 だが、今は何を利用してでも、真実に辿り着かなくては。

 

「泣いてばかりはいられないわ。事態はどんどん変わってゆく・・・・・・」

 

 ミサトはポケットから小さなコンパクトミラーを取り出すと、蓋を開けて、中から1センチにも満たないほどの小さな電子端末を取り出した。

 

「加持くん。あなたの言う通り、私は先に進む事にするわ。あなたから受け取ったこの、あなたの『心』と共にね」

 

 

 

つづく

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