ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 夜。葛城邸にて、葛城さんを含めた僕たち5人は、言葉少なく夕食を取っていた。

 

 メインの料理はアンチョビパスタ。あとは葛城さんのつまみ用に、ナスとチーズのトマト煮込みとブルスケッタを用意してある。別途用意された魚のムニエルと白米は、シンジ君のお手製だ。

 

 中々に豪華な夕食だと思ってはいたんだが、それで会話が弾む事はない。

 

 みんなの共通認識。加持さんの死。その事実が僕たちにのしかかってきているんだな。

 

「・・・久しぶりに全員集合だってのに、ギスギスしてるわねぇ〜・・・」

 

 葛城さんの何気ない一言が、今の僕たちの状況を的確に表していた。

 

「ごちそうさま」

 

 それを聞いたラングレーが、一番最初に夕食のお礼を言って立ち上がる。その横の綾波さんはもっきゅもっきゅとパスタを口に詰め込んでいるが、その勢いもどこか弱々しい。

 

「ラングレー、コーヒーはいるか?」

 

「あら、ジョバァーナにしては気が効くわね。もらおうかしら」

 

 僕は立ち上がってコーヒーの準備をし始める。と、ちょうどその時に電話が鳴った。

 

「あ、僕が出るよ」

 

 この場の空気に居た堪れなくなったんだろう。シンジ君が電話に出てくれる。

 

「はい、もしもし?」

 

「ラングレー、ミルクと砂糖はいるか?」

 

「いらない。今はブラックの気分なの」

 

「アスカ」

 

「なに?シンジ」

 

「ドイツから国際電話。アスカに。お母さんから」

 

「え。アタシに?ママから?ちょっと貸して」

 

 シンジ君から受話器を受け取ったラングレーは、少しだけ明るく振る舞いながら、ドイツ語で電話の相手と喋り始めた。

 

「母親から、か」

 

 そーいや、僕の母親は今頃なにをしているんだろーな。学生寮のある学校に入ってからめっきり会わなくなったが。

 

 まぁ、どーでもいいんだがな。

 

「義理のお母さん、か・・・」

 

 ん?

 

「シンジ君、それって、ラングレーのお母さんの事かい?」

 

「あっ!いや、これはその・・・」

 

「Auf Wiedersehen!・・・ちょっとシンジ。勝手に人の家庭事情をバラさないでよ」

 

「ご、ごめん!つい・・・」

 

「ふん!まぁいいわ。遅かれ早かれ、いずれ話そうとは思ってたし」

 

「それって、わたし達に?」

 

 2人の会話に興味を持ったのか、綾波さんがパスタをくるくると巻いていたフォークの手を止めた。

 

「そうよ。良い機会だから言っておくとね。アタシ、小さい頃にママが死んじゃったの。何かの実験で、精神をおかしくして・・・」

 

 ラングレーはとても、とても辛そうにポツポツと語り出した。

 

「ママがなんの実験に参加したのかは、全然わからなかったんどけど・・・その後、ママは自殺しちゃった・・・アタシはそれを発見した最初の一人で、それで・・・・・・」

 

 ラングレーの肩が震える。その肩を、シンジ君がしっかりと抱く。

 

「いいよ、アスカ。無理に話さなくても」

 

「あ・・・・・・」

 

 シンジ君はそのままラングレーを抱き寄せると、真正面からしっかりと抱きしめた。

 

「アタシ、今のママにも感謝してるわ。アタシを育ててくれたし、嫌いってわけじゃないの。でも・・・!」

 

「うん」

 

「本当のママは、なんで自殺なんかしたの?アタシがダメな子だったから?加持さんはなんで死んじゃったの?アタシがもっとしっかりしていたら、死ぬ事はなかった?」

 

「アスカ」

 

 シンジ君が、ラングレーに優しく声をかけた。

 

「そんな事はないよ。加持さんの件は、僕たちにはどうしようもなかった事だ。それに、この前言ってたじゃないか。弐号機の中に、お母さんを感じたって。だから、アスカのせいじゃない。大丈夫だよ、大丈夫」

 

 ポンポン、と、まるで赤子をあやす様にシンジ君は優しくラングレーの背中を叩いた。席に座っていた綾波さんも、手を伸ばしてラングレーの背中をさすっている。

 

 傷つきながらも、互いを思いやる心が、彼らの中には芽生えてきている。それを嬉しく思う反面、これ以上、彼らを傷付けたくないと考えている僕がいる。

 

「ねぇ、みんな?・・・・・・ちょーっちだけ、お酒、飲んでみない?」

 

 そんな事を言い出したのは葛城さんだ。ふざけているわけじゃあない。これは。

 

「献杯って言うのよ。誰かを悼むとき、人は少しだけお酒を飲むの。加持くんの件も、アスカのママの事も。それに、今までの戦いの中で散っていった仲間たちにも。この場で、少しだけ悼まない?」

 

 そう言いながら、葛城さんは人数分のグラスを用意し、そこにほんのちょっとだけ、ビールを注いだ。

 

 僕をはじめとして、シンジ君たちもグラスを手に取る。葛城さんの「献杯」の一言の後、僕たちはビールを口に含んだ。

 

「うええ、やっぱ苦いわね、これ」

 

「LCLよりはマシだけど・・・」

 

「美味しい。おかわり」

 

「やめろ綾波さん!?それ以上飲むんじゃあない!」

 

 そんな騒がしい葛城邸の夕食が、少しだけ戻ってきた。

 

 それを嬉しいと思う僕の心は、決して間違いではなかったと思いたい。

 

 

 

 

 深夜。シンジ君たちや綾波さんが寝たのを見計らって、僕は自宅に葛城さんを呼んでいた。リビングで僕と葛城さん。2人だけの酒盛りだ。

 

「んで、なぁに?ジョルノ。私に何か言いたい事でもあるの?」

 

「ああ。とても、とても重要な事がわかった。今、恐らく葛城さんも探っているだろう案件だが」

 

「なに?勿体ぶらないで。要件を話してちょーだい」

 

「『人類補完計画』。これを、終わらせたい」

 

「!?」

 

 驚く葛城さんに、僕は加持さんから得た情報をかい摘んで説明した。ビール缶を傾けながら話を聞いていた葛城さんだったが、人類補完計画の全貌を話した段階で、手にしたビール缶をグシャリと握り潰していた。

 

 握り潰されたビール缶から、漏れ出たビールが床に溢れていく。

 

「信じられない、というより信じたくないってのが本音だけど、ふざけているとしか言いようのない計画ね。委員会はそんな馬鹿な計画を本気で進めているの?」

 

「貴方が加持さんから託された情報を僕は知らない。だが、加持さんの命をかけた情報だ。嘘だとは僕には思えない」

 

「なんでそれをジョルノは知ってるのよ。あんた、加持くんには会えなかったんでしょ?」

 

「僕のケータイにも留守録が入っていたんだ。内容が内容なんで、すぐに消去したが」

 

「・・・・・・」

 

 葛城さんの疑いの視線が僕を射抜く。だが僕とて、この場で加持さんの生存の話を漏らすわけには行かない。ネルフはその気になれば、葛城三佐という組織にとっての重要人物だろうと拷問するだろう。そこから加持さんの生存がバレたら、マズい。

 

 もっとも、加持さんから情報を既に託されている時点で、葛城さんは既に危険を冒している、ということにもなるが。

 

「・・・・・・いいわ。信じてあげる。加持くんの情報の裏を取ろうと思ってたところだからね、私も」

 

「ありがとう、葛城さん」

 

「それで、あんたはこの情報を知ってどうするの?何かやらかすつもりなんでしょ?あんたの場合は」

 

 よくわかってるじゃあないか。これも僕らの信頼関係があってこそ、だな。

 

 僕は一呼吸置くと、

 

「リリスを殺す。葛城さん、協力してほしい」

 

 単刀直入に言い放った。

 

「・・・・・・・・・できるのね?」

 

「ああ。僕の進化した『スタンド』ならば恐らく可能だと思う。だがリリスまで近付くには、僕のネルフ権限だけでは無理だろう。葛城さんの協力が必要だ」

 

「・・・・・・私の権限でも厳しいわよ。できてリリスのいる扉の前まで。一度だけ行った事があるから、それは安心して」

 

「ベネ。そこまで行ければ問題はない。扉は僕がこじ開ける」

 

「人類補完計画。その要であるリリスを殺せれば、あとは使徒を殲滅するだけね」

 

「そうだ。それで全てが終わる。終わらせてやるんだ。この絶望しかないふざけた計画を」

 

「やるのはいつ?」

 

「そうだな・・・・・・次の使徒が現れた時はどうだろうか。恐らくだが、初号機は前回の件で凍結されるだろ?ラングレーと綾波さんには申し訳ないが、使徒襲来の混乱に乗じて、僕がやる」

 

「・・・・・・OK。わかったわ」

 

 そう言うと、僕と葛城さんはビールの缶をぶつけた。

 

 長かった。ここまで。だがようやく終わる。

 

 このふざけた世界の運命を、僕が切り拓く。

 

 僕は決意を新たに、残ったビールを一気に煽った。

 

 

 

つづく

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