ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
状況が、僕らを殺しに来ている。この時の僕は、そんな風な事を考えていた。
「失敗した・・・・・・具体的にはどんなふうに?」
『総理はネルフを信用しきれない、と仰っていた・・・・・・ゼーレの子飼いであるネルフが、『人類補完計画』を阻むために動くはずはないと。少なくとも、碇司令がそのように動くとは考えられない、と仰った』
ちぃ・・・なるほどな。ネルフがゼーレを裏切る可能性は低い。外側から見ただけのネルフならば、それは確かにそう捉えられてもおかしくないな。
『ゼーレとネルフも、それぞれが『人類補完計画』を実行しようとするかもしれない。ならば使徒を殲滅した時点で、戦自を使い、速やかにネルフ本部の地下にいるリリスを押さえる。その後、リリスを殺害なり保護するなりすれば、ネルフもゼーレも『補完計画』は発動できない。そういう考えのようだ』
なるほど。完璧な作戦だな。不可能だという点に目を瞑れば、だが。
「人間の持つ火力でリリスを殺せるかはわからないがな。加えて、ゼーレはエヴァの量産型も投入してくるだろう。その点を、総理はちゃんと考えているのか?」
『だからこその電撃作戦だ。最後の使徒の殲滅が確認され次第、政府は戦自をネルフに送り込む』
なるほどな。スピード感を持った作戦であると言うことか。まぁ、理解できなくはないがな。
「僕らとしてみれば、あまり褒められた作戦ではない、っていうところですね」
『だがあながち、穴だらけの作戦ってわけでもない。ネルフの主戦力はエヴァだ。そのエヴァだって、パイロットさえ殺してしまえば木偶の坊に成り下がる。ネルフに侵入さえしてしまえば、十分に達成可能な作戦だと俺は思うがね』
「言ってる場合か、加持さんはどっちの・・・・・・待て。加持さん。今、貴方はどーゆー状況だ」
そうだ。総理に報告して、その上でネルフ殲滅作戦を総理が申し出たのなら、加持さんの身柄はどーなっているんだ?
良くて拘束、悪ければ、殺害されていても不思議ではない。
だとしたら、この電話は盗聴されているのでは・・・ッ!?
『心配ご無用。さっき留置所から抜け出してきたところでね。スタンド能力に目覚めてなかったらヤバかったが、今はひと息入れて一服してるところさ』
「・・・・・・あまりこちらをハラハラさせないで欲しいものですね、加持さん」
『ははは。すまんすまん。だが、事態は思っていたよりも深刻だ。どうする?ジョルノ君』
「それについては問題ない。深刻な状況は慣れっ子なんでな」
そうだ。組織のボスを裏切った時と似たようなものだ。これくらいの状況、僕らは嫌っていうほど乗り越えてきた。その時の仲間はシンジ君達ではないが、今回も同じように切り抜けられると僕は信じている。
「どのみち、最後の使徒を殲滅するまで、日本政府もゼーレも動きようがない。使徒がリリスと接触すれば、人類滅亡待ったなしなんだからな。そうでしょう?加持さん」
『ああ。そこについては、奇妙な事だが暗黙の了解として総理も認識している。そこは問題無い』
ベネ。そーゆー事なら、僕たちにも時間的猶予があるな。流石に日本政府もそこまで馬鹿ではなかったか。
「なら一安心ですね。じゃあこれ以上は盗聴が怖いんで、もう切らせてもらいますよ?」
『待った!ジョルノ君、こんな状況だ。上手くいくかは分からないが、一つだけ、俺に良いアイデアがある』
「なんです?それは」
『リッちゃん・・・赤木博士に会え。今回の戦い、恐らく鍵を握るのは彼女だ』
「・・・・・・どういう事です?」
『『F型装備』。その再開発を急げ、と伝えてくれ。それだけで伝わるハズだ』
「F、型・・・?なんです、それは?」
『詳しい事はリッちゃんに聞いてくれ。頼んだぞ。じゃあな』
「あ、ちょっと・・・・・・!」
慌てて加持さんを止めようとした僕だったが、加持さんはあっさりと電話を切りやがった。
思わせぶりなところは相変わらず、か。
「ジョルノ君、加持さんはなんて?」
「・・・・・・日本政府との交渉に失敗したようだ。使徒を殲滅したその瞬間、日本政府は戦略自衛隊をネルフに送り込むそうだ」
「・・・ッ!戦自が!?」
葛城さんが驚きの声を上げる。僕は彼女に視線を向けて頷いた。
「だが、こうも言っていた。『赤木博士にF型装備の再開発を急げと伝えて欲しい』。葛城さん、この『F型装備』って名前に聞き覚えは?」
「・・・・・・既存の装備だと、『空挺降下戦用』装備ってのがそれだけど、『再開発』って事は恐らく違うわよね」
「多分な。まぁ、詳しい事は赤木博士に聞くしかない、か・・・」
僕と葛城さんは頷き合うと、すぐに病室を後にしようとした。
「待ちなさいよ、ジョバァーナ」
それを止めたのは、意外なことにラングレーだった。
「ん?なんだ?」
「ミサトも。シンジ、あんたも手を出してアタシの手の上に重ねて。ほら、レイも」
そう言って、ラングレーは右手を空中に差し出した。その手の上にシンジ君が戸惑いながら、綾波さんは不思議そうに手を重ねる。
それを見た葛城さんは頭痛でもするのか、額に手を当ててため息をついた。
「まったく、こんな時になにやってんだか・・・」
「こんな時、だからこそよ!アタシ達はこの戦いの全てを知った。そして、これから『人類補完計画』を叩き潰すのよ?ここでアタシ達の結束を固めないで、いつ固めるっていうのよ」
「はいはい。もう、子供っぽいんだから・・・あんまりやりたかないんだけど、付き合ったげるわ」
そう苦笑しながらも、葛城さんもその手を重ねた。そして隣に立っていた僕の背中を、葛城さんは思いっきりバシンと叩く。
「僕も、ですか?」
「当たり前でしょ?あんたが言い出した作戦よ?あんたが参加しないでどーすんのよ」
マジか。僕はこーいった熱血スポ根漫画みたいなノリは苦手なんだが、抜けるわけにはいかないだろーか。
そうやってどうにか逃げ道はないかと探していると、
「なぁ、それって、ワイも参加する事はできるんかいな」
病室のドアを開けて、懐かしい人物が姿を現した。それは、
「トウジ!それにケンスケ!?」
「ヒカリまで!」
そう。この病院で入院していたトウジ君や、ケンスケ君、洞木委員長が病室に入ってきたのだ。
「ごめんなさい。本当はアスカのお見舞いに来たつもりだったんだけど」
「病室の中から、何やらブッソーな話が聞こえてきてもーてなぁ・・・」
「シンジ!マジか!こんな大スクープ!ネルフやゼーレとの決戦なんて・・・・・・くぅ〜〜〜ッ!なんて熱い展開なんだ!!」
おいおいおいおいおいおいおい。
まさかこの三人に話を聞かれるとは思わなかった。
「シンジ、ジョルノ。あん時は世話んなったな。おおきに」
「トウジ。もう大丈夫なの?」
「ああ、こちとらジョルノのおかげですこぶるピンピンしてんねん!元気が有り余ってしゃーないんや!」
トウジ君は自分の腕をピシャリと叩くと、そのまま葛城さんの手の上に自分の手を重ねた。
「ワイが乗っとった参号機はもうオシャカになってもーたけんど、なんでも言ったってくれ。キョーリョクは惜しまへんで!」
「トウジ!」
「俺も俺も!戦自の兵器の情報とか、集められる範囲で集められるぞ!それにネルフの機密情報も、親父のパソコンから取ってこれるし・・・・・・」
「ちょっとぉ〜?それはちょっち聞き捨てならないわよ?」
「うわ、ミサトさん!ごめんなさい!」
葛城さんに睨まれながらも、ケンスケ君も手を重ねてくる。
「わ、私はその、何かできる事ってほとんどないけど、アスカ達の応援くらいなら・・・」
洞木委員長も、その上に手を重ねた。
「ほらぁ!ジョバァーナ!あんたが最後よ!早く手ぇ出しなさいよ!」
やれやれ、だ。僕はため息を吐きながら、みんなの重なった手の上に右手を重ねた。
「シンジ君」
「なに?ジョルノ君?」
「この戦い、負けられないな」
こんなにもたくさんの仲間が、今、心を一つにしようとしている。
だから、負けられない。
僕は、シンジ君を助けるためにこの世界に来た。だが今は、この世界のすべての人々を助けたいと強く思っている。
だからこそ、その絆を大切にしよう。
それが僕がこの世界で得た、かけがえのない、宝物のように思えた。
「作戦名は『ガッツのG』。なんてどうだ?シンジ君」
「うわ・・・ジョバァーナ、ださ。何その作戦名」
「僕の前の仲間がな、こういう時にはガッツを入れようと言っていたんだ。それを思い出してな」
「はは。なんかジョルノ君から出そうにない言葉だからか、逆にスッと胸に収まったよ」
シンジ君が微笑んで頷き合う返してくれる。手を重ねたみんなが、互いに視線を交え合わせる。
シンジ君は大きく息を吸うと、
「ガッツのGィィイイイイイイッ!!」
「「「ファイ!!オーッ!!!」」」
みんなの元気の良い声が、病室を揺らしていた。
To Be Continued…
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!これにて第11章は終了です。
リリス殺害はジョルノでも不可能。身代わりに散った『矢』を大事に抱えながら、物語は最終章に向けて動き始めます!
残る使徒はあと2体!そして発動されるであろう『人類補完計画』。これらを叩き潰すための戦いは、これからです。
あいも変わらずプロット無しの即興劇ですが、とうとうここまでやってきました!
次章も皆さんに楽しんでいただけるよう、まごころを込めて書いていきたいと思います!
それではみなさま、また次回もお会いするまで。
アリーヴェデルチ!