ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
ネルフの第二発令所。そこはすでに戦場のような慌ただしさとなっていた。僕と赤木博士はモニターに映し出されている第16の使徒の姿を凝視している。
発令所の上階には碇司令と冬月副司令の姿もある。まぁ、ここまではいつも通りの光景だな。
珍しいのはこの場にいない、女傑の姿。
『零号機発進、迎撃位置へ!』
『エヴァ弐号機、発進準備!』
「目標接近、強羅絶対防衛線を通過」
初号機に発進命令は出ていない。やはり、初号機の凍結はまだ解除できない。そーゆー事か。
「まるで光の輪、ですね」
「そうね」
僕の呟きを、横の赤木博士が拾う。使徒の見た目は『光の輪』。そうとしか表現できない見た目をしていた。
そんな様子を眺めている僕らの背後で、プシュッとドアの開く音が聞こえる。
「!」
「何やってたの?」
「言い訳はしないわ。状況は?」
ようやっと女傑、葛城さんの登場か。いつもよりも遅かったな。
「目標は、大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています」
「目標のA.T.フィールドは依然健在」
「エヴァ零号機は32番から発進。迎撃位置へ移動中。弐号機がバックアップについてます」
オペレーターの皆さんが状況を葛城さんに報告する。葛城さんは上階で腕を組んで座っている碇司令にチラリと目を向けた。
まぁ本来ならば僕と葛城さんは、この場にいていい人物じゃあないからな。未遂とはいえ、ネルフの最深部にいたリリスの殺害を目論んだんだ。ネルフにとっては厳重に閉じ込めておかなければならない存在のはずだ。
(使えるものは使う。そーゆー状況か。もしくは・・・)
そんな程度のイレギュラーなど放っておけばいい。その程度にしか取られてないのか、か。
まぁ、どっちでもいいがな。僕達が拘束されないならされないで、余計な手間が省けて助かる。
葛城さんもそれがわかっているんだろう。大した追及はせず、発令所のメインモニターに視線を戻した。
「初号機は?」
「4番ケージで待機中よ。凍結はまだ解除されていないわ」
「・・・・・・その代わりに出撃させたのね、弐号機を」
「碇司令の指示よ。問題ある?」
「いいえ」
葛城さんは即座に首を振ると、弐号機と零号機に通信を繋げた。
「聞こえる?アスカ、レイ」
『はい』
『バッチシよ!』
「いいわね。こちらからは動かず、敵の動向を探るのに努めて。あの使徒が前の精神汚染を持った奴と同等の力を持っているかもしれないわ。油断は禁物。ヤバいと思ったら即退くわよ」
『『了解』』
短い通信をやり取りしたあと、葛城さんは僕に向き直った。
「ジョルノ、今回はあなたも初号機でシンジ君と共に待機していて。凍結が解除された場合、すぐに出撃できるように」
「了解。しかし、あの使徒。全然動きませんね。何かを狙ってるんだろーか」
「そうですね。まず、敵の攻撃手段が読めないことには・・・・・・」
オペレーターの青葉さんも僕の意見に乗っかってくる。状況は膠着状態。なんとも気を揉む展開だな。
「パターン青からオレンジへ、周期的に変化しています!」
「どういう事?」
「MAGIは回答不能を提示しています!」
「答えを導くには、データ不足ですね・・・」
「ただあの形が固定形態でない事は確かだわ」
「先に手は出せない、か・・・・・・」
オペレーター陣のやり取りを聞きながら、僕は発令所を後にした。敵の動きがハッキリしないが、残る二体のうちの一体だ。何か厄介な能力を持っていてもおかしくはない。
初号機が動かせないという点も、僕の気を揉む要因のひとつだ。咄嗟の事態に、動くべき時に動けないというのはなんともモヤモヤするものがある。
できれば、厄介な敵でない事を願うが、どーにも不安な気持ちが拭い去れない。
嫌な予感がする。そして、嫌な予感というのは往々にして、当たってしまうものだ。
◇
「お待たせしたな、シンジ君」
「ジョルノ君」
エントリープラグに搭乗した僕は、先客のシンジ君の肩をポンと叩く。考えてみれば、こうして初号機に乗るのも久しぶりだな。
さて、シンジ君の様子はというと。
「何やら不安げ、だな」
「ジョルノ君こそ、どこか表情が固いよ」
「む」
そうか。僕としたことが、顔に不安が表れてしまっていたよーだ。無論、それは目の前のシンジ君もだが。
「・・・・・・くそ」
シンジ君が小さく悪態をつく。シンジ君の口から漏れた言葉は気泡となって、LCLの中を登っていった。
「最初の頃はあんなに戦うのが怖かったのに、こうしてただ待つだけなのがこんなに辛いなんて・・・・・・」
「ああ、本当に、な」
シンジ君が手元の端末を操作すると、エントリープラグ内に外の映像がカシャッと音を立てて表示された。映っているのは、綾波さんとラングレーの機体の背中だった。
確かに歯痒い。こうして、少女達だけが戦場に立ち、僕達は手も足も出せない状況。僕も早く彼女らの援護に行きたくてしかたない。
これでもし、綾波さんに何かがあったら──。
「信じるしか、ない、よね?」
僕の不安を読み取ったシンジ君が、僕を励ますように肩を叩いてくる。
「ああ。そうだな」
僕はその手を軽く握る。お互いの不安を共有するように。分かち合うように。
僕達はじっと、画面の様子を睨み付けていた。
▼△▼△▼△▼△
零号機と弐号機は、共にパレットライフルを構えたまま、遠くの使徒を睨み付けていた。
「ふぅ」
未だ何の反応も見せない使徒に対し、アスカがひとつ、小さく息を吐いた。
「大丈夫よ、アスカ」
「ん?レイ。何が?」
「わたし達は負けない。負けそうになれば、逃げるだけ」
「あら、戦う前から逃げる話?それこそ大丈夫よ、レイ。今のアタシは、ママの加護ってヤツがあるもの!」
「加護?」
「そ!ATフィールドっていう、無敵のバリアがね!レイの零号機も誰かの魂が入ってる。きっと、あんたの声に応えて、一緒に戦ってくれるわよ」
「そう・・・・・・そうね」
アスカの返答に、レイも小さく息をついた。コポッという心地の良い音がエントリープラグ内に響く。
(わたしのエヴァにも、誰かの魂が・・・)
レイはしばしの間、目を瞑る。
(それは、一体、誰の・・・・・・?)
レイに肉親はいない。もし、自分にとっての大切な人の魂がエヴァに宿るというのならば、それは一体、誰になるのだろうか。
(わからない。けど・・・)
レイは再び目を開いた。
(わたしはわたし。代わりはいないもの)
レイは決意を新たに、操縦桿を握りしめる。
『レイ、アスカ。しばらく様子を見るわよ』
通信からミサトの声が聞こえてくる。
だが、
「いえ・・・」
「来るわよ!レイ」
二体のエヴァに向かって、光の輪がその形状を変え、突如として襲いかかってきた。
つづく