ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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「下がれ!みんな、下がるんだァーーーッ!!」

 

 僕はボスの姿を認めた瞬間、みんなの前に出た!この敵はヤバい、ヤバすぎる──ッ!!

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 僕のスタンドが目にも止まらぬ速さで床を全力で殴りつけていく!ありったけの生命エネルギーを送り込み、僕らの目の前に何本もの巨木の壁を作り出した!周りの機械がぶっ壊れたみたいだが、知ったことじゃあない!

 

 ドドドドドドドド・・・・・・!という轟音が部屋中に響き渡る!部屋全体を振動が満たす!

 

 物理的な壁だ!生命を宿した、巨木の壁。いくらボスの能力が無敵でも、すぐにはこちらに来れるはずがない!

 

「シンジ君!ラングレー!葛城さん!綾波さんを連れて逃げろ!赤木博士!この部屋に、他に出口は!?」

 

「ジョ、ジョルノ君?」

 

「早く答えるんだァーーーッ!!間に合わなくなる!皆殺しにされるぞ!」

 

 僕の今までにない切羽詰まった様子に、先ほどまで狂気に飲まれかけていた赤木博士すらが目を丸くする。

 

 僕は自分の右人差し指の先を噛みちぎり、床に血を垂らし始める!

 

「簡単に説明するぞ!今の敵の能力は『時間を操る能力』だ!数秒間だけ時を『吹き飛ばして』しまえる能力なんだ!無敵だ!僕でも絶対に勝てない!」

 

 僕の言葉にシンジ君たちの顔が青ざめた。

 

「そんな、ジョルノ君でも勝てないなんて・・・」

 

「アタシたちじゃどーしよーもないじゃない!!」

 

 ああ、そうだな。クソ!言いたくはないが本当にその通りだ!

 

「ジョルノ・ジョバァーナ」

 

 巨木の壁の向こうから、静かにボスが語りかけてくる。

 

「お前の未来の行動は、すでに『エピタフ』でもって知っている。見えているぞ。お前の未来が。・・・だが、おかしいな?お前の『レクイエム』はどうしたのだ?なぜ『レクイエム』を使わない?」

 

「赤木博士!なんでもいい!この部屋から出られる道は他にないのか!?このままでは本当に、貴女まで殺されるぞ!?」

 

 僕はボスの言葉を無視して赤木博士に呼びかける。これは心からのお願いなんだ。ボスには勝てないが、逃げるだけならなんとかできるはずなんだ!

 

 なのに!!

 

「いいえ、ジョルノ君。私はここで死んでもいい。この場で、レイを殺すことができれば、私は──!」

 

「リツコ!!」

 

 僕の背後で、二発の銃声!そして聞こえてくる、苦悶の声。

 

「リツコさん!」

 

「レイ!無事ね!怪我はない!?」

 

 シンジ君とラングレーの声に、僕はちらりと視線を背後に向けた。

 

 肩を撃ち抜かれた赤木博士。それと、綾波さんを庇うように倒れ込んでいるシンジとラングレーの姿が飛び込んできた。どうやら死者は出ていないみたいだな!

 

「私を殺したいなら、殺して!いえ、そうしてちょうだい!ミサト!」

 

「バカ!それこそバカよ!あんたは・・・!」

 

 肩を撃ち抜かれた赤木博士が地面に座り込む。そして、そのまま大声で泣き始めた。

 

 だが、本当に申し訳ないがそんな茶番をやっている余裕は僕にはない!

 

「葛城さん!シンジ君!ラングレー!頼む!この部屋に他に出口がないか探して・・・・・・」

 

「わかったぞ、ジョルノ・ジョバァーナ!ふふ、ふふふふふ、ふはははははははははははははははははは!!」

 

 壁の向こうから、ボスの高笑いが聞こえてくる。くそ!勘づかれたか!!

 

「貴様、『矢』を失ったのか!おかしいと思ったぞ。貴様がレクイエムを持っているなら、私に近付いて始末すればいいだけの話だからな。これで合点がいった。貴様はもはや、我が『キング・クリムゾン』の敵ではないという事がな!!あとは・・・!」

 

 バギィッ!!という轟音が壁の向こうから聞こえてくる!マズい、巨木を破壊し始めたか!僕はさらに床や壁面を殴り付けると、厚みを増すように巨木の壁を追加していく!

 

「貴様らに逃げ道はないようだな。焦る必要はない。ジョルノ・ジョバァーナ。お前はゆっくりと近付いていって、なぶり殺しにすると宣言しよう」

 

「シンジ君!早く!早くするんだッ!!」

 

「〜〜〜〜ッ!ミサトさん!」

 

「リツコ!お願い!この部屋に他の出口はないの!?教えて!」

 

「・・・・・・ないわ」

 

 赤木博士のその言葉は、僕らを絶望に叩き落とすのに十分な力を持っていた。僕の目の前が真っ暗に染まっていく。

 

 だけど。その暗闇を切り裂いてくれたのは・・・!!

 

「この水槽だ!この水槽、LCLで満ちている!これの挿入口や排水溝なら、僕ら人間でも通れるんじゃないかな!?」

 

 シンジ君の閃きだった。

 

「ディモールト・ベネ!!さすがシンジ君だ!!」

 

 僕は水槽の壁まで走って行くと、

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 スタンドで水槽の壁を思い切り叩き割った!!

 

「葛城さん!みんなを!!」

 

「OK!!任しといて!!」

 

 水槽からLCLが、「綾波レイ」の肉体の破片がザバァッと部屋に流れ込んでくる。かなりスプラッタなシーンではあるが、今はそれに気を取られている場合ではない!

 

 僕らの背後で、徐々に、しかし確実に、木の壁はボスによって削り取られていっている。

 

 僕は葛城さんにみんなを任せた。ならば、ここから先は僕の番だな。

 

 僕はみんなとは反対に、木の壁に向かって、気合を込めて立ちはだかる!

 

「ジョルノ君!?何してるの!早くここから逃げないと・・・」

 

「大丈夫だ、シンジ君。後から追いつく。・・・・・・必ずな」

 

 カッコいいセリフを吐いていながら申し訳ないんだが、僕は多分、ボスの足止めにかかり切りになるだろう。君達と一緒に逃げることはできそうにない。

 

 壁の向こうから、木々をベキベキと叩き折りながらボスが、こちらに正確で最短の道を切り開いてくる音が聞こえる。

 

 それは、僕の生命のカウントダウンのように僕には思えた。

 

 ここで退くわけにはいかない。ここから先は、僕一人での戦いだ。

 

「行くんだシンジ君、僕一人なら、多分だがなんとかなる」

 

「ジョルノ君・・・・・・」

 

「行け!行くんだ!シンジ君!!」

 

 僕は再び床を殴り、シンジ君たちとの間に巨木の壁を作り出した。少しでもシンジ君たちが逃げる時間を稼げるように、な。

 

「嫌だ!ジョルノ君!一緒に行こうよ!ジョルノ君ッ!!」

 

「シンジ行くわよ!」

 

「アスカ!嫌だ、離して!」

 

「ミサト!」

 

「シンちゃん、ごめん!!」

 

「うッ!?」

 

 壁の向こうで、シンジ君の気絶する様子が窺えた。シンジ君にはすまないが、よくやった葛城さん、ラングレー。彼を抱えて逃げるのは大変だろーが、そうしてくれるとありがたい。

 

 僕は目の前の、壁を隔てた向こう側にいる敵を見据える。巨木の壁の厚さは約3メートル。お互いのスタンドが間合いに入るにはもうちょっとの接近が必要だが。

 

「・・・・・・どうした、ボス。来ないのか?」

 

「この未熟な新入りが。お前がやろうとしていることは、ただの時間稼ぎにすぎない。『キングクリムゾン』の前では、お前のスタンドなどカスにすぎんのだ」

 

「そう思うならボス。『近付いてみたらどうだ』?僕は壁のすぐ向こう側にいるっていうのに、お前はそれを始末するのを『戸惑っている』。無傷で僕に到達する事はできないと、わかっているんだろう?」

 

「カスの浅知恵が・・・・・・」

 

 ドドドドドドドド・・・・・・と心臓が早鐘を打っている。壁の向こうからの威圧に対して、僕の額を汗が伝っていく。

 

 

 

 そして、その時は来た!

 

 

 

『キングクリムゾン!!』

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 僕は背後に作り出した壁の能力を解き、再度生命を与え直す!目の前の壁は『キングクリムゾン』の拳のラッシュで見る見るうちにボロボロになっていくが・・・!

 

 ベネ!時間稼ぎはできている!奴はまだ時間を『吹き飛ばして』いない!例え時間を吹き飛ばそうが、目の前の壁はすぐには壊せないって事だ!

 

 僕の背後で、生命を与えられたこの部屋の破片が別の生命体に変化していく!以前にも登場したオオスズメバチ!その大群は、数十匹にも及ぶ!

 

 『キングクリムゾン』の拳が、とうとう巨木の壁を貫通してきた!今だ!

 

 壁に開いた穴に、オオスズメバチが殺到する!これだけの数だ!包囲してしまえば、例え『時間を吹き飛ばそうが』すぐには対処できないはずだ!

 

 その間に僕は再度距離を取り、もう一度巨木の壁を作り出して──、

 

 そう考えた時だった。

 

 目の前の壁の穴が、『いつの間にか大きくなっていた』のだ。人が一人通れるくらいに!

 

「な!?」

 

 僕は咄嗟にゴールド・エクスペリエンスの腕を背後に振るった!

 

 だが!

 

「うっぐ!?」

 

 その右腕が、切断されて宙を舞う。

 

「〜〜〜〜ッ!?」

 

 痛みを堪え、僕は残された左手で拳を握りしめる!

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 左手で拳のラッシュを繰り出す!しかし気付いた時には、すでにそこにボスの姿はなかった。

 

「はっ!?」

 

「『時』を0.5秒消し飛ばした。お前が見ていたのは0.5秒前の『俺の姿』だ。すでに背後に回っている俺を、お前は認識できていない・・・」

 

 ズンッと僕の腹部に、重く、鈍い衝撃。

 

 僕が視線を下げれば、そこには、腹から生えたキングクリムゾンの腕が・・・・・・。

 

「おおおおおおああああああああ・・・!!」

 

「ジョルノ・ジョバァーナ。憎き我が娘の護衛から始まったこの因縁は!」

 

 ズボアッと腕が引き抜かれる。

 

「ごぼッ!?」

 

「これにて終了だな」

 

 

 

 ・・・・・・まだだ!!

 

 

 

「!!」

 

 僕が生命を与えたオオスズメバチは、まだ宙空を漂っている。さらにボスによって破壊された巨木の壁。それにも既に別の生命としての命令を与えてある!

 

「下っ端のカス能力が・・・!」

 

「ごほッ、『ゴールド・エクスペリエンス』はいま、発現する・・・・・・!」

 

 巨木の壁は毒蛇の大群へと変化し、オオスズメバチの大群に加勢する!ボスの能力の弱点は「多勢による包囲に対しては無敵ではない」という点だ!例え時間を吹き飛ばしたとしても、これだけの大群相手の攻撃を躱すのは不可能だ!

 

「食らえ・・・・・・!」

 

 ボスの眼前に迫る毒バチと毒ヘビ!それらの攻撃が、ボスに命中して──ッ!

 

「バカが」

 

 ──!?

 

「お前ごときカスの浅知恵で、キングクリムゾンの予測の上を行く事はない!潜り抜ける事もないッ!いくらカスみたいでもな」

 

 僕の眼前に、キングクリムゾンの顔。既に頭を鷲掴みにされていた僕!時間を吹き飛ばして回避していたのか、瞬間、僕の左足にキングクリムゾンの蹴りがバギィ!と叩き込まれる!

 

 それだけで、僕の左足が吹き飛んだのがわかった。

 

「うぐッあああああああああああああ!?」

 

「さっき宣言したよな?お前はなぶり殺しにすると。まだ死なせん。お前には生まれてきた事を後悔する時間を、たっぷりと与えよう」

 

「・・・・・・まだだ!」

 

 僕はボスの長い髪を残った左手で掴み取る!決して逃さないように!毒蛇と毒バチの攻撃はまだ終わっていない!

 

 既に右腕と左足は失った。だが、僕の左手はボスを捕えて離さない!絶対これ以上、シンジ君たちのところには向かわせない!

 

「何を勘違いしているのか知らんが」

 

 僕の眼前に、キングクリムゾンが姿を現す。

 

「あの小僧どもなどどーでもいい。俺の目的はお前だ、ジョルノ・ジョバァーナ。お前さえ殺せれば、俺の目的は達成される」

 

 ボスの髪を掴んでいた左手が、手首から切断される。

 

「あぐぅ!!」

 

「美しい悲鳴は必要ない。死を前に諦めない覚悟も必要ない。俺が求めるのは断末魔だ。この世の全てを呪って、醜く逝け」

 

 その左手首から、寸刻みで左手が切断されていく!その痛みは、僕の想像を遥かに超えていて!

 

「うぐあッ!あぎ!ぐああああああッ!!」

 

「おっとまだ逝くなよ?お前への報復はこれからだ。これからが本番だ。我がキングクリムゾンを一瞬でもだし抜けると思った愚かさを、その身に刻んでいけ。まだ死ぬなよ?」

 

「あ!ぎぃ!?」

 

 左腕が、肩の付け根まで断ち切られる。僕はたまらず床に倒れた。

 

 それに追い討ちをかけるように、振り下ろされる蹴り足。その攻撃が、僕に残された四肢の最後を踏み砕いた。

 

「〜〜〜〜ッ!!」

 

「いつまで耐えられるのか、見物だな。これからお前の身体を数センチずつ刻んでいく。お前の命が尽きるまで、足元から、ゆっくりと、確実に」

 

 それは正しく、拷問だった。僕の感覚から痛み以外の全てが消え去り──、

 

「ぐあ」

 

「あっぐ」

 

「うが、あぁ」

 

 奇妙な喘ぎ声が、僕の口から漏れていく。

 

 

 

 

 

 そして、

 

 

 

 

 

 僕の体から、両腕と両足が失われた。

 

 

 

 

 

 古代の拷問でいうところの、達磨。

 

 そんな状態でも、僕は死んでいない。しかし、希望があるわけでもない。ただ、死んでいないだけ。

 

 僕という人間は、この場で完全にボスに敗北していた。

 

 僕がここから逆転できる手は、きっと無いだろう。

 

 ジョルノ・ジョバァーナという人間は、どうしようもなく、この場で終わっていたのだ。

 

 

 

つづく

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