ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
僕の体から四肢が失われた。
もう、僕がここから何かできる事はない。既にどてっ腹には大きな穴も開いている。僕の生命も、もって数分といったところだろう。
目の前にいるボスが、僕の命を見逃すハズがない。僕という生命体は、どうしようもなく終わっていたんだ。
だと、言うのに。
「ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・?」
なんで!綾波さんの声が聞こえるんだ!
「ジョルノ、あんた・・・・・・」
「嘘でしょ?ジョバァーナ・・・・・・」
ましてや葛城さんや、ラングレーの声まで!
「ジョルノ君、助けに、来たよ・・・・・・ッ!」
なんで!気絶したはずのシンジ君の声まで聞こえるんだ!!
「に、にげ、ろ・・・・・・シン、ジくん・・・」
「うう、うううう、・・・・・・おおおおあああああああああ!!」
やめろ!シンジ君!
そう叫んだはずなのに、喉からは血の塊しか出てこない。ゴポッと音を立てて口から溢れたのは、血反吐の塊。
「あああああああああああぎょぶッ!?」
「シンジ!?嫌ァァアアアアあがッ!!」
「や、やめろ、ボス・・・・・・」
シンジ君とラングレーの断末魔が、僕の耳に届く。
「シンちゃん!アスカ!!うあああああああああああああ!!」
「や、やめ、葛城、さ」
「ごぶぅ・・・ッ!?」
葛城さんの断末魔が。
僕の耳に届く。
「や、やめろ、ボス、何を・・・ているんだ・・・」
「ふむ、『ついで』ではあったが、ゼーレからの依頼も達成できたな。この小僧共がなんなのかはよくわからんが、始末しておいて正解だったという事か」
「き、きさ、まァァアアアア・・・!」
「達磨の小僧が凄んでも何も意味がないぞジョルノ・ジョバァーナ!!お前はそこで、仲間の死に打ちひしがれていろ!」
「うぐ、うおオオオオオオオオオオオオッ」
僕の瞳から血涙が流れる!シンジ君、ラングレー、葛城さん!!
「ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・?」
芋虫のように倒れた僕の眼前に、現れたのは綾波さん。彼女は僕の頭の横で跪くと、そっと両手を僕の顔に伸ばしてきた。
「あ、綾波さん・・・逃げ、ろ・・・・・・」
「・・・・・・あなたに、会ったことが、ある」
その綾波さんの瞳から、涙がこぼれ落ちてくる。
「寂しい、悲しい、知らないはずなのに、知っている。あなたが、わたしにとって、大切な人だったという事を・・・・・・」
綾波さんの手が僕の顔に触れる。そして、滑るようにして僕の胸元へ。
「あなたの大切なもの、わたしが、壊した。だから、ごめんなさい」
僕の胸元が、ほんのりと熱くなる。
「ジョルノ・・・わた『キングクリムゾン』
ドスゥッ!と音を立てて、僕の目の前で、綾波さんの腹が貫かれた。
「────!!」
「小娘が余計な事をしてるんじゃあない。引っ込んでいろ、クズ共が」
う、うあ、うあああああああ・・・・・・!
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・ッ!!」
僕の目の前で、大切な人たちが無惨に死んでいく。
その光景を目の当たりにして、僕の胸に宿るものがあった。
ドクン、と。
確かな鼓動が、僕の胸元で僕自身を叩いた。それは、僕の中で醜い炎となって燃え上がる!!
「がああああああああああああああッ!!」
そして、僕は達磨のまま、腹筋の力の反動だけで宙を跳んだ!
「なッ!?」
「おおおおおおおおおおおおおお・・・!!」
飛んだ先、落ちていたのは僕の右腕。その切断面に右肩をくっつけて、僕は叫んだ!
「ゴールド・エクスペリエンス!!」
「芋虫の分際で、くそガキがぁッ!!」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが僕のスタンドが発動し、僕の右肩にその指先を触れた。生命の部品を瞬時に作り出し、同時に僕の右腕が復活する。
「ごぼッごあああああああ・・・!」
「なんだとッ!?」
僕は血反吐を吐きながら、今度は右腕の力でもって再び跳躍し、ボスから距離を取った。跳んだ先には僕の左足が!
「ジョルノ・ジョバァーナ!!」
「襲え゛!ゴールド・エクスペリエンス!!」
血反吐を吐き出しながらの僕の怒号とともに、オオスズメバチと毒蛇の大群がボスに襲いかかる!ボスと僕の間に生物の大群による壁を作り出した!それを潜り抜けるのは、ボスといえど容易いことではない!!
この動き、かつて僕が戦った敵。チョコラータ、だったか。奴が自分の体を切り刻んでやった動きを真似てみたものだが、意外に上手くいくもんだ。必死だがな!!
「キングクリムゾン!!」
ボスの怒号とともに、時間がほんの少しだけ『吹き飛ばされた』。生物の壁を、時間を吹き飛ばす事で潜り抜けてきたみたいだが、
「あんたの未来予知は、ゴポ!その程度か?ボス!!」
「!!?」
突然、目の前に現れたボス!その足元の床面に、僕は既に触れている!そこには既に生命エネルギーが流れており──、
「なんだと!?」
「うおおおオオオオオオオオオオッ!!」
ボスの足元から、巨木が爆発するように生えてきた!
「うがあああああああああああッ!?」
巨木の勢いに吹き飛ばされたボスは、天井にその身を思い切りぶつけた後、床面にずるりと落ちてきた。
「〜〜ジョルノ・ジョバァーナァァアアアア!!」
「ごふ!ごんなものじゃあないぞ!ボス!」
僕は床の破片から自分の腹部の部品を作り出して、腹に空いた穴を埋める・・・!
そして右足と左足を治療して、僕は再び立ち上がった!!
「この部屋の全てをお前への敵性生物に変える!あんたは果たして生き残る事ができるのかな!ボスッ!!」
「このションベン垂れの小僧がァァアアアア!!」
僕は床に流れ落ちていた『綾波レイ』の内臓を掴むと、左肩に押し付けて、『僕の腕』として生命を与えた。完全復活!そこから僕が繰り出す行動は!!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアア!」
ラッシュと共に、この部屋の破片が、『綾波レイ』の肉片が、その身をオオスズメバチに変えていく!その数は数百を超えて、この部屋を埋め尽くした!!
「な、なんだとぉぉおおおおおおッ!?」
スズメバチのブブブブッという羽音が部屋中を満たす。それら数百の生物の目的は、目の前の脆弱な人間の命!!
「き、『キングクリムゾン』!」
「無駄なんだ、あんたが時を吹き飛ばそうが、もはや関係ない。あんたが僕を殺しにこようが関係ない。あんたはこの密集した数百のスズメバチ全てを滅せる能力があるのか?無理だろうな、常識的に考えて」
「うごあああッ!!くそ、くそがぁ!!ジョルノ、ジョ、バァーナァァアアアア!」
「ここが密閉された空間だからこそ、だ!あんたはこのハチどもから逃げられない!!あんたがどれだけ『時間を吹き飛ばそうと』!あんたはハチに刺されて死ぬ運命!」
「ぎあ、があああああああああああ・・・・・・」
数百にも及ぶ蜂の大群がボスに襲いかかる!ボスは『時間を吹き飛ばしながら』逃げ惑っているが、
「おっと、出口は塞いどかないとな」
「!?」
僕の『ゴールド・エクスペリエンス』で、この部屋の出口は再び巨木の壁で塞いだから、な。
「き、貴様ァァアアアアッ!!」
「ゆっくりと味わいな!最期の瞬間を!」
僕はボスに向けて、人差し指を突きつける!
「たった一つ!終わりに向かっての蜂の一刺しだ!よかったなボス。今度は終わりがあるぞ?」
「ごあああああああああ・・・・・・」
そして、とうとう。
ボスは、全身を蜂にたかられて、毒針を何度もその身に受けて、地面に倒れ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
僕の荒い呼吸と、蜂のブブブブという羽音だけが、周囲を満たす。
「うう、う、うあ、あああああああああああああ」
だが、勝利の余韻など、僕には無い。
僕は、全てを失った。
この世界で得た、全てを。
僕は全て、失ってしまったのだ──。
「──ッ!まだだ!まだ綾波さん達には息がある!!」
諦めるのはまだ早い!彼女達がボスの攻撃を受けてから、まだ数分も経っていない!
まだ、間に合うはずだ!
僕は胸元にしまっていた『矢の破片』を全て取り出す。先ほど綾波さんが僕に触れた時に感じた暖かい鼓動はコレだ。脈打っているのはこの『矢の破片』だった!
きっと、綾波さんが触れたことで何かが起きたのだろう。綾波さんの魂はリリスの魂だ。その魂が、僕の持っていた矢に何かをしたんだ。
矢を破壊したのがリリスなら、それを元に戻すことができるのも、またリリスと言うことか?僕の手のひらの上で、破片が徐々に集まって、その形を取り戻していく。
僕はその矢を、咄嗟にスタンドの胸に突き立てていた!
『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム!!』
僕の内から、爆発的なエネルギーが溢れかえってくる!『矢』は復活している!完全に!
僕はレクイエムを発動させた!まだ間に合うはずだ!シンジ君、綾波さん、ラングレーに葛城さんが受けた致命傷を、レクイエムの能力で『無かった』事にする!
頼む!シンジ君の魂達よ、戻ってきてくれ!まだ間に合う筈なんだ!
僕はスタンドに全てのエネルギーを注ぎ込み、そして・・・、
僕の意識は、そのまま暗闇に落ちていった。
つづく