ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・これは。
知らない天井だ。
・・・・・・なんてな。知ってる天井だ。ここは多分、ネルフに併設された病院だろう。シンジ君のお見舞いで何度か訪れたことがある。ある意味、見慣れた天井だ。
僕はゆっくりと起き上がると、だだっ広い病室内を見回した。
あれから、どうなった?僕のスタンドは『レクイエム』として完全に発動したはずだが、みんなはどうなったんだ?
僕はベッドから降りようと腕に力を込めた。途端、僕の全身に痛みが走る。
「うぐっ!?・・・・・・ああ」
そうか。そうだった。僕の体は一度四肢を失っていたんだった。ついでに腹に穴まで開いていたからな。いくらゴールド・エクスペリエンスとは言え、傷を治すのではなく生命の部品でもって塞ぐだけだからな。完治していないのも無理はない。
だが、みんながどうなったのか?それは僕が一度最初に確認しなくてはならない事だ。あの場にボスが現れて、みんなを傷付けてしまったのは、僕がボスを止めきれなかったからだ。
色々あったが、僕の『レクイエム』がみんなを救ってくれた。そう信じたい。気を失ってしまった僕が、誰かを取りこぼしたりしていない事を切に願う。
僕はベッドからゆっくりと降りる。全身を貫くような痛みが襲うが、それどころじゃあないんだ。みんなの無事をこの目で確かめるまで、僕は安心できない。
「あ!?ジョルノ君!?」
そんな僕を見舞いに来たのか、病室のドアを開いて入ってきたのは、包帯ぐるぐる巻きのシンジ君だった。
「よかった!ジョルノ君、目が覚めたんだね!」
「シンジ君、無事だったか」
「あっ!ダメだよ!まだ寝ていなきゃ!ジョルノ君は僕たちの中で1番の重症なんだから」
「いや、僕の怪我のことはいい。それよりもシンジ君。どこか怪我をしているのか?君の傷は僕のスタンドがきっちり治したと思っていたんだが・・・・・・」
「あ、あはは。これはアスカが・・・・・・」
「シンジ!!動いちゃダメよ!あんた左胸を貫かれたんだからね!?死んでてもおかしくなかったのよ!?」
僕たちの会話を遮って入ってきたのはラングレーだった。彼女も、どうやら無事みたいだが。
「アスカ、僕らが目覚めてからずっとこれなんだ。傷はもう治ってるって言ってるんだけど」
そーゆー事か。実は意外と心配症なラングレーらしいな。それよりも。
「・・・・・・ラングレー、君は確か頭を砕かれてなかったか?君の方こそ大丈夫か?僕としては重症度で言えばぶっちぎりで君がトップだったんだが」
「アタシはいいのよ!たいして痛みも感じなかったし、絶対死んだと思ったけど、あんたが助けてくれたんでしょ?だからアタシは大丈夫よ、なんとかね!」
「そ、そうか」
何が大丈夫なのか、治療した僕としてもわからないが、とりあえずは無事そうで安心した。僕はふっと息を吐き出して微笑む。どうやら要らぬ心配だったよーだな。
「あら、起きたみたいね。ジョルノ、具合はどう?」
ラングレーに続いて、入ってきたのは葛城さん。
「あの後大変だったのよ?部屋中スズメバチだらけだし、私たちを襲った刺客はハチにたかられて死んでるし、私たちは死んだと思ってたのに生きてるし・・・もう何が何やらってやつよ。あんたは全身血塗れで倒れてるしね。んで、どぉ〜お?具合は」
「まあまあ、ってところですかね。すぐに歩けるようになりますよ」
「シンちゃんに肩貸してもらっておいて言うセリフじゃあないわね」
僕と葛城さんが、互いにふっと鼻で笑い合う。よかった。葛城さんも無事だったんだな。
僕はシンジ君の肩を借りながら、再びベッドへと腰掛ける。
「ジョルノ君、無理しちゃダメだよ!さっきも言ったけど、君が1番の重症なんだから!」
「僕が?なんでだ?」
「なんでって、両手両足が千切れ飛んでたじゃないか!それにお腹にも大きな穴が開いていて・・・生きてるのが不思議なくらいだよ!?」
「そうか?僕としては・・・・・・いや、いいか。みんな無事だったんだ。いちいち突っ込むのは野暮ってやつなのかもしれないな」
僕は再度ベッドの上に横になると、全身をベッドに預けて大きく息を吸った。ふぅーっと大きく息を吐き出し、ようやくひと心地ついた感じだ。
「この様子だと、綾波さんも大丈夫なよーだな。僕としては、一安心と言ったところだが」
「あ、えっと・・・・・・」
「そ、それは・・・」
ん?なんだ?シンジ君もラングレーも、なんだか歯切れが悪いな?何かあったのか?
「それなんだけど、ジョルノ君、実は」
「・・・・・・何があった?」
「その、綾波、なんだけど」
「綾波さんに何かあったのか?」
僕はガバッとベッドから跳ね起きた。まさか、僕の『レクイエム』がうまく発動しなかったのか!?だとしたら、綾波さんは!?
「いや、それが、その・・・」
「ジョルノ」
病室の入り口の方から、突如として聞こえてきたのは綾波さんの声。僕はゆっくりとそちらに視線を向けた。そこには、病衣を着た綾波さんの、無事な姿があった。
「綾波さん・・・・・・無事、だったんだな」
「ジョルノ──」
「お腹が空いたわ」
「──ッ」
息を呑む。
その言葉、その仕草。それはまるで。
「綾波、さん。まさか、記憶が・・・?」
「・・・・・・?よくわからないわ。ただ、ものすごくお腹が空いてるの。なにか食べるもの、ない?」
それは、自爆してしまったはずの綾波さんの行動と、全く同じで。
死んでしまったはずの人間が、目の前にいる奇跡のようで。
僕の胸の奥が、カァッと熱くなる。目尻には温かいものが浮かんでくる。
それを吹き飛ばしたのは、綾波さんの獣の唸り声のような腹の音だった。しかし、その音すらが、僕には遠い思い出のように懐かしく思えてならなくて。
「・・・・・・わかった。帰ったら、何か作ろう。久しぶりに、キノコのリゾットとかでいいか?」
「いい。大好物」
「それはよかった」
綾波さんの、今までと変わらない言葉に僕は苦笑しつつ、目尻に溜まっていた涙を拭った。そうか。シンジ君達はこの綾波さんの変化に驚いていたんだな。
まるで、死んでしまったはずの人間が、蘇ったような奇跡。
「心配はいらない、シンジ君にラングレー。それに葛城さんも。僕のスタンドだからわかった事だが、綾波さんの魂は、僕たちの知っている綾波さんのものだ。どうやら昨日の一件で、綾波さんの記憶まで戻ったらしいな。僕も正直、驚いているところだが」
そんな僕の言葉を受け取った三人が、三者三様、肩をすくめて笑い合う。
「そんな言い方しなくってもわかってるわよ、ジョバァーナ」
「うん。綾波は、綾波だ」
「そう。レイは生きてた。あの時、使徒と自爆したレイは、奇跡的に助かった。これでいいでしょ?」
葛城さんのウィンク。そう。それでいい。僕らは綾波さんの真実を知った。だが、それがどーしたって言うんだ。
「あいにくと、綾波さんの生い立ちは知ったことじゃあないな。大切なのはこれから、綾波さんがどーやって生きていくか。それだけだからな」
僕は傷の痛みを堪えてもう一度ベッドから立ち上がる。綾波さんの、帰ってきた妹のような存在の頭を撫でてやろうと思って。
だが、僕の足はまだ完治してなかったよーだな。僕の足元が力を失いフラついてしまう。
倒れそうになる僕を抱き止めてくれたのは、僕の妹のような綾波さんだった。
「ジョルノ、大丈夫?」
「・・・・・・ああ」
僕はその抱擁に、言葉を詰まらせてしまう。本当に、死んだと思っていた子供が生きていた。そんな感情が僕の胸を突き、僕は嗚咽を堪えるように、綾波さんを抱きしめていた。
生きている。彼女はこうして、今、僕の目の前にいる。
そのことが堪らなく嬉しくて。
「おかえり、綾波さん・・・・・・」
僕はそんな彼女を、力一杯抱きしめていた。
◇
さて。
状況を整理しよう。今の僕らの状況は、はっきり言って悪いと言わざるを得ない。
「赤木博士はネルフに捕まったのか」
「ええ。碇司令自らが尋問を行ったと聞くわ。レイのダミーの破棄は、それほどの重大な罪ってことね」
「僕らとしては、複雑な感情だな。確かにダミーの破壊には思うところがあったが」
かといって、あのまま綾波さんのダミーを作られ続けるのも癪だ。赤木博士の行動は嫉妬に狂った暴走の結果ではあったが、その行動の全てが間違いかと問われると、とても複雑な気分になるんだ。
「とは言え、問題は加持さんの言っていた『F型装備』。それを作れなくなったのはかなり痛いな」
「それについてはジョルノ。私がリツコに面会したときに聞いておいたわ。『F型装備はテストこそしてないものの、武器であれば一応の完成を見ている』って言ってたわよ?どうやら、あのエヴァの廃棄場所に一緒に捨ててあったらしいわ。碇司令の命令でね」
「そんな破棄された武装が本当に使えるのか、マジにわからないが、加持さんが言うくらいだ。その性能はお墨付きってことでいいんだろーか?」
「さあね?ただ、『マゴロク・E・ソード』と、『全領域兵器マステマ』。この二つは、技術課の連中を使って調べさせたわ。超重量で、扱いにくい事この上ないって問題があるけど、整備すれば一応使えるらしいわよ」
「そうか。なら、次の使徒が出た時にでも試す価値はあるな」
僕は病室のベッドの上で強く頷く。横にいたシンジ君とラングレーもだ。
「『重い武器』ってのがどれくらいのものなのかはわからないけど・・・・・・」
「その『全領域兵器』っつーの?ようはぶん回しゃあいいのよね?」
「そんな簡単じゃあないと思うが、その武器の使い道は君たちにかかっている。任せたぞ、二人とも」
「・・・・・・わたしは?ジョルノ。わたしも戦いたい」
「あー・・・・・・それは」
「気持ちはわかるけど、レイ。今、零号機はこの前の自爆で失ってしまったから。しばらくはあなたにはパイロットの補佐をしてもらうつもりだから、ね?」
綾波さんの熱意には感服するところもあるが、今は葛城さんの言う通り、予備パイロットとしての役割が強いだろーな。
それに、僕が懸念していることが他にもある。
「綾波さん。君の魂は、赤木博士の言うところの『リリスの魂』らしいな」
「・・・・・・そうね。よくわからないけど」
おっと、本人には自覚無しか。いや、その方がいいんだが。
「そうらしい。そーなると、だ。碇司令やゼーレの『人類補完計画』。そこに『リリスの魂』が必要不可欠になってくるんじゃあないか、と僕は危惧している」
「まだレイを変な計画に巻き込もうっていうわけね」
ラングレーが怒りを込めて、拳をバシッと叩いた。その怒りはもっともだ。ラングレー。僕としても腹立たしいことこの上ないからな。
「アスカの言う通りだよ。これからはエヴァでの戦いだけでなく、綾波を守って戦わなくちゃ・・・!」
シンジ君も気合いが入っているな。その通りだ。碇司令やゼーレが綾波さんを利用しようとする可能性は決して低くない。僕たちは綾波さんを守りながら戦わないといけなくなるが・・・・・・。
「手札が足りないな・・・」
そう。正直、僕が以前挙げた作戦は、僕がゼーレを、シンジ君とラングレーと綾波さんがエヴァンゲリオン量産型を、葛城さんが碇司令と戦う、というものだった。
だがここにきて、綾波さんが『人類補完計画』の鍵になるかもしれないとなると、綾波さんを守るための手札が足らない。どうしても一手、僕らの方が足りなくなるんだ。葛城さんに守ってもらうという手もあるが、碇司令が綾波さん抜きで『補完計画』を発動させる可能性もある。どちらが正解かわからない以上、碇司令と戦う者と、綾波さんを守る者の二名が必要になってくるんだ。
「加持さんに頼るという手もあるが、今、彼が何をしているのかはわからないからな」
無駄に潜んでいるわけではない、と思いたい。だが、同盟者の安否がわからないという状況はなんともモヤモヤした気分になるものだ。
せめて、あと一枚、なんらかのカードがあれば、僕らは万全に戦えるはずなのだが・・・。
「お困りかい?」
!?
誰だ?
突如としてこの病室に入ってきた少年を、僕は警戒しながら見つめた。
それはこの場にいる全員が取った行動と一致している。どうやら、今し方入ってきた彼のことを、ここにいる誰もが知らないみたいだな。
「ふふっ。そんなに警戒しないでくれよ。怪しいものじゃないさ。おっと、こういう風に言うとますます怪しくなっちゃうのかな?」
その少年は、部屋の中に入ってきた途端、優雅に腰を折って丁寧な挨拶をしてくれた。
「初めまして。僕は渚カヲル。君たち同様に運命を仕組まれた子供。フィフスチルドレンさ」
その言葉に、この場にいた全員が驚愕に目を見開いた。
アルビノを彷彿させる白い肌と髪。
真紅の瞳。
それらを併せ持った、ゾッとするほど美しい少年だった。
「やっと会えたね、碇シンジ君。それとその仲間達。もしかしたら今回はうまくいくのかもしれないな」
To Be Continued…
ここまで読んで頂きありがとうございました!これにて第12章は終了です。
綾波の死、そして復活。いかがだったでしょうか。原作においても綾波は自分を犠牲にしたものの、その魂は失われませんでした。今回はジョルノとの絆によって、記憶も戻ってきたという次第です。腹ペコ青娘は健在ですね。
ボスが出てきたのはノリです。わたしの右手が勝手にやりました。皆さんが心配されたように『これどーすんだよぉ〜!』な状態の作者でしたが、『あ、ジョルノ多分これなんとかできるわ』と思って戦わせてみました。きっとボスはまた永遠に終わらない死の旅に出かけたことでしょう(多分)。
さて、とうとう現れました、渚カヲルくんです。彼の目的とは?ゼーレのスタンド能力とは?定められた最後の歯車が回り出したとき、シンジ君とジョルノ君が取る行動とは!?
良ければ最後までお付き合いください!
それではみなさま、また次回もお会いするまで。
アリーヴェデルチ!