ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 夜の第三新東京市に対峙した二つの巨影。

 

 一つは僕たちの乗る、エヴァンゲリオンとかいう巨大ロボット。

 

 そしてもう一つは、僕たちの目の前に立つ、『使徒』とかいう真っ黒な巨人。

 

 その敵意が、突如として目の前に現れた僕たちに向けられていることは明白だった。

 

『いいわね?シンジ君』

 

「は、はい・・・」

 

「待て、シンジ君!良いわけがないッ!葛城さん!今すぐ僕たちを戻してくれ!もっと別のルートはないんですか!?」

 

『なんですって?』

 

「こんな敵の目の前で動き始めたら、あっという間に攻撃の的にされてしまう!一旦僕たちを下げて、せめて敵の目の届かないところからもう一度・・・・・・!」

 

『ジョルノ・ジョバァーナ、とか言ったか』

 

 !!

 

 この声、あの髭かッ!

 

『貴様が無理だと言うのなら、今すぐに初号機から降りろ。言ったはずだ。私としてはシンジがそこに座っていればそれでいい』

 

「な、なんだとッ!?」

 

『ジョルノ君。ここまで来たらやるしかないわ。覚悟を決めて!もう後戻りはできないのよッ!』

 

 そういう状況にしたのは貴様達だろうがッ!

 

「ジョルノ君・・・・・・」

 

 クソ・・・!やるしかないのか・・・今!ここでッ!

 

『最終安全装置、解除っ!』

 

 ガクンッという衝撃と共に、ロボットを固定していた最後の装置が外される。

 

『エヴァンゲリオン初号機!リフトオフ!』

 

 葛城さんの言葉と共に、ロボットを支えていた台座から、ロボットは切り離された。途端にふらつく、巨大ロボット。

 

『シンジ君・・・今は歩くことだけ、考えて』

 

「あ、歩く・・・・・・」

 

 なんだその曖昧な指示はッ!!

 

 クソ、こうなったら僕の方でもシンジ君をサポートするしかない。

 

(『碇ユイ』さん、頼む!歩けるか?)

 

 僕は操縦席の壁に手をつき、『碇ユイ』の魂に呼びかける。

 

 シンジ君の意思と『碇ユイ』の魂が、文字通りシンクロしたのだろう。エヴァンゲリオンの巨体がゆっくりと、しかし確実に一歩を踏み出した。

 

 途端に通信から流れてくる、スタッフたちの歓声。

 

『歩いた・・・・・・!』

 

 赤木博士が嬉しそうに言うが、悪いがこっちは全く嬉しくない。本当に一歩だぞ?たった一歩、歩いただけで歓声が上がるような兵器を、この人達は本気で出撃させたのか。

 

 横のシンジ君がもう一度、自分に言い聞かせるように「歩く」と呟いた。

 

 巨大ロボットがもう一歩を踏み出す。

 

 だが──、

 

「え!?」

 

「な、なにッ!?」

 

 ロボットの足が、ロボットの背中に接続されていた巨大なケーブルに引っかかってしまった。ロボットは大きくバランスを崩し、前のめりに倒れていく。

 

「マズい!シンジ君、受け身を・・・・・・」

 

 しかし突然の事だ。歩くことだけを考えていたシンジ君の反応は間に合わず、巨大ロボットは顔から地面に激突してしまった。

 

 途端、僕の顔面に激痛が走る。

 

「ぐう・・・ッ!?」

 

 咄嗟に顔を押さえた僕は、横で同じように顔を押さえて呻いているシンジ君を見た。

 

「くう・・・・・・う・・・ううぅ・・・」

 

 まさか、このロボット・・・ダメージが操縦者にフィードバックするのか!?

 

 なんでコイツらは、そんな重要な事を最初に言わなかったんだ!!

 

『シンジ君!しっかりして!!』

 

 葛城さんの声に、僕とシンジ君が顔を上げた。

 

 目の前には、倒れた僕たちに迫ってくる黒い巨人。

 

「あ・・・あぁ・・・・・・!」

 

 シンジ君の顔に恐怖が刻まれていた。

 

『早く、早く起き上がるのよ!』

 

「シンジ君!立つ事だ!立つ事だけを考えろ!」

 

 くそ!『碇ユイ』の魂にも呼びかけるが、シンジ君の恐怖心が勝ってしまっているのか動きが鈍い・・・・・・!

 

 巨人の手が素早く僕たちに飛んでくる。ガションという音と共に、巨大ロボットの顔が掴まれた。

 

 クソ、なんてパワーだ・・・・・・!

 

 巨人は片腕でグググとロボットを持ち上げると、空いていた右手でロボットの左腕を思い切り掴んだ。

 

 巨人の両腕の筋肉が、異様なまで盛り上がったかと思うと──、

 

 バチィッッ!!

 

 ビキビキビキィ・・・・・・ッ!

 

「ぐああああああああ!!」

「うぐううう・・・!?」

 

 こ、コイツ!ロボットの腕を引きちぎろうと・・・!!

 

『シンジ君!落ち着いて!アナタの腕じゃないのよ!!』

 

 マズい!非常にマズい!僕はこの程度の痛みはなんてことは無いが、シンジ君はそうじゃあない!喧嘩なんてしたことないんだろう。想像を絶する痛みに混乱して、悶えることしかできていない!

 

 ブチッブチッと筋繊維が断裂する痛みが継続して僕らを襲ってくる。

 

『エヴァの防御システムは?』

『シグナル作動しません』

『フィールド無展開!』

『ダメか!』

 

 通信からスタッフ達のやり取りが聞こえてくるが、こっちはそれどころじゃあないんだ!

 

「し、シンジ君・・・!」

 

 僕がシンジ君に声をかけた、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 ボギリ・・・・・・ッ

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああッ!!」

「うぐぅッ」

 

 コイツ、左腕を折りやがった・・・!

 

 今まで味わったことのない痛みが、シンジ君に襲い掛かる。

 

『左腕損傷!!』

『回路切断!!』

 

「ぐ・・・だ、大丈夫だシンジ君!痛みはあるが、君の腕は折れてない!折れてないんだ!」

 

「じょ、ジョルノくぅん!痛い、痛いよッ!」

 

 コレじゃあ戦うどころではないッ!

 

「葛城さん!何か、何か無いのか!!」

 

『ふ、振り解いて!急いでそいつの手から逃げるのよ!』

 

 それができていれば苦労しない!

 

 僕は外の光景に目を向けた、が──、

 

 シュウオオオオオオオ・・・・・・

 

 目の前で、ロボットの顔を掴んでいる腕。その肘から長い爪のようなものが伸びたかと思うと──、

 

『いけない!シンジ君、避けて!』

 

 避けれるかッ!!

 

 巨人の爪が、僕たちの右目に深々と突き刺さった。

 

「うおおおおおおおおッ!?」

「ぎゃああああああああああああああ!!」

 

 こ、この痛み・・・!意識が飛びそうになるほどの痛みは、決してシンジ君が耐えられるものではない。

 

 その爪が、ガン!ガン!と何度も何度も右目に打ち付けられる。

 

『頭蓋前部に、亀裂発生ッ!』

『装甲が!もう保たない!!』

 

 クソ、ここまで一方的にやられるのは久しぶりだ!それにこの右目の痛み!暗殺チームにいた『僕と反対の能力』を持ったあの『スタンド』を思い出す!

 

 あの時は死ぬかと思った。シンジ君は必死で右目を押さえて耐えているが、長くは保ちそうにないッ!

 

 ・・・・・・・・・・・・待てよ?『スタンド』?

 

 まさか!!

 

 僕は咄嗟にシンジ君の握っていた操縦桿に手を伸ばす。そして──、

 

 

 

「無駄ダァッッ!!」

 

 

 

 目の前の巨人を、思い切り蹴り飛ばした。

 

『!?』

『す、すごいっ!!』

 

 ふぅ〜・・・なるほどな。ようやく『理解』できた。この巨大ロボット、エヴァンゲリオンとか言ったか。コイツの操縦方法が、言葉ではなく『心』で理解できたッ!

 

 

 

 自分の意思によって自在に動かすことができる。

 

 

 

 与えられたダメージが自分に跳ね返ってくる。

 

 

 

 これは!

 この特徴は、『スタンド』と同じだ!

 

 

 

 巨大なロボットではあるが、コイツの実態は僕たち『スタンド使い』が扱う『スタンド』と同じ!コイツは実体を持った巨大な『スタンド』と同じなんだッ!

 

 そうと分かれば、とりあえずこのロボットを扱うこと自体に問題はない。あとは──、

 

 僕はロボットの右手を、折れた左腕にそっと添える。

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 触れた右手から、わかる!僕のスタンドの生命エネルギーが損傷した左腕に伝わっていくのが!

 

『左腕復元!!』

『嘘でしょッ!?どうなってんの!?』

『すごい・・・!』

 

 次に僕は、さっきから執拗に狙ってくれた右目に手を添え、『スタンド』を発動させた。

 

『ず、頭蓋前部も復元!?』

『どーなってるんだ!?』

 

 なるほどな。デカい分、スタンドのエネルギーはだいぶ持っていかれるが、ありがたいことにこのエヴァンゲリオンは、一時的にだが僕の『スタンド能力』を使えるってことらしい。

 

 言うなれば、実体を持った巨大な『ゴールド・エクスペリエンス』ってところか。

 

 そうと分かれば、精々利用させてもらうかな。

 

 僕は細部の動きをチェックする。

 

 両脚を広げて膝を曲げ、つま先で立つ。

 

 折れていた左手を腰に当て、右手は右足の太腿の上に。

 

 胸を張り、折れていた左腕の具合を確かめるように目線は下に。

 

 僕の鼓動がドオオーーン!と大きく脈打った!

 

『あんな複雑で細かい動きまで・・・・・・』

『な、何よそのポーズ!ちょっとカッコいいじゃない!』

『何かのモデルみたいね・・・』

 

 グラッツェ、葛城さん。さて、問題なく動く事がわかってきたのは良いが、目の前の敵をやっつけたワケじゃあない。ヤツがゆっくりと起き上がってきた。

 

「シンジ君・・・」

 

 僕はいまだに右目を押さえているシンジ君に声をかける。

 

「大丈夫だ。このロボットが受けた傷は治した。じきに痛みも引いてくるだろう」

 

「ジョルノ君」

 

「さて、どうやらコイツの細かい操縦については僕の方が向いているらしい。だからシンジ君。君にはこれからやってもらいたい事があるんだ」

 

「そ、それは・・・?」

 

「なに、簡単だよ。このロボット、どうやら僕一人の意思ではそこまでのパワーを出せないようだ。だからシンジ君。君には「歩く」だとか「避ける」だとか、そんな細かい事は考えないでほしい。そこは僕がフォローする」

 

「じゃ、じゃあ僕は、何を考えればいいの?」

 

「シンプルだ。とても簡単な、たった一つの『シンプルな考え』だ」

 

 それは──、

 

 

 

「『アイツをやっつける』ッッ!それだけでいいッ!!」

 

 

 

『ッ!二人のシンクロ率が急上昇!』

『62.9・・・・・・70.5・・・信じられません!まだ上がっています!』

 

 シンジ君の瞳に光が宿る。それは今まで散々やられてきた事への怒り。そしてシンプルに、アイツをやっつけたいと願う闘志!

 

 シンジ君と僕、そしてエヴァンゲリオンの意思が、今一つになったッ!!

 

 僕はエヴァンゲリオンの左手で敵を指す。

 

「行くぞ!シンジ君!!」

「うん!!」

 

 

 

つづく

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