ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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第13章 最後のシ者
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「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフーンフフン・・・フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフーンフフン♪」

 

 鼻歌が聞こえる。この曲は確かベートーヴェンの第九、だったか。

 

 綺麗な声だ、と純粋に思った。渚カヲル。正体は不明だが、その圧倒的な美とは裏腹に、今にも消えてしまいそうな儚さを持った少年。

 

 この彼が、フィフスチルドレン・・・。ゼーレから直接送り込まれたと言っていたが、それをどこまで信用したものか。僕にとっても悩ましいところだが。

 

 とはいえ。

 

「ごるるるるるるるるるるるるる・・・・・・!」

 

 僕の目の前で繰り広げられている光景。自分の分のリゾットを食べ尽くした綾波さんが、テーブルの反対側で食事をしている渚カヲルに襲いかかっている光景。

 

 だが、このフィフスチルドレン。スプーンを使った攻防が恐ろしく上手い。綾波さんのスプーンのラッシュを全て捌きつつ、時折器用にスプーンでリゾットを掬って食している。鼻歌交じりにな。

 

 まあ、鼻歌はマナーとして食事中には控えて欲しいところではあるが、そんなツッコミをする暇も忘れて、僕は二人の攻防を見守りながら自分のリゾットを完食した。

 

 ふう。ごちそうさまでした。

 

 

 

 僕の名前はジョルノ・ジョバァーナ。日系イタリア人。15歳の中学生だ。

 

 『2001年のイタリア』から『2015年の異世界の日本』へと渡ってきた僕の物語も、もうすぐ終わりを迎えられそーだ。これまで戦ってきた使徒。それも残すところあと一体となったわけだからな。

 

 だが、まだ終わりじゃあない。使徒を倒した後、『人類補完計画』とかいうふざけた計画を叩きのめさなくてはならないからだ。

 

『人類補完計画』。大層な名前をしたそれの実態は、この星のすべての生き物をLCLという生命のスープにして混ぜ合わせ、死を克服した単一の生命体へと進化させる、というもの。

 

 まったく、ふざけた話だな。僕からしてみればそんなのは単なる集団自殺でしかないってのが本音だが、この世界のトップ共はそんなふざけた現象が人類全体を救う事に繋がると本気で信じているらしい。

 

 この世界のトップに君臨する、通称『ゼーレ』。僕はそれを叩きのめさなければならない。復活した僕のスタンド『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』によって。

 

 だが、謎はまだ残っている。それが目の前の少年。渚カヲルだ。当の本人は優雅に口元をナプキンで拭いて、「ごちそうさま」と食事の礼を言ってきたが、この怪しさ満点の少年をどう扱うかは僕の中ではまだ決めきれていない。

 

「そんなに睨まなくてもいいよ、ファーストチルドレン。いや、綾波レイさん、か。それと、ジョルノ・ジョバァーナ」

 

 僕の視線に気付いたか。だが、生憎と綾波さんが睨んでいるのは単純に空腹を満たせなかった怒りから来るものだろう。後でペペロンチーノでも作ってやるか。

 

「色々と知っている風な話し方をするじゃあないか。ゼーレから送り込まれたって時点で僕としても君をどう扱うか決めあぐねている。それが事実だが、君の方から何か話してくれるのか?」

 

「ふふ。いいや。君には話さない」

 

「そうか」

 

 まぁ、簡単には話せないだろうからな。その割に、僕の家までついてきて堂々とリゾットを食ってるんだから、図太い神経をしているというかなんというか。

 

「ぼくは君に会うためにここに来たわけじゃない。碇シンジ君と、二人きりの時間を過ごしたかっただけなんだ」

 

「そ、そうか」

 

 なんだ、この少年。もしかして、そっちのケがあるのか?

 

「シンジ君は隣の家なんだろ?なんで君はぼくをこっちの部屋に連れて来たんだい?ぼくは彼と話ができればそれでよかったのに」

 

「念の為だ。悪いが君のシンジ君への視線。どこか思うところがあるといった風なんでな。彼ら、まぁ、シンジ君と葛城さん、それにラングレーだが、少し考えを整理する時間が欲しかったってところだ」

 

「そうかい?それならぼくに聞いてくれれば、なんでも答えるのに」

 

「僕の前で『なんでも答える』なんて安易な言葉はあまり使わない方がいいな、渚カヲル君。なんでもと言うからには、僕はなんでも聞くし、なんでもするぞ?」

 

「それは怖いね。・・・で?その考える時間というのはある程度まとまったと思うんだけど、ぼくはまだここにいなきゃダメなのかい?」

 

「そうだな。ここで待っててもらいたい。もう少ししたら、葛城さん達の方からこっちの部屋に来るはずなんだが・・・・・・と、来たみたいだな」

 

 ちょうど僕が話しているときに、玄関のベルが鳴った。実にナイスなタイミングだな。

 

 僕は葛城さん達を出迎えるため、椅子から立ち上がって玄関に向かっていった。

 

 

 

 

 なぜ、この場で酒が注がれているのか。それは僕にもわからない。

 

「まぁまぁ!い〜じゃないの!たまにはあんた達も酒でも飲んで、日頃の鬱憤でも晴らしながら語り合いましょーよ!」

 

 葛城さんが持って来たのは大量のビールに焼酎。それに、ウィスキーのボトルだった。ついでにおつまみのお菓子類も、シンジ君とラングレーが困り顔で持って来ていた。もっとも、そのお菓子は早速綾波さんに奪われてしまったみたいだが。

 

「やれやれ。しょうがないですね。じゃあ僕もワインを開けさせてもらいますよ」

 

「さっすがジョルノぉ!話がわかるぅ!」

 

「ええ〜・・・これ、アタシ達も飲まなきゃいけないのぉ?ミサトとジョバァーナとで勝手にやればいいじゃない。ねぇシンジ?」

 

「う、うぅん。僕も流石にこの状況は訳がわからないよ。なんでみんなして酒盛りをする必要があるのさ?」

 

「何言ってんのシンちゃん!これはアレよ、アレ!新人歓迎会よ!フィフスである渚カヲル君を歓迎しつつ、お酒でも飲んでパァーっとやりましょうって事!」

 

「ミサトさんが飲みたいだけですよね?」

 

「それはそう!私は飲みたいのよ!みんなと、特に渚カヲル君とね!」

 

「ぼくも一応、未成年なんだけどな?」

 

「あら?あらあらあらぁ?あなた、もしかしてそんなイケメンフェイスをしていてお酒を嗜んだ事がないっていうのぉ?それはいけないわね!おねぇさんがじっくりと教えてあげるわ!」

 

「「うわぁ・・・・・・」」

 

 シンジ君とラングレーが引いている。というか、僕もドン引きだ。葛城さんの意図はなんとなくわかるとはいえ、このウザ絡みは流石にきつい。絡み方が本当にうざったいとしか言い様がないな。

 

「さぁ、まずは一献!ビールでいいから飲んでみなさいよ、渚カヲル君!」

 

「・・・・・・君たちのところはいつもこんななのかい?」

 

 渚カヲルが、シンジ君に無邪気な瞳を向けている。それを受けたシンジ君はその瞳の眩しさから逃げるように視線を逸らした。

 

「ま、まぁ・・・・・・ときどきはある、かな」

 

「そうなのかい?じゃあ、僕も一口・・・・・・」

 

 そう言って渚カヲルはビールを一口、口に含んだ。

 

「・・・・・・うん、LCLよりかはマシ、かな」

 

「比較対象が悲しすぎる」

 

 シンジ君の悲しすぎるツッコミを聞いた葛城さんは、「そんなマズいものと比べてないでぇ!一気にあおるのよ!一気に!」なんて囃し立てている。

 

 それを真に受けた渚カヲルは、葛城さんの言う通りにビールを煽ると、

 

「きゅう」

 

「「「「あ」」」」

 

 そのまま椅子ごとひっくり返って、バタンと床に倒れ込んだ。

 

 急性アルコール中毒だな。仕方ない。介抱してやるか・・・。

 

 しかし葛城さん。マジに大人としては0点の行動だな、こりゃあ。

 

 

 

 

「ん、う〜ん・・・・・・」

 

 おっと、目が覚めたか。葛城さん、よかったな?救急車を呼ぶ事態にならなくて。

 

「あ、起きた?ごみ〜ん!ちょっとはしゃぎすぎたわ・・・・・・」

 

 まぁ酒を飲んでいるときの葛城さんなんて、こんなもんだ。渚カヲルも、早いうちに洗礼を受けておいて良かったのかもしれない。

 

 僕はリビングのソファから起き上がった渚カヲルに水を手渡してやる。一瞬、受け取るのを躊躇したようにも見えたが、

 

「ありがとう。ジョルノ・ジョバァーナ」

 

 頭が痛むのかこめかみを押さえながら、渚カヲルは水を受け取った。

 

「・・・・・・酒とはすごいものだね。まさか僕が倒れるなんて。リリンが生み出した、文化の極みだよ。そう感じないか?碇シンジ君」

 

「え、えっと、そうだね?」

 

 シンジ君は困ったように頬をかいた。まぁ、酒についてなら横の保護者(仮)のだらしない姿を連日見ているからな。返答にも困ろうというものだ。

 

 さて。ところで、ってやつだ。

 

「葛城さん。良い加減、いきなり酒盛りなんて始めた理由をみんなに話したらどーだ?」

 

「うっ!・・・・・・あ〜、えっとぉ。そのぉ」

 

「ど〜せ、その色白男にしこたま飲ませてソイツが何者なのか、問いただそうとしたんでしょ?ミサトはわかりやすいんだから」

 

「あ、あはは〜。バレてた?」

 

「バレバレよ」

 

「もしゃもしゃ、葛城三佐はもしゃ、あまり隠し事はもしゃ、できないもしゃからね、ごくん」

 

 綾波さん、ポテチを頬張りながら喋るんじゃあない。口からポテチのカケラが溢れ落ちてるぞ?

 

「ははは・・・」

 

 シンジ君もわかっていたのか、乾いた笑いしか出てこないな。

 

「そうか・・・ぼくの事を知りたかったんだね?それなら、ぼくはシンジ君にだけ話しておきたいんだけれど」

 

「それは、渚くん。ごめん」

 

 ソファから起き上がった渚カヲルがシンジ君を見つめるが、それを真正面から、シンジ君は柔らかく拒絶した。それは──、

 

「君のことは、僕だけでなく、みんなで知っておきたいんだ。ここにいる、僕の仲間たちみんなと」

 

「それは、君が一人だけで知るのが怖い、という事かい?」

 

「違うよ。みんな仲間なんだ。僕だけに話すんじゃなく、ここにいるみんなに話して欲しいんだ。だって、彼らは大切な仲間なんだから」

 

 シンジ君の雰囲気を悟ったのか、渚カヲルは肩をすくめた。その顔はどこか落胆したような、またはどこか納得したような、不思議な表情をしている。

 

「カヲル」

 

「・・・・・・え?」

 

「カヲルでいいよ、碇君」

 

「・・・ふふ。僕も、シンジでいいよ。カヲル君」

 

 シンジ君と渚カヲルの二人が柔らかく微笑む。どうやら二人の間で、話はまとまったようだな。

 

「さってと!そうと決まったならシンジだけでなく、アタシ達にもあんたが何者なのか、早速説明してもらおーじゃない」

 

「あ、アスカ・・・急に聞かれてもカヲル君だって困るよ」

 

「はぁ!?・・・ふん!なによ、男同士でいきなりファーストネームで呼び合っちゃってさ。何よ、あんたら。そっちのケでもあるの?」

 

「なんでそうなるんだよ。・・・アスカはヤキモチ焼きだなぁ・・・」

 

「ぬぁ!?なんですって〜っ!?」

 

「待った。二人とも、悪いが痴話喧嘩は後にして欲しい。僕もこの少年が何者なのか、興味が尽きないところだからな」

 

「そぉね。じゃあ、私が代表としてまず聞きたいことがあるんだけど、渚君、いいかしら?」

 

「待ってくれ。聞くのはもう構わないんだが、ぼくにも話したい事と話したくない事がある。そこは了承してくれると助かるな」

 

「それはわかっているわ。あなたが話したくないこと、それはあなたの自由よ。ただ、私の質問はたぶん話したくない事、だと思うけど」

 

「いいよ。なんだい?」

 

 

 

 

 

「あなた、使徒ね?」

 

 

 

つづく

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