ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 僕のスタンドは『レクイエム』へと進化を遂げることで、普段では出せないくらいのパワーが宿っている。操っている僕としても気を抜けない、まるでモンスターマシンのようだ。

 

 その、僕の拳のラッシュを・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【無駄無駄無駄無駄・・・だったか?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前のスタンドは、全ていなして躱す!

 

「くっ!?」

 

【無駄は貴様だったな?ジョルノ・ジョバァーナ】

 

 『レクイエム』の拳のラッシュをすべて防御して尚、目の前の敵は平然としている。

 

【こんなのはどうだ?】

 

「ごっふぅ!?」

 

 紫電一閃!ヤツはあろうことか僕の攻撃の合間を縫って、渾身の蹴りを僕の腹に叩き込んできた!

 

 こ、この衝撃・・・!まるで近距離パワー型のスタンド!その精密な動きも含めて、このスタンドは規格外だ!

 

「こいつ、遠隔操作型じゃあない、のか!?なんだ、このパワーと精密動作性は!?」

 

 ドドドドドドドド・・・・・・と空気が震えて唸りを上げる!僕らの横では、エヴァ初号機と弐号機が組み合って、互いの動きを封じ合っている!

 

【教えてやろう。我らのスタンドは遠隔操作型だが、その能力は『運命への巡礼』・・・その者が歩む運命を逸脱することを許さないスタンドだ。運命とは覆せないもの。ましてや、切り開くなど以ての外。我らがスタンド『ピルグリム』は『運命』を司るスタンド。その強制力の加護を受けた我らがスタンドに、抗える者はいない・・・!】

 

 僕は余りあるスタンドパワーによって空中を滑るように移動して距離を取る。

 

【かつて貴様と対峙したエンリコ・プッチもそうだった。奴の能力は危険極まりないものであったが、奴の運命はアメリカ第二支部の消滅に紐付けられていたのだ。故に、我らの『首輪』によって奴を制御した。・・・・・・もっとも、その場に貴様が居合わせた事と、貴様があの惨劇から生きて戻ってきた事は我らの予想外ではあったが】

 

「なるほどな。思った以上に、お前の言う運命は穴だらけ、というワケだな・・・!」

 

 その開いた距離を、一気に詰める!

 

【我らのスタンドにも、この世のすべての運命を知る術は無い。ましてや、この世界とは別の世界から来た貴様の運命は我らにとってもイレギュラーであった。故に、だからこそ貴様は我らの前に立ちはだかる事ができた、というワケだが】

 

「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム!!」

 

【レクイエムをもってしても、貴様では我らに敵わない】

 

「うぐぉ!?」

 

 ヤツの鋭いカウンターブローが、僕の脇腹に深く叩き込まれる!

 

 ぐぅ!ヤツのスタンド、パワーを能力で補っているタイプの遠隔操作型スタンドというワケか!『運命の強制力』。それを逸脱しようとする行為に対し、絶対的な力を発揮するスタンド。

 

 だが、僕のスタンドの能力はッ!!

 

「無駄ァァアアッ!!」

 

 すべての事象を、『0』にするというものッ!

 

 僕の拳を受けたな?『ピルグリム』!

 

【む・・・】

 

「くらえ!」

 

 僕のスタンドで、お前のスタンドを『0』にまで戻す!

 

【うおおおおおおおおおおお・・・ッ!?】

 

 入った!僕の『レクイエム』は確かに『ピルグリム』に叩き込まれた!ヤツの体が煙を上げて塵と化していく!効いているんだッ!

 

「渚カヲルッ!」

 

「っ!ジョルノ、ジョバァーナ・・・!!」

 

「今すぐ弐号機を止めろ!そうすれば・・・」

 

『危ない!ジョルノ君ッ!!』

 

 なに!?

 

 僕はシンジ君の声に反射し、瞬時に背後に振り返った。そこには──、

 

【貴様の『レクイエム』が『運命のやり直し』ができることは『知って』いる。だが、だからこそ貴様は我らには勝てぬのだ。『ピルグリム』が発動した時点で、『運命は決定している』のだ。貴様の『レクイエム』がどれほど強力だろうと】

 

 無傷で僕の前に立ちはだかる、『ピルグリム』の姿ッ!

 

「な、何ィィイイイイイイイイッ!?」

 

【『決定された運命』には!!逆らえないッ!】

 

 空中を飛び退くことで、僕は『ピルグリム』の攻撃を躱す!この無敵さ、遠隔自動操縦型にも通じる物がある!

 

(運命が決定した時点で、ヤツを止める事は不可能という事、か!?マズい、こいつ、無敵すぎるッ!)

 

【渚カヲルの運命が過酷なものでなければ、貴様らがそこまで奮闘しなくてもよかったのだろーな。だが生憎と、渚カヲルは生まれたその瞬間から我ら『ゼーレ』への供物としての運命を司っているのだ。誰にも、ましてや異世界からの人間に、その『運命』を覆すことは出来はしない】

 

 くそ、悔しいが、コイツの言う通りだ・・・渚カヲルの運命の行き着く先が『死』だと言うのなら、この場でコイツと戦っても勝ち目はない。

 

 

 

 

 

 だが、勝機は別のところに、あるッ!

 

 

 

 

 

「シンジ君!弐号機を離すんだ!」

 

『え!?』

 

「大丈夫だ!僕に考えがある!」

 

『わ、わかった』

 

 シンジ君から了解の返事が返ってきた途端、初号機が弐号機を拘束していた手を離した。弐号機は重力に従って、セントラルドグマの穴の中を落ちていく!

 

「な、ジョルノ・ジョバァーナ!なにを・・・」

 

「この『ピルグリム』、無敵だ。コイツは君の『運命そのもの』なんだ。抗うことはできない。抗えば抗うほど、コイツは『運命の強制力』としての無限のパワーを発揮する。君の運命は、君が言っていた通り、受け止めなくてはならないな」

 

「ッ!!・・・・・・そう、なのかい。いや、そうなのかもしれないね・・・・・・」

 

 

 

 

 

「だが繰り返す!覚悟とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことだッ!」

 

 

 

 

 

「!!」

 

「君の運命は決まっている!だが、そこに光を照らして進むのは、君の『覚悟』だ!その『覚悟』があれば、『渚カヲル』は運命に勝てる!」

 

『そうだよ!カヲル君!!』

 

 初号機が、捕まっていたワイヤーから手を離す!先ほどの弐号機と同様、初号機は重力に従って落ちていくが──、

 

『掴まって!カヲル君!ジョルノ君!』

 

 初号機の伸ばした手が、僕ら二人を優しく包み込んだ!

 

【無駄な事だな、ジョルノ・ジョバァーナ】

 

 そして、渚カヲルに取り憑くようにして僕たちの落下についてくる『ピルグリム』の姿。

 

【お前が一番理解しているはずだ・・・我々は『運命の奴隷』だ、と。何をしようと、定められた『運命』から逃れる事はできない!】

 

 『ピルグリム』がその言葉を発した瞬間、僕たちはセントラルドグマの最深部、リリスの眠る空洞へと墜落した。赤みを増したLCLの湖に、弐号機と初号機の二つの水柱がドォン!と上がった。

 

『うっぐ!?』

 

「っ!ちぃ、相変わらずこのLCL・・・マッズいな。味は最悪だ」

 

『ッ!?あれ!カヲル君がいない!!』

 

「なに!?」

 

 僕は初号機の手の中から立ち上がる。辺りを見回せば、渚カヲルはリリスの封印されている巨大な扉へと浮かんで行くところだった。

 

「ジョルノ・ジョバァーナ。ありがとう。ぼくも君の言葉で、『覚悟』の道が見えたよ。何度も何度も繰り返してきた、ぼくの運命を受け入れる『覚悟』ができた」

 

 その横には、『ピルグリム』が付き従うように浮かんでいて、渚カヲルはその『ピルグリム』を受け入れたように見える。

 

 そして、僕たちの目の前で、巨大な扉の最後の鍵が、カシャンと小さな音を立てて開いた。

 

『最終安全装置、解除!』

 

『ヘヴンズドアが開いていきます!』

 

 開かれた扉から光が漏れる。その光の回廊を、渚カヲルと『ピルグリム』は悠々と進んで行く。

 

『ついに、辿り着いてしまったのね・・・使徒が』

 

 通信から葛城さん達の声が聞こえる。僕と初号機は、その声に弾かれたように立ち上がり、渚カヲルめがけて全力で走った!

 

「やはり黒き月、リリス・・・・・・君は最初から、ここに居たんだね」

 

【さぁ、選択の時だ。タブリス。お前がリリスに触れて、我らに福音をもたらすか・・・・・・】

 

 『ピルグリム』の手が、渚カヲルの背中に添えられる。

 

【もしくは、我らの願いを反故にし、エヴァンゲリオンによる殺害を望む、か?】

 

「・・・・・・」

 

【どちらでも構わない。我らはリリスとの融合を望むが、もしお前が初号機によっての死を選んだとしても、我らには次の手がある。お前に残された最後の自由を、自らの手で掴み取るが良い・・・】

 

『カヲル君ッ!!』

 

 シンジ君が、渚カヲルの動きを叫んで止めた。

 

『それ以上、進んじゃダメだ・・・!』

 

「じゃあ、君がぼくを殺してくれるのかい?シンジ君」

 

『そ、それは・・・・・・』

 

「悪いが、シンジ君。渚カヲルを止めるには、それしかない」

 

『ジョ、ジョルノ君まで・・・!』

 

「大丈夫。シンジ君、ぼくは、すでに『運命』を受け入れているよ。それがぼくの『覚悟』だ」

 

 渚カヲルは振り返り、『ピルグリム』を伴って僕たちの方へとゆっくりと近づいてくる。

 

 そして僕たちの目の前で止まると、実に芝居がかった動きで両手を広げた。

 

 コイツ、受け入れているようだな。自分の『死』という運命を。

 

「さあ、ぼくを消してくれ。シンジ君」

 

 その言葉を受けたシンジ君が、ゆっくりと、恐る恐る初号機の両手を渚カヲルへと伸ばす。その手が優しく、渚カヲルを握り締めた。

 

「そう。武器は使わないで、ぼくを殺してくれるんだね・・・・・・ぼくを殺した瞬間を、君の手のひらの記憶に、君自身に刻みつけるために」

 

 その言葉に、シンジ君は答えない。

 

 

 

 長い、長い沈黙。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

『そう、だね・・・・・・きっとそうだ』

 

 

 

 

 

 シンジ君はようやく、絞り出すように言葉を発した。

 

 

 

 渚カヲルごと両手を握り締める初号機の様子は、まるで祈りを捧げる『巡礼者』のようでいて。

 

 

 

 そう、渚カヲルの運命を変えることはできない。僕らができるのは、彼のために、祈ることだけなのかもしれない。

 

 

 

【そちらの道を選ぶ、か】

 

 

 

 その握り締められた両手の横で、『ピルグリム』は勝ち誇ったように嗤う。

 

 

 

【終わったな】

 

 

 

「ああ。確かに『覚悟』はできたよ、シンジ君。ジョルノ・ジョバァーナ──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君たちが『覚悟』をくれなかったら、この道は見えなかったッ!

 

 

 

 自分の『死』をあえてこの身に受ける!この『覚悟』への道はッ!!」

 

 

 

【──なッ!?】

 

 

 

「シンジ君!!」

 

『うああああああああああああ!!』

 

 シンジ君の叫びと共に初号機の両手がギュッと握り締められる!その瞬間、握り締められた両手から血が吹き出した!

 

 だがッ!!

 

『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムッ!』

 

 僕のスタンドは、その死を『0』に戻す事もできる!魂さえ、この場に残っているのならッ!

 

【な、何ィィイイイイイイイイイイイイ!?】

 

「ぐ、がは・・・ぼ、ぼくの暗闇に見えた道は!ぼく自身が死ぬ道じゃあない!ぼくが死ぬ事で、さらにその『先に進む』ことだ!」

 

【し、死を受け入れた上で、『その先に進む』だと・・・!?バカな!正気ではないッ!】

 

「これでぼくは、お前の言う『運命』を受け入れた事になる!もちろん、ジョルノ・ジョバァーナの能力を期待していなければ、とてもできない『覚悟』だった・・・」

 

 初号機の握られていた両手がゆっくりと開いていく。そこにいたのは、全身に自身の返り血を浴びた、アルビノの少年の姿。その手には、外された黒い『首輪』が握られている。

 

「答えろよ、『ピルグリム』。いまのぼくの『運命』はどうなっている?ぼくはまだ、この場所で死ななきゃあならないのかい?」

 

【ば、馬鹿な・・・・・・こんな方法で、『死を克服』する、だと!?ジョルノ・ジョバァーナァァアアアアアッ!!】

 

「大きな声を出すんじゃあない。渚カヲルは今この瞬間、生まれ変わったんだ。お前らの供物としての『運命』を克服した、一人の人間としてな!」

 

『──ジョルノ君!!行けぇッ!!』

 

 

 

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

 

 僕のスタンドの拳のラッシュが、『ピルグリム』に次々と叩き込まれていく!!

 

【うが、がァァアアアアアアアアアッ!!・・・・・・ふふ、ふはははははははは!見事だジョルノ・ジョバァーナ!!貴様のスタンドは、やはり我らの『補完計画』にとって無くてはならない存在のようだ!貴様を招こう!我らの元へッ!貴様のスタンドこそが、我らを楽園へと導く最後の鍵だと確信した!】

 

「そうか。興味がない。黙って消えろ」

 

【くくくく、良いだろう!ここは退こう!貴様が我らの元に来るのを楽しみにしているぞ!】

 

「聞こえなかったのか?黙って消えろと言ったんだ。一度で良いことを二度言わなくっちゃあならないってのは、無駄だから嫌いなんだ。無駄無駄」

 

 ゼーレのスタンド『ピルグリム』が塵となって消える。

 

 後に残されたのは、初号機と、その手のひらの上で、気が抜けたように倒れ込む少年の姿だった。

 

 

 

「くっ・・・・・・」

 

 

 

『か、カヲル君・・・大丈夫!?』

 

「ああ、ありがとうシンジ君。少し血を流しすぎたようだ・・・でも、大丈夫だよ。それより、ジョルノ・ジョバァーナ」

 

 渚カヲルは息も絶え絶えに、僕に問いかけてくる。

 

「さっき、君はぼくを『人間』だと言ってくれた。もしかして、君はぼくを人間にしてくれたのかい?」

 

「・・・・・・いや、僕の能力にそこまでの力はない。君は使徒のままだ。使徒のまま、君は生き残った事になるな」

 

「そ、そうか・・・・・・」

 

 僕の答えに、渚カヲルは落胆したかのように頭を下げた。

 

 だがな、渚カヲル。

 

「そんなのは、どっちでもいい事だがな、

僕らにとっては」

 

「え・・・・・・」

 

『そうだよ。カヲル君は、カヲル君だ。使徒がどうとか、僕たちの知った事じゃないよ』

 

「そーゆー事だ。君は最初から、僕らにとっての『敵』じゃあなかった。それだけ、だな?」

 

 僕らの言葉を聞いた渚カヲルが弾かれたように顔を上げる。

 

 その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。

 

「ふふふ、そうか。そうかもしれないな・・・ところで・・・・・・『ジョジョ』」

 

「・・・ん?」

 

「ぼくの傷は、君が治してくれるんだよな?」

 

「ああ。もちろんだ。・・・だが、正確には傷を治すんじゃあなく、体の『部品』を作るんだ。治すんじゃあないから痛みは当然残る。後で文句は垂れないでくれよ?」

 

「ふふふ、君なら、優しくしてくれるんだろ?期待してしまうよ、ジョジョ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょーっと待ったァーーーッ!何をそんな所で薔薇色の展開を広げようとしてんのよ!!あんたら早く戻ってきて!病院に叩き込むわよ!?』

 

『すごい・・・・・・!興味深い・・・・・・!』

 

『レーーーーイッ!?ダメよ!見ちゃだめぇ!バカシンジ、あんたも早く戻ってきなさいよ!薔薇が移るわよ!?』

 

『え、薔薇?どういう・・・・・・』

 

『い、い、か、ら!!戻ってきなさいシンちゃん!そこのジョルノと渚くんも連れてね!』

 

『は、はい・・・わかりました?』

 

 ふう。何やら、変な誤解が生まれようとしていたみたいだが。

 

 僕は微笑みながら、渚カヲルに手を伸ばす。

 

 その手を握り返してきた使徒の顔は、憑き物が落ちたような、優しい微笑みに包まれていた。

 

 

 

つづく

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