ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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「ふふふ、初めてだよ。ぼくがこんな場面に出くわすのは、ね。これからはどうなるのかな。それはもはや、ぼくにも分からない領域に至ったんだね」

 

 渚カヲルの生還パーティーを、僕たちは盛大に葛城邸で行っていた。僕が作ったイタリアンを中心に、シンジ君が和風のツマミを作っていく。葛城さんの家は決して狭くはないが、それでもこの大人数だ。流石に手狭に感じるのは仕方のないことだろう。

 

 僕、シンジ君、葛城さん、綾波さん、ラングレーに渚カヲル。そこに何故か家を失って疎開したはずのトウジ君とその妹のサクラちゃん、ケンスケ君、さらには洞木委員長まで同席しているんだから、このお祭り騒ぎの規模の大きさも知れようというものだ。

 

「あっはっはっはぁーーーッ!使徒が味方になったわよ!なにこれ?最高ッ!?これならゼーレの『人類補完計画』?んなの目じゃないわぁ!ジョルノ!もう一本ワインを開けて!」

 

「了解」

 

「了解、じゃないっつーの!!ジョバァーナ!あんた何本ミサトに酒を飲ますつもりよ!てゆーか、この会自体、おかしいでしょ!?中学生が集まってなんで酒盛りしてんのよ!?」

 

 ちッ。ラングレーめ。一人だけ良い子しているな。こんな席で酒を飲まないなんて白けてやがる。

 

「そんな事言わないで、アスカ。ほら、一口だけ舐めてみたら?」

 

「ちょっと!?誰よシンジに飲ませたバカは!」

 

「ほら、僕のだけど良かったら飲んで」

 

「ちょ!これって間接・・・・・・」

 

「いや?」

 

「あッ、ちょ、耳に息吹きかけないで、んあぁ!」

 

「フケツよ!二人ともーーーッ」

 

「あぁん、羨ましい!碇さん、ウチにもお願いしますぅ!」

 

「こぉら!サクラ!お兄ちゃんは・・・」

 

「サクラちゃんにはまだ早いから、大人になったら続きを、ね?」

 

「は、はひぃ!!」

 

 あ、シンジ君の天然ジゴロが発動しているな。サクラちゃんの顎をクイっと持ち上げて、真っ直ぐに瞳を見つめている。あの様子を見ていると、将来いろんな女の子に無自覚で声掛けて、そのうち刺される未来が見えてくるな。

 

(本当は、加持さんも参加できれば一番いいんだが、彼が今どーなっているのか。マジに何も連絡がないからな・・・)

 

 僕は出来上がったカルボナーラを小皿に分けて配膳していく。最初は綾波さんが手伝ってくれていたんだが、不思議な事に、キッチンからテーブルまで持っていく僅かな間に皿の上の料理が綺麗になくなっているんだ。何かのスタンド攻撃だろーか?不思議だな。

 

「ジョルノぉ!ワイの日本酒も飲んでみぃ!結構イケるで!」

 

「お、パスタに日本酒ってのは試した事なかったな。どうだ?ケンスケ君も」

 

「おれはパス・・・ちょっとワイン飲みすぎて気持ち悪くなってきた」

 

「ケンスケ、ちょっと横になってきたら?」

 

「そうだな・・・じゃあお言葉に甘えて」

 

「碇さんも、ウチと一緒に、どーです?」

 

「こらぁ!このドロボー猫!アタシのシンジに色目使ってんじゃあないわよ!?」

 

「あはは。二人とも可愛いなぁ。ほら、二人ともおいで」

 

「「んな!?」」

 

 シンジ君の天然ジゴロが絶好調だ。シンジ君は膝にサクラちゃんを乗せ、自分は頭を隣のラングレーの肩に置いた。やられた二人は赤面して黙り込むしかなくなったみたいだ。

 

「シンちゃん、恐ろしい子・・・・・・!」

 

 葛城さんがビール缶をカシュッと開けながら、戦慄したようにシンジ君を見つめている。うん、ありゃ確実に将来刺される。特に酒が絡んだら、シンジ君と関係を持ってしまう女性は数知れないだろう。

 

「この女たらしが・・・」

 

 ラングレーの負け惜しみに対して、

 

「失礼だな。純愛だよ」

 

 至極真面目に返すシンジ君。おお、今の返しはなかなかカッコよかったな。事実、二人の女の子も顔を真っ赤にして顔を俯かせてしまった。

 

 僕はそんな三人を放っておいて、葛城さんの隣に座る。葛城さんを挟んで座る形で、渚カヲルも僕たちの会話に参加した。

 

「で、この後はどーするんですか?葛城さん。ネルフは一応、全ての使徒を撃退した形になるが・・・」

 

「そぉねぇ。ハッキリ言って、上層部は大混乱中よ。渚くんが使徒から人類の味方側になったこともそうだけど、ゼーレが直接送り込んできた少年が使徒でした、なんて幾ら碇司令でも看過できる事じゃないわ」

 

「そうなのかい?」

 

「そりゃあそうよ。仮に、の話よ?渚くんが私たちによって殲滅されていれば「知らなかった」で通るかもしれないけど、渚くんは生き証人だからね。ゼーレの潔白を表明することはできないわね。ゼーレは今や、人類滅亡に加担した危険人物の集まり、っていうのが国連の間での共通認識になってるわ」

 

「なら、ゼーレによるゴタゴタが起こるのはだいぶ先になりそうか?」

 

「どうだろうね。リリンはいつも生き急いでいる。ゼーレの老人どももそうさ。もしかしたら強硬手段に出るかもしれないね」

 

「渚くんの言う通りよ。奴らに対して油断は禁物ね。だけどジョルノ。国連はゼーレに対して、近く立ち入り捜査を行う事を決定したわ。人員は各国の国連スタッフと国際警察で固めるみたい。ちなみにウチ、ネルフからも人員を出すことになったわ。意味は、わかるわね?」

 

 僕は軽く頷く。その捜査、参加するのは僕、というワケだな。

 

 願ってもいない事だ。もちろんゼーレ側も僕を迎え撃つつもりだろう。お互いの思惑がうまく重なった形になるな。

 

「場所は?」

 

「ユーロネルフよ。場所はフランスのパリ」

 

「日時は?」

 

「3日後に現地集合。応対は人類補完委員会が担当するらしいけど、確実にゼーレもそこに現れるはずよ」

 

「どうするんだい?ジョジョ」

 

 渚カヲルと葛城さんの視線を受けながら、僕はワインを一口含んだ。僕はゼーレのスタンド『ピルグリム』の言葉を思い出す。

 

【貴様を招こう!我らの元へッ!貴様のスタンドこそが、我らを楽園へと導く最後の鍵だと確信した!】

 

「行くしかないだろーな。どのみちゼーレは僕自身が相手しなくてはならない相手だった。ようやく、その時が来たってだけだ」

 

 僕は決意を新たにしながら、もう一口ワインを口にする。その様子を見た葛城さんも渚カヲルも、黙って頷く。

 

 その時だった。僕の胸ポケットにしまっていた携帯が突然鳴った。相手を確認して出てみれば──、

 

『よぉ、ジョルノ君。久しぶりだな』

 

 絶賛行方不明中の、加持リョウジだった。

 

「久しぶりですね。ですが加持さん、電話なんてして大丈夫なんですか?恐らくこの電話、盗聴されてますよ?」

 

『問題ない。事ここに至れば、俺の生死なんてどうでもいいのさ。ネルフも、ゼーレもな。しかし、やるなジョルノ君。使徒である渚カヲルまで手玉に取るとはな』

 

 失敬な。手玉になんて取っちゃあいない。彼は自分で覚悟して、生きるべくして生き残ったんだ。その言い方は少しムッとするな。

 

『・・・悪い、言葉が過ぎたな。だが、いよいよだ。全ての事柄が、一気に動く時が来た。総理も戦自の出動準備を進めている。そっちの準備はいいか?』

 

「問題ないな。僕としてはさっさと終わらせたいってのが本音だ。全ては3日後、今までの混沌とした状況に決着を付けてきますよ」

 

『わかった。総理もすでにゼーレの調査情報は握っている。戦自の出動も、国連が動けないその日を狙うはずだ。大変だろうが、君の無事を祈っているよ』

 

「人の、というか世界の生き死にがかかっているんだ。僕も必死ですよ。ところで加持さんはどーするんです?まだ雲隠れするつもりですか?」

 

『くく。相変わらず厳しい物言いだな、ジョルノ君。大丈夫だ。俺も参戦するよ。ただし、俺は政府の犬として、だがな』

 

「ふぅん」

 

 まぁ、加持さんのことだ。上っ面だけの犬である事はわかりきっている。僕のその無関心な反応に、電話の向こうで加持さんがくくっと含み笑いをしているのがわかった。

 

「さて、そろそろ電話を切ろうと思っていたんですが、僕の隣に、どーしても代わりたいって態度の女性がいましてね?」

 

『・・・・・・はぁ。やれやれ。女に詰め寄られるのは慣れているが、アイツだけは気が重いな』

 

「そうですか。代わります」

 

『ノータイムかよ!?』

 

 電話の向こうで騒がしくしている加持さんを無視して、僕は隣の葛城さんに携帯を渡す。手にした瞬間の葛城さんは、それはもう、悪い顔をしていた。

 

「加ぁ持ぃ〜〜〜〜!!」

 

 あ、これは騒がしくなるな。僕は目線で渚カヲルに合図を送ると黙って席を立とうとしたんだが、ガシッと葛城さんによって肩を組まれて捕まってしまった。

 

 渚カヲルは僕にウィンクをして席を離れると、ラングレーとサクラちゃんを手玉に取っているシンジ君へと近付いていった。

 

「あんたねぇ!なぁんでジョルノとは連絡取り合って私とは連絡取らないのよ!?こっちはすでにジョルノから聞いて知ってるんだからね!あんまバカにしないでよね!!」

 

 僕の耳元で、酔っ払った葛城さんがやかましく騒ぐ。グチグチと文句を垂れる葛城さんに、僕は腕を解いて席を立とうとしたが、葛城さんの目尻に浮かぶ涙を見て、大人しく席に座り直した。

 

「あんたが言ってた、言いそびれた言葉ってやつを私はずっと待ってるんだからね・・・!」

 

 葛城さんの肩が震えている。

 

「約束よ、あんた、絶対に顔出しなさいよ!?でないと承知しないからね!?」

 

 そう言って、葛城さんは無理やりに電話を切った。

 

「ジョルノ!もう一本ワイン開けて!今日は飲むわよ!」

 

「やれやれ。了解ってヤツだな」

 

 僕はようやく葛城さんから解放されると、冷蔵庫で雑に冷やしていたワインのボトルを一本開けて、葛城さんの前に差し出した。

 

 ふと、部屋の中の様子を見回せば、実にいろんな表情のみんなの様子が窺える。ひたすら料理をかっ込む綾波さんに、横で微笑んで様子を眺めている渚カヲル。歌を歌い出したケンスケ君に、それを囃し立てながら肩を組んだトウジ君と赤ら顔の洞木委員長とサクラちゃん。ワインをあおる葛城さんに、・・・あれ?シンジ君たちはどこに行った?

 

 僕は部屋を見回す。どうやらシンジ君とラングレーはベランダに出たようだな。何やらいい雰囲気なので、僕は見て見ぬフリをしたんだが、

 

「ジョルノ君!」

 

 呼ばれたからには、仕方ないな。ラングレーのために、空気を読んでやるか迷っていたんだが。

 

「いいから来なさいよ、ジョバァーナ」

 

 ラングレーの方からOKを出してくれるんなら、聞かない理由は無いな。

 

 僕は軽く一息ついてから、ワインを片手にベランダに出る。ベランダから見た景色は、一面の湖。綾波さんの零号機の自爆によって第三人東京市は吹き飛んだが、そこに溜まった湖面に月と星が反射して、とても美しい。

 

「僕なんかを呼んで良かったのかい?シンジ君。ラングレーが怒り出しそうだが」

 

「アスカもわかってくれてるんだ。ね?アスカ」

 

「ふ、ふん!シンジの頼みだから聞いてやっただけよ!・・・・・・男同士で、話したいこともあるんでしょ?」

 

 そう言って、ラングレーは空気を読んで、ベランダから室内へと戻っていった。

 

「・・・・・・珍しいな、シンジ君」

 

「うん。僕も、薄々は感じていたから。こういう機会でもないと、ジョルノ君と二人きりで話せないと思ってさ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 湖面に反射する星の煌めきを肴に、僕はワインを口に運ぶ。隣のシンジ君も、ワインの入ったグラスを傾けた。

 

「悪い中学生だな?シンジ君」

 

「ははは!全部ジョルノ君が教えてくれた事じゃないか!」

 

「いや、酒の飲み方までは教えてないが」

 

「でも時々飲んでるのを見てるんだ。教えてもらってるのとおんなじだよ」

 

「そうか?・・・・・・そう、かもしれないな」

 

 僕たちの間に、心地よい沈黙が流れる。湖面には、夜空を流れる幾つもの箒星が映り込んでいて、ありきたりだが、とても美しいと素直に思った。

 

 その沈黙を破ったのは、シンジ君だった。

 

「もう、すぐ、なんだよね」

 

 シンジ君は躊躇いがちに、しかし答えのわかりきっている問いを僕に投げかけてきた。

 

「・・・・・・ああ」

 

「・・・・・・本当に、ジョルノ君は別の世界から来たの?その世界は、ジョルノ君にとって大切な世界なの?」

 

 シンジ君の声が、震えて、尖る。

 

「僕は、ジョルノ君が居ない世界なんて、認めたくない」

 

 その言葉をシンジ君が口にした瞬間、夜風がざあっと流れてきた。場が再び、沈黙に包まれる。

 

 だが、シンジ君もわかり切っているだろう。だから、あえて僕は静かに言い切った。

 

 

 

 

 

「このジョルノ・ジョバァーナには夢がある」

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、隣のシンジ君が息を呑んだのがわかった。

 

 そして、僕の放った言葉を、シンジ君は必死に飲み込んだ。

 

「まだ、お別れじゃ、ないよね?」

 

「ああ」

 

「・・・・・・怖いよ」

 

 シンジ君は初めて会った時のように、怯えたように、甘えたように、縋りつきたいように、そう言った。

 

 だが、僕は知ってる。

 

「もう、大丈夫だろ?」

 

「─────ッ!!」

 

 シンジ君が、息を呑んだのがわかる。

 

「それでも!!」

 

 シンジ君は僕から顔を逸らしながら、

 

「寂しいよッ!!」

 

 そう叫んだ。

 

 それが、僕にはとても嬉しい。僕はこの世界に来て、どうやら、君の力になれたみたいだ。

 

 だけどね?シンジ君。

 

「僕は異物だ。君の人生において、僕はオマケでしかない」

 

「オマケだなんて、そんな!!」

 

「僕は自分の世界に帰る。きっとこれは、初めから決まっていた事なんだ」

 

「嫌だ!ジョルノ君が居ない世界なんて・・・・・・」

 

「違うだろう?シンジ君。僕はたまたまこの世界に来ただけだ。君にとっての、本当に大切な人達は、君が決断して、覚悟して、そうして得た友人達なんだ。そこを間違えちゃあいけない」

 

 そう言って、僕は部屋の中を見遣る。そこには、シンジ君が自分の力で得てきた、かけがえのない仲間たちの姿。

 

「でも!ジョルノ君は僕の友達っ・・・親友なんだ!そう思ってるのは、僕だけなの!?」

 

 シンジ君が、涙を流しながら僕に向き直る。その彼を、僕は優しく、ゆっくりと抱きしめた。

 

 僕の頬を流れる涙を、彼に見せないようにしながら。

 

「君は、僕にとっての親友だ。だから、僕は君を信じている。これから先の人生も、僕が居なくても、強く生きていけると信じている」

 

「・・・・・・ッ!!」

 

 

 

 

 

「だから、幸せになってくれ。それが、僕からの最初で最後のお願いだ」

 

 

 

 

 

 僕はシンジ君を力一杯に抱きしめる。そして、シンジ君もそれに応えた。

 

 まだ、何も終わっていない。僕らの戦いは、これからが本番なんだ。

 

 だけど。

 

 それでも。

 

 今、この瞬間だけは。

 

 僕たちの友情を、誰でもいい。祝福してほしい。

 

 それが、この世界に呼ばれた僕の、心からの願いだから。

 

 

 

To Be Continued…

 




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

次章にて、この長いようで短い物語も終わりを迎えます。

どうか最後までお付き合い頂き、ご笑覧頂ければ幸いです。

それではみなさま、また会う日まで。

アリーヴェデルチ!!
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