ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
銃弾!
銃弾!!
銃弾!!!
僕の命を奪おうと飛んでくる銃弾を弾く!躱す!弾く!躱す!弾く!
いくらスタンド使いだからといっても、普通の人間がマジもんの銃火器に100パーセント対応できるワケではないッ!サブマシンガンでも持ち出されれば、並のスタンド使いならあっという間に蜂の巣だろう・・・!
僕がまだこの場で命を落としていないのは、『レクイエム』の能力があるからだ。
僕を撃ち貫く銃弾を全て『無かった事』に書き換え、
撃ってきた奴らの『戦意を0に戻す』!
そうする事で、僕は辛うじてこの場を生き延びている!
「無駄なんだ、無駄無駄」
僕の周囲にいた全ての刺客が地面に膝をついた・・・ッ!
空気がドドドドドドドド・・・と唸りを上げている・・・ッ!
僕はまるで従者のように膝をつき、頭を垂れたそいつらのすぐ横を、王の如く静かに堂々と歩き去っていくッ!
こんな奴らに構っている暇はない・・・逃げた『ゼーレ』の後を、急いで追わなければ・・・!
そう決意した僕の耳に、甲高い風切り音が届いた。
その音の方向に目を向けた瞬間──、
グチャアッ!!
バズーカ砲の弾が命中し、僕の頭が粉砕されていた!
だが無駄なんだ。すぐに『レクイエム』が発動し、僕の死は無かった事にされる。
しかし、流石にダメか。射程距離外だ。僕に向かって飛んでくるバズーカ砲の砲弾の嵐は止めようがない。一体何人の刺客がこのパリに潜んでいるんだ?数えるのも億劫だ。
僕はその砲弾を避けるため、全速力で走り出した!!
「う、くぅう!?」
飛んできた砲弾が爆発し、パリの凱旋門の周囲を爆炎が飲み込んでいく!その合間を縫って、襲い来る銃弾の雨霰!
僕は自分の『能力』を全開にしながら、パリの街並みを駆け抜けた!
「どこに行った、ゼーレ!!」
すでに奴らの首魁、キール・ローレンツの姿はここには無い!恐らくユーロネルフの設備内に入ったんだろう。ならこの近くに、ユーロネルフへの入り口があるはずなのだが・・・ッ!!
「ちぃ!鬱陶しい!!」
襲いくる砲弾と銃弾の嵐を!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアア!!」
すべて『レクイエム』の拳で叩き落としながら、僕はユーロネルフへの入口を探す!
その僕の目が捉えたのは──、
「街中に設置された消火栓!!」
僕はその赤い消火栓の頭に手を伸ばすと、その頭をグイィッとひねる!ビンゴだ!その消火栓のすぐ横に、地下へと続く階段が現れた!
僕はその階段に滑り込むと、中にあった開閉スイッチを殴るように押下した!
途端に、道路に開いた入り口がバシャッと音を立てて閉まる。扉の向こうではガキン!パキン!と銃弾が弾かれる音が聞こえる。
・・・・・・ふぅ。まずは敵の第一陣から逃げ切ったと言えるだろうな。もっとも、すぐに追っ手が突っ込んでくることは間違いないだろーがな。
僕は薄暗い照明が照らす地下への階段を、転がる様にして駆け降りていく。
その瞬間だった。
『イッツ・ア・スモールワールド・・・・・・』
暗闇の奥底から響いた声を聞いた途端、世界が『大きくなった』!いや、違う!僕の体が『小さくなった』って事かッ!
「ちぃッ!!」
僕は舌打ちと共に階段を飛び降りる。これは、ゼーレのスタンド使い!そのスタンド能力か!?
『ゲロッパ!!』
『キャッチ・ザ・ウィンド!!』
しかも、どうやら一人だけではないらしい!複数のスタンド使いが、一斉に僕に襲い掛かってきたようだッ!
だが、もっとも──、
「無駄なんだがな。全てが・・・」
僕は自身の『レクイエム』を発動させる!
僕に襲い掛かってきた全てのスタンド能力を、『0』まで戻す。
どんな能力を持とーと、決して真実に辿り着くことはない。それこそが『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』!!
「ゼーレ!僕を止めたいんなら!お前の『ピルグリム』を出して来い!!」
スタンド能力を無効化されたスタンド使いどもが僕の目の前に現れる。その呆気に取られた馬鹿げた面を、僕の『スタンド』で殴り飛ばしていく。
並のスタンド使いじゃあ、僕を止める事はできないぞ?
僕はゼーレのスタンド使い共を蹴散らしながら、地下深く続く階段を下っていった。
▼△▼△▼△▼△
補完計画始動の前夜。
第三新東京市、ネルフ本部にて。
『約束の時が来た。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完は出来ん。唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ』
キール・ローレンツの言葉に、碇ゲンドウは静かに反論する。
「ゼーレのシナリオとは違いますが」
「人はエヴァを生み出す為にその存在があったのです」
「人は新たな世界へ進むべきなのです。そのためのエヴァシリーズです」
ゲンドウと冬月の、静かな抵抗。しかしそれは、ゼーレの失笑を誘うに留まった。
『碇、わかっているのだろう?』
『我らは人の形を捨ててまで、エヴァという箱舟に乗る事はない』
『これは通過儀式なのだ。閉塞した人類が再生する為の・・・』
『滅びの宿命は新生の喜びでもある』
『神も人も全ての生命が死を以てやがて一つになる為に』
「死は何も生みませんよ」
『死は君達に与えよう。なぁ、碇・・・』
「は・・・・・・」
『ここから先は、『競争』だな?貴様と我らとの』
「・・・・・・!」
ゼーレの長、キール・ローレンツの言葉と共に、ゲンドウと冬月を囲んでいたモノリスの姿が消える。
「始まったな」
「ああ。ようやくだ。全ての事柄に、我々が決着を付ける」
冬月の言葉に同意したゲンドウは席を立つ。
これから起こる惨劇を、全て我が手中に収めるために。
◇
そして、2015年12月31日。
運命の時は来た。
「通信機能に異常発生!外部との全ネット情報回線が一方的に遮断されています!」
「左は青の回線に切り替えろ!そうだ!衛星を開いても構わん!!」
ネルフ第二発令所に怒号が響く。ゼーレとの会談を終えたゲンドウと冬月を待ち構えていたのは、ゼーレによるMAGIへの侵攻。
「全ての外部端末からデータ侵入!MAGIへの侵入を目指しています!」
やはり、目的はMAGIか。
冬月は自身の口の中で小さく呟いた。
「侵入者は松代のMAGI2号か?」
「いえ、少なくともMAGIタイプ5。ドイツと中国、アメリカからの侵入が確認できます!」
オペレーターの青葉の報告に、冬月は小さく舌打ちをした。
「ゼーレは総力を挙げているな・・・兵力差は1対5・・・・・・分が悪いぞ」
『第四防壁、突破されました!』
「主データベース閉鎖・・・駄目です、侵攻をカットできません!」
「更に外郭部へ侵入、予備回路も阻止不能です!」
日向とマヤが悲鳴を上げる。この圧倒的な不利を前に、ネルフのオペレーター陣が音をあげそうになったその時だった。
「碇・・・・・・」
「問題無い。既に手は打ってある」
碇ゲンドウの重みを増した言葉が、この場を支配した。
◇
「わかっているわ。MAGIの自律防衛、でしょ?」
「はい、詳しくは第二発令所の伊吹二尉からどうぞ」
ネルフの留置所内で拘束されていた赤木リツコは、迎えの黒服共に向けて優しい笑みを返す。
無論、彼女の心中では、憎悪の塊と化した獣の笑みを浮かべていたが。
「必要となったら捨てた女でも利用する。エゴイストな人ね・・・」
小さく口の中で呟きながら、赤木リツコは待ち望んでいた瞬間を前に、己が昂るのを感じていた。
(リョーちゃん。ジョルノ君。貴方たちの望むものは既にミサトに与えたわ。その報酬はきっちり払ってもらうわよ?)
◇
「状況は!?」
葛城ミサトは第二発令所への道を急ぎながら、部下である日向に連絡を取っていた。
『先程、第二東京からA‐801が発令されました』
「801?」
『特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄、及び指揮権の日本国政府への移譲です』
ミサトは発令所へ続くリフトに乗り込み、乱暴に『上』へ行くボタンを押す。
『最後通告ですよ、現在マギがハッキングを受けています。かなり押されてます・・・』
電話越しの日向は冷静ではあったものの、事の重大さからか、声に若干の緊張が含まれている。
(早く着け、このオンボロ・・・!)
ミサトの心が焦りの感情に塗り潰されていく。そこに、横から伊吹マヤが割り込んできた。
『伊吹です!今、赤木博士が、プロテクトの作業に入りました」
ガシャンと大きな音を立ててリフトが止まる。ミサトの目の前には発令所があり、たった今まで連絡の取り合っていた日向とマヤが、大きな音に驚き、こちらを振り返るところだった。
「リツコが・・・・・・!?」
▼△▼△▼△▼△
ユーロネルフのスタンド使い達。その悉くを打ち倒し、再起不能にしてきた。
油断はない。今、この場には僕のスタンドが効かない相手がいないってだけだ。僕のスタンドとの『相性』もある。そういった敵を、ゼーレが手下にしていないとも限らない。
狭い廊下の向こうで、ネルフの軍人達が隊列を組んでサブマシンガンを構えている。「撃て」の合図とともに、僕に向けて一斉に発砲してくるが、最早その程度の攻撃では『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』は止められないんだ。
僕はゆっくりと右手をかざす。それだけで、彼らの『戦意』はなくなり、その手から銃が零れ落ちた。
油断はない。だが・・・・・・。
こんなもの、か?ゼーレ。
あまりにも呆気なく戦線を離脱していく兵士たち。その光景に、僕の中にある種の不安が溜まっていく。
こんなもんじゃあない。敵の勢力はこんなもんじゃあないはずだ。なのに、あまりの手応えの無さに、僕の中で不安が芽生えていく。
・・・・・・それとも、本当にこんな程度なのか?世界を牛耳るゼーレの戦力とやらは、こんなものでしかないのか?奴らのスタンド『ピルグリム』は確かに厄介だが、今の僕ならなんとかできてしまう『気がする』。
その事が、僕の中に逆に焦りを生んでいく。
何かがおかしい。そう、まるで『泳がされている』ような、そんな不安。
不意に、ユーロネルフの廊下を照らしていた電源が落ちる。廊下には非常灯の赤い光だけが奥の方に伸びていて、僕を誘っているようにも見える。
僕は不安を振り払うように一歩を踏み出す。廊下の先に広がる暗闇に向かって、僕はゆっくりと歩みを進めていった。
つづく